JP2003021278A - 鋼管用ねじ継手 - Google Patents
鋼管用ねじ継手Info
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Abstract
面をそれぞれ有するピンおよびボックスから構成される
鋼管用ねじ継手において、コンパウンドグリスを塗布せ
ずに、耐焼付き性および気密性を安定して確保する。 【解決手段】 ピンおよびボックスの少なくとも一方の
接触表面に、固体潤滑剤(例、二硫化モリブデン)と有
機または無機結合剤とからなる固体潤滑被膜を形成し、
この固体潤滑被膜の厚み方向断面において、固体潤滑剤
の等面積相当径15〜60μmの二次粒子が占める面積率が
5〜90%となるようにする。かかる被膜は、例えば、平
均粒径が1〜10μmの固体潤滑剤と結合剤と溶媒とを含
有する塗布液を、混合後に静置して固体潤滑剤を凝集さ
せてから、塗布することにより形成することができる。
Description
締結時に焼付き防止のために塗布されている重金属粉を
含むコンパウンドグリスの使用を不必要にすることがで
きる、耐焼付き性と気密性に優れた鋼管用ねじ継手に関
する。
は、鋼管用ねじ継手で締結される。このねじ継手は、雄
ねじを備えたピンと、雌ねじを備えたボックスとから構
成される。図1に模式的に示すように、通常は鋼管Aの
両端の外面に雄ねじ3Aを形成してピン1とし、別部材の
スリーブ型の継手部材Bの内面に両側から雌ねじ3Bを形
成してボックス2とする。図1に示す通り、鋼管Aは、
その一方の端部に予め継手部材Bを締付けた状態で出荷
されるのが普通である。
起因する軸方向引張力や地中での内外面圧力などの複合
した圧力に加え、地中での熱が作用するので、このよう
な環境下でも破損せずに気密性 (シール性) を保持する
ことが要求される。また、油井管の降下作業時には、一
度締込んだ継手を緩め、再度締直して締結することがあ
る。そのため、API (米国石油協会) では、チュービ
ング継手においては10回の、ケーシング継手においては
3回の締付け (メイクアップ) 、緩め (ブレークアウ
ト) を行っても、ゴーリングと呼ばれる焼付きの発生が
無く、気密性が保持されることを求めている。
金属接触によるメタルシールが可能な特殊ねじ継手が一
般に使用されるようになっている。この種のねじ継手で
は、ピンとボックスのいずれも、雄ねじまたは雌ねじか
らなるねじ部に加えて、ねじ無し金属接触部を有してお
り、この両部分が接触表面となる。ピンとボックスのね
じ無し金属接触部同士が当接して、金属−金属接触によ
るメタルシール部が形成され、気密性が向上する。
付きを防止するため、コンパウンドグリスと呼ばれる高
潤滑のグリスが使用されてきた。液体潤滑剤であるこの
グリスを、締付け前にピンとボックスの少なくとも一方
の接触表面に塗布する。しかし、このグリスには有害な
重金属が多量に含まれており、締付けに伴って周囲には
み出たグリスを洗浄液で洗浄するが、この作業でコンパ
ウンドグリスやその洗浄液が海洋や土壌に流出して環境
汚染を引き起こすことが問題視されるようになった。ま
た、締付けを繰り返すたびに必要となるグリス塗布と洗
浄が、現場での作業効率を低下させるという問題もあっ
た。
な鋼管用ねじ継手として、特開平8−103724号、特開平
8−233163号、特開平8−233164号各公報には、ねじ部
やねじ無し金属接触部 (即ち、接触表面) に、樹脂と固
体潤滑剤である二硫化モリブデンまたは二硫化タングス
テンとからなる固体潤滑被膜を、ピンおよび/またはボ
ックスの接触表面に形成したねじ継手が開示されてい
る。
の二硫化モリブデンとして、フイッシャー法により測定
した粒子径が0.45〜10μm、好ましくは2〜5μmの粉
末を使用することが開示されている。0.45μm未満では
耐ゴーリング性に対する潤滑機能向上効果が得られず、
10μmを超えると潤滑性向上効果が飽和するとともに、
固体潤滑被膜の厚さの調整が困難になることが示されて
いる。
よりピンまたはボックスの接触表面に潤滑性を付与した
ねじ継手を使用すると、コンパウンドグリスの塗布が不
要となり、前述した環境問題や作業効率の問題は解消で
きるはずである。
ウンドグリスを塗布した場合に得られるような高い焼付
き防止効果が得られず、依然として締付け・緩めを繰り
返すうちに、10回以内でゴーリングと呼ばれる焼付き疵
を生じ、安定して焼付き発生を防止し、気密性を確保す
ることができないという問題があった。
に、耐焼付き性および気密性を安定して確保することが
できる固体潤滑被膜を備えた鋼管用ねじ継手を提供する
ことを目的とする。
被膜の性能差が現れる理由について、固体潤滑被膜の構
造に着目して検討した結果、締付け・緩め試験による耐
焼付き性は、特開平8−103724号公報に記載されるよう
な潤滑性粉末それ自体の粒子径ではなく、被膜中の潤滑
性粉末の存在形態 (凝集形態) により支配されることが
判明した。
くが凝集して、後で定義する等面積相当径で15〜60μm
の大きな塊、即ち、二次粒子の状態で存在していると、
安定した耐焼付き性が確保できることを見出した。
接触部とを含む接触表面をそれぞれ有するピンおよびボ
ックスから構成される鋼管用ねじ継手であって、ピンお
よびボックスの少なくとも一方の接触表面に、固体潤滑
剤と結合剤とからなる固体潤滑被膜を有し、固体潤滑被
膜の厚み方向断面において、固体潤滑剤の等面積相当径
15〜60μmの二次粒子が占める面積率が5〜90%である
ことを特徴とする鋼管用ねじ継手である。
形成された固体潤滑被膜における粉末集合体(二次粒
子)の粒子径を意味する。固体潤滑剤の等面積相当径に
ついては後で説明する。
剤は二硫化モリブデン、二硫化タングステン、有機モリ
ブデン化合物、黒鉛、窒化ホウ素、およびポリテトラフ
ルオロエチレンから選ばれた1種または2種以上であ
る。結合剤は有機樹脂と無機高分子のいずれでもよい。
また、前記固体潤滑被膜と前記接触表面との間に、下地
処理層として多孔質被膜層を有することが好ましい。こ
の多孔質被膜層が、燐酸塩化成処理被膜または亜鉛もし
くは亜鉛合金被膜であることが好ましい。
の構成を模式的に示す概要図である。符号1はピン、2
はボックス、3はねじ部、4はねじ無し金属接触部、5
はショルダー部を示す。以下、ねじ無し金属接触部を単
に金属接触部ともいう。
は、鋼管端部の外面に形成された、ねじ部3(即ち、雄
ねじ部)及びねじ無し金属接触部4を有するピン1と、
ねじ継手部材の内面に形成された、ねじ部3(即ち、雌
ねじ部)およびねじ無し金属接触部4を有するボックス
2とで構成される。ただし、ピンとボックスは図示のも
のに制限されない。例えば、継手部材を使用せず、鋼管
の一端をピン、他端をボックスとしたり、あるいは継手
部材をピン (雄ねじ) として、鋼管の両端をボックスと
することも可能である。
じ部3と (ねじ無し) 金属接触部4がねじ継手の接触表
面である。この接触表面、中でも、より焼付きの起こり
やすい金属接触部には、耐焼付き性が要求される。従来
は、そのために、重金属粉を含有するコンパウンドグリ
スを接触表面に塗布していたが、前述したように、コン
パウンドグリスの使用には環境面と作業効率の面で問題
が多い。
24号公報等に開示されるように、溶媒中に樹脂と潤滑性
粉末とを含む塗布液をピンとボックスの少なくとも一方
の接触表面に塗布し、塗膜を加熱して接触表面に固体潤
滑被膜を形成した、コンパウンドグリスの塗布が不要な
ねじ継手が開発された。しかし、従来のこの種のねじ継
手では、前述したように、耐焼付き性や気密性を安定し
て確保することができなかった。
3.5 μmの二硫化モリブデンの粉末を、結合剤としてポ
リアミドイミド樹脂を、樹脂を溶解させ固体潤滑剤を分
散させる溶媒としてエタノール:トルエン=50:50の混
合溶媒を使用し、固体潤滑被膜を形成するための塗布液
を試作した。その際に、塗布液の粘度と攪拌・混合した
後の静置時間を調整することによって、二硫化モリブデ
ンの凝集の程度を変化させることができ、凝集により生
成した二次粒子の大きさにより、形成された固体潤滑被
膜の耐焼付き性の性能が大きく変動することを突き止め
た。
ブデン粉末という同じ固体潤滑剤を使用し、かつ樹脂お
よび溶媒も同じものを使用しても、形成された固体潤滑
被膜の耐焼付き性にバラツキが見られる。この耐焼付き
性のバラツキを支配する因子の1つが、固体潤滑被膜中
の固体潤滑剤の凝集の程度であることを見出した。
径) が、例えば10μmまたはそれ以下と小さいと、固体
潤滑剤の粉末を樹脂溶液中に分散させた塗布液におい
て、粉末は凝集して二次粒子を形成する。そのため、こ
の塗布液の塗布と乾燥により形成された固体潤滑被膜中
においても、固体潤滑剤のほとんどは、一次粒子 (上の
例では平均粒径3.5 μmの二硫化モリブデン粉末) が凝
集して生ずる二次粒子の状態で存在することになる。
よび溶媒を使用し、塗布液の粘度や攪拌による粉末分散
後の静置時間を変化させて固体潤滑剤の凝集の程度を変
化させた塗布液を用いて、粉末の凝集程度が異なる固体
潤滑被膜を形成し、その耐焼付き性 (焼付き発生までの
寿命) と被膜中の二次粒子の粒径 (等面積相当径の平均
値) との関係を調べたところ、図3に示す結果を得た。
この図から、固体潤滑被膜中に存在する固体潤滑剤の二
次粒子の等面積相当径が15〜60μmの範囲であると、耐
焼付き性が良好であることがわかる。
潤滑剤の凝集の程度はバラツキがあり、一次粒子のまま
で存在したり、凝集度の小さい粒子もかなりある。そこ
で、凝集の程度の影響についても調べた。その結果、図
4に示すように、固体潤滑被膜の厚み方向断面におい
て、等面積相当径15〜60μmの二次粒子が占める面積率
が(被膜全断面積の)5〜90%である時に、被膜の耐焼
付き性が著しく向上することがわかった。
ける固体潤滑剤の二次粒子の等面積相当径は、固体潤滑
被膜の厚み方向断面を走査電子顕微鏡により観察するこ
とにより求めた値である。即ち、この被膜断面の電子顕
微鏡画像をコンピュータ画像解析することにより、個々
の二次粒子の断面積を求め、この断面積と同面積の真円
の直径を、その粒子の等面積相当径とする。以下、等面
積相当径を、単に相当径という。
は、固体潤滑被膜の厚み方向の断面を走査電子顕微鏡に
より観察した際の、200 倍画像における無作為に選んだ
100mm×100 mmの大きさの5視野について、コンピュー
タ画像解析により各粒子の断面積を測定することにより
求める。各視野について、相当径が 0.3〜100 μmに入
る全ての粒子の断面積を計測する。そのうち相当径15〜
60μmの二次粒子が占める断面積の合計面積を求め、視
野面積に対する割合(面積率)を算出し、その面積率を
5視野について平均した値が、本発明における「相当径
15〜60μmの二次粒子が占める面積率」である。なお、
本発明では、被膜中の相当径0.3 μm未満または100 μ
m超の固体潤滑剤は、無視できるものとして扱った。
よびボックスの少なくとも一方の接触表面に、固体潤滑
剤と結合剤とからなる固体潤滑被膜が形成されており、
この固体潤滑被膜の厚み方向断面において、固体潤滑の
相当径15〜60μmの二次粒子が占める面積率 (以下、15
〜60μm二次粒子面積率ともいう) が5〜90%である。
それにより、重金属粉を含有するコンパウンドグリスを
使用せずに、従来固体潤滑被膜に生じていた問題、すな
わち耐焼付き性に劣るねじ継手の出現確率が高いという
という、工業製品にとって致命的ともいえる欠点を克服
することができる。
次粒子の面積率が5〜90%であると安定して優れた耐焼
付き性が発揮できる理由は、完全に解明されたわけでは
ないが、現状では次のように考えられる。
じ継手の締結・緩め時に繰り返しの摺動摩擦を受け、固
体潤滑剤と結合剤を含む摩耗粉を発生し、それが接触界
面で金属間接触の防止と摩擦軽減に寄与し、焼付き防止
効果を発揮するものと推定される。固体潤滑剤の粒子が
例えば 0.4〜10μm程度と小さいと、固体潤滑被膜の摺
動摩擦により発生した摩耗粉が小さなものとなり、摩擦
界面での金属間接触防止効果が不十分となり、焼付きを
発生しやすくなる。一方、固体潤滑剤が凝集により大粒
径になると、摩耗粉の大きさも大きくなり、接触界面に
おいて、金属間接触が効果的に抑制され、耐焼付き性が
大幅に向上する。
次粒子の相当径は15〜60μmである。相当径が15μm未
満では、上記理由により、金属間接触、すなわち焼付き
の防止効果が不十分となる。一方、相当径が60μmを超
えると、固体潤滑被膜の強度が低下するばかりではな
く、下地との密着性も低下するため、締付け・緩め時に
被膜が剥離し易くなって、焼付きの発生を抑制できな
い。耐焼付き性と固体潤滑被膜の強度と密着性の観点か
ら、前記二次粒子の相当径は好ましくは20〜50μmであ
る。
存在割合は、被膜断面の全面積に対する面積率で5〜90
%である。この面積率が5%未満では接触界面に存在す
る15〜60μmの固体潤滑剤の量が少なく、焼付き防止効
果が不足し、90%を超えると被膜の強度低下や下地との
密着性低下を来たし、やはり焼付き防止効果が不足す
る。耐焼付き性、密着性の観点から、この面積率は好ま
しくは10〜85%、さらに好ましくは30〜85%、最も好ま
しくは50〜85%である。
を有する固体潤滑剤の二次粒子と結合剤とからなる。こ
の被膜は、結合剤を溶媒に溶解 (または分散) させた結
合剤溶液に固体潤滑剤の粉末を分散させた塗布液の塗布
と乾燥により形成することができる。
外に、二硫化タングステン、黒鉛、有機モリブデン化合
物(例、モリブデンジアルキルチオホスフェート、モリ
ブデンジアルキルチオカルバメート)、PTFE(ポリ
テトラフルオロエチレン)、BN(窒化硼素)でも同様
の潤滑効果が得られることが認められており、これらの
1種または2種以上を使用することができる。
いずれも使用できる。有機樹脂としては、耐熱性と適度
な硬さと耐摩耗性を有するものが好適である。そのよう
な樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ
カルボジイミド樹脂、ポリエーテルサルホン、ポリエー
テルエーテルケトン樹脂、フェノール樹脂、フラン樹
脂、尿素(ウレア)樹脂、アクリル樹脂などの熱硬化性
樹脂、ならびにポリアミドイミド樹脂、ポリエチレン樹
脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂などの熱可塑性
樹脂を例示できる。
(例、トルエン)、アルコール系(例、イソプロピルア
ルコール)をはじめとする、各種の低沸点溶媒を単独あ
るいは混合して用いることができる。
密着性と耐摩耗性の観点から、塗布液を塗布した後、加
熱して被膜を硬質化することが好ましい。この加熱温度
は、好ましくは120 ℃以上、より好ましくは 150〜380
℃であり、加熱時間は、鋼管用ねじ継手のサイズにより
設定されればよいが、好ましくは30分以上、より好まし
くは30〜60分である。
分子とは、Ti−O 、Si−O 、Zr−O、Mn−O 、Ce−O 、B
a−O といった、金属−酸素結合が三次元架橋した構造
からなる被膜形成材料であり、ゾルゲル法と呼ばれる造
膜法により形成される。このような無機高分子は、金属
アルコキシドの加水分解と縮合により形成することがで
きる。金属アルコキシドとしては、アルコキシ基がメト
キシ、エトキシ、イソプロポキシ、プロポキシ、イソブ
トキシ、ブトキシ、tert−ブトキシなどの低級アルコキ
シ基である化合物が使用できる。好ましい金属アルコキ
シドは、チタンまたはケイ素のアルコキシドであり、特
にチタンアルコキシドが好ましい。中でも、チタンイソ
プロポキシドが造膜性に優れていて好ましい。金属アル
コキシド以外に、四塩化チタンといった金属塩化物や金
属カルボン酸塩も使用できる。
ドは、シランカップリング剤のように、アルコキシ基の
一部が官能基を有していてもよいアルキル基で置換され
ている化合物であってもよい。
しては、アルコール(例、エチルアルコール、イソプロ
ピルアルコール、ブチルアルコール)やケトン等の極性
溶剤、炭化水素、ハロゲン化炭化水素等、各種の有機溶
媒が使用できる。造膜を促進するため、溶液中の金属ア
ルコキシドを塗布前に予め部分加水分解しておいてもよ
い。また、塗布後の加水分解を促進するため、金属アル
コキシドの溶液に、水および/または加水分解触媒の酸
を少量添加してもよい。
機高分子形成材料の溶液に、固体潤滑剤の粉末を分散さ
せて塗布液を形成し、ピンおよび/またはボックスの接
触表面に塗布し、塗膜を乾燥させる。塗布後の加水分解
による被膜形成を促進させるため、塗布後に加湿処理を
実施してもよい。これは、大気中に所定時間放置するこ
とでも行うことができるが、湿度70%以上の大気中であ
るとより望ましい。好ましくは、加湿処理後に加熱を行
う。加熱により加水分解および加水分解物の縮合と、加
水分解の副産物であるアルコールの排出が促進され、短
時間で造膜でき、形成される固体潤滑被膜の密着性が強
固となり、耐焼付き性が向上する。この加熱は、溶媒が
蒸発した後に行うことが好ましい。加熱温度は副生する
アルコールの沸点に近い 100〜200 ℃の温度とするのが
よく、熱風を当てるとより効果的である。
の相当径15〜60μmの二次粒子を被膜断面の全面積に対
して5〜90%の面積率で存在させる。このような被膜を
得る1つの可能な手段は、固体潤滑剤として、一次粒子
径が15〜60μmである粉末を面積率(体積率で近似でき
る)で5〜90%となるように含む粉末を使用し、かつ塗
布液中での凝集を抑える方法である。例えば、平均粒径
が25〜50μmといった粗大な粉末からなる固体潤滑剤を
使用し、塗布液を高粘度のものとすれば、塗布液中で粉
末は凝集しにくく、多くの粉末が一次粒子としてとどま
る。凝集しない場合、一次粒子の粒子径がそのまま二次
粒子の粒子径となる。そのため、本発明で規定する固体
潤滑剤二次粒子の面積率の範囲を満たした固体潤滑被膜
を確実に形成することができる。しかし、この方法は、
固体潤滑剤の粉末が粗大であり特に、面積率が小さい場
合には固体潤滑剤の分布が不均一になりやすいといった
問題がある。
15μmより小さい固体潤滑剤の粉末を用い、これを樹脂
や溶媒と混合した後の塗布液中で凝集させ、多数の粉末
が合一した二次粒子に成長させることにより、相当径15
〜60μmの二次粒子が面積率で5〜90%になるようにす
る方法である。この方法の場合、固体潤滑剤の粉末の平
均粒径は 0.5〜15μmの範囲が好ましく、より好ましく
は1〜10μmである。粉末の凝集の程度 (即ち、二次粒
子の粒子径) は、溶媒の量および/または塗布液の粘度
と静置時間とで調整することができる。つまり、溶媒の
量が多く、粘度が低いほど、静置中に凝集が進み易い。
もちろん、静置時間が長くなると、凝集が進行する。
るために、粉末が可及的に均一に分散した塗布液を使用
する、つまり、攪拌直後の塗布液を塗布するのが好まし
いとされてきたが、本発明では、逆に静置させて、固体
潤滑剤の粉末を凝集させてから塗布に使用する。
滑剤との体積比にも依存する。即ち、被膜中の固体潤滑
剤の粉末が全て相当径15〜60μmの二次粒子になってい
れば、前記面積率は、結合剤と固体潤滑剤との合計体積
率に対する固体潤滑剤の体積率で近似できる。その場
合、結合剤と固体潤滑剤の合計体積率に対する固体潤滑
剤の体積率が5〜90%になるように塗布液を調製するこ
とにより、前記面積率が5〜90%の固体潤滑被膜を形成
することができる。ただし、全ての固体潤滑剤が相当径
15〜60μmの二次粒子に成長しない場合もあるので、そ
のような場合には、凝集の程度を考慮して、前記体積率
での添加量を目的とする面積率より多くすればよい。
m以下とすることが望ましい。固体潤滑被膜に含まれる
固体潤滑剤は、高い面圧を受けて接触面全体に広がり、
優れた耐焼付き性を発揮するものであるが、固体潤滑被
膜の厚さが5μm未満では固体潤滑剤の含有量が少なく
なり、潤滑性向上の効果が少なくなることがある。固体
潤滑被膜の厚さが50μmより大きくなると、締付け量が
不十分となって気密性が低下したり、気密性を確保する
ために面圧を高めると焼付きが発生し易くなったり、固
体潤滑被膜が剥離し易くなることがある。耐焼付き性の
観点からより好ましくは、固体潤滑被膜の厚さは、15μ
m以上、40μm以下である。
接触表面は、普通に切削したままでは、表面粗さがRma
x で3〜5μm程度と小さいため、その上に形成された
固体潤滑被膜の密着性が低下することがある。被膜の密
着性を向上させるには、接触表面を粗面化した表面粗さ
をより大きくすることが望ましい。
ッドを投射する方法、硫酸、塩酸、硝酸、フッ酸などの
強酸液に浸漬し肌を荒らす方法といった、表面それ自体
の粗さを大きくする方法に加え、接触表面の上に粗面の
下地処理層を形成する方法がある。即ち、接触表面と固
体潤滑被膜との間に下地処理層を介在させる。
酸マンガン、燐酸亜鉛、燐酸鉄マンガン、燐酸亜鉛カル
シウムなどの燐酸塩系化成処理被膜(生成する結晶の成
長に伴い、結晶表面の粗さが増す)、銅めっきまたは鉄
めっきのような電気めっき被膜(凸部が優先してめっき
されるため、僅かであるが表面が粗くなる)、鉄芯に亜
鉛または亜鉛−鉄合金等を被覆した粒子を遠心力または
エアー圧を利用して投射する乾式衝撃めっきにより形成
した亜鉛または亜鉛−鉄合金の被膜、などが挙げられ
る。
の粗面化方法のうち、下地処理層として多孔質被膜層を
形成する方法が好ましい。具体的には、燐酸塩系化成処
理被膜や、乾式衝撃めっきにより形成した亜鉛もしくは
亜鉛−鉄合金の被膜が多孔質被膜である。このような多
孔質被膜を下地として、その上に固体潤滑被膜層を形成
すると、固体潤滑被膜の密着性が高まるので、固体潤滑
被膜の性能が最大限に生かされ、コンパウンドグリスを
使用しなくても、優れた耐焼付き性、気密性が得られ
る。
または無機高分子を結合剤とする固体潤滑被膜を形成す
ることにより、下地の多孔質被膜の空隙が封鎖され、防
錆性や気密性が一層高まる。さらに、この多孔質被膜層
が乾式衝撃めっきによって形成された亜鉛−鉄合金被膜
であると、亜鉛は鉄より卑な金属であるため、鉄より優
先的にイオン化して、鉄の腐食を防ぐ犠牲防食能を発揮
するため、格段に優れた防錆性、気密性を実現すること
ができる。
膜を形成する接触表面の表面粗さをRmax で5〜40μm
としておくことが好ましい。5μm未満では、固体潤滑
被膜の密着性を確保できないことがある。一方、表面粗
さがRmax で40μmを超えると、気密性の確保が難しく
なることや固体潤滑被膜表面にまで粗面化の影響が及
び、接触時の摩擦が高くなり、耐焼付き性の確保が困難
になることがある。
その膜厚には特に制約はないが、防錆性と密着性の観点
から5〜40μmであることが好ましい。5μm未満で
は、十分な防錆性が確保できないことがある。一方、40
μmを超えると、固体潤滑被膜との密着性が低下するこ
とがある。
クスの一方の接触表面に形成するだけで本発明の目的は
十分に達成できるので、コスト面からは、これらのいず
れか一方だけに形成することが有利である。その場合、
ボックスの方が被膜の形成作業、特に加熱が容易であ
る。固体潤滑被膜を形成しない他方の部材(好ましくは
ピン)の接触表面は、未被覆のままでもよい。特に、図
1のように、組立て時にピンとボックスが仮に締付けら
れる場合には、他方の部材、例えば、ピンの接触表面が
裸(切削加工まま)でも、組立て時にボックスの接触表
面に形成された被膜と密着するので、ピンの接触表面の
錆びも防止できる。
ンだけにボックスが取り付けられると、他端のピンは露
出したままとなる。そのため、特にこのような露出する
ピンに対して防錆性、あるいは防錆性と潤滑性を付与す
るために、適当な表面処理を施して被膜を形成するか、
および/または適当なプロテクタを装着して保護するこ
とができる。もちろん、他方の接触表面が露出しない場
合でも、この表面に被膜を形成してもよい。
手は、コンパウンドグリスを塗布せずに締付けられる
が、所望により、固体潤滑被膜や相手部材の接触表面に
油を塗布してもよい。その場合、塗布する油に特に制限
はなく、鉱物油、合成エステル油、動植物油などのいず
れも使用できる。この油には、防錆添加剤、極圧添加剤
といった、潤滑油に慣用の各種添加剤を添加することが
できる。また、それらの添加剤が液体である場合、それ
らの添加剤を単独で油として使用し、塗布することもで
きる。
ート、塩基性金属フェネート、塩基性金属カルボキシレ
ートなどが用いられる。極圧添加剤としては、硫黄系、
リン系、塩素系、有機金属塩など公知のものが使用でき
る。その他、酸化防止剤、流動点降下剤、粘度指数向上
剤なども油に添加することができる。
鋼Cまたは高合金鋼Dからなる鋼管(外径:7インチ<1
78 mm>、肉厚:0.408 インチ<10.4 mm>)のねじ継手のピ
ンおよびボックスの接触表面に、表2に示す表面処理
(下地処理と場合により固体潤滑被膜の形成) を施し
て、接触表面に固体潤滑被膜を有する実施例および比較
例のねじ継手を作製した。
触表面に固体潤滑被膜を形成したねじ継手を用いて、締
付け速度10 rpm、締付けトルク10340 ft・lbs で最大20
回の締付け・緩めの作業を行い、焼付き発生状況を調査
した。いずれも、5回目までは焼付きを発生しなかった
ため、表3に6回目以降の焼付き発生状況ならびに錆発
生状況を示す。
下記の表面処理を施した。ボックスの接触表面は、#80
番のサンドを吹き付ける下地処理により、表面粗さを10
μmとした後、その上に二硫化モリブデンを含有するポ
リアミドイミド樹脂からなる、厚さ25μmの固体潤滑被
膜を形成した。
50:50、65質量%)にポリアミドイミド樹脂と体積率80
% (樹脂と粉末の合計量に対する粉末の体積率、以下同
じ)の平均粒径12μmの二硫化モリブデン粉末を投入
し、攪拌した後、静置して、二硫化モリブデン粉末を凝
集させた。この塗布液をボックスの接触表面に塗布した
後、雰囲気炉内で大気中260 ℃に30分加熱して、塗膜を
乾燥・硬質化させ、固体潤滑被膜を形成した。
方向断面における相当径15〜60μmの二硫化モリブデン
の面積率は80%、即ち、上記体積率と同じであることを
確認した。従って、投入した粉末の実質的に全てが凝集
により15〜60μmの二次粒子になっていた。
粗さ2μm)のみとした。表3に示したように、締付け
・緩め試験では、18回目までは焼付きの発生は無く、19
回以降は軽度の焼付きが発生したが、手入れにより20回
まで締付け・緩めができた。
に下記の表面処理を施した。ボックスの接触表面は、機
械研削仕上げ(表面粗さ2μm)後、膜厚25μmの燐酸
マンガン化成処理被膜を形成する下地処理を行った後、
その上に二硫化モリブデンを含有するポリアミドイミド
樹脂からなる、厚さ25μmの固体潤滑被膜を形成した。
50:50、83質量%)にポリアミドイミド樹脂と平均粒径
3.5 μmの二硫化モリブデン粉末 (体積率80%) を投入
し、攪拌した後、静置して二硫化モリブデン粉末を凝集
させた。この塗布液をボックスの接触表面に塗布した
後、雰囲気炉内で大気中260 ℃に30分加熱して、塗膜を
乾燥・硬質化させ、固体潤滑被膜を形成した。被膜分析
の結果、この固体潤滑被膜の厚み方向断面における相当
径15〜60μmの二硫化モリブデン粒子の面積率は80%で
あることを確認した。
さ2μm)のみとした。表3に示したように、締付け・
緩め試験では、19回目までは焼付きの発生はく、20回目
に軽度の焼付きが発生したたものの、20回まで締付け・
緩めができた。
手に下記の表面処理を施した。ボックスの接触表面は、
機械研削仕上げ(表面粗さ3μm)後、膜厚20μmの燐
酸マンガン化成処理被膜を形成する下地処理を行った
後、その上に二硫化タングステンを含有するエポキシ樹
脂からなる、厚さ20μmの固体潤滑被膜を形成した。
クロヘキサノン=50:50、68質量%)にエポキシ樹脂と
平均粒径2.0 μmの二硫化タングステン粉末 (体積率80
%)を投入し、攪拌した後、静置して二硫化タングステ
ン粉末を凝集させた。この塗布液をボックスの接触表面
に塗布した後、雰囲気炉内で大気中230 ℃に30分加熱し
て、塗膜を乾燥・硬化させ、固体潤滑被膜を形成した。
被膜分析の結果、この固体潤滑被膜の厚み方向断面にお
ける相当径15〜60μmの二硫化タングステン粒子の面積
率は80%であることを確認した。
さ2μm)のみとした。表3に示したように、締付け・
緩め試験では、19回目までは焼付きの発生は無く、20回
目に軽度の焼付きが発生したものの、20回まで締付け・
緩めができた。
手に下記の表面処理を施した。ボックスの接触表面は、
機械研削仕上げ(表面粗さ3μm)後、乾式衝撃めっき
により6μmの亜鉛−鉄合金層を形成する下地処理を行
った後、その上に黒鉛を含有するフェノール樹脂からな
る、厚さ30μmの固体潤滑被膜を形成した。
ドン:キシレン=65:35、70質量%)にフェノール樹脂
と平均粒径1.0 μmの黒鉛粉末 (体積率60%) を投入
し、攪拌した後、静置して黒鉛粉末を凝集させた。この
塗布液をボックスの接触表面に塗布した後、雰囲気炉内
で大気中170 ℃に30分加熱して、塗膜を乾燥・硬化さ
せ、固体潤滑被膜を形成した。被膜分析の結果、この固
体潤滑被膜の厚み方向断面における相当径15〜60μmの
黒鉛粒子の面積率は60%であることを確認した。
さ2μm)のみとした。表3に示したように、締付け・
緩め試験では、20回まで焼付きの発生は無く、極めて良
好であった。
継手に下記の表面処理を施した。ボックスの接触表面
は、機械研削仕上げ(表面粗さ3μm)後、乾式衝撃め
っきにより5μmの亜鉛−鉄合金層を形成する下地処理
を行った後、その上に二硫化モリブデンを含有するポリ
アミドイミド樹脂からなる、厚さ28μmの固体潤滑被膜
を形成した。
50:50、85質量%)にポリアミドイミド樹脂と平均粒径
1.5 μmの二硫化モリブデン粉末 (体積率80%) を投入
し、攪拌した後、静置して二硫化モリブデン粉末を凝集
させた。この塗布液をボックスの接触表面に塗布した
後、雰囲気炉内で大気中260 ℃に30分加熱して、塗膜を
乾燥・硬質化させ、固体潤滑被膜を形成した。被膜分析
の結果、この固体潤滑被膜の厚み方向断面における粒径
15〜60μmの二硫化モリブデン粒子の面積率で80%であ
ることを確認した。
粗さ3μm)後、乾式衝撃めっきにより5μmの亜鉛層
を形成する下地処理を行った後、その上に二硫化モリブ
デン粉末(平均粒径15μm)を含有するTi−O を骨格と
する無機高分子からなる厚さ12μmの固体潤滑被膜を形
成した。溶媒は、キシレン、ブチルアルコール、シクロ
へキサンを20:10:30で混合した混合溶媒を使用し、溶
媒70質量%に、固形分として結合剤のチタンテトライソ
プロポキシドのTiO2換算量と上記固体潤滑剤とを合計30
質量%の割合 (結合剤と固体潤滑剤の合計量に対する固
体潤滑剤の体積率55%) で混合し、静置し、潤滑性粉末
を凝集させた塗布液を用いた。塗布後に塗膜を大気中で
3時間放置した後、150 ℃の熱風を10分間吹き付けて塗
膜を硬化させた。被膜分析の結果、この固体潤滑被膜の
断面において無機高分子中の相当径15〜60μmの二硫化
モリブデン粒子の面積率は50%であることを確認した。
は、20回まで焼付きの発生は無く、極めて良好であっ
た。
に下記の表面処理を施した。ピンの接触表面は、機械研
削仕上げ(表面粗さ3μm)後、膜厚15μmの燐酸亜鉛
化成処理被膜を形成する下地処理を行った後、その上に
二硫化モリブデン粉末(平均粒径12μm)を含有するTi
−O を骨格とする無機高分子からなる、厚さ10μmの固
体潤滑被膜を形成した。溶媒は、キシレン、ブチルアル
コール、シクロヘキサンを20:10:30で混合した混合溶
媒を使用し、溶媒70質量%に、固形分として結合剤のチ
タンテトライソプロポキシドのTiO2換算量と上記固体潤
滑剤とを合計30質量%の割合 (結合剤と固体潤滑剤の合
計量に対する固体潤滑剤の体積率40%) で混合し、静置
し、潤滑性粉末を凝集させた塗布液を用いた。塗布後に
塗膜を大気中で3時間放置した後、150 ℃の熱風を10分
間吹き付けて塗膜を硬化させた。被膜分析の結果、この
固体潤滑被膜の断面において無機高分子中の相当径15〜
60μmの二硫化モリブデン粒子の面積率は40%であるこ
とを確認した。
(表面粗さ3μm)のみとした。表3に示したように、
締付け・緩め試験では、19回目までは焼付きの発生は無
い。20回目に軽度の焼付きが発生したが、20回まで締付
け・緩めができた。
に下記の表面処理を施した。ボックスの接触表面は、機
械研削仕上げ(表面粗さ3μm)後、その表面に膜厚25
μmの燐酸マンガン化成処理被膜を形成する下地処理を
行った後、その上に窒化硼素(平均粒径6μm)を含有
するTi−O を骨格とする無機高分子からなる、厚さ15μ
mの固体潤滑被膜を形成した。溶媒は、キシレン、ブチ
ルアルコール、シクロへキサンを20:10:30で混合した
混合溶媒を使用し、溶媒70質量%に、固形分として結合
剤のチタンテトライソプロポキシドのTiO2換算量と上記
固体潤滑剤とを合計30質量%の割合 (結合剤と固体潤滑
剤の合計量に対する固体潤滑剤の体積率20%) で混合
し、静置し、潤滑性粉末を凝集させた塗布液を用いた。
塗布後に塗膜を大気中で3時間放置した後、150 ℃の熱
風を10分間吹き付けて塗膜を硬化させた。被膜分析の結
果、この固体潤滑被膜の断面において無機高分子中の相
当径15〜60μmの窒化硼素粒子の面積率は10%であるこ
とを確認した。
粗さ3μm)のみとした。表3に示したように、締付け
・緩め試験では、表3の17回目までは焼付きの発生は無
かった。18回以降は軽度の焼付きが発生したが、手入れ
により20回まで締付け・緩めができた。
に以下の表面処理を施した。ボックスの接触表面は、機
械研削仕上げ(表面粗さ3μm)後、その表面に膜厚20
μmの燐酸マンガン化成処理被膜を形成する下地処理を
行った後、その上にPTFEを含有するポリアミドイミド樹
脂からなる、厚さ30μmの固体潤滑被膜を形成した。塗
布液は、溶媒(エタノール:トルエン=50:50、85質量
%)にポリアミドイミド樹脂とPTEF粉末 (平均粒径1.0
μm)(体積率90%) を投入し、攪拌した後、静置してPT
FE粉末を凝集させた。この塗布液をボックスの接触表面
に塗布した後、雰囲気炉内で大気中260 ℃に30分加熱し
て、塗膜を乾燥・硬質化させ、固体潤滑被膜を形成し
た。被膜分析の結果、この固体潤滑被膜の厚み方向断面
における相当径15〜60μmのPTFE粒子の面積率は88%で
あることを確認した。
粗さ3μm)のみとした。表3に示したように、締付け
・緩め試験では、表6の18回目までは焼付きの発生は無
い。19回以降は軽度の焼付きが発生したが手入れにより
20回まで締付け・緩めができた。
に下記の表面処理を施した。ボックスの接触表面は、機
械研削仕上げ(表面粗さ3μm)後、化成処理により18
μmの燐酸マンガン被膜を形成する下地処理を行った
後、その上に二硫化モリブデンを含有するポリアミドイ
ミド樹脂からなる、厚さ30μmの固体潤滑被膜を形成し
た。塗布液は、溶媒(エタノール:トルエン=50:50、
50質量%)にポリアミドイミド樹脂と平均粒径3.2 μm
の二硫化モリブデン粉末 (体積率80%)を投入し、十分
に攪拌した後、静置せずに直ちに塗布に使用し、二硫化
モリブデン粉末を凝集させないようにした。塗布後、26
0 ℃で30分の加熱硬化処理を実施した。被膜分析の結
果、形成された固体潤滑被膜断面に相当径15〜60μmの
二硫化モリブデンは存在しないことを確認した。
粗さ3μm)のみとした。表3に示したように、締付け
・緩め試験では、8回目までは焼付きの発生は無かっ
た。しかし、9 〜10回目に軽度の焼付きが発生したた
め、手入れをしながら試験を続けたが、11回目で激しい
焼付きを発生したため試験を終了した。固体潤滑被膜中
には平均粒径3.2 μmの二硫化モリブデンが凝集せずに
存在し、焼付き防止に効果のある平均粒径15〜60μmの
二硫化モリブデン粒子が存在しないと、耐焼付き性が不
十分になった。
に下記の表面処理を施した。ボックスの接触表面は、機
械研削仕上げ(表面粗さ3μm)後、化成処理により20
μmの燐酸マンガン被膜を形成する下地処理を行った
後、その上に二硫化モリブデンを含有するポリアミドイ
ミド樹脂からなる、厚さ28μmの固体潤滑被膜を形成し
た。塗布液は、溶媒(エタノール:トルエン=50:50、
28質量%)にポリアミドイミド樹脂と平均粒径4.0 μm
の二硫化モリブデン粉末 (体積率5%)を投入し、攪拌
した後、静置して二硫化モリブデン粉末を凝集させた。
この塗布液をボックスの接触表面に塗布した後、雰囲気
炉内で大気中260 ℃に30分加熱して、塗膜を乾燥・硬質
化させ、固体潤滑被膜を形成した。
方向断面における相当径15〜60μmの二硫化モリブデン
粒子の面積率は3%であることを確認した。ピンの接触
表面は、機械研削仕上げ(表面粗さ3μm)のみとし
た。
は、6回目までは焼付きの発生は無かった。しかし、7
〜8回目に軽度の焼付きが発生したため、手入れを続け
たが、9回目で激しい焼付きを生じたため試験を終了し
た。固体潤滑被膜中に平均粒径15〜60μmの二硫化モリ
ブデンが少ないと耐焼付き性が不十分となった。
に下記の表面処理を施した。ボックスの接触表面は、機
械研削仕上げ(表面粗さ3μm)後、化成処理により22
μmの燐酸マンガン被膜を形成する下地処理を行った
後、その上に二硫化モリブデンを含有するポリアミドイ
ミド樹脂からなる、厚さ25μmの固体潤滑被膜を形成し
た。塗布液は、溶媒(エタノール:トルエン=50:50、
80質量%)にポリアミドイミド樹脂と平均粒径7.0 μm
の二硫化モリブデン粉末 (体積率95%)を投入し、攪拌
した後、静置して二硫化モリブデン粉末を凝集させた。
この塗布液をボックスの接触表面に塗布した後、雰囲気
炉内で大気中260 ℃に30分加熱して、塗膜を乾燥・硬質
化させ、固体潤滑被膜を形成した。
方向断面における相当径15〜60μmの二硫化モリブデン
粒子の面積率は95%であることを確認した。ピンの接触
表面は、機械研削仕上げ(表面粗さ3μm)のみとし
た。
は、表6の5回目までは焼付きの発生は無かった。しか
し、6〜7回目に軽度の焼付きが発生したため、手入れ
を続けたが、8回目で激しい焼付きを生じたため試験を
終了した。固体潤滑被膜中において平均粒径15〜60μm
の二硫化モリブデンが95%と過剰に存在するため、固体
潤滑被膜の強度と密着性が極端に低下し、耐焼付き性が
不足したものと考えられる。
用ねじ継手は、コンパウンドグリスなどの重金属粉を含
む液体潤滑剤を用いることなく、繰返しの締付け・緩め
の際の焼付きの発生を安定して確実に抑制することがで
きる。
模式的に示す概要図である。
示す概要図である。
き性との関係を示す概要図である。
剤の面積率と耐焼付き性との関係を示す概要図である。
クス、3:ねじ部、4:ねじ無し金属接触部、5:ショ
ルダー部。
Claims (5)
- 【請求項1】 ねじ部とねじ無し金属接触部とを含む接
触表面をそれぞれ有するピンおよびボックスから構成さ
れる鋼管用ねじ継手であって、 ピンおよびボックスの少なくとも一方の接触表面に、固
体潤滑剤と結合剤とからなる固体潤滑被膜を有し、固体
潤滑被膜の厚み方向断面において、固体潤滑剤の等面積
相当径15〜60μmの二次粒子が占める面積率が5〜90%
であることを特徴とする鋼管用ねじ継手。 - 【請求項2】 固体潤滑剤が二硫化モリブデン、二硫化
タングステン、有機モリブデン化合物、黒鉛、窒化ホウ
素、およびポリテトラフルオロエチレンから選ばれた1
種または2種以上である請求項1記載の鋼管用ねじ継
手。 - 【請求項3】 結合剤が有機樹脂または無機高分子であ
る請求項1または2記載の鋼管用ねじ継手。 - 【請求項4】 前記固体潤滑被膜と前記接触表面との間
に、下地処理層として多孔質被膜層を有する請求項1〜
3のいずれかに記載の鋼管用ねじ継手。 - 【請求項5】 多孔質被膜層が、燐酸塩化成処理被膜ま
たは亜鉛もしくは亜鉛合金被膜である請求項4記載の鋼
管用ねじ継手。
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