JP2003019564A - アルミニウムまたはアルミニウム系合金のアーク溶接用シールドガス及びアーク溶接方法 - Google Patents
アルミニウムまたはアルミニウム系合金のアーク溶接用シールドガス及びアーク溶接方法Info
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Abstract
アルミニウム系合金のアーク溶接用シールドガス及びア
ーク溶接方法を提供する。 【解決手段】 アルミニウムおよびアルミニウム系合金
のアーク溶接に用いられるシールドガスにおいて、アル
ゴンまたはヘリウムガス単体に、もしくはアルゴンとヘ
リウムとの混合ガスに1〜40体積%の窒素を添加し
た。
Description
アルミニウム合金の深溶込み溶接に優れたアーク溶接方
法およびアーク溶接用シールドガスに関する。
活性ガスに他の成分を添加することにより純粋不活性ガ
ス下での溶接に比べて溶接過程及び溶接結果が改良さ
れ、しかも有害な副効果を引き起こさないアルミニウム
のア−ク溶接用のアルゴン、又はアルゴン/ヘリウム混
合物をベ−スとする保護ガスが開示されている。この保
護ガスには窒素80〜250vpmが添加されている。
−513742号の明細書等)には、WIG溶接および
アルミニウムのMIG溶接に使用されるア−ク溶接用保
護ガスが記載されている。この従来技術では、アーク溶
接用保護ガスとして、可能な限り純粋なアルゴンを用い
るか、または可能な限り純粋なアルゴンとヘリウムから
なる混合物を用いることとし、溶接工程および溶接結果
を改善する目的のために、これらの不活性ガスに80〜
250vpm、とくに120〜180vpmの亜酸化窒
素が添加されている。
従来技術のいずれも窒素添加量が少ないので、アーク安
定性および集中性が低く、溶込み深さが不足して融合不
良を引き起こす場合がある。そこで、従来方法では溶込
み深さを確保するために溶接電流を高くするか、もしく
は溶接速度を遅くするが、これにより溶接入熱量が大き
くなり、ワーク変形量が増大する。
れたものであって、深溶込み溶接性に優れたアルミニウ
ムまたはアルミニウム系合金のアーク溶接用シールドガ
ス及びアーク溶接方法を提供することを目的とする。
ムまたはアルミニウム系合金のアーク溶接用シールドガ
スは、アルゴンまたはヘリウムガス単体、もしくはアル
ゴンとヘリウムとの混合ガスに1〜40体積%の窒素ガ
スを添加したことを特徴とする。
溶け込み効果がほとんど得られなくなるので、その下限
値を1体積%とした。一方、窒素ガス添加量が40体積
%を超えると、アークが不安定となり,ビード外観が不
良になるので、その上限値を40体積%とした。
とすることがより好ましい。窒素ガス添加量を20体積
%より大きくすると溶接金属内部に粗大な窒化物が発生
しやすくなり、肉厚や使用条件によっては靭性が不十分
になるからである。一方、窒素ガス添加量が5体積%未
満になると溶込みが低下するからである。
ウム系合金のアーク溶接方法は、アルゴンまたはヘリウ
ムガス単体に、もしくはアルゴンとヘリウムとの混合ガ
スに5〜40体積%の窒素を添加したガスを用いて、ア
ーク溶接装置で予め設定しておいた駆動電力によって電
極と母材との間にアークを発生させ、該母材を深く溶け
込ますことを特徴とする。
とすることがより好ましい。
長さを2mm以下に維持すると、アークが母材内部にま
で発生する「埋もれアーク状態」となるため、さらによ
り好ましい。
発明の好ましい実施の形態について説明する。
保持された母材12にアーク14を作用させるアーク溶
接装置2と、溶接部分近傍に所定のシールドガス13を
供給し、この溶接部分近傍を所定ガス雰囲気下にするガ
ス供給装置3とを備えている。
2に近接して設けられた溶接トーチ4と、この溶接トー
チ4から突出する溶接電極(ワイヤ)5と、溶接トーチ
4にワイヤ5を連続的に送給可能なワイヤ送給装置7
と、ワイヤ5及びワイヤ送給装置7に電力を供給する駆
動電源6と、この駆動電源6と母材12とを連結する給
電ケーブル8と、この給電ケーブル8に設けられた電流
計9及び電圧計10とを備えている。
接装置によって構成されているが、これをTIG溶接等
の他のアーク溶接装置によって構成することも可能であ
る。
6N01、ワイヤ5は直径1.2mmのアルミニウム合
金A5356を使用した。
ガス13を供給し、この溶接部近傍をシールドガス13
の雰囲気とするものである。ガス供給装置3は、シール
ドガス13を収容したガス収容部(シールドガスボン
ベ)3aと、このシールドガスボンベ3aと溶接トーチ
4とを接続する配管3bとを備えている。そして、シー
ルドガス13は、溶接トーチ4から溶接部分に供給され
るようになっており、溶接部分近傍はこのシールドガス
13によってシールドされる。なお、溶接部分近傍をシ
ールドボックスで囲み、このシールドボックス内にシー
ルドガス13を供給する構成とすることも可能である。
素添加量をゼロから60体積%までの範囲で種々変えた
ものである。
溶接を行った場合、アーク14は母材12の内部(深
部)で発生可能となる。すなわち、通常のアーク溶接で
は、アーク14は母材12の表面よりも出た状態となる
が、シールドガス13として上記所定ガスを用いるとと
もに所定の条件下(所定の駆動電力)で溶接を行うこと
により、母材12の内部でアーク14を発生させること
ができる。ここで、母材12内部にアーク14が発生す
る状態を「埋もれアーク状態」と称することとする。ま
た、母材12内部にまでアーク14が発生しない状態を
「オープンアーク状態」と称することとする。このよう
な「埋もれアーク状態」となる溶接条件を把握すること
により、アルミニウムの深溶込み溶接が可能になる。
ガス単体とし、ワイヤ径1.2mmのアルミニウム合金
A5356を用いて、板厚8mmのアルミニウム合金A6
N01を溶接電流230A、アーク電圧19V、溶接速
度3m/分の条件で上記の溶接機1により溶接したアル
ミニウム溶接部を示す金属組織写真である。また、図1
の(b)は、シールドガスをアルゴンに10体積%の窒
素を添加した混合ガス(Ar+10体積%N2)とし、
他の条件は上記(a)と同じにして溶接したアルミニウ
ム溶接部を示す金属組織写真である。図1の(a)と
(b)を比較してみると、後者では前者の2倍以上の溶
け込み深さとなった。
定の条件は、使用するシールドガス13の種類やアーク
の駆動電源の出力に応じて変化するものであるので、予
め実証試験によって得ることが可能である。この所定条
件を設定するための実証試験結果の一例を図3に示す。
軸にアーク電圧(V)をとって、シールドガスとしてア
ルゴンに10体積%の窒素を添加した混合ガス(Ar+
10体積%N2)を用いてワイヤ送給速度を種々変えた
場合の溶接電流とアーク電圧との相関を示す特性線図で
ある。この場合は、板厚さ8mmの平板上に溶接ビード
をおく平板溶接を行った。図中にて特性線Aはワイヤ送
給速度を14.1m/分としたときの電流電圧特性を、
特性線Bはワイヤ送給速度を15.6m/分としたとき
の電流電圧特性を、特性線Cはワイヤ送給速度を17.
1m/分としたときの電流電圧特性をそれぞれ示す相関
曲線である。
斜線領域では埋もれアーク状態の生成が確認された。ち
なみに、図中の丸(○)はアーク長さが2mm以下とな
り「埋もれアーク状態」となったサンプルを、四角
(□)はアーク長さが2mm超となり「オープンアーク
状態」となったサンプルを、バツ(×)はビード外観が
不良となったサンプルをそれぞれプロットした。なお、
前記「アーク長さ」とは、電極先端から母材表面までの
距離を称する。
やアーク駆動電力をはじめとする溶接時における様々な
条件によって、埋もれアーク状態が生成されるか否かが
決定される。
nのときには、アーク電圧が19Vを超える領域では埋
もれアーク状態からオープンアーク状態に移行するの
で、深い溶け込みは得られなくなる。また、アーク電圧
が15Vを下回る領域ではアークが不安定になるので、
ビード外観が不良となる。
であって、使用するシールドガス13やアーク溶接装置
2の種類によって、あるいはアーク電圧によって埋もれ
アーク状態の生成領域は異なるので、予め実験によって
最適な条件を求めておく必要がある。予備実験を行うこ
とにより埋もれアーク状態が生成されるか否かの条件を
予め把握しておき、この条件に基づいて製造ラインの溶
接機を制御することにより実際の製品を高品質に製造す
ることができるようになる。
り、縦軸に溶け込み深さ(mm)をとって、シールドガ
ス中の窒素ガス混合量に対する溶込み深さの変化をそれ
ぞれ示す特性線図である。溶接電流を230A、アーク
電圧を19V、溶接速度を3m/分、ワイヤ送給速度を
15.6m/分とする条件下で、シールドガスの窒素混
合量をゼロから60体積%までの間で種々変化させて板
厚8mmの平板溶接を行った。図中にて特性線R1は溶
込み深さ/窒素混合量の関係を示す相関曲線である。ま
た、図中にて破線Fは、ビード外観の良好と不良との境
界を示す臨界線である。この臨界線Fよりも図中の右側
領域(窒素混合量が過大な領域)に斜線を施して示した
が、この斜線領域ではビード外観が不良になることが判
明した。
13の窒素添加量に応じて溶け込み深さは変化する。例
えば、窒素添加量を10体積%としたもの(Ar+10
体積%N2)と窒素添加量ゼロとしたもの(純アルゴン
ガス)とを比較してみると、前者の溶け込み深さは後者
のそれの約2倍に増加する結果となった。さらに、ビー
ド外観においても良好であった。これらのことからアル
ゴンガスに10体積%の窒素ガスを添加することにより
アルミニウムの深溶け込み溶接が可能になることが判明
した。
り、縦軸に曲げ角度(°)および最大窒化物長さ(m
m)をとって、シールドガス中の窒素ガス混合量に対す
る曲げ角度および最大窒化物長さの変化をそれぞれ示す
特性線図である。溶接電流を230A、アーク電圧を1
9V、溶接速度を3m/分、ワイヤ送給速度を15.6
m/分とする条件下で、シールドガスの窒素混合量をゼ
ロから40体積%までの間で種々変化させて板厚8mm
の平板溶接を行った。
素混合量の関係を、特性線R3は曲げ角度/窒素混合量
の関係をそれぞれ示す相関曲線である。また、図中にて
破線Gは、曲げ延性の良好と不良との境界を示す臨界線
である。この臨界線Gよりも図中の右側領域(窒素混合
量が過大な領域)に斜線を施して示したが、この斜線領
域では粗大窒化物が発生し、曲げ延性が不良になること
が判明した。
%より更に大きくすると、溶接金属内部に粗大な窒化物
が発生し、曲げ延性が低下するようになる。すなわち、
隅肉継手のような曲げ延性が必要でなく、深い溶込みを
得たい場合は、窒素ガス添加量の上限値は40体積%と
することが肝要である。一方、突合せ継手のような曲げ
延性が必要な継手では窒素ガス添加量の上限値は20体
積%とすることが肝要である。一方、窒素ガスの添加量
が5体積%未満になると、母材の溶込みが極端に低下す
るので、その下限値は5体積%とする。したがって窒素
ガスの添加量は5体積%以上20体積%以下の範囲とす
ることが望ましい。
アルゴンに窒素を添加した2種混合ガスを用いた場合に
ついて説明したが、本発明はこれのみに限られることな
く、ヘリウムガス単体に窒素を添加した2種混合ガス、
アルゴンの一部をヘリウムに置き換えた3種混合ガスを
シールドガスに用いた場合も同様の深溶け込み効果が得
られる。He+N2からなる2種混合ガスをシールドガ
スとして用いる場合は、He:N2=80〜95:5〜
20の体積比率で混合することが望ましい。
シールドガスとして用いる場合は、Ar:He:N2=
5〜65:30〜75:5〜20の体積比率で混合する
ことが望ましい。
01を用いた場合について説明したが、これに限定され
るものではなく、溶接対象(母材)はアルミニウムまた
はアルミニウム系合金であればよい。
りアルミニウムおよびアルミニウム合金のミグ、ティグ
等のアーク溶接においてアークの集中性が向上し、深溶
け込み溶接が可能となる。その結果、高速かつ低歪みの
アルミニウム溶接が可能となる。
(b)は本発明の溶接部を示す金属組織写真。
られる装置の概要を示すブロック構成図。
て埋もれアーク状態になる溶接条件を示す特性線図。
図。
関係を示す特性線図。
Claims (5)
- 【請求項1】 アルゴンまたはヘリウムガス単体に、も
しくはアルゴンとヘリウムとの混合ガスに1〜40体積
%の窒素を添加したことを特徴とするアルミニウムまた
はアルミニウム系合金のアーク溶接用シールドガス。 - 【請求項2】 窒素の添加量を5〜20体積%とするこ
とを特徴とする請求項1記載のアルミニウムまたはアル
ミニウム系合金のアーク溶接用シールドガス。 - 【請求項3】 アルミニウムまたはアルミニウム系合金
のアーク溶接方法において、アルゴンまたはヘリウムガ
ス単体に、もしくはアルゴンとヘリウムとの混合ガスに
1〜40体積%の窒素を添加したガスを用いて、アーク
溶接装置で予め設定しておいた駆動電力によって電極と
母材との間にアークを発生させ、該母材を深く溶け込ま
すことを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム系
合金のアーク溶接方法。 - 【請求項4】 窒素の添加量を5〜20体積%とするこ
とを特徴とする請求項3に記載のアルミニウムまたはア
ルミニウム系合金のアーク溶接方法。 - 【請求項5】 前記電極先端から前記母材表面までのア
ーク長さが2mm以下に維持されていることを特徴とす
る請求項3または請求項4に記載のアルミニウムまたは
アルミニウム系合金のアーク溶接方法。
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