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JP2003041322A - 磁気特性及び被膜特性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

磁気特性及び被膜特性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法

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Publication number
JP2003041322A
JP2003041322A JP2001234938A JP2001234938A JP2003041322A JP 2003041322 A JP2003041322 A JP 2003041322A JP 2001234938 A JP2001234938 A JP 2001234938A JP 2001234938 A JP2001234938 A JP 2001234938A JP 2003041322 A JP2003041322 A JP 2003041322A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
annealing
grain
steel sheet
electrical steel
decarburization
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2001234938A
Other languages
English (en)
Inventor
Takashi Suzuki
隆史 鈴木
Toshito Takamiya
俊人 高宮
Koichi Hirashima
浩一 平嶋
Toshiro Fujiyama
寿郎 藤山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kawasaki Steel Corp filed Critical Kawasaki Steel Corp
Priority to JP2001234938A priority Critical patent/JP2003041322A/ja
Publication of JP2003041322A publication Critical patent/JP2003041322A/ja
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  • Manufacturing Of Steel Electrode Plates (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 コイルの全幅及び全長にわたって、磁気特性
が良好で、かつ欠陥のない均一で密着性の優れたフォル
ステライト質絶縁被膜を有する方向性電磁鋼板を提供す
る。 【解決手段】 方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭
焼鈍工程において、均熱過程における雰囲気酸化度(P
[H2O]/P[H2])を0.70未満とし、かつ昇温過程における
P[H2O]/P[H2]を均熱過程のP[H2O]/P[H2]よりも低い
値とし、さらに脱炭焼鈍雰囲気中の水素濃度を 20vol%
以上とする。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、磁気特性及び被膜特
性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法に関し、特に脱炭
焼鈍工程に工夫を加えることによって、磁気特性及びフ
ォルステライト質絶縁被膜特性の有利な改善を図ろうと
するものである。 【0002】 【従来の技術】方向性電磁鋼板は、軟磁性材料として、
主に変圧器あるいは回転機器等の鉄心材料として使用さ
れるもので、特性的には、磁束密度が高く、かつ鉄損及
び磁気歪が小さいことが要求される。近年、エネルギー
事情の悪化や生活環境への騒音防止の観点から、磁気特
性に優れた方向性電磁鋼板に対するニーズが高まってい
る。 【0003】磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を得るに
は、ゴス方位すなわち{110}<001>方位に高度
に集積した2次再結晶組織を得ることが必要である。そ
してかかる方向性電磁鋼板の一般的な製造方法では、ゴ
ス方位に高度に集積した2次再結晶組織を得るために必
要なインヒビターを含む方向性電磁鋼スラブを、加熱し
て熱間圧延を行ったのち、必要に応じて均一化焼鈍を行
い、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によ
って最終板厚とし、ついで脱炭焼鈍を行ったのち、鋼板
にMgO 等を主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、コ
イル状に巻き取り、高温の仕上焼鈍が行われる。 【0004】上記したような複雑な製造工程を経る方向
性電磁鋼板の製造方法において、製品品質に大きな影響
を及ぼす重要なポイントはいくつかあるが、その中の一
つに脱炭焼鈍工程が挙げられる。 【0005】通常、脱炭焼鈍は、H2濃度と露点との調整
により雰囲気酸化度を制御した湿水素雰囲気ガス中にお
いて、 700〜900 ℃の温度範囲で一定時間の均熱処理を
行うことにより実施される。この時、鋼板の内部から表
面に拡散してきたCが、鋼板表面において H2Oと反応し
てCOガスとなり、鋼板からCが除去される。この時の反
応は次式(1) のとおりである。 C+H2O → CO + H2 ---(1) 上記の反応式に従って脱炭反応が起こると同時に、方向
性電磁鋼板に含有されるSiが H2Oにより酸化されて、主
としてSiO2及び Fe2SiO4からなるサブスケールが形成さ
れる。この時の反応は次式(2), (3)のとおりである。 Si + 2H2O → SiO2 + 2H2 ---(2) Si + 2Fe+ 4H2O → Fe2SiO4+ 4H2 ---(3) これらの反応の中でも、式(3) の反応はきわめて低い露
点から進行するため、通常の工業用ガスを使用する場合
にはサブスケールの生成が避けられない。 【0006】このように、方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍に
おいて不可避的に生成するサブスケールを巧妙に利用し
たのが、製品の鋼板表面に被成させるフォルステライト
質絶縁被膜である。すなわち、このフォルステライト質
絶縁被膜は、一般に以下のような過程によって形成され
る。まず、所望の最終板厚に冷間圧延した方向性電磁鋼
板の最終冷延板に、先に述べたとおりの脱炭焼鈍を行
う。すなわち、湿水素中にて 700〜900 ℃程度の温度範
囲で連続焼鈍を行って、冷間圧延後の組織を最終仕上焼
鈍において適正な2次再結晶が起るように1次再結晶さ
せると共に、製品の磁気特性の時効劣化を防止するた
め、鋼中に0.01〜0.10mass%程度含まれるCを 0.003ma
ss%以下まで脱炭する。さらに、これと同時に、鋼中の
Siの酸化によって、Si02を主成分とするサブスケールを
鋼板表層に生成させる。このサブスケールがフォルステ
ライト質絶縁被膜の原材料の一つとなる。その後、MgO
を主成分とする焼鈍分離剤を鋼板上に塗布し、コイル状
に巻き取ってから、還元あるいは非酸化性雰囲気中にお
いて1000〜1200℃程度の高温で仕上焼鈍を行うことによ
り、次式(4) で示される固相反応によってフォルステラ
イト質絶縁被膜を形成させる。 2MgO + SiO2 → Mg2SiO4 ---(4) 【0007】このフォルステライト質絶縁被膜は、1μ
m 程度の微細結晶が緻密に集積したセラミックス被膜で
あり、上述したように、脱炭焼鈍において鋼板表層に生
成させたSi02を主成分とするサブスケールを一方の原料
物質として、その鋼板上に生成するものであるから、こ
の酸化物の種類、量、分布等は、フォルステライトの核
生成や粒成長挙動に影響を及ぼし、またフォルステライ
ト結晶粒の粒界や粒そのものの強度にも影響を及ぼし、
従って仕上焼鈍後の被膜品質に多大な影響を及ぼす。 【0008】また、他方の原料物質である MgOを主体と
する焼鈍分離剤は、水に懸濁させたスラリーとして鋼板
に塗布されるため、乾燥させた後も物理的に吸着したH2
0 を保有する他、一部が水和して Mg(OH)2に変化してい
るため、仕上焼鈍工程において 800℃程度までは少量な
がら H20を放出し続ける。この H20により仕上焼鈍中に
鋼板表面は酸化される。この酸化もフォルステライト質
絶縁被膜の生成挙動に影響を及ぼすと共に、インヒビタ
ーの酸化や分解につながることから、この酸化が多いと
磁気特性が劣化する原因となる。このように、MgO が放
出する H20による酸化の受け易さも、脱炭焼鈍で生成し
たサブスケールの物性に大きく影響される。 【0009】以上述べたように、方向性電磁鋼板の脱炭
焼鈍において生成するサブスケールの品質を適正に制御
することは、フォルステライト質絶縁被膜の品質の劣化
及び磁気特性の劣化を防止するという観点から、極めて
重要な技術課題である。方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍に関
しては、例えば特公昭57−1575号公報に開示されている
ような、雰囲気の酸化度を脱炭の前半では0.15以上と
し、後半では0.75以下でかつ前半よりも低くする方法、
あるいは特開平6−336616号公報に開示されているよう
な、均熱過程における水素分圧に対する水蒸気分圧の比
を0.70未満とし、かつ昇温過程における水素分圧に対す
る水蒸気分圧の比を均熱過程よりも低い値に設定する方
法などが知られている。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
方法では、一定の効果は認められるものの、必ずしも十
分なものではなく、ストリップの幅方向あるいは長手方
向で磁気特性やフォルステライト質絶縁被膜の密着性、
厚み、均一性が劣化する場合が有り、優れた品質を有す
る製品を安定して生産し、歩留りを一層向上させるため
には、いまだ改善の余地を残していた。この発明は、上
記の問題を有利に解決するもので、コイルの全幅及び全
長にわたって、磁気特性が良好で、かつ欠陥のない均一
で密着性の優れたフォルステライト質絶縁被膜を有する
方向性電磁鋼板を安定して得ることができる新規な製造
方法を提案することを目的とする。 【0011】 【課題を解決するための手段】さて、発明者らは、脱炭
焼鈍工程の雰囲気ガス成分の変動がサブスケールの物性
に及ばす影響について綿密な調査を行った。その結果、
雰囲気酸化度の指標として用いられる水素分圧に対する
水蒸気分圧の比(P[H2O]/P[H2])が同一でも、水素濃
度と露点は経時的に変動していること、またこのガス組
成の変動に伴って脱炭焼鈍時のサブスケール生成挙動が
変化すること、そして水素濃度をある一定濃度以上とし
た場合に、特に特開平6−336616号公報に開示されてい
る方法の効果が十分に達成されることを解明し、この発
明を完成するに至った。 【0012】すなわち、この発明は、方向性電磁鋼板用
スラブを、熱間圧延したのち、熱延板焼鈍を施しまたは
省略して、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧
延を施し、ついで脱炭焼鈍を施し、さらにMgO を主体と
する焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上焼鈍を施す一
連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
上記脱炭焼鈍の際、均熱過程における雰囲気酸化度(P
[H2O]/P[H2])を0.70未満とし、かつ昇温過程における
P[H2O]/P[H2]を上記均熱過程のP[H2O]/P[H 2]よりも
低い値とし、さらに雰囲気ガス中の水素濃度を 20vol%
以上とすることを特徴とする、磁気特性及び被膜特性に
優れる方向性電磁鋼板の製造方法である。 【0013】 【発明の実施の形態】以下、この発明を由来するに至っ
た実験及びその結果について述べる。なお、成分に関す
る「%」表示は特に断らない限り質量%(mass%)を意
味するものとする。C:0.041 %,Si:3.29%,Mn:0.
072 %,Se:0.021 %及びSb:0.026 %を含有し、残部
はFe及び不可避的不純物の組成になる方向性電磁鋼板用
素材を、熱間圧延したのち、900 ℃で熱延板焼鈍を行
い、ついで 980℃,2分間の中間焼鈍を挟む2回の冷間
圧延によって板厚:0.23mmの最終冷延板とした。つい
で、これらの冷延板を脱脂して表面を清浄化したのち、
湿水素中にて 820℃に2分間保持する脱炭焼鈍を施し
た。この時、昇温過程と均熱過程の雰囲気酸化度(P[H
2O]/P[H2])及び雰囲気ガス中水素濃度を、表1に示す
値に制御した。その後、鋼中のC量と酸素目付量を化学
分析によって求めた。また、60℃の5%HCl 中で60秒の
酸洗による脱炭焼鈍後試料の溶解量(以下、酸洗減量と
称する)を求めた。得られた結果を表1に併記する。 【0014】なお、酸素目付量は、サブスケールの量的
指標として重要であり、これが不足するとフォルステラ
イト質絶縁被膜の密着性及び外観均一性が劣化し、また
磁気も併せて劣化する。また、酸洗減量は、サブスケー
ルの質的指標として重要であり、この値が大きい場合に
は、表面の化学的活性度が高いため、仕上焼鈍中に MgO
の放出水による酸化を受け易く、フォルステライト質絶
縁被膜の品質や磁気特性の劣化を生じる。 【0015】 【表1】【0016】表1のNo.1〜4は、脱炭焼鈍時の均熱過程
における雰囲気酸化度(P[H2O]/P[H2])を0.70未満と
し、かつ昇温過程のP[H2O]/P[H2]を均熱過程のP[H
2O]/P[H2]よりも低くし、さらに雰囲気ガス中に水素を
20vol%以上含有させた場合であるが、この場合には、
脱炭焼鈍後のC含有量は十分に低く、酸素目付量も確保
されており、酸洗減量も低い値を示している。これに対
し、No.5〜6は、上記の場合に比べて雰囲気ガス中の水
素濃度を低くした場合であるが、この場合には、酸素目
付量は確保されているものの、酸洗減量が増大してお
り、またC含有量も若干高めとなっている。No.7〜12
は、脱炭焼鈍時における昇温過程のP[H2O]/P[H2]と均
熱過程のP[H 2O]/P[H2]とを等しくした場合であるが、
この場合は、C含有量が高めで、酸素目付量が不十分で
あり、酸洗減量も高めとなっている。No.13 〜18は、均
熱過程でのP[H2O]/P[H2]が0.70を超えた場合である
が、この場合には、酸洗減量が著しく増大している。 【0017】上述したとおり、良好な物性を有するサブ
スケールを得るには、脱炭焼鈍時の雰囲気を適切に制御
する必要があることが判明した。そこで、この発明で
は、脱炭焼鈍の際、均熱過程における雰囲気酸化度(P
[H 2O]/P[H2])を0.70未満とし、かつ昇温過程における
P[H2O]/P[H2]を均熱過程のそれよりも低くし、さらに
雰囲気ガス中の水素濃度を 20vol%以上とすることにし
たのである。 【0018】このように、脱炭焼鈍工程において、昇温
過程の雰囲気酸化度を均熱過程のそれよりも低くするこ
とによってサブスケール物性が良好になるメカニズム
は、昇温過程での酸化を均熱過程よりも緩やかに進行さ
せることで酸化初期に生成する酸化物の形態や分布が変
化する結果、その後の均熱過程における酸素の鋼中への
拡散に影響を及ぼすためと考えられる。 【0019】なお、均熱過程のP[H2O]/P[H2]が0.70以
上になると、サブスケールの物性が劣化するのは、図1
に示す電磁鋼板の表面に生成する酸化物から考えて、Fe
O が生成したことによるものと考えられる。FeO は酸素
の内部拡散ではなく、Feの外部拡散によって生成する外
部酸化層であるため、このような酸化物が鋼板表面に形
成されると、被膜の形成過程に重大な悪影響を及ぼすと
考えられる。 【0020】また、同一のP[H2O]/P[H2]であっても雰
囲気ガス中の水素濃度が低い場合、すなわち水蒸気分圧
と水素分圧が共に低い場合にサブスケールの物性が劣化
するのは、前掲式(2), (3)で示される酸化反応の反応速
度に及ぼす要因として水蒸気分圧で表される H20量の影
響が大きく、H20 量が少ない場合には、H20 が鋼板表面
に吸着する過程が遅滞する結果、サブスケールの生成が
局所的となって疎な構造になるものと考えられる。従っ
て、脱炭焼鈍雰囲気中における水素濃度は 20vol%以上
とする必要がある。より好ましくは 30vol%以上、さら
好ましくは 40vol%以上である。 【0021】なお、 以上の実験は、インヒビターとして
MnSeとSbを含有する鋼種で示したが、この発明は、これ
だけに限るものではなく、AlN−MnSe系、AlN−MnS
系、MnS系等、他のインヒビターを含有する方向性電磁
鋼板のいずれに対しても適用できるのは言うまでもな
い。 【0022】次に、この発明における方向性電磁鋼用素
材の好適成分組成について説明する。この素材組成は、
特に限定されることはなく、方向性電磁鋼板用として従
来から公知のものであれば、いずれの組成も有利に適合
するが、好適組成を掲げると次のとおりである。Cは、
熱間圧延時のα−γ変態を利用して結晶組織の改善を行
うために有効であるが、多すぎると脱炭が困難となるた
め、0.02〜0.10%程度とするのが好適である。Siは、少
なすぎると鋼板の電気抵抗が小さくなって渦電流損が増
大するために鉄損が劣化し、一方多すぎると冷間圧延が
困難となって破断等によるスクラップの増大につながる
ので、 2.5〜4.5 %程度とするのが好適である。Mnは、
インヒビター成分として必要であるが、過剰になるとイ
ンヒビターの粒子径が粗大化して粒成長抑制力が低下す
るため、0.03〜0.30%程度の範囲が好適である。SeやS
は、インヒビター成分として必要であるが、過剰になる
と仕上焼鈍時の純化が困難となり、また熱間圧延での粒
界割れに起因する表面欠陥が増大するので、合計で0.01
〜0.05%程度とするのが好適である。Al及びNは、AlN
インヒビターを形成するために必要である。しかしなが
ら、Alが少なすぎると磁束密度が低下し、多すぎると2
次再結晶の発現が安定しなくなるため、酸可溶性Alとし
て0.01〜0.05%程度を必要とする。一方、Nが少なすぎ
ると磁束密度が低下し、多すぎるとスラブ加熱中のふく
れに起因する表面欠陥が増大するため、 0.004〜0.012
%程度とするのが好適である。また、粒界偏析型インヒ
ビターとして、SbやSn等の添加が有効であるが、これら
は添加量が少なすぎると磁気特性の改善効果が小さく、
一方多すぎると脆化やフオルステライト質絶縁被膜への
悪影響が生じるので、0.01〜0.03%程度とするのが好適
である。さらに、フォルステライト質絶縁被膜への悪影
響を低減するためには、0.03〜0.20%のCuを添加した上
で、この発明に従う脱炭焼鈍を行うことが有効である。
また、熱間圧延時の表面脆化に起因する表面欠陥を防止
するために、0.10%以上のMoを添加することも有効であ
る。さらに、熱間圧延時のα−γ変態を利用して結晶組
織の改善を行うためには、0.05〜0.3 %のNiを添加する
ことも有効である。 【0023】次に、この発明の好適製造条件について説
明する。従来より用いられている製鋼法で上記の好適成
分組成に調整した溶鋼を、連続鋳造法あるいは造塊法で
鋳造し、必要に応じて分塊工程を挟んでスラブとし、つ
いで1250〜1450℃の温度範囲でスラブ加熱を行ったの
ち、熱間圧延を施す。ついで、必要に応じて熱延板焼鈍
を行ったのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷
間圧延により最終板厚の冷延板に仕上げる。 【0024】ついで、脱炭焼鈍を行うが、この発明で
は、この脱炭焼鈍における雰囲気を適切に制御すること
が重要である。すなわち、均熱過程における雰囲気酸化
度(P[H2O]/P[H2])を0.70未満にすると共に、昇温過
程におけるP[H2O]/P[H2]を均熱過程のそれよりも低い
値とし、さらには雰囲気ガス中の水素濃度を 20vol%以
上とすることが重要である。ここに、均熱過程における
P[H2O]/P[H2]を0.70未満としたのは、この値が0.70以
上になると、FeO の生成に起因してサブスケールの物性
が劣化するからであり、また昇温過程におけるP[H2O]/
P[H2]を均熱過程のそれよりも低い値としたのは、昇温
過程のP[H2O]/P[H2]が均熱過程のP[H2O]/P[H2]以上
の値になると酸化初期に形成される酸化物の形態や分布
が変化し、その後の均熱過程における酸化を妨げるから
である。 【0025】さらに、脱炭焼鈍雰囲気中の水素濃度を 2
0vol%以上としたのは、この水素濃度が 20vol%を下回
ると、それに伴い H20量も少なくなるため、 H20が鋼板
表面に吸着する反応過程が遅れるためである。 【0026】また、脱炭焼鈍板のサブスケール量につい
ては、鋼板の酸素目付量(片面当たり)で 0.5〜1.0 g/
m2程度とするのが好ましい。というのは、0.5 g/m2未満
では、フォルステライトの原料となるサブスケールが不
足するために良好な被膜が形成しにくく、一方 1.0 g/m
2 超えるとフォルステライト質絶縁被膜が過剰に生成し
厚くなるため、占積率の低下をきたすからである。 【0027】上記のような脱炭焼鈍を施した鋼板表面
に、マグネシアを主成分とする焼鈍分離剤をスラリー状
にして塗布した後、乾燥する。焼鈍分離剤の塗布量は鋼
板片面当たり4〜10g/m2の範囲で塗布するのが好まし
い。というのは、塗布量が4g/m2より少ないとフォルス
テライトの生成が不十分となり、一方10g/m2を超えると
フォルステライト質絶縁被膜が過剰に生成し厚くなるた
めに占積率の低下をきたすからである。 【0028】さらに、被膜特性および磁気特性の一層の
均一性向上を目的として、焼鈍分離剤中にTiO2, SnO2,
Fe2O3, CaOのような酸化物、 MgSO4やSnSO4 のような硫
化物あるいはSrSO4, Sr(OH)2・8H2OようなSr化合物のう
ちから選んだ1種または2種以上をそれぞれ単独または
複合して添加してもよい。 【0029】ついで、二次再結晶焼鈍および純化焼鈍
(最終仕上焼鈍)を施したのち、りん酸塩系の絶縁コー
ティング好ましくは張力を有する絶縁コーティングを施
して製品とする。二次再結晶焼鈍は、焼鈍中 750〜900
℃のある温度で20〜70時間の保定焼鈍を行ってから昇温
する方法、あるいは保定を行わずに焼鈍する方法のいず
れでも良い。また、最終冷延後あるいは最終仕上焼鈍後
または絶縁コーティング後に既知の磁区細分化処理を行
うこともでき、より一層の鉄損の低減に有効である。 【0030】 【実施例】C:0.072 %,Si:3.31%,Mn:0.069 %,
Se:0.019 %,sol.Al:0.024 %,N:0.08%及びSb:
0.040 %を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組
成になる方向性電磁鋼板用スラブを、板厚:2.7 mmに熱
間圧延したのち、1000℃での熱延板焼鈍後、1115℃での
中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延によって板厚:0.27mmの
最終冷延板とした。ついで、これらの冷延板を、アルカ
リ脱脂して表面を清浄化したのち、湿水素雰囲気中にて
840℃で 120秒の脱炭焼鈍を行った。この時、昇温過程
と均熱過程の雰囲気酸化度及び雰囲気ガス中の水素濃度
を、表2に示す値に制御した。ついで、5%のTiO2を含
有するMgO 焼鈍分離剤を、スラリーとして塗布、乾燥し
たのち、H2雰囲気中にて1200℃, 10時間の仕上焼鈍を行
った。その後、リン酸マグネシウムとコロイダルシリカ
を主成分とする絶縁コーティングを施した。 【0031】かくして得られた製品板の、磁界:800 A/
m における磁束密度B8 及び 1.7T,50Hzにおける鉄損
17/50 、被膜の曲げ密着性及び被膜外観について調査
した。また、脱炭焼鈍後の鋼板のC含有量、酸素目付量
および酸洗減量についても分析を行った。なお、被膜の
曲げ密着性は、試験片を丸棒に巻き付け、その際5mm間
隔で丸棒の半径を変化させた時、被膜の剥離が生じない
最小曲げ半径で評価した。得られた結果を表2に併記す
る。 【0032】 【表2】 【0033】同表から明らかなように、水素濃度が低い
No.7, 8では、酸洗減量が高く、磁気特性及び被膜特性
とも劣っている。また、昇温過程のP[H2O]/P[H2]が均
熱過程のP[H2O]/P[H2]より高かったNo.9, 10は、脱炭
と酸素目付量が不十分であり、磁気特性及び被膜特性と
も劣っている。さらに、均熱過程のP[H2O]/P[H2]が0.
70を超えた No.11, 12は、酸洗減量が著しく高く、やは
り磁気特性、被膜特性に劣っている。これに対し、この
発明の要件を満足する条件で脱炭焼鈍を行ったNo.1〜6
はいずれも、脱炭、酸素目付量および酸洗減量とも良好
な値であり、製品の磁気特性及び被膜特性は共に優れて
いた。 【0034】 【発明の効果】かくして、この発明によれば、被膜特性
に優れかつ磁気特性も良好な方向性電磁鋼板を安定して
製造することができる。
【図面の簡単な説明】 【図1】 3%電磁鋼の湿水素中における生成酸化物の
平衡状態図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22C 38/60 C22C 38/60 (72)発明者 平嶋 浩一 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 藤山 寿郎 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 Fターム(参考) 4K033 AA02 FA00 FA12 HA03 JA01 JA04 LA00 MA03

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 方向性電磁鋼板用スラブを、熱間圧延し
    たのち、熱延板焼鈍を施しまたは省略して、1回または
    中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、ついで脱炭
    焼鈍を施し、さらにMgO を主体とする焼鈍分離剤を塗布
    してから、最終仕上焼鈍を施す一連の工程からなる方向
    性電磁鋼板の製造方法において、 上記脱炭焼鈍の際、均熱過程における雰囲気酸化度(P
    [H2O]/P[H2])を0.70未満とし、かつ昇温過程における
    P[H2O]/P[H2]を上記均熱過程のP[H2O]/P[H 2]よりも
    低い値とし、さらに雰囲気ガス中の水素濃度を 20vol%
    以上とすることを特徴とする、磁気特性及び被膜特性に
    優れる方向性電磁鋼板の製造方法。
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