JP2002302828A - 炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維束およびその製造方法 - Google Patents
炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維束およびその製造方法Info
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- JP2002302828A JP2002302828A JP2001105758A JP2001105758A JP2002302828A JP 2002302828 A JP2002302828 A JP 2002302828A JP 2001105758 A JP2001105758 A JP 2001105758A JP 2001105758 A JP2001105758 A JP 2001105758A JP 2002302828 A JP2002302828 A JP 2002302828A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 本発明は、トータル繊度が大きく、紡糸工程
や耐炎化工程での安定性や生産性に優れ、しかも単繊維
引っ張り強度や引っ張り弾性率、および繊維軸方向の結
晶配向度が高く、炭素繊維とした場合に優れた性能を発
現するアクリロニトリル系前駆体繊維束、およびその製
造方法を提供することを目的とする。 【解決手段】 95重量%以上のアクリロニトリル単位
を含有するアクリロニトリル系重合体からなるトータル
繊度3000tex以上の繊維束であって、トータル繊
度と蓄熱切断温度の関係が下記の(1)式を満足する炭
素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維束。 Y≧−0.003X+260 (1) 〔式中、Yは蓄熱切断温度(℃)、Xはトータル繊度
(tex)を表す。〕
や耐炎化工程での安定性や生産性に優れ、しかも単繊維
引っ張り強度や引っ張り弾性率、および繊維軸方向の結
晶配向度が高く、炭素繊維とした場合に優れた性能を発
現するアクリロニトリル系前駆体繊維束、およびその製
造方法を提供することを目的とする。 【解決手段】 95重量%以上のアクリロニトリル単位
を含有するアクリロニトリル系重合体からなるトータル
繊度3000tex以上の繊維束であって、トータル繊
度と蓄熱切断温度の関係が下記の(1)式を満足する炭
素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維束。 Y≧−0.003X+260 (1) 〔式中、Yは蓄熱切断温度(℃)、Xはトータル繊度
(tex)を表す。〕
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は航空機、スポーツ等
のプレミアム用途、および一般産業用途に使用される炭
素繊維束を製造するのに適したアクリロニトリル系前駆
体繊維束に関するものである。
のプレミアム用途、および一般産業用途に使用される炭
素繊維束を製造するのに適したアクリロニトリル系前駆
体繊維束に関するものである。
【0002】
【従来の技術】炭素繊維の需要はここ数年来増加傾向に
あり、航空機、スポーツ等のプレミアム用途、土木建築
等の一般産業用途等へと発展しており、従来では、10
00〜3000texのアクリロニトリル系前駆体繊維
束をフィラメントワインディング法で巻き取り、焼成工
程を経て炭素繊維束とし、この炭素繊維束の数本を引き
揃えてから成形に付している。
あり、航空機、スポーツ等のプレミアム用途、土木建築
等の一般産業用途等へと発展しており、従来では、10
00〜3000texのアクリロニトリル系前駆体繊維
束をフィラメントワインディング法で巻き取り、焼成工
程を経て炭素繊維束とし、この炭素繊維束の数本を引き
揃えてから成形に付している。
【0003】しかしながら上記の方法では、焼成工程を
経て炭素繊維束を得た後にこの炭素繊維束の数本を引き
揃えているために、引き揃えた炭素繊維束同士の間に間
隙が生じ易く、炭素繊維の強度や弾性率の利用率低下に
繋がるという成型時の欠陥が生じるだけでなく、炭素繊
維束の複数本を引き揃える工程を採ることが、成型品を
製作する際の手間の煩雑およびコスト高の要因になって
いる。
経て炭素繊維束を得た後にこの炭素繊維束の数本を引き
揃えているために、引き揃えた炭素繊維束同士の間に間
隙が生じ易く、炭素繊維の強度や弾性率の利用率低下に
繋がるという成型時の欠陥が生じるだけでなく、炭素繊
維束の複数本を引き揃える工程を採ることが、成型品を
製作する際の手間の煩雑およびコスト高の要因になって
いる。
【0004】近年では、炭素繊維用アクリロニトリル系
前駆体繊維束のフィラメント数を増加させることによっ
てこれらの問題点を解決し、成型加工性やコストの改善
が試みられている。
前駆体繊維束のフィラメント数を増加させることによっ
てこれらの問題点を解決し、成型加工性やコストの改善
が試みられている。
【0005】しかしながら、アクリロニトリル系前駆体
繊維束のフィラメント数をいたずらに増加させること
は、アクリロニトリル系前駆体繊維束の紡糸工程におい
て、トウボリューム増加により、既存装置では乾燥負荷
が増大し、紡糸速度を上げることが困難となる。また、
トウボリュームの増加によって繊維束間でのマージング
の問題も発生するために、製品の品質が著しく低下する
という問題もある。
繊維束のフィラメント数をいたずらに増加させること
は、アクリロニトリル系前駆体繊維束の紡糸工程におい
て、トウボリューム増加により、既存装置では乾燥負荷
が増大し、紡糸速度を上げることが困難となる。また、
トウボリュームの増加によって繊維束間でのマージング
の問題も発生するために、製品の品質が著しく低下する
という問題もある。
【0006】さらに、アクリロニトリル系前駆体繊維束
を、200〜300℃の酸化性雰囲気にて加熱処理して
耐炎化繊維に転換する耐炎化工程において、繊維束内部
への蓄熱が過剰となり、繊維束の切断等のトラブルが発
生しやすくなるといった問題もある。この蓄熱による切
断温度が低い場合、耐炎化処理温度を低くせざるを得な
いために、耐炎化工程に長時間を要する問題があるが、
トウボリュームが大きいほどその傾向は顕著となる。
を、200〜300℃の酸化性雰囲気にて加熱処理して
耐炎化繊維に転換する耐炎化工程において、繊維束内部
への蓄熱が過剰となり、繊維束の切断等のトラブルが発
生しやすくなるといった問題もある。この蓄熱による切
断温度が低い場合、耐炎化処理温度を低くせざるを得な
いために、耐炎化工程に長時間を要する問題があるが、
トウボリュームが大きいほどその傾向は顕著となる。
【0007】例えば、特開平10−251924号公報
では、原料重合体の組成や紡糸工程での収縮率を規定す
ることにより、従来よりも大きいトータル繊度で、耐炎
化工程での張力の低いアクリロニトリル系前駆体繊維束
が開示されている。この場合、耐炎化工程での安定性の
改善は図られているが、紡糸工程では高い収縮率を要す
るため生産性が低下し、また、前駆体繊維の配向が低い
ため得られる炭素繊維の性能は十分とはいえない。
では、原料重合体の組成や紡糸工程での収縮率を規定す
ることにより、従来よりも大きいトータル繊度で、耐炎
化工程での張力の低いアクリロニトリル系前駆体繊維束
が開示されている。この場合、耐炎化工程での安定性の
改善は図られているが、紡糸工程では高い収縮率を要す
るため生産性が低下し、また、前駆体繊維の配向が低い
ため得られる炭素繊維の性能は十分とはいえない。
【0008】また、特開2000−144521号公報
では、第2凝固浴による延伸と湿熱延伸により、延伸を
施した後の膨潤繊維束の膨潤度が低く、湿熱延伸後の乾
燥負荷が小さいアクリロニトリル系前駆体繊維束の製造
方法が開示されている。この場合、紡糸工程での生産性
の改善は図られているが、耐炎化工程での安定性や生産
性に関しては考慮されていなかった。従って、耐炎化処
理時間を短くし、さらに得られる炭素繊維の性能を向上
させるためには、さらに改善が求められている。
では、第2凝固浴による延伸と湿熱延伸により、延伸を
施した後の膨潤繊維束の膨潤度が低く、湿熱延伸後の乾
燥負荷が小さいアクリロニトリル系前駆体繊維束の製造
方法が開示されている。この場合、紡糸工程での生産性
の改善は図られているが、耐炎化工程での安定性や生産
性に関しては考慮されていなかった。従って、耐炎化処
理時間を短くし、さらに得られる炭素繊維の性能を向上
させるためには、さらに改善が求められている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
従来の問題点に鑑みてなされたものであり、トータル繊
度が大きく、紡糸工程や耐炎化工程での安定性や生産性
に優れ、しかも単繊維引っ張り強度や引っ張り弾性率、
および繊維軸方向の結晶配向度が高く、炭素繊維とした
場合に優れた性能を発現するアクリロニトリル系前駆体
繊維束、およびその製造方法を提供することを目的とす
る。
従来の問題点に鑑みてなされたものであり、トータル繊
度が大きく、紡糸工程や耐炎化工程での安定性や生産性
に優れ、しかも単繊維引っ張り強度や引っ張り弾性率、
および繊維軸方向の結晶配向度が高く、炭素繊維とした
場合に優れた性能を発現するアクリロニトリル系前駆体
繊維束、およびその製造方法を提供することを目的とす
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の課題は、以下に記
載する本発明の炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊
維束およびその製造方法によって解決される。
載する本発明の炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊
維束およびその製造方法によって解決される。
【0011】すなわち本発明は、95重量%以上のアク
リロニトリル単位を含有するアクリロニトリル系重合体
からなるトータル繊度3000tex以上の繊維束であ
って、トータル繊度と蓄熱切断温度の関係が下記の式
(1)を満足する炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体
繊維束に関する。
リロニトリル単位を含有するアクリロニトリル系重合体
からなるトータル繊度3000tex以上の繊維束であ
って、トータル繊度と蓄熱切断温度の関係が下記の式
(1)を満足する炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体
繊維束に関する。
【0012】 Y≧−0.003X+260 (1) ここで式中、Yは蓄熱切断温度(℃)、Xはトータル繊
度(tex)を表す。
度(tex)を表す。
【0013】本発明では、繊維束の表面に、繊維束の長
手方向に実質的に連続する高さ0.5〜1.0μmの皺
が2〜15本存在しており、単繊維引っ張り強度6.0
cN/dtex以上、単繊維引っ張り弾性率115cN
/dtex以上、広角X線回析による結晶配向度πが8
7%以上、且つ該繊維束の繊維重量当たりのヨウ素吸着
量が0.5〜1.0重量%であることが好ましい。
手方向に実質的に連続する高さ0.5〜1.0μmの皺
が2〜15本存在しており、単繊維引っ張り強度6.0
cN/dtex以上、単繊維引っ張り弾性率115cN
/dtex以上、広角X線回析による結晶配向度πが8
7%以上、且つ該繊維束の繊維重量当たりのヨウ素吸着
量が0.5〜1.0重量%であることが好ましい。
【0014】さらに本発明は、アクリロニトリル系重合
体を第1の有機溶剤に溶解した紡糸原液を、アクリロニ
トリル系重合体を溶解し得る第2の有機溶剤を濃度50
〜70重量%で含み、温度30〜50℃の有機溶剤水溶
液からなる第1凝固浴中に吐出させて凝固糸とし、該第
1凝固浴中からこの凝固糸を、紡糸原液の吐出線速度の
0.8倍以下の引き取り速度で引き取り、次いでアクリ
ロニトリル系重合体を溶解し得る第3の有機溶剤を濃度
50〜70重量%で含み、温度30〜50℃の有機溶剤
水溶液からなる第2凝固浴中にて1.1〜3.0倍の延
伸を施し、さらに4倍以上の湿熱延伸と1.2倍以下の
乾熱延伸を行うことを特徴とする炭素繊維用アクリロニ
トリル系前駆体繊維束の製造方法に関する。
体を第1の有機溶剤に溶解した紡糸原液を、アクリロニ
トリル系重合体を溶解し得る第2の有機溶剤を濃度50
〜70重量%で含み、温度30〜50℃の有機溶剤水溶
液からなる第1凝固浴中に吐出させて凝固糸とし、該第
1凝固浴中からこの凝固糸を、紡糸原液の吐出線速度の
0.8倍以下の引き取り速度で引き取り、次いでアクリ
ロニトリル系重合体を溶解し得る第3の有機溶剤を濃度
50〜70重量%で含み、温度30〜50℃の有機溶剤
水溶液からなる第2凝固浴中にて1.1〜3.0倍の延
伸を施し、さらに4倍以上の湿熱延伸と1.2倍以下の
乾熱延伸を行うことを特徴とする炭素繊維用アクリロニ
トリル系前駆体繊維束の製造方法に関する。
【0015】このとき、湿熱延伸を施した後の乾燥前の
膨潤繊維束の膨潤度が70重量%以下であることが好ま
しい。
膨潤繊維束の膨潤度が70重量%以下であることが好ま
しい。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の炭素繊維用アクリロニト
リル系前駆体繊維束(以下、前駆体繊維束という。)お
よびその製造方法においては、アクリロニトリル系重合
体として、アクリロニトリル95重量%以上を含有する
重合体を使用する。このアクリロニトリル系重合体とし
ては、アクリロニトリルの単独重合体または共重合体あ
るいはこれらの重合体の混合したものを使用し得る。
リル系前駆体繊維束(以下、前駆体繊維束という。)お
よびその製造方法においては、アクリロニトリル系重合
体として、アクリロニトリル95重量%以上を含有する
重合体を使用する。このアクリロニトリル系重合体とし
ては、アクリロニトリルの単独重合体または共重合体あ
るいはこれらの重合体の混合したものを使用し得る。
【0017】アクリロニトリル共重合体はアクリロニト
リルと共重合しうる単量体とアクリロニトリルとの共重
合生成物であり、アクリロニトリルと共重合しうる単量
体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メ
タ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブ
チル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレ
ート等の(メタ)アクリル酸エステル類、塩化ビニル、
臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、
(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等の重合
性の二重結合を有する酸類およびそれらの塩類、マレイ
ン酸イミド、フェニルマレイミド、(メタ)アクリルア
ミド、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、さ
らにはスチレンスルホン酸ソーダ、アリルスルホン酸ソ
ーダ、β−スチレンスルホン酸ソーダ、メタアリルスル
ホン酸ソーダ等のスルホン基を含む重合性不飽和単量
体、2−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジ
ン等のピリジン基を含む重合性不飽和単量体等が挙げら
れるが、これらに限定されるものではない。
リルと共重合しうる単量体とアクリロニトリルとの共重
合生成物であり、アクリロニトリルと共重合しうる単量
体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メ
タ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブ
チル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレ
ート等の(メタ)アクリル酸エステル類、塩化ビニル、
臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、
(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等の重合
性の二重結合を有する酸類およびそれらの塩類、マレイ
ン酸イミド、フェニルマレイミド、(メタ)アクリルア
ミド、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、さ
らにはスチレンスルホン酸ソーダ、アリルスルホン酸ソ
ーダ、β−スチレンスルホン酸ソーダ、メタアリルスル
ホン酸ソーダ等のスルホン基を含む重合性不飽和単量
体、2−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジ
ン等のピリジン基を含む重合性不飽和単量体等が挙げら
れるが、これらに限定されるものではない。
【0018】重合方法としては、例えば水溶液における
レドックス重合、不均一系における懸濁重合、分散剤を
使用した乳化重合等が挙げられるが、これらに限定され
るものではない。
レドックス重合、不均一系における懸濁重合、分散剤を
使用した乳化重合等が挙げられるが、これらに限定され
るものではない。
【0019】本発明の前駆体繊維束は、このようなアク
リロニトリル系重合体からなり、トータル繊度3000
tex以上の繊維束であって、トータル繊度と蓄熱切断
温度の関係が下記の式(1)を満足するものである。
リロニトリル系重合体からなり、トータル繊度3000
tex以上の繊維束であって、トータル繊度と蓄熱切断
温度の関係が下記の式(1)を満足するものである。
【0020】 Y≧−0.003X+260 (1) 但し、式中Yは蓄熱切断温度(℃)、Xはトータル繊度
(tex)をそれぞれ示している。
(tex)をそれぞれ示している。
【0021】ここで、上記の蓄熱切断温度とは、前駆体
繊維束を耐炎化処理する場合の初期において、前駆体繊
維束が切断することなく通過可能な上限温度であり、耐
炎化処理の初期温度は、少なくともこの蓄熱切断温度以
下に設定する必要があり、蓄熱切断温度が高いほど、耐
炎化処理温度を高く設定できるため、耐炎化処理を短時
間で実施することが可能である。
繊維束を耐炎化処理する場合の初期において、前駆体繊
維束が切断することなく通過可能な上限温度であり、耐
炎化処理の初期温度は、少なくともこの蓄熱切断温度以
下に設定する必要があり、蓄熱切断温度が高いほど、耐
炎化処理温度を高く設定できるため、耐炎化処理を短時
間で実施することが可能である。
【0022】前駆体繊維束は、そのトータル繊度が大き
くなるほど蓄熱されやすいため蓄熱切断温度は低くなる
が、上記の(1)式を満足されるものであれば、耐炎化
での生産性を低下させることなく、かつ、得られる炭素
繊維の成型加工性も向上する。
くなるほど蓄熱されやすいため蓄熱切断温度は低くなる
が、上記の(1)式を満足されるものであれば、耐炎化
での生産性を低下させることなく、かつ、得られる炭素
繊維の成型加工性も向上する。
【0023】本発明において、蓄熱切断温度は次のよう
に測定される温度である。即ち、前駆体繊維束に対して
風向きを垂直方向とし、その風速を0.5m/secに
制御した熱風循環型加熱炉を使用し、炉の入口および出
口に幅10mmの溝ロールを設置することにより前駆体
繊維束の幅を規制して、炉内での処理時間が5分、かつ
1g/texの荷重下に連続的に前駆体繊維束を流し、
炉内温度を1℃刻みで昇温する。昇温に際しては、昇温
後の10分間は一定温度を保持する。10分間、前駆体
繊維束が切断することなく通過可能であった最高温度を
蓄熱切断温度とする。
に測定される温度である。即ち、前駆体繊維束に対して
風向きを垂直方向とし、その風速を0.5m/secに
制御した熱風循環型加熱炉を使用し、炉の入口および出
口に幅10mmの溝ロールを設置することにより前駆体
繊維束の幅を規制して、炉内での処理時間が5分、かつ
1g/texの荷重下に連続的に前駆体繊維束を流し、
炉内温度を1℃刻みで昇温する。昇温に際しては、昇温
後の10分間は一定温度を保持する。10分間、前駆体
繊維束が切断することなく通過可能であった最高温度を
蓄熱切断温度とする。
【0024】前駆体繊維束のトータル繊度と蓄熱切断温
度の関係が上記の式(1)の範囲を外れた場合、耐炎化
工程での蓄熱切断温度が低くなり、耐炎化処理に長時間
必要となる。
度の関係が上記の式(1)の範囲を外れた場合、耐炎化
工程での蓄熱切断温度が低くなり、耐炎化処理に長時間
必要となる。
【0025】また、本発明の前駆体繊維束は、繊維束の
表面に繊維束の長手方向に実質的に連続する高さ0.5
〜1.0μmの皺が2〜15本存在し、単繊維引っ張り
強度6.0cN/dtex以上、単繊維引っ張り弾性率
115cN/dtex以上、広角X線回析による結晶配
向度πが87%以上、且つ該繊維束の繊維重量当たりの
ヨウ素吸着量が0.5〜1.0重量%であることが好ま
しい。
表面に繊維束の長手方向に実質的に連続する高さ0.5
〜1.0μmの皺が2〜15本存在し、単繊維引っ張り
強度6.0cN/dtex以上、単繊維引っ張り弾性率
115cN/dtex以上、広角X線回析による結晶配
向度πが87%以上、且つ該繊維束の繊維重量当たりの
ヨウ素吸着量が0.5〜1.0重量%であることが好ま
しい。
【0026】ここで規定する「皺」とは、不特定に選択
した繊維表面の10μm×10μmの視野に連続して長
手方向に観察される凸部をもって「皺」と定義し、その
本数をカウントする。
した繊維表面の10μm×10μmの視野に連続して長
手方向に観察される凸部をもって「皺」と定義し、その
本数をカウントする。
【0027】前駆体繊維束の表面に、繊維束の長手方向
に実質的に連続する深さ0.5〜1μmの皺が2〜15
本存在することにより、前駆体繊維束は良好な収束性を
具備し、かつ該繊維束を前駆体とする炭素繊維束はプリ
プレグを製造する際に良好な開繊性を示す。
に実質的に連続する深さ0.5〜1μmの皺が2〜15
本存在することにより、前駆体繊維束は良好な収束性を
具備し、かつ該繊維束を前駆体とする炭素繊維束はプリ
プレグを製造する際に良好な開繊性を示す。
【0028】そして皺の高さが高くなり過ぎると、繊維
束の表面積が増加して静電気が発生し易くなり、繊維束
の収束性を低下させることになる。またこの皺の高さが
低すぎると、皺の存在に伴う良好な収束性と、該繊維束
を前駆体とする炭素繊維糸によるプリプレグを製造する
際の良好な開繊性とが得られなくなる。
束の表面積が増加して静電気が発生し易くなり、繊維束
の収束性を低下させることになる。またこの皺の高さが
低すぎると、皺の存在に伴う良好な収束性と、該繊維束
を前駆体とする炭素繊維糸によるプリプレグを製造する
際の良好な開繊性とが得られなくなる。
【0029】従って、皺の高さは、0.6〜0.8μm
であることがより好ましい。また、皺の幅については、
0.5〜1.0μm程度、好ましくは0.6〜0.8μ
mである。
であることがより好ましい。また、皺の幅については、
0.5〜1.0μm程度、好ましくは0.6〜0.8μ
mである。
【0030】前記の皺は、その本数が多くなり過ぎる
と、繊維束の表面積が増加して静電気が発生し易くな
り、繊維束の収束性を低下させる。またこの皺の本数が
少な過ぎると、皺の存在に伴う良好な収束性と、該繊維
束を前駆体とする炭素繊維糸によるプリプレグを製造す
る際の良好な開繊性とが得られなくなる。
と、繊維束の表面積が増加して静電気が発生し易くな
り、繊維束の収束性を低下させる。またこの皺の本数が
少な過ぎると、皺の存在に伴う良好な収束性と、該繊維
束を前駆体とする炭素繊維糸によるプリプレグを製造す
る際の良好な開繊性とが得られなくなる。
【0031】従って本発明の繊維束を構成する単繊維の
表面に、2〜15本であることが必要である。尚、本発
明で規定される皺の本数は、繊維束を構成するすべての
単繊維がそれだけの本数の皺を有していなければならな
いものではなく、80%以上、好ましくは90%以上、
さらに好ましくは95%以上の単繊維がそのような本数
の皺を有していれば良い。
表面に、2〜15本であることが必要である。尚、本発
明で規定される皺の本数は、繊維束を構成するすべての
単繊維がそれだけの本数の皺を有していなければならな
いものではなく、80%以上、好ましくは90%以上、
さらに好ましくは95%以上の単繊維がそのような本数
の皺を有していれば良い。
【0032】さらに、前駆体繊維束は、単繊維引っ張り
強度6.0cN/dtex以上、単繊維引っ張り弾性率
115cN/dtex以上、広角X線回析による結晶配
向度πが87%以上、且つ該繊維束の繊維重量当たりの
ヨウ素吸着量が0.5〜1.0重量%であることによ
り、耐炎化工程での蓄熱切断温度が高く、炭素繊維とし
た場合の性能に優れるものとなる。
強度6.0cN/dtex以上、単繊維引っ張り弾性率
115cN/dtex以上、広角X線回析による結晶配
向度πが87%以上、且つ該繊維束の繊維重量当たりの
ヨウ素吸着量が0.5〜1.0重量%であることによ
り、耐炎化工程での蓄熱切断温度が高く、炭素繊維とし
た場合の性能に優れるものとなる。
【0033】単繊維引っ張り強度が小さ過ぎるとき、ま
たは単繊維引っ張り弾性率が小さ過ぎるときは、耐炎化
工程での強度不足により蓄熱切断温度が低くなり、ま
た、これを焼成して得られる炭素繊維の力学的性能も不
十分になる。
たは単繊維引っ張り弾性率が小さ過ぎるときは、耐炎化
工程での強度不足により蓄熱切断温度が低くなり、ま
た、これを焼成して得られる炭素繊維の力学的性能も不
十分になる。
【0034】また、ヨウ素吸着量とは、繊維が吸着する
ヨウ素量であり、繊維構造の緻密性の程度を示す尺度で
あり、小さいほど繊維が緻密であることを示す。
ヨウ素量であり、繊維構造の緻密性の程度を示す尺度で
あり、小さいほど繊維が緻密であることを示す。
【0035】前駆体繊維束の繊維重量当たりのヨウ素吸
着量が小さ過ぎると、前駆体繊維束の緻密度が高すぎ
る、つまり繊維表面の緻密度が高く、繊維表面の形態が
平滑なものになってしまい、好ましくない。また、この
ヨウ素吸着量が大きすぎても、繊維構造の緻密性または
配向性が損なわれ不均質になり、炭素繊維に転換する焼
成時に欠陥点となるため、得られる炭素繊維の性能が低
下する。
着量が小さ過ぎると、前駆体繊維束の緻密度が高すぎ
る、つまり繊維表面の緻密度が高く、繊維表面の形態が
平滑なものになってしまい、好ましくない。また、この
ヨウ素吸着量が大きすぎても、繊維構造の緻密性または
配向性が損なわれ不均質になり、炭素繊維に転換する焼
成時に欠陥点となるため、得られる炭素繊維の性能が低
下する。
【0036】また、広角X線解析による結晶配向度と
は、繊維を構成する共重合体分子鎖の繊維軸方向におけ
る配向の程度を示す尺度であり、広角X線解析法による
繊維の赤道線上回折点の円周方向強度分布の半価幅Hか
ら、 配向度π(%)=((180−H)/180)×100 よって算出される値である。
は、繊維を構成する共重合体分子鎖の繊維軸方向におけ
る配向の程度を示す尺度であり、広角X線解析法による
繊維の赤道線上回折点の円周方向強度分布の半価幅Hか
ら、 配向度π(%)=((180−H)/180)×100 よって算出される値である。
【0037】この結晶配向度πが小さ過ぎると、前駆体
繊維の引っ張り強度・弾性率が低くなり、これを焼成し
て得られる炭素繊維の力学的性能が不十分になる。ま
た、結晶配向度πの非常に高いものを得ようとすると、
安定した紡糸が困難になるので、トータル繊度3000
tex以上のいわゆるラージトウの場合は、工業的に製
造が容易な範囲は通常92%以下である。
繊維の引っ張り強度・弾性率が低くなり、これを焼成し
て得られる炭素繊維の力学的性能が不十分になる。ま
た、結晶配向度πの非常に高いものを得ようとすると、
安定した紡糸が困難になるので、トータル繊度3000
tex以上のいわゆるラージトウの場合は、工業的に製
造が容易な範囲は通常92%以下である。
【0038】本発明の前駆体繊維束は、上記の構成によ
ってトータル繊度3000tex以上のいわゆるラージ
トウであっても、良好な収束性を具備しており、しかも
耐炎化工程での蓄熱切断温度が高く、従来にない短時間
での耐炎化処理が可能である。さらに、従来のラージト
ウでは得ることのできなかった優れた性能の炭素繊維が
得られるものである。
ってトータル繊度3000tex以上のいわゆるラージ
トウであっても、良好な収束性を具備しており、しかも
耐炎化工程での蓄熱切断温度が高く、従来にない短時間
での耐炎化処理が可能である。さらに、従来のラージト
ウでは得ることのできなかった優れた性能の炭素繊維が
得られるものである。
【0039】また、本発明の前駆体繊維束は、静電気帯
電量が−1kV〜+1kVの範囲であることが、該前駆
体繊維束の収束性を高めておく点において好ましい。特
に、静電気帯電量が−0.5kV〜+0.5kVの範囲
にあるときには、繊維束のばらけによる単繊維のダメー
ジが少なく、これに伴う性能低下がなく、安定した高品
質を保つことができる。
電量が−1kV〜+1kVの範囲であることが、該前駆
体繊維束の収束性を高めておく点において好ましい。特
に、静電気帯電量が−0.5kV〜+0.5kVの範囲
にあるときには、繊維束のばらけによる単繊維のダメー
ジが少なく、これに伴う性能低下がなく、安定した高品
質を保つことができる。
【0040】ここで、前駆体繊維束の静電気帯電量は次
のようにして測定する。まず、表面にハードクロムメッ
キを施した鉄製の2台のニップローラを互いに60m離
して設置し、このニップローラ間に測定の対象となる前
駆体繊維束を渡し、SHISHIDO ELECTOR
OSTATIC Ltd.社製のSTATIRONII
Iのセンサー部を、巻き取り側のニップローラの手前1
0cmに、前駆体繊維束から0.5cm離して設置す
る。次いで、前駆体繊維束を50m/分で走行させ、帯
電圧の測定を開始し、該前駆体繊維束の走行が安定して
帯電圧が変動しなくなったときの帯電圧値を前駆体繊維
束の静電気帯電圧とする。
のようにして測定する。まず、表面にハードクロムメッ
キを施した鉄製の2台のニップローラを互いに60m離
して設置し、このニップローラ間に測定の対象となる前
駆体繊維束を渡し、SHISHIDO ELECTOR
OSTATIC Ltd.社製のSTATIRONII
Iのセンサー部を、巻き取り側のニップローラの手前1
0cmに、前駆体繊維束から0.5cm離して設置す
る。次いで、前駆体繊維束を50m/分で走行させ、帯
電圧の測定を開始し、該前駆体繊維束の走行が安定して
帯電圧が変動しなくなったときの帯電圧値を前駆体繊維
束の静電気帯電圧とする。
【0041】さらに、本発明の前駆体繊維束には、該前
駆体繊維束の帯電圧値を適正な範囲内のものにしてその
収束性をさらに高めるために、油剤を付与してもよい。
このときの油剤としては、シリコーン系油剤、芳香族エ
ステル系油剤、含硫黄脂肪族エステル系油剤等が挙げら
れる。なお、シリコーン系油剤は前駆体繊維束の収束性
を高めるだけでなく、前駆体繊維束を焼成して得られる
炭素繊維の性能向上作用も果たす。
駆体繊維束の帯電圧値を適正な範囲内のものにしてその
収束性をさらに高めるために、油剤を付与してもよい。
このときの油剤としては、シリコーン系油剤、芳香族エ
ステル系油剤、含硫黄脂肪族エステル系油剤等が挙げら
れる。なお、シリコーン系油剤は前駆体繊維束の収束性
を高めるだけでなく、前駆体繊維束を焼成して得られる
炭素繊維の性能向上作用も果たす。
【0042】次に、本発明の炭素繊維前駆体用アクリロ
ニトリル系繊維束の製造方法について説明する。
ニトリル系繊維束の製造方法について説明する。
【0043】本発明の前駆体繊維束の製造方法では、前
述の通り、アクリロニトリル系重合体(好ましくは95
重量%以上のアクリロニトリル単位を含む)を第1の有
機溶剤に溶解した紡糸原液を、アクリロニトリル系重合
体を溶解し得る第2の有機溶剤を濃度50〜70重量%
で含み、温度30〜50℃の有機溶剤水溶液からなる第
1凝固浴中に吐出させて凝固糸とし、該第1凝固浴中か
らこの凝固糸を、紡糸原液の吐出線速度の0.8倍以下
の引き取り速度で引き取り、次いでアクリロニトリル系
重合体を溶解し得る第3の有機溶剤を濃度50〜70重
量%で含み、温度30〜50℃の有機溶剤水溶液からな
る第2凝固浴中にて1.1〜3.0倍の延伸を施し、さ
らに4倍以上の湿熱延伸と1.2倍以下の乾熱延伸を行
う。
述の通り、アクリロニトリル系重合体(好ましくは95
重量%以上のアクリロニトリル単位を含む)を第1の有
機溶剤に溶解した紡糸原液を、アクリロニトリル系重合
体を溶解し得る第2の有機溶剤を濃度50〜70重量%
で含み、温度30〜50℃の有機溶剤水溶液からなる第
1凝固浴中に吐出させて凝固糸とし、該第1凝固浴中か
らこの凝固糸を、紡糸原液の吐出線速度の0.8倍以下
の引き取り速度で引き取り、次いでアクリロニトリル系
重合体を溶解し得る第3の有機溶剤を濃度50〜70重
量%で含み、温度30〜50℃の有機溶剤水溶液からな
る第2凝固浴中にて1.1〜3.0倍の延伸を施し、さ
らに4倍以上の湿熱延伸と1.2倍以下の乾熱延伸を行
う。
【0044】本発明で用いる第1〜第3の有機溶剤は、
いずれもアクリロニトリル系重合体を溶解し得る有機溶
剤であり、例えばジメチルアセトアミド、ジメチルスル
ホキシド、ジメチルホルムアミド等を挙げることができ
る。
いずれもアクリロニトリル系重合体を溶解し得る有機溶
剤であり、例えばジメチルアセトアミド、ジメチルスル
ホキシド、ジメチルホルムアミド等を挙げることができ
る。
【0045】紡糸原液は、アクリロニトリル系重合体を
第1の有機溶剤に溶解させた有機溶剤溶液を使用するこ
とができる。第1の有機溶剤として、特にジメチルアセ
トアミドが好ましい。溶剤の加水分解による紡糸原液の
性状の悪化が少なく良好な紡糸性を有する紡糸原液にな
るだけでなく、アクリロニトリル系繊維束を焼成した後
に、性能が安定した炭素繊維糸が得られる。
第1の有機溶剤に溶解させた有機溶剤溶液を使用するこ
とができる。第1の有機溶剤として、特にジメチルアセ
トアミドが好ましい。溶剤の加水分解による紡糸原液の
性状の悪化が少なく良好な紡糸性を有する紡糸原液にな
るだけでなく、アクリロニトリル系繊維束を焼成した後
に、性能が安定した炭素繊維糸が得られる。
【0046】紡糸原液を押し出すための紡糸口金には、
前駆体繊維束を得るときの紡糸の際の一般的な太さであ
る1.1dtex程度のアクリル単繊維を製造する際の
孔径、すなわち15〜100μmの孔径のノズル孔を有
する紡糸口金を使用し得る。
前駆体繊維束を得るときの紡糸の際の一般的な太さであ
る1.1dtex程度のアクリル単繊維を製造する際の
孔径、すなわち15〜100μmの孔径のノズル孔を有
する紡糸口金を使用し得る。
【0047】なお、本発明の前駆体繊維束の製造方法に
おいては、良好な紡糸性を維持するために、アクリロニ
トリル系重合体の有機溶剤溶液からなる紡糸原液を第1
凝固浴中に吐出させて凝固糸にすると共に、該第1凝固
浴中からこの凝固糸を、紡糸原液の吐出線速度の0.8
倍以下の引き取り速度で引き取る関係から、つまり「凝
固糸の引き取り速度/ノズルからの紡糸原液の吐出線速
度」を0.8以下にすることによって良好な紡糸性を維
持させる関係から、15〜50μmの孔径のノズル孔を
有する紡糸口金を使用することが好ましい。ここで「凝
固糸の引き取り速度/ノズルからの紡糸原液の吐出線速
度」は、通常0.2以上であり、好ましくは0.25以
上である。
おいては、良好な紡糸性を維持するために、アクリロニ
トリル系重合体の有機溶剤溶液からなる紡糸原液を第1
凝固浴中に吐出させて凝固糸にすると共に、該第1凝固
浴中からこの凝固糸を、紡糸原液の吐出線速度の0.8
倍以下の引き取り速度で引き取る関係から、つまり「凝
固糸の引き取り速度/ノズルからの紡糸原液の吐出線速
度」を0.8以下にすることによって良好な紡糸性を維
持させる関係から、15〜50μmの孔径のノズル孔を
有する紡糸口金を使用することが好ましい。ここで「凝
固糸の引き取り速度/ノズルからの紡糸原液の吐出線速
度」は、通常0.2以上であり、好ましくは0.25以
上である。
【0048】また、本発明で規定する第1凝固浴および
第2凝固浴の条件、並びに第2凝固浴中での延伸条件
は、得られるアクリロニトリル系繊維束の配向を高める
ために、重要である。
第2凝固浴の条件、並びに第2凝固浴中での延伸条件
は、得られるアクリロニトリル系繊維束の配向を高める
ために、重要である。
【0049】第1凝固浴中の第2の有機溶剤濃度、およ
び第2凝固浴中の第3の有機溶剤濃度はいずれも前述の
通り50〜70重量%であるが、凝固糸の凝固を均一に
行うためには、2つの凝固浴中の有機溶剤濃度を実質的
に同一にすることが好ましい。具体的には、2つの凝固
浴中の有機溶剤濃度の差が5重量%以内、好ましくは3
重量%以内である。
び第2凝固浴中の第3の有機溶剤濃度はいずれも前述の
通り50〜70重量%であるが、凝固糸の凝固を均一に
行うためには、2つの凝固浴中の有機溶剤濃度を実質的
に同一にすることが好ましい。具体的には、2つの凝固
浴中の有機溶剤濃度の差が5重量%以内、好ましくは3
重量%以内である。
【0050】さらに、第1凝固浴と第2凝固浴の温度を
略同一にすることも、凝固糸の凝固を均一するために好
ましい。第1凝固浴と第2凝固浴の温度差は、5℃以
内、特に3℃以内が好ましい。
略同一にすることも、凝固糸の凝固を均一するために好
ましい。第1凝固浴と第2凝固浴の温度差は、5℃以
内、特に3℃以内が好ましい。
【0051】さらに、有機溶剤の種類も同一にすること
が好ましく、特に第1〜第3の有機溶剤の種類を同一に
することが好ましい。そうすることにより、凝固糸の凝
固を均一できることに加え、溶剤回収も容易になる。
が好ましく、特に第1〜第3の有機溶剤の種類を同一に
することが好ましい。そうすることにより、凝固糸の凝
固を均一できることに加え、溶剤回収も容易になる。
【0052】従って、紡糸原液のための第1の有機溶
剤、第1凝固浴中の第2の有機溶剤、および第2凝固浴
中の第3の有機溶剤のいずれにもジメチルアセトアミド
を用いることが最も好ましい。
剤、第1凝固浴中の第2の有機溶剤、および第2凝固浴
中の第3の有機溶剤のいずれにもジメチルアセトアミド
を用いることが最も好ましい。
【0053】なお、第1凝固浴から引き取った凝固糸
は、該凝固糸が含有する液体中の有機溶剤の濃度が、該
第1凝固浴における有機溶剤の濃度を超えているので、
凝固糸の表面だけが凝固した半凝固状態にある。このよ
うな状態にて、第1凝固浴中から凝固糸を引き取ること
により、次の第2凝固浴中での延伸性が良好になる。
は、該凝固糸が含有する液体中の有機溶剤の濃度が、該
第1凝固浴における有機溶剤の濃度を超えているので、
凝固糸の表面だけが凝固した半凝固状態にある。このよ
うな状態にて、第1凝固浴中から凝固糸を引き取ること
により、次の第2凝固浴中での延伸性が良好になる。
【0054】凝固液を含んだままの膨潤状態にある凝固
糸は、空気中で延伸することも可能であるが、この凝固
糸を上記のように第2凝固液中で延伸する手段を採るこ
とにより、凝固糸の凝固を促進させることができ、また
延伸工程での温度制御が容易になる。
糸は、空気中で延伸することも可能であるが、この凝固
糸を上記のように第2凝固液中で延伸する手段を採るこ
とにより、凝固糸の凝固を促進させることができ、また
延伸工程での温度制御が容易になる。
【0055】また、第2凝固浴中での凝固糸の延伸倍率
が大き過ぎると、単繊維切れが発生し易くなり、また延
伸倍率が小さ過ぎても第2凝固浴での延伸による繊維束
の配向効果が得られない。
が大き過ぎると、単繊維切れが発生し易くなり、また延
伸倍率が小さ過ぎても第2凝固浴での延伸による繊維束
の配向効果が得られない。
【0056】次いで、第2凝固液中での延伸を終えた膨
潤状態にある繊維束は、さらに4倍以上湿熱延伸を行
う。湿熱延伸は通常50〜98℃の延伸浴中で1回ある
いは2回以上の多段に分割するなどして行われ、その前
後あるいは同時に洗浄を行ってもよい。この湿熱延伸倍
率は、好ましくは4.2倍以上であり、通常は10倍以
下、好ましくは8倍以下である。
潤状態にある繊維束は、さらに4倍以上湿熱延伸を行
う。湿熱延伸は通常50〜98℃の延伸浴中で1回ある
いは2回以上の多段に分割するなどして行われ、その前
後あるいは同時に洗浄を行ってもよい。この湿熱延伸倍
率は、好ましくは4.2倍以上であり、通常は10倍以
下、好ましくは8倍以下である。
【0057】本発明の前駆体繊維束の製造方法において
は、湿熱延伸を施した後の乾燥前の膨潤繊維束の膨潤度
が70重量%以下であるようにすることが、続く乾燥工
程での乾燥を容易にするだけでなく、該繊維束を前駆体
とする炭素繊維を高性能炭素繊維になす点で好ましい。
第1凝固浴中での凝固糸の製造の際の「凝固糸の引き取
り速度/ノズルからの紡糸原液の吐出線速度」を下げる
ことによって、第1凝固浴中での凝固糸の凝固を均一な
ものにし、これを第2凝固液中にて延伸することにより
凝固糸の凝固と配向を促進させ、さらに4倍以上の湿熱
延伸を行うことにより、内部まで均一に配向した糸条に
することができ、延伸を施した後の乾燥前の膨潤繊維束
の膨潤度が70重量%以下であるようにすることができ
る。
は、湿熱延伸を施した後の乾燥前の膨潤繊維束の膨潤度
が70重量%以下であるようにすることが、続く乾燥工
程での乾燥を容易にするだけでなく、該繊維束を前駆体
とする炭素繊維を高性能炭素繊維になす点で好ましい。
第1凝固浴中での凝固糸の製造の際の「凝固糸の引き取
り速度/ノズルからの紡糸原液の吐出線速度」を下げる
ことによって、第1凝固浴中での凝固糸の凝固を均一な
ものにし、これを第2凝固液中にて延伸することにより
凝固糸の凝固と配向を促進させ、さらに4倍以上の湿熱
延伸を行うことにより、内部まで均一に配向した糸条に
することができ、延伸を施した後の乾燥前の膨潤繊維束
の膨潤度が70重量%以下であるようにすることができ
る。
【0058】なお、乾燥前の膨潤状態にある繊維束の膨
潤度は、膨潤状態にある繊維束の付着液を遠心分離機
(3000rpm、15分)によって除去した後の重量
wと、これを110℃×2時間の熱風乾燥機で乾燥した
後の重量w0とにより、 膨潤度(%)=(w−w0)×100/w0 によって求めた数値である。
潤度は、膨潤状態にある繊維束の付着液を遠心分離機
(3000rpm、15分)によって除去した後の重量
wと、これを110℃×2時間の熱風乾燥機で乾燥した
後の重量w0とにより、 膨潤度(%)=(w−w0)×100/w0 によって求めた数値である。
【0059】次いで、湿熱延伸後の繊維束は、公知の方
法によって油剤処理を行った後、乾燥緻密化し、さらに
1.2倍以下の乾熱延伸を行うことが重要である。乾熱
延伸は加熱ロールあるいは熱板を使用して行われるが、
1.2倍以下の延伸とすることにより、トータル繊度3
000texの繊維束であっても単繊維切れなどを伴わ
ずに安定した延伸が可能で、且つ繊維の緻密性や結晶配
向度の向上により、耐炎化工程での蓄熱切断温度の高い
前駆体繊維束が得られる。乾熱延伸の倍率を1.2倍を
越えて行うと、単繊維切れ等のトラブルが発生し、前駆
体繊維束の生産性低下とそれを焼成して得られる炭素繊
維の品質低下を招くため好ましくない。また、乾熱延伸
倍率は1より大きい範囲で行われ、好ましくは1.05
以上で行われる。
法によって油剤処理を行った後、乾燥緻密化し、さらに
1.2倍以下の乾熱延伸を行うことが重要である。乾熱
延伸は加熱ロールあるいは熱板を使用して行われるが、
1.2倍以下の延伸とすることにより、トータル繊度3
000texの繊維束であっても単繊維切れなどを伴わ
ずに安定した延伸が可能で、且つ繊維の緻密性や結晶配
向度の向上により、耐炎化工程での蓄熱切断温度の高い
前駆体繊維束が得られる。乾熱延伸の倍率を1.2倍を
越えて行うと、単繊維切れ等のトラブルが発生し、前駆
体繊維束の生産性低下とそれを焼成して得られる炭素繊
維の品質低下を招くため好ましくない。また、乾熱延伸
倍率は1より大きい範囲で行われ、好ましくは1.05
以上で行われる。
【0060】
【実施例】以下に実施例を用いて本発明をさらに具体的
に説明する。実施例および比較例における、前駆体繊維
束の表面の皺の観察、前駆体繊維束の単繊維引っ張り強
度・弾性率、ヨウ素吸着量、広角X線解析による結晶配
向度、および炭素繊維(表中ではCFと略す)のストラ
ンド強度・弾性率は以下の方法で測定した。
に説明する。実施例および比較例における、前駆体繊維
束の表面の皺の観察、前駆体繊維束の単繊維引っ張り強
度・弾性率、ヨウ素吸着量、広角X線解析による結晶配
向度、および炭素繊維(表中ではCFと略す)のストラ
ンド強度・弾性率は以下の方法で測定した。
【0061】(イ)「皺の観察」 皺の観察は、表面走査型電子顕微鏡を用いて、繊維表面
形態を高倍率で観察し、不特定に選択した繊維表面の1
0μm×10μmの範囲で長手方向に連続して観察され
る皺をカウントした。
形態を高倍率で観察し、不特定に選択した繊維表面の1
0μm×10μmの範囲で長手方向に連続して観察され
る皺をカウントした。
【0062】(ロ)「前駆体繊維束の単繊維引っ張り強
度・弾性率」 前駆体繊維束から単繊維を採取し、温度23℃、湿度5
0%の雰囲気中、試料長(掴み間隔)2cm、引っ張り
速度2cm/分にてテンシロンによる引っ張り試験を行
った。
度・弾性率」 前駆体繊維束から単繊維を採取し、温度23℃、湿度5
0%の雰囲気中、試料長(掴み間隔)2cm、引っ張り
速度2cm/分にてテンシロンによる引っ張り試験を行
った。
【0063】強度・弾性率表示は、単繊維の繊度(dt
ex;単繊維10000mあたりの重量)を求め、cN
/dtexにて示した。
ex;単繊維10000mあたりの重量)を求め、cN
/dtexにて示した。
【0064】(ハ)「ヨウ素吸着量の測定法」 前駆体繊維束2gを精秤採取し、100mlの三角フラ
スコに入れる。これにヨウ素溶液(ヨウ化カリウム10
0g、酢酸90g、2,4−ジクロロフェノール10
g、ヨウ素50gを蒸留水に溶解し1000mlの溶液
とする)100mlを入れ60℃で50分間振とうしヨ
ウ素吸着処理を行った。この後吸着処理糸を30分間イ
オン交換水にて洗浄し、さらに蒸留水にて洗い流した
後、遠心脱水する。脱水糸を300mlビーカーに入
れ、ジメチルスルホキシド200mlを加え60℃にて
溶解した。この溶液を0.01mol/l硝酸銀水溶液
で電位差滴定しヨウ素吸着量を求めた。
スコに入れる。これにヨウ素溶液(ヨウ化カリウム10
0g、酢酸90g、2,4−ジクロロフェノール10
g、ヨウ素50gを蒸留水に溶解し1000mlの溶液
とする)100mlを入れ60℃で50分間振とうしヨ
ウ素吸着処理を行った。この後吸着処理糸を30分間イ
オン交換水にて洗浄し、さらに蒸留水にて洗い流した
後、遠心脱水する。脱水糸を300mlビーカーに入
れ、ジメチルスルホキシド200mlを加え60℃にて
溶解した。この溶液を0.01mol/l硝酸銀水溶液
で電位差滴定しヨウ素吸着量を求めた。
【0065】(ニ)「広角X線解析による結晶配向度の
測定法」 広角X線解析法によるアクリロニトリル系前駆体繊維の
赤道線上解析点の円周方向強度分布の半価幅Hから次式
によって算出される値である。 配向度π(%)=((180−H)/180)×100 広角X線解析(カウンター法) (1)X線発生装置 理学電気(株)製 RU−200 X線源:CuKα(Niフィルター使用) 出力:40KV 190mA (2)ゴニオメーター 理学電気(株)製 2155D1 スリット系:2MM 0.5゜×1゜ 検出器:シンチレーションカウンター (ホ)「炭素繊維のストランド強度・弾性率」 JIS−7601に準じて測定した。
測定法」 広角X線解析法によるアクリロニトリル系前駆体繊維の
赤道線上解析点の円周方向強度分布の半価幅Hから次式
によって算出される値である。 配向度π(%)=((180−H)/180)×100 広角X線解析(カウンター法) (1)X線発生装置 理学電気(株)製 RU−200 X線源:CuKα(Niフィルター使用) 出力:40KV 190mA (2)ゴニオメーター 理学電気(株)製 2155D1 スリット系:2MM 0.5゜×1゜ 検出器:シンチレーションカウンター (ホ)「炭素繊維のストランド強度・弾性率」 JIS−7601に準じて測定した。
【0066】[実施例1]アクリロニトリル、アクリル
酸メチル、メタクリル酸を過硫酸アンモニウム−亜硫酸
水素アンモニウム、硫酸鉄を使用して水系懸濁重合によ
り共重合し、アクリロニトリル単位/アクリル酸メチル
単位/メタクリル酸単位=95/4/1(重量)からな
るアクリロニトリル系共重合体を得た後、該共重合体を
ジメチルアセトアミドに溶解し、濃度21重量%の紡糸
原液を調製した。
酸メチル、メタクリル酸を過硫酸アンモニウム−亜硫酸
水素アンモニウム、硫酸鉄を使用して水系懸濁重合によ
り共重合し、アクリロニトリル単位/アクリル酸メチル
単位/メタクリル酸単位=95/4/1(重量)からな
るアクリロニトリル系共重合体を得た後、該共重合体を
ジメチルアセトアミドに溶解し、濃度21重量%の紡糸
原液を調製した。
【0067】この紡糸原液を孔数50,000、孔径4
5μmの紡糸口金を通して、温度35℃、濃度65重量
%のジメチルアセトアミド水溶液からなる第1凝固浴中
に吐出させて凝固糸とすると共に、該第1凝固浴中から
この凝固糸を、紡糸原液の吐出線速度の0.343倍の
引き取り速度で引き取った後、引き続いて温度35℃、
濃度65重量%のジメチルアセトアミド水溶液からなる
第2凝固浴中にて1.7倍に延伸し、次いで水洗と同時
に1.8倍の延伸を行い、さらに沸水中で2.5倍の延
伸を行った。
5μmの紡糸口金を通して、温度35℃、濃度65重量
%のジメチルアセトアミド水溶液からなる第1凝固浴中
に吐出させて凝固糸とすると共に、該第1凝固浴中から
この凝固糸を、紡糸原液の吐出線速度の0.343倍の
引き取り速度で引き取った後、引き続いて温度35℃、
濃度65重量%のジメチルアセトアミド水溶液からなる
第2凝固浴中にて1.7倍に延伸し、次いで水洗と同時
に1.8倍の延伸を行い、さらに沸水中で2.5倍の延
伸を行った。
【0068】湿熱延伸後の前駆体繊維束の膨潤度は66
重量%であり、続いてオイリング処理を施した後、加熱
ロールによる乾燥を実施したが乾燥状態は良好であり、
引き続いて加熱ロールで1.11倍の乾熱延伸を実施
し、単繊維繊度1.1dtex、トータル繊度5500
texの前駆体繊維束を得た。この時の最終紡糸速度は
80m/分であった。
重量%であり、続いてオイリング処理を施した後、加熱
ロールによる乾燥を実施したが乾燥状態は良好であり、
引き続いて加熱ロールで1.11倍の乾熱延伸を実施
し、単繊維繊度1.1dtex、トータル繊度5500
texの前駆体繊維束を得た。この時の最終紡糸速度は
80m/分であった。
【0069】紡糸工程中、単繊維切れや毛羽の発生はほ
とんど認められず、紡糸安定性は良好であった。この前
駆体繊維束の表面には、繊維束の長手方向に実質的に連
続する高さ0.8μmの皺が5本存在しており、該前駆
体繊維束の単繊維引っ張り強度は6.3cN/dte
x、引っ張り弾性率は125cN/dtex、ヨウ素吸
着量は0.9重量%、広角X線解析による結晶配向度π
は87.3%であり、蓄熱切断温度は247℃であっ
た。尚、式(1)の右辺の値は243.5℃であり、式
(1)を満たしている。
とんど認められず、紡糸安定性は良好であった。この前
駆体繊維束の表面には、繊維束の長手方向に実質的に連
続する高さ0.8μmの皺が5本存在しており、該前駆
体繊維束の単繊維引っ張り強度は6.3cN/dte
x、引っ張り弾性率は125cN/dtex、ヨウ素吸
着量は0.9重量%、広角X線解析による結晶配向度π
は87.3%であり、蓄熱切断温度は247℃であっ
た。尚、式(1)の右辺の値は243.5℃であり、式
(1)を満たしている。
【0070】この前駆体繊維束を空気中220〜250
℃の熱風循環式耐炎化炉にて伸張率0%で60分間熱処
理し、密度1.36g/cm3の耐炎化糸とし、引き続
きこの繊維を窒素雰囲気下最高温度600℃、伸張率5
%にて1.5分間低温熱処理し、さらに同雰囲気下で最
高温度が1400℃の高温熱処理炉にて−4%の伸張の
下、約1.5分処理した。耐炎化工程や炭素化工程で糸
切れ発生は認められず、また、得られた炭素繊維のスト
ランド強度は4100MPa、ストランド弾性率は25
5GPaであった。
℃の熱風循環式耐炎化炉にて伸張率0%で60分間熱処
理し、密度1.36g/cm3の耐炎化糸とし、引き続
きこの繊維を窒素雰囲気下最高温度600℃、伸張率5
%にて1.5分間低温熱処理し、さらに同雰囲気下で最
高温度が1400℃の高温熱処理炉にて−4%の伸張の
下、約1.5分処理した。耐炎化工程や炭素化工程で糸
切れ発生は認められず、また、得られた炭素繊維のスト
ランド強度は4100MPa、ストランド弾性率は25
5GPaであった。
【0071】[実施例2]モノマーの仕込み比を変更し
た以外は実施例1と同様にして、アクリロニトリル単位
/アクリルアミド単位/メタクリル酸単位=97.1/
2/0.9(重量)からなるアクリロニトリル系共重合
体を得た後、該共重合体をジメチルアセトアミドに溶解
し、濃度21重量%の紡糸原液を調製した。
た以外は実施例1と同様にして、アクリロニトリル単位
/アクリルアミド単位/メタクリル酸単位=97.1/
2/0.9(重量)からなるアクリロニトリル系共重合
体を得た後、該共重合体をジメチルアセトアミドに溶解
し、濃度21重量%の紡糸原液を調製した。
【0072】この紡糸原液を孔数50,000、孔径5
0μmの紡糸口金を通して、温度35℃、濃度60重量
%のジメチルアセトアミド水溶液からなる第1凝固浴中
に吐出させて凝固糸とすると共に、該第1凝固浴中から
この凝固糸を、紡糸原液の吐出線速度の0.4倍の引き
取り速度で引き取った後、引き続いて温度35℃、濃度
60重量%のジメチルアセトアミド水溶液からなる第2
凝固浴中にて1.7倍に延伸し、次いで水洗と同時に
1.7倍の延伸を行い、さらに沸水中で2.8倍の延伸
を行った。
0μmの紡糸口金を通して、温度35℃、濃度60重量
%のジメチルアセトアミド水溶液からなる第1凝固浴中
に吐出させて凝固糸とすると共に、該第1凝固浴中から
この凝固糸を、紡糸原液の吐出線速度の0.4倍の引き
取り速度で引き取った後、引き続いて温度35℃、濃度
60重量%のジメチルアセトアミド水溶液からなる第2
凝固浴中にて1.7倍に延伸し、次いで水洗と同時に
1.7倍の延伸を行い、さらに沸水中で2.8倍の延伸
を行った。
【0073】湿熱延伸後の前駆体繊維束の膨潤度は65
重量%であり、続いてオイリング処理を施した後、加熱
ロールによる乾燥を実施したが乾燥状態は良好であり、
引き続いて加熱ロールで1.11倍の乾熱延伸を実施
し、単繊維繊度1.1dtex、トータル繊度5500
texの前駆体繊維束を得た。この時の最終紡糸速度は
80m/分であった。
重量%であり、続いてオイリング処理を施した後、加熱
ロールによる乾燥を実施したが乾燥状態は良好であり、
引き続いて加熱ロールで1.11倍の乾熱延伸を実施
し、単繊維繊度1.1dtex、トータル繊度5500
texの前駆体繊維束を得た。この時の最終紡糸速度は
80m/分であった。
【0074】紡糸工程中、単繊維切れや毛羽の発生はほ
とんど認められず、紡糸安定性は良好であった。この前
駆体繊維束の表面には、繊維束の長手方向に実質的に連
続する高さ0.9μmの皺が5本存在しており、該前駆
体繊維束の単繊維引っ張り強度は6.5cN/dte
x、引っ張り弾性率は125cN/dtex、ヨウ素吸
着量は0.7重量%、広角X線解析による結晶配向度π
は87.5%であり、蓄熱切断温度は248℃であっ
た。式(1)の右辺の値は243.5℃であり、式
(1)を満たしている。
とんど認められず、紡糸安定性は良好であった。この前
駆体繊維束の表面には、繊維束の長手方向に実質的に連
続する高さ0.9μmの皺が5本存在しており、該前駆
体繊維束の単繊維引っ張り強度は6.5cN/dte
x、引っ張り弾性率は125cN/dtex、ヨウ素吸
着量は0.7重量%、広角X線解析による結晶配向度π
は87.5%であり、蓄熱切断温度は248℃であっ
た。式(1)の右辺の値は243.5℃であり、式
(1)を満たしている。
【0075】この前駆体繊維束を実施例1と同様に処理
し、密度1.36g/cm3の耐炎化糸とし、引き続
き、実施例1と同様に処理して炭素繊維を得た。耐炎化
工程や炭素化工程で糸切れ発生は認められず、また、得
られた炭素繊維のストランド強度は4200MPa、ス
トランド弾性率は255GPaであった。
し、密度1.36g/cm3の耐炎化糸とし、引き続
き、実施例1と同様に処理して炭素繊維を得た。耐炎化
工程や炭素化工程で糸切れ発生は認められず、また、得
られた炭素繊維のストランド強度は4200MPa、ス
トランド弾性率は255GPaであった。
【0076】[実施例3]孔数35,000、口径50
μmの紡糸口金を使用する以外は、実施例2と同様にし
て、単繊維繊度1.1dtex、トータル繊度3850
texの前駆体繊維束を得た。
μmの紡糸口金を使用する以外は、実施例2と同様にし
て、単繊維繊度1.1dtex、トータル繊度3850
texの前駆体繊維束を得た。
【0077】紡糸工程中、単繊維切れや毛羽の発生はほ
とんど認められず、紡糸安定性は良好であった。この前
駆体繊維束の表面には、繊維束の長手方向に実質的に連
続する高さ0.9μmの皺が5本存在しており、該前駆
体繊維束の単繊維引っ張り強度は6.5cN/dte
x、引っ張り弾性率は125cN/dtex、ヨウ素吸
着量は0.7重量%、広角X線解析による結晶配向度π
は87.5%であり、蓄熱切断温度は253℃であっ
た。尚、式(1)の右辺の値は248.45℃であり、
式(1)を満たしている。
とんど認められず、紡糸安定性は良好であった。この前
駆体繊維束の表面には、繊維束の長手方向に実質的に連
続する高さ0.9μmの皺が5本存在しており、該前駆
体繊維束の単繊維引っ張り強度は6.5cN/dte
x、引っ張り弾性率は125cN/dtex、ヨウ素吸
着量は0.7重量%、広角X線解析による結晶配向度π
は87.5%であり、蓄熱切断温度は253℃であっ
た。尚、式(1)の右辺の値は248.45℃であり、
式(1)を満たしている。
【0078】この前駆体繊維束を空気中220〜260
℃の熱風循環式耐炎化炉にて伸張率0%で50分間熱処
理し、密度1.36g/cm3の耐炎化糸とし、引き続
き、実施例1と同様に処理して炭素繊維を得た。耐炎化
工程や炭素化工程で糸切れ発生は認められず、また、得
られた炭素繊維のストランド強度は4300MPa、ス
トランド弾性率は255GPaであった。
℃の熱風循環式耐炎化炉にて伸張率0%で50分間熱処
理し、密度1.36g/cm3の耐炎化糸とし、引き続
き、実施例1と同様に処理して炭素繊維を得た。耐炎化
工程や炭素化工程で糸切れ発生は認められず、また、得
られた炭素繊維のストランド強度は4300MPa、ス
トランド弾性率は255GPaであった。
【0079】[実施例4]孔数70,000、口径50
μmの紡糸口金を使用した以外は、実施例2と同様にし
て、単繊維繊度1.1dtex、トータル繊度7700
texの前駆体繊維束を得た。
μmの紡糸口金を使用した以外は、実施例2と同様にし
て、単繊維繊度1.1dtex、トータル繊度7700
texの前駆体繊維束を得た。
【0080】紡糸工程中、単繊維切れや毛羽の発生はほ
とんど認められず、紡糸安定性は良好であった。この前
駆体繊維束の表面には、繊維束の長手方向に実質的に連
続する高さ0.9μmの皺が5本存在しており、該前駆
体繊維束の単繊維引っ張り強度は6.5cN/dte
x、引っ張り弾性率は125cN/dtex、ヨウ素吸
着量は0.7重量%、広角X線解析による結晶配向度π
は87.5%であり、蓄熱切断温度は240℃であっ
た。式(1)の右辺の値は236.9℃であり、式
(1)を満たしている。
とんど認められず、紡糸安定性は良好であった。この前
駆体繊維束の表面には、繊維束の長手方向に実質的に連
続する高さ0.9μmの皺が5本存在しており、該前駆
体繊維束の単繊維引っ張り強度は6.5cN/dte
x、引っ張り弾性率は125cN/dtex、ヨウ素吸
着量は0.7重量%、広角X線解析による結晶配向度π
は87.5%であり、蓄熱切断温度は240℃であっ
た。式(1)の右辺の値は236.9℃であり、式
(1)を満たしている。
【0081】この前駆体繊維束を空気中220〜243
℃の熱風循環式耐炎化炉にて伸張率0%で70分間熱処
理し、密度1.36g/cm3の耐炎化糸とし、引き続
き、実施例1と同様に処理して炭素繊維を得た。耐炎化
工程や炭素化工程で糸切れ発生は認められず、また、得
られた炭素繊維のストランド強度は4100MPa、ス
トランド弾性率は255GPaであった。
℃の熱風循環式耐炎化炉にて伸張率0%で70分間熱処
理し、密度1.36g/cm3の耐炎化糸とし、引き続
き、実施例1と同様に処理して炭素繊維を得た。耐炎化
工程や炭素化工程で糸切れ発生は認められず、また、得
られた炭素繊維のストランド強度は4100MPa、ス
トランド弾性率は255GPaであった。
【0082】[比較例1]実施例1の紡糸原液を、孔数
50,000、孔径45μmの紡糸口金を通して、温度
35℃、濃度65重量%のジメチルアセトアミド水溶液
からなる第1凝固浴中に吐出させて凝固糸とし、該第1
凝固浴中からこの凝固糸を、紡糸原液の吐出線速度の
0.343倍の引き取り速度で引き取った後、第2凝固
浴を使用せずに空中にて1.7倍に延伸し、次いで水洗
と同時に1.8倍の延伸を行い、さらに沸水中で2.7
8倍の延伸を行い、続いてオイリング処理を施した後、
加熱ロールによる乾燥を実施し、単繊維繊度1.1dt
ex、トータル繊度5500texの前駆体繊維束を得
た。乾燥前の膨潤状態にある繊維束の膨潤度は82重量
%であった為、乾燥には長時間を要した。
50,000、孔径45μmの紡糸口金を通して、温度
35℃、濃度65重量%のジメチルアセトアミド水溶液
からなる第1凝固浴中に吐出させて凝固糸とし、該第1
凝固浴中からこの凝固糸を、紡糸原液の吐出線速度の
0.343倍の引き取り速度で引き取った後、第2凝固
浴を使用せずに空中にて1.7倍に延伸し、次いで水洗
と同時に1.8倍の延伸を行い、さらに沸水中で2.7
8倍の延伸を行い、続いてオイリング処理を施した後、
加熱ロールによる乾燥を実施し、単繊維繊度1.1dt
ex、トータル繊度5500texの前駆体繊維束を得
た。乾燥前の膨潤状態にある繊維束の膨潤度は82重量
%であった為、乾燥には長時間を要した。
【0083】該前駆体繊維束の単繊維引っ張り強度は
5.5cN/dtex、引っ張り弾性率は110cN/
dtex、ヨウ素吸着量は1.5重量%、広角X線解析
による結晶配向度πは84.5%であり、蓄熱切断温度
は240℃であった。尚、式(1)の右辺の値は24
3.5℃である。
5.5cN/dtex、引っ張り弾性率は110cN/
dtex、ヨウ素吸着量は1.5重量%、広角X線解析
による結晶配向度πは84.5%であり、蓄熱切断温度
は240℃であった。尚、式(1)の右辺の値は24
3.5℃である。
【0084】この前駆体繊維束を、実施例1と同様に空
気中220〜250℃の熱風循環式耐炎化炉にて伸張率
0%で60分間熱処理しようとしたところ、処理中に切
断した。
気中220〜250℃の熱風循環式耐炎化炉にて伸張率
0%で60分間熱処理しようとしたところ、処理中に切
断した。
【0085】[比較例2]実施例2の紡糸原液を、孔数
50,000、孔径50μmの紡糸口金を通して、温度
35℃、濃度60重量%のジメチルアセトアミド水溶液
からなる第1凝固浴中に吐出させて凝固糸とすると共
に、該第1凝固浴中からこの凝固糸を、紡糸原液の吐出
線速度の0.4倍の引き取り速度で引き取った後、引き
続いて温度35℃、濃度60重量%のジメチルアセトア
ミド水溶液からなる第2凝固浴中にて1.7倍に延伸
し、次いで水洗と同時に1.7倍の延伸を行い、さらに
沸水中で3.11倍の延伸い、続いてオイリング処理を
施した後、乾燥し、単繊維繊度1.1dtex、トータ
ル繊度5500texの前駆体繊維束を得た。
50,000、孔径50μmの紡糸口金を通して、温度
35℃、濃度60重量%のジメチルアセトアミド水溶液
からなる第1凝固浴中に吐出させて凝固糸とすると共
に、該第1凝固浴中からこの凝固糸を、紡糸原液の吐出
線速度の0.4倍の引き取り速度で引き取った後、引き
続いて温度35℃、濃度60重量%のジメチルアセトア
ミド水溶液からなる第2凝固浴中にて1.7倍に延伸
し、次いで水洗と同時に1.7倍の延伸を行い、さらに
沸水中で3.11倍の延伸い、続いてオイリング処理を
施した後、乾燥し、単繊維繊度1.1dtex、トータ
ル繊度5500texの前駆体繊維束を得た。
【0086】紡糸工程中、単繊維切れや毛羽の発生はほ
とんど認められず、乾燥前の膨潤状態にある繊維束の膨
潤度は61重量%であり、乾燥は良好であったが、該前
駆体繊維束の単繊維引っ張り強度は5.5cN/dte
x、引っ張り弾性率は115cN/dtex、ヨウ素吸
着量は1.1重量%、広角X線解析による結晶配向度π
は85.5%であり、蓄熱切断温度は240℃であっ
た。尚、式(1)の右辺の値は243.5℃である。
とんど認められず、乾燥前の膨潤状態にある繊維束の膨
潤度は61重量%であり、乾燥は良好であったが、該前
駆体繊維束の単繊維引っ張り強度は5.5cN/dte
x、引っ張り弾性率は115cN/dtex、ヨウ素吸
着量は1.1重量%、広角X線解析による結晶配向度π
は85.5%であり、蓄熱切断温度は240℃であっ
た。尚、式(1)の右辺の値は243.5℃である。
【0087】この前駆体繊維束を、実施例2と同様に空
気中220〜250℃の熱風循環式耐炎化炉にて伸張率
0%で60分間熱処理しようとしたところ、処理中に切
断した。
気中220〜250℃の熱風循環式耐炎化炉にて伸張率
0%で60分間熱処理しようとしたところ、処理中に切
断した。
【0088】また、この前駆体繊維束を空気中220〜
240℃の熱風循環式耐炎化炉にて伸張率0%で80分
間熱処理し、密度1.36g/cm3の耐炎化糸とし、
引き続き、実施例1と同様に処理して炭素繊維を得た。
耐炎化工程や炭素化工程で糸切れ発生は認められなかっ
たが、得られた炭素繊維のストランド強度は3700M
Pa、ストランド弾性率は250GPaであった。
240℃の熱風循環式耐炎化炉にて伸張率0%で80分
間熱処理し、密度1.36g/cm3の耐炎化糸とし、
引き続き、実施例1と同様に処理して炭素繊維を得た。
耐炎化工程や炭素化工程で糸切れ発生は認められなかっ
たが、得られた炭素繊維のストランド強度は3700M
Pa、ストランド弾性率は250GPaであった。
【0089】[比較例3]実施例2の紡糸原液を、孔数
50,000、孔径50μmの紡糸口金を通して、温度
35℃、濃度60重量%のジメチルアセトアミド水溶液
からなる第1凝固浴中に吐出させて凝固糸とすると共
に、該第1凝固浴中からこの凝固糸を、紡糸原液の吐出
線速度の0.4倍の引き取り速度で引き取った後、引き
続いて温度35℃、濃度60重量%のジメチルアセトア
ミド水溶液からなる第2凝固浴中にて1.7倍に延伸
し、次いで水洗と同時に1.7倍の延伸を行い、さらに
沸水中で2.2倍の延伸を行なった。湿熱延伸後の前駆
体繊維束の膨潤度は62重量%であり、続いてオイリン
グ処理を施した後、加熱ロールによる乾燥を実施し、引
き続いて加熱ロールで1.41倍の乾熱延伸を実施し、
単繊維繊度1.1dtexの前駆体繊維束を得た。この
時の最終紡糸速度は80m/分であった。
50,000、孔径50μmの紡糸口金を通して、温度
35℃、濃度60重量%のジメチルアセトアミド水溶液
からなる第1凝固浴中に吐出させて凝固糸とすると共
に、該第1凝固浴中からこの凝固糸を、紡糸原液の吐出
線速度の0.4倍の引き取り速度で引き取った後、引き
続いて温度35℃、濃度60重量%のジメチルアセトア
ミド水溶液からなる第2凝固浴中にて1.7倍に延伸
し、次いで水洗と同時に1.7倍の延伸を行い、さらに
沸水中で2.2倍の延伸を行なった。湿熱延伸後の前駆
体繊維束の膨潤度は62重量%であり、続いてオイリン
グ処理を施した後、加熱ロールによる乾燥を実施し、引
き続いて加熱ロールで1.41倍の乾熱延伸を実施し、
単繊維繊度1.1dtexの前駆体繊維束を得た。この
時の最終紡糸速度は80m/分であった。
【0090】紡糸工程中、単繊維切れや毛羽が多く見ら
れ、安定した紡糸が困難であった。
れ、安定した紡糸が困難であった。
【0091】
【発明の効果】本発明の炭素繊維用アクリロニトリル系
前駆体繊維束は、トータル繊度3000tex以上のい
わゆるラージトウでありながら、従来のラージトウより
も単繊維引っ張り強度や引っ張り弾性率、および繊維軸
方向の結晶配向度が高く、炭素繊維とした場合に優れた
性能を発現することができる。
前駆体繊維束は、トータル繊度3000tex以上のい
わゆるラージトウでありながら、従来のラージトウより
も単繊維引っ張り強度や引っ張り弾性率、および繊維軸
方向の結晶配向度が高く、炭素繊維とした場合に優れた
性能を発現することができる。
【0092】また、蓄熱切断温度が高いため、従来のラ
ージトウよりも短時間で耐炎化処理が可能であり、紡糸
工程のみならず焼成工程の生産性も非常に優れている。
ージトウよりも短時間で耐炎化処理が可能であり、紡糸
工程のみならず焼成工程の生産性も非常に優れている。
【0093】さらに、該前駆体繊維束の表面に、繊維束
の長手方向に実質的に連続する高さ0.5〜1.0μm
の皺が2〜15本存在しているので、該前駆体繊維束は
優れた収束性を有しているだけでなく、これを前駆体と
する炭素繊維糸によりプリプレグを製造する際の開繊性
が良好である。
の長手方向に実質的に連続する高さ0.5〜1.0μm
の皺が2〜15本存在しているので、該前駆体繊維束は
優れた収束性を有しているだけでなく、これを前駆体と
する炭素繊維糸によりプリプレグを製造する際の開繊性
が良好である。
【0094】また、本発明の炭素繊維用アクリロニトリ
ル系前駆体繊維束の製造方法によれば、上記のように単
繊維引っ張り強度や引っ張り弾性率、および繊維軸方向
の結晶配向度が高く、蓄熱切断温度が高く、且つ炭素繊
維とした場合に優れた性能を発現することができるアク
リロニトリル系前駆体繊維束を、容易且つ的確に製造す
ることができる。
ル系前駆体繊維束の製造方法によれば、上記のように単
繊維引っ張り強度や引っ張り弾性率、および繊維軸方向
の結晶配向度が高く、蓄熱切断温度が高く、且つ炭素繊
維とした場合に優れた性能を発現することができるアク
リロニトリル系前駆体繊維束を、容易且つ的確に製造す
ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 景山 義隆 広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイヨ ン株式会社中央技術研究所内 (72)発明者 西田 俊彦 広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイヨ ン株式会社中央技術研究所内 Fターム(参考) 4L035 BB06 BB11 BB15 BB17 BB20 BB61 BB66 BB69 BB82 BB85 BB91 DD08 DD20 EE01 EE08 EE20 FF01 GG01 MB03 MB06 MB09 MB19 4L037 CS03 CT10 FA03 FA06 PA55 PA57 PA68 PA69 PC10 PC11 PC13 PS00 PS02 PS20
Claims (5)
- 【請求項1】 95重量%以上のアクリロニトリル単位
を含有するアクリロニトリル系重合体からなるトータル
繊度3000tex以上の繊維束であって、トータル繊
度と蓄熱切断温度の関係が下記の式(1)を満足する炭
素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維束。 Y≧−0.003X+260 式(1) 〔式中、Yは蓄熱切断温度(℃)、Xはトータル繊度
(tex)を表す。〕 - 【請求項2】 繊維束の表面に、繊維束の長手方向に実
質的に連続する高さ0.5〜1.0μmの皺が2〜15
本存在しており、単繊維引っ張り強度6.0cN/dt
ex以上、単繊維引っ張り弾性率115cN/dtex
以上、広角X線回析による結晶配向度πが87%以上、
且つ該繊維束の繊維重量当たりのヨウ素吸着量が0.5
〜1.0重量%であることを特徴とする請求項1記載の
炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維束。 - 【請求項3】 アクリロニトリル系重合体を第1の有機
溶剤に溶解した紡糸原液を、アクリロニトリル系重合体
を溶解し得る第2の有機溶剤を濃度50〜70重量%で
含み、温度30〜50℃の有機溶剤水溶液からなる第1
凝固浴中に吐出させて凝固糸とし、 該第1凝固浴中からこの凝固糸を、紡糸原液の吐出線速
度の0.8倍以下の引き取り速度で引き取り、 次いでアクリロニトリル系重合体を溶解し得る第3の有
機溶剤を濃度50〜70重量%で含み、温度30〜50
℃の有機溶剤水溶液からなる第2凝固浴中にて1.1〜
3.0倍の延伸を施し、 さらに4倍以上の湿熱延伸と1.2倍以下の乾熱延伸を
行うことを特徴とする炭素繊維用アクリロニトリル系前
駆体繊維束の製造方法。 - 【請求項4】 湿熱延伸を施した後の乾燥前の膨潤繊維
束の膨潤度が70重量%以下であることを特徴とする請
求項3記載の炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維
束の製造方法。 - 【請求項5】 請求項1または請求項2に記載の炭素繊
維用アクリロニトリル系前駆体繊維束を、耐炎化し、炭
素化して得られる炭素繊維。
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