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JP2002348965A - ナット定着装置および補強構造 - Google Patents

ナット定着装置および補強構造

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Publication number
JP2002348965A
JP2002348965A JP2001155486A JP2001155486A JP2002348965A JP 2002348965 A JP2002348965 A JP 2002348965A JP 2001155486 A JP2001155486 A JP 2001155486A JP 2001155486 A JP2001155486 A JP 2001155486A JP 2002348965 A JP2002348965 A JP 2002348965A
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JP
Japan
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nut
force
brace
reinforcing structure
fixing device
Prior art date
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Application number
JP2001155486A
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Masayoshi Kurashige
正義 倉重
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Neturen Co Ltd
Original Assignee
Neturen Co Ltd
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Publication date
Application filed by Neturen Co Ltd filed Critical Neturen Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 弾性限界を超える引張力が繰り返し作用した
場合でも、構造体の変形を抑制できるナット定着装置お
よび補強構造を提供すること。 【解決手段】 基本構造40にその一端側で係合された
ボルト部材52と、このボルト部材52の他端側に螺合
されて基本構造40に係合されたナット部材53とを備
えた補強構造において、補強構造10は、ナット部材5
3をボルト部材52に対して締付け方向に付勢するナッ
ト定着装置20を備えている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、鉄骨構
造、木構造等の建築物をブレースで補強する補強構造
や、土木構造物を補強する補強構造に利用できる。
【0002】
【背景技術】従来、ビルや住宅等の建築構造物におい
て、地震力、風圧力等による建物の変形を防ぐための補
強としてブレースを備えた補強構造がある。ブレース
は、柱や梁で構成された長方形の構面の対角線に設けら
れた斜材であって、地震力や風圧力によって構面が変形
しようとすると、この構面の変形に引張応力によって抵
抗するものである。また、擁壁や橋梁等の土木構造物に
おいて、砂、粘土、シルト等で形成された比較的流動性
の高い構造体について、その変形を防止するために補強
材を備えた補強構造がある。補強材は、鋼棒、鋼線、F
RP等で形成され、その両端が構造体の2点に係合され
ることにより、構造体が変形して膨張しようとする場合
に、この膨張による変形に引張応力によって抵抗するも
のである。
【0003】図8(A)には、ブレースを用いた従来例
に係る補強構造100の立面図が示されている。補強構
造100は、建物の構造の一部を力学的モデルに置き換
えたものであり、略正方形状に形成された基本構造40
と、この基本構造40の対角線同士を連結することによ
り補強するブレース45,46とを含んで構成されてい
る。
【0004】基本構造40は、2本の柱41,42と、
これら柱41,42の下端間を連結しかつ地盤47上に
設けられた下梁44と、柱41,42の上端間を連結す
る上梁43とを備えている。柱41は、その上端の連結
部分Aで上梁43と連結され、その下端の連結部分Bで
下梁44と連結されている。柱42は、その上端の連結
部分Cで上梁43と連結され、その下端の連結部分Dで
下梁44と連結されている。
【0005】各連結部分A、B、C、Dは、水平方向を
軸として回動自在とされており、基本構造40は不安定
構造となっている。また、各連結部分A〜Dには、互い
に隣接する柱41,42および上、下梁43,44に跨
設されかつ挿通孔51を有するプレート50が設けられ
ているが、これらプレート50は、各連結部分A〜Dの
回動運動を妨げないようになっている。
【0006】ブレース45は、柱42および上梁43の
連結部分Cのプレート50と、柱41および下梁44の
連結部分Bのプレート50とを連結するものである。ブ
レース46は、柱41および上梁43の連結部分Aのプ
レート50と、柱42および下梁44の連結部分Dのプ
レート50とを連結するものである。各ブレース45,
46は、各プレート50の挿通孔51に挿通されるボル
ト部材52と、このボルト部材52の両端に螺合されて
各プレート50の外側に係合された2つのナット部材5
3とを含んで構成され、各プレート50同士が近接する
方向に変形しても内部応力は発生しないが、離隔する方
向に変形すると各ボルト部材52に引張応力が発生する
ようになっている。したがって、各ブレース45,46
によって、補強構造100は一次不静定構造とされてい
る。また、ボルト部材52の両端のナット部材53同士
の距離は、連結部分B−C間の距離、連結部分A−D間
の距離と等しく、Lとなっている。
【0007】図8(B)には、補強構造100に水平力
Pを付与した場合の立面図が示されている。補強構造1
00において、柱41の連結部分Aに水平力Pを図8
(B)中矢印方向(以降、正の向きと呼ぶ)に加える
と、柱41の上端は正の向きにδだけ移動する。この
時、連結部分A−D間の距離は縮まるが、ブレース46
はプレート50の外側に係合されているため、ブレース
46に引張力も圧縮力も作用しない。一方、連結部分B
−C間の距離は伸びるため、ブレース45に引張力が作
用し、ブレース45が基本構造40の変形に抵抗するこ
ととなる。
【0008】また、図示しないが、水平力Pを負の向き
に加えていくと、歪みδは負の向きに徐々に増加する。
この時、連結部分B−C間の距離は縮まるため、ブレー
ス45に引張力も圧縮力も作用しないが、連結部分A−
D間の距離は伸びるため、ブレース46に引張力が作用
し、ブレース46が基本構造40の変形に抵抗すること
になる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかし、例えば、正の
向きに水平力Pが作用した場合、ブレース45に引張力
が作用して弾性変形するが、ブレース45の弾性限界を
超えると、ブレース45は塑性変形し、水平力Pを解除
しても残留歪みが生成する。その後、再び正の向きに水
平力Pが作用した場合、既に生成した残留歪みに重ねて
残留歪みが生成されて、残留歪みが蓄積されるという現
象が発生していた。
【0010】図9には、従来例に係る補強構造100に
付与された水平力Pとこの水平力Pによる歪みδとの関
係が示されている。 (ST1−1)補強構造100において、柱41の連結
部分Aに水平力Pを正の向きに加えると、柱41の上端
は正の向きにδだけ移動する。この時、ブレース45に
作用する引張力をTとし、この引張力Tによってブレー
ス45に発生した歪みをYとすると、補強構造100の
水平力P、歪みδは、以下の式で表される。
【0011】
【数1】
【0012】また、ブレース45の断面積をS、ヤング
係数をEとすると、ブレース45の引張力Tと歪みYと
の関係、および水平力Pと歪みδとの関係は、以下のよ
うになる。
【0013】
【数2】
【0014】よって、水平力Pを0から徐々に増加させ
ると、歪みδも0から増加し、ブレース45の弾性限度
までは、加えた水平力Pに比例して歪みδが増大する。
ここで、ブレース45の弾性限度における補強構造10
0の水平力P、歪みδをそれぞれP、δとする。な
お、弾性限度は、厳密には比例限度と異なるが、両者を
区別することが困難であるため、ここでは同じ意味とし
て扱う。
【0015】(ST1−2)水平力Pが、弾性限度にお
ける水平力Pを超えると、ブレース45のボルト部材
52の塑性変形が始まり、水平力PがほぼPのままで
あっても歪みδがδ から増大する。歪みδがδに達
するまで水平力Pが加わったものとする。
【0016】(ST1−3)その後、水平力Pを徐々に
減少させると、歪みδも徐々に減少するが、水平力Pが
完全に除去されて0になっても歪みδは0とならず、補
強構造100にブレース45の塑性変形による残留歪み
δ(=δ−δ)が生成される。
【0017】(ST1−4)〜(ST1−6)今度は、
水平力Pを負の向きに加えていくと、ブレース45には
圧縮力も引張力も作用せず、ブレース46に引張力が作
用するから、歪みδは0から負の向きに徐々に増加す
る。したがって、(ST1−1)〜(ST1−3)と原
点に関して点対称のグラフとなる。負の向きに加えた水
平力Pによって、残留歪み−δが生成される。
【0018】(ST1−7)再び、水平力Pを正の向き
に加えると、ブレース45に引張力が作用するが、補強
構造100には残留歪みδが既に生成されているた
め、水平力Pがほぼ0の状態であっても、歪みδが−δ
からδまで増加する現象(以降、スリップ現象と呼
ぶ)が発生する。したがって、歪みδは、残留歪みδ
から増加することになり、弾性限度(水平力P、歪み
δ)までは、加えた水平力Pに比例して歪みδが増加
し、結果的には(ST1−3)を逆に辿るグラフとな
る。
【0019】(ST1−8)水平力Pが、弾性限度にお
ける水平力Pを超えると、ブレース45の塑性変形が
始まり、水平力PがほぼPのままであっても歪みδが
δから増大する。歪みδがδに達するまで水平力P
が加わったものとする。
【0020】(ST1−9)その後、水平力Pを徐々に
減少させると、歪みδも徐々に減少するが、水平力Pが
完全に除去されて0になっても、歪みδは0とならず、
補強構造100にブレース45の塑性変形による残留歪
みδ(=δ−δ)が生成される。この残留歪みδ
は、最初に正の向きに加えた水平力Pによって生成し
た残留歪みδ と、2回目に正の向きに加えた水平力P
によって生成した残留歪みとの和となっている。
【0021】(ST1−10)〜(ST1−12) さらに、水平力Pを負の向きに加えると、ブレース46
に引張力が作用するが、(ST1−7)と同様にスリッ
プ現象が発生して、水平力Pがほぼ0の状態であって
も、歪みδがδから−δまで減少する。したがっ
て、歪みδは残留歪み−δから負の向きに徐々に増加
し、(ST1−7)〜(ST1−9)と原点に関して点
対称のグラフとなる。
【0022】以上のことから、弾性限界における水平力
を超える水平力Pが繰り返し作用した場合、ブレー
ス45,46のボルト部材52に塑性変形による残留歪
みがスリップ現象によって蓄積され、補強構造100の
変形が徐々に大きくなっていくことが判る。
【0023】したがって、建築構造物の補強構造におい
て、地震や台風等によってブレースの弾性限界における
水平力Pを超える水平力Pが繰り返し作用した場合、
建物の変形が大きくなり、建物が損壊する可能性があっ
た。また、土木構造物の補強構造においても、建築構造
物と同様に、構造体のクリープ現象や地震動による締め
固めによってスリップ現象が発生し、構造体が損壊する
可能性があった。
【0024】本発明の目的は、弾性限界を超える引張力
が繰り返し作用した場合でも、構造体の変形を抑制でき
るナット定着装置および補強構造を提供することにあ
る。
【0025】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明のナット定着装置および補強構造は、次の構
成を採用する。請求項1に記載の補強構造は、構造体に
その一端側で係合されたボルト部材と、このボルト部材
の他端側に螺合されて前記構造体に係合されたナット部
材とを備えた補強構造において、前記ナット部材を前記
ボルト部材に対して締付け方向に付勢するナット定着装
置とを備えていることを特徴とする。
【0026】この発明によれば、例えば、地震や台風等
によって弾性限界を超える引張力が繰り返し作用し、ボ
ルト部材が塑性変形して構造体に係合されたナット部材
が緩む場合でも、ナット定着装置の付勢力によってナッ
ト部材が自動的に回転され、これらの変形による歪みが
解消されることになる。すなわち、ナット部材と構造体
との間に隙間が生じてもすぐに解消されるから、ナット
部材を常に構造体に定着させて、ボルト部材の塑性変形
による残留歪みの蓄積を防止でき、構造体の変形を抑制
できる。
【0027】請求項2に記載の補強構造は、請求項1に
記載の補強構造において、前記ナット定着装置は、前記
ナット部材の外周側を付勢することを特徴とする。この
発明によれば、内周側を付勢する場合に比べて回転モー
メントが大きくなるため、大きい回転力をナット部材に
与えることができるから、ナット部材を容易に構造体に
定着させることができる。
【0028】請求項3に記載の補強構造は、請求項1ま
たは2に記載の補強構造において、前記ナット定着装置
は、弾性部材を備え、この弾性部材で前記ナット部材を
締付け方向に引っ張ることにより付勢することを特徴と
する。この発明によれば、弾性部材でナット部材を締付
け方向に押すことによって回転させた場合に比べ、弾性
部材自体が座屈して付勢力が低下することがなく、付勢
力をナット部材に安定して付与することができる。
【0029】請求項4に記載の補強構造は、請求項3に
記載の補強構造において、前記弾性部材は、コイルばね
であって、その一端部分が前記ボルト部材に支持され、
その他端部分が前記ナット部材に連結されていることを
特徴とする。この発明によれば、ボルト部材に反力をと
りながらナット部材を回転させるから、ナット部材がボ
ルト部材と共回りすることがなく、ナット部材をボルト
部材に対して確実に回転させることができる。
【0030】請求項5に記載の補強構造は、請求項3に
記載の補強構造において、前記弾性部材は、渦巻きばね
であって、その一端部分が前記構造体に支持され、その
他端部分が前記ナット部材に連結されていることを特徴
とする。この発明によれば、請求項4のようにボルト部
材にコイルばねを支持させた場合に比べ、大型の渦巻き
ばねを用いることができ、大きな付勢力でナット部材を
確実に回転させることができる。
【0031】請求項6に記載の補強構造は、請求項5に
記載の補強構造において、前記ナット部材と前記構造体
との間にはアンカープレートが介装され、前記弾性部材
は、前記アンカープレートを介して前記構造体に支持さ
れていることを特徴とする。この発明によれば、アンカ
ープレートを構造体との間に介装したので、構造体を傷
めることなく弾性部材を含むナット定着装置を取り付け
ることができ、構造体の耐力の低下を抑えることができ
る。
【0032】請求項7に記載のナット定着装置は、構造
体にその一端側で係合されたボルト部材の他端側に螺合
され、かつ前記構造体に係合されたナット部材を前記構
造体に定着させるナット定着装置であって、前記ナット
部材を前記ボルト部材に対して締付け方向に付勢するこ
とを特徴とする。この発明によれば、請求項1と同様
に、地震や台風等によってボルト部材の弾性限界を超え
る引張力が繰り返し作用しても、繰り返し作用による歪
みが蓄積することがなく、構造体の変形を抑制できる。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に
基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあた
って、同一構成要件については同一符号を付し、その説
明を省略もしくは簡略化する。 〔第1実施形態〕図1(A)には、本実施形態に係る建
物の補強構造10の立面図が示されている。補強構造1
0は、建物の構造の一部を力学的モデルに置き換えたも
のであり、上述した補強構造100と同様に、略正方形
状に形成された構造体としての基本構造40と、この基
本構造40の対角線同士を連結することにより補強する
ブレース45,46とを含んで構成されている。ブレー
ス45,46は、基本構造40の連結部分B、Aにその
一端側で係合されたボルト部材52と、このボルト部材
52の他端側に螺合されて基本構造40の連結部分C、
Dに係合されたナット部材53とを備え、各連結部分A
〜Dに設けられたプレート50上には、ナット定着装置
20が設けられている。
【0034】図2には、ナット定着装置20の全体斜視
図が示されている。ナット定着装置20は、ナット部材
53をボルト部材52に対して締付け方向に付勢するも
のであって、円筒形のドラム22と、このドラム22に
巻き回されナット部材53に連結された弾性部材、ここ
では渦巻きばね23と、ドラム22をプレート50上に
回転自在に固定する固定ボルト21とを備えている。
【0035】ドラム22は、その中心軸に挿通孔26を
有する円筒形の芯部24と、この芯部24の両端に拡が
る鍔部25とを備えている。固定ボルト21は、芯部2
4の挿通孔26に挿通されてプレート50に螺合される
ようになっている。渦巻きばね23は、帯状の板ばねを
冷間加工によって芯部24の外周に渦巻状に複数回巻き
回したものであって、巻き回された曲げ状態から、その
一端を引っ張って直線状態にすることによって、この直
線状態から曲げ状態への復元力によってばね作用を示す
ものである。渦巻きばね23は、その他端がドラム22
の芯部24にねじ等で連結されて支持されて、この芯部
24の外周を巻き回された後、その一端がナット部材5
3の外周側面にねじ等で固定されることにより、ナット
部材53の外周側面を締付け方向に引っ張って付勢する
ようになっている。ここで、渦巻きばね23の両端を、
各々ドラム22の芯部24およびナット部材53にねじ
で連結したが、これに限らず、ボルト、溶接等他の方法
で連結されてもよい。また、芯部24に渦巻きばね23
を巻き回す回数は特に限定されない。
【0036】以上のような状態では、ナット部材53
は、その下面にプレート50に接触する接触面53Aを
有し、ナット部材53を締め付けることにより接触面5
3Aでプレート50を押圧している。このため、この押
圧力に比例して、接触面53Aにナット部材53の締付
け方向と反対方向の静摩擦力Fが発生し、渦巻きばね2
3の復元力によるナット部材53の締付け方向の力Bと
釣り合った状態となっている。
【0037】ナット定着装置20の取付方法としては、
以下のようになる。先ず、ボルト部材52をプレート5
0の挿通孔51に挿通し、ナット部材53を螺合して締
め付けた状態としておく。ドラム22に渦巻きばね23
を巻き回したものを工場にて製作した後、現場に運搬し
て、固定ボルト21によってプレート50に固定する。
続いて、渦巻きばね23の一端側に引張力を付与して引
出して伸びた状態で、ナット部材53の外周側面にねじ
で固定する。
【0038】図1(B)には、補強構造10に水平力P
を付与した場合の立面図が示され、図3には、水平力P
とこの水平力Pによる歪みδとの関係が示されている。
また、図4(A)および図4(B)には、ブレース45
およびブレース46に作用する引張力Tとこの引張力に
よる歪みYとの関係が示されている。
【0039】(ST2−1)補強構造10において、柱
41の連結部分Aに水平力Pを図1(B)中矢印方向
(以降、正の向きと呼ぶ)に加えると、柱41の上端は
正の向きにδだけ移動し、(ST1−1)と同様なグラ
フとなる。すなわち、水平力Pを0から徐々に増加させ
ると、図4(A)に示すように、ブレース45に引張力
Tが作用して弾性変形し、歪みYが0から増加して、弾
性限度までは、引張力Tに比例して歪みYが増大する。
ここで、ブレース45の弾性限度における引張力T、歪
みYをそれぞれT、Yとすると、補強構造10の弾
性限度における水平力P、歪みδは、以下の式で表
される。
【0040】
【数3】
【0041】このような補強構造10の変形に伴って、
連結部分A−D間の距離がYだけ縮まるため、ブレー
ス46のナット部材53はプレート50から離れようと
するから、ナット部材53の接触面53Aのプレート5
0への押圧力が減少し、これに伴って静摩擦力Fが減少
する(図2参照)。これに対し、ナット定着装置20の
渦巻きばね23の復元力によるナット部材53の締付け
方向の力Bは一定であるから、ナット部材53の締付け
方向の力Bが静摩擦力Fより大きくなって、ナット部材
53が締付け方向に回転する。すると、ナット部材53
が回転することによって、再びナット部材53の接触面
53Aがプレート50に押しつけられて押圧力が増大
し、この押圧力に比例して動摩擦力F´が発生して、ナ
ット部材53の締付け方向の力Bに抵抗することとな
り、締付け方向の力Bと釣り合ったところでナット部材
53の回転が停止する。したがって、図4(B)に示す
ように、ナット定着装置20によってナット部材53は
常にプレート50に密着することとなるから、ナット部
材53間の距離Yだけ縮まって、ブレース46の歪み
Yは、−Yとなる。
【0042】(ST2−2)ブレース45の引張力Tが
弾性限度における引張力Tを超えると、つまり補強構
造10に加える水平力PがPを超えると、(ST1−
2)と同様に、ブレース45のボルト部材52の塑性変
形が始まり、引張力TがほぼTのままであっても歪み
YがYから増大する。ブレース45の歪みYがY
達するまで引張力Tが加わったものとすると、補強構
造10の歪みδは以下の式で表される。
【0043】
【数4】
【0044】このような補強構造10の変形に伴って、
連結部分A−D間の距離がさらにY まで縮まるため、
ナット定着装置20によってブレース46の歪みYは−
となる。
【0045】(ST2−3)その後、水平力PをP
ら徐々に減少させると、ブレース45に作用する引張力
TがTから減少し、これに伴って、ブレース45の歪
みYもYから減少し、補強構造10の歪みδもδ
ら減少する。このような補強構造10の変形に伴って、
ブレース46のナット部材53はプレート50に弛みな
く係合されているため、ブレース46に作用する引張力
Tが発生し、0から徐々に増加するとともに、ブレース
46の歪みYも−Yから増加する。その結果、水平力
Pが0になると、ブレース46によってブレース45に
作用する引張力Tと、ブレース45によってブレース4
6に作用する引張力Tとが等しく釣り合う状態となるか
ら、この時ブレース45およびブレース46に作用する
引張力T、歪みY、補強構造10の歪みδは、以
下の式で表される。
【0046】
【数5】
【0047】よって、補強構造10における(ST2−
3)のグラフの傾きは、(ST2−1)のグラフの傾き
の1/2となっている。
【0048】(ST2−4)今度は、補強構造10に水
平力Pを負の向きに加えると、ブレース46において、
ブレース45による引張力Tに加えて、水平力Pによ
る引張力Tが徐々に増加し、弾性限度における引張力T
までは、引張力Tに比例して歪みYが−Y から増大
する。弾性限度におけるブレース46の歪み−Yは、
以下の式で表される。
【0049】
【数6】
【0050】ブレース45においては、水平力Pによる
補強構造10の変形によって、ブレース46による引張
力TがTから徐々に減少し、ブレース46に作用する
引張力Tが弾性限度における引張力Tに達すると同時
に、ブレース45の引張力Tは0となり、歪みYは、Y
からYとなる。したがって、補強構造10の水平力
、歪みδは、以下の式で表される。
【0051】
【数7】
【0052】(ST2−5)ブレース46の引張力Tが
弾性限度における引張力Tを超えると、つまり補強構
造10に加える水平力がPを超えると、(ST2−
2)と同様に、ブレース46のボルト部材52の塑性変
形が始まり、引張力TがほぼTのままであっても歪み
Yが−Yから増加する。ブレース46の歪みYが0に
達するまで引張力Tが加わったものとする(図4
(A)参照)。また、補強構造10の変形に伴って、連
結部分B−C間の距離が縮まるため、ナット定着装置2
0によってブレース46のナット部材53間の距離が縮
まって、ブレース45の歪みYは、Yから0となる。
したがって、補強構造10の歪みδは0になる。
【0053】(ST2−6)その後、水平力PをP
ら徐々に減少させると、ブレース46に作用する引張力
TがTから減少し、これに伴って、ブレース46の歪
みYも0から減少し、補強構造10の歪みδも0から減
少する。よって、ブレース45のナット部材53はプレ
ート50に弛みなく係合されているため、ブレース45
に作用する引張力Tが発生し、この引張力Tは0から徐
々に増加するとともに、ブレース45の歪みYも0から
増加する。その結果、水平力Pが0になると、ブレース
46によってブレース45に作用する引張力Tと、ブレ
ース45によってブレース46に作用する引張力Tとが
等しく釣り合う状態となるから、ブレース45およびブ
レース46に作用する引張力T、歪みY、補強構造
10の歪みδは、以下の式で表される。
【0054】
【数8】
【0055】よって、補強構造10における(ST2−
6)のグラフの傾きは、(ST2−3)のグラフと同様
になっており、ブレース45およびブレース46の引張
力T はTにほぼ等しく、歪みYはYにほぼ等し
くなっている。
【0056】(ST2−7)再び、補強構造10に水平
力Pを正の向きに加えると、ブレース45において、ブ
レース46による引張力Tに加えて、水平力Pによる
引張力が徐々に増加し、弾性限度における引張力T
では、引張力Tに比例して歪みYがYから増大する。
弾性限度におけるブレース45の歪みYはYとほぼ
等しくなっている。ブレース46においては、水平力P
による補強構造10の変形によって、ブレース45によ
る引張力が徐々に減少し、ブレース45に作用する引張
力Tが弾性限度における引張力Tに達すると同時に、
ブレース46の引張力Tは0となり、歪みYは、−Y
から−Yとなる。この時、補強構造10の水平力P
はPにほぼ等しく、歪みδはδにほぼ等しくな
る。
【0057】以上の挙動を繰り返すことにより、補強構
造10に弾性限度における水平力P が繰り返し作用し
た場合でも、スリップ現象が起こることなく、その変形
を抑制できることが判る。
【0058】したがって、本実施形態によれば以下の効
果がある。 (1)補強構造10にナット部材53を締付け方向に付
勢するナット定着装置20を設けたので、例えば、地震
や台風等によって弾性限界を超える引張力が繰り返し作
用し、ボルト部材52が塑性変形して補強構造10に係
合されたナット部材53が緩む場合でも、ナット定着装
置20の付勢力によってナット部材53が自動的に回転
され、塑性変形による歪みが解消されることになる。す
なわち、ナット部材53とプレート50との間に隙間が
生じてもすぐに解消されるから、ナット部材53を常に
プレート50に定着させて、ボルト部材52の塑性変形
による残留歪みの蓄積を防止でき、補強構造10の変形
を抑制できる。
【0059】(2)ナット定着装置20でナット部材5
3の外周側面を付勢したので、内周側を付勢する場合に
比べて回転モーメントが大きくなるため、大きい回転力
をナット部材53に与えることができるから、ナット部
材53を容易にプレート50に定着させることができ
る。
【0060】(3)ナット定着装置20に渦巻きばね2
3を設け、この渦巻きばね23に引張力を付与して直線
状態からの復元力でナット部材53を締付け方向に引っ
張って回転させたので、ナット部材53を締付け方向に
押すことによって回転させる場合に比べ、渦巻きばね2
3自体が座屈して付勢力が低下することがなく、付勢力
をナット部材53に安定して付与することができる。
【0061】(4)プレート50に渦巻きばね23を支
持させてナット部材53を回転させたので、ボルト部材
52にコイルばねを支持させた場合に比べ、大型の渦巻
きばねを用いることができ、大きな付勢力でナット部材
53を確実に回転させることができる。
【0062】〔第2実施形態〕図5には、本発明の第2
実施形態に係るナット定着装置30の全体斜視図であ
る。本実施形態において、ナット定着装置30は、第1
実施形態と異なり、全体がコイルばねであって、その一
端がボルト部材52の端部近傍に溶接されて支持され、
その他端がナット部材53の外周面に溶接されて連結さ
れている。このようなナット定着装置30の取付方法と
しては、先ず、ボルト部材52をプレート50の挿通孔
51に挿通し、ナット部材53を螺合して締め付けた状
態としておく。その後、ナット定着装置30の一端をボ
ルト部材52の端部近傍に溶接し、ナット定着装置30
の他端をナット部材53の緩む方向に引っ張った状態
で、つまり、コイルばねに剪断力を付与した状態で、ナ
ット部材53に溶接固定する。
【0063】したがって、本実施形態によれば、第1実
施形態で述べた(1)、(2)の効果に加え、以下の効果が
ある。(5)ボルト部材52に反力をとりながらナット
部材53を回転させるから、ナット部材53がボルト部
材52と共回りすることがなく、ナット部材53をボル
ト部材52に対して確実に回転させることができる。
【0064】〔第3実施形態〕図6には、本発明の第3
実施形態に係る補強構造60が示されている。補強構造
60は、地中に埋設された鉄筋コンクリート製のプレー
ト61と、地上に設けられた鉄筋コンクリート製のプレ
ート62と、これらプレート61,62の間に介装され
た構造体としての盛土層63と、この盛土層63を貫通
してプレート61,62を連結する2つの補強材64と
を備えている。補強構造60は、補強材64がプレート
61,62を介して盛土層63を締め付けることによ
り、盛土層63を構成する土粒子間の空隙を解消し、構
造体としての耐力を向上させるようになっている。
【0065】補強材64は、第1実施形態におけるブレ
ース45,46と同様の構造を有し、その一端側のナッ
ト部材53がプレート61に埋設されてプレート61と
一体化され、その他端側のナット部材53がプレート6
2に係合されている。プレート62上には、ナット定着
装置20が設けられ、補強材64のナット部材53に連
結されている。したがって、本実施形態によれば、第1
実施形態で述べた(1)〜(4)と同様の効果がある。
【0066】なお、本発明は前記実施形態に限定される
ものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変
形、改良等は本発明に含まれるものである。例えば、第
1実施形態では、ナット定着装置20を直接補強構造1
0のプレート50に支持したが、これに限らず、ナット
部材53とプレート50との間にアンカープレートを介
装し、このアンカープレートを介してナット定着装置2
0をプレート50で支持してもよい。このようにすれ
ば、補強構造10を傷めることなくナット定着装置20
を取り付けることができ、補強構造10の構造耐力の低
下を抑えることができる。
【0067】また、第1実施形態では、ナット定着装置
20の渦巻きばね23を引っ張った状態からの復元力で
ナット部材53を締付け方向に引っ張ることによって付
勢したが、これに限らず、渦巻きばね23を巻く向きを
逆にして、渦巻きばね23の縮んだ状態からの復元力で
ナット部材53を締付け方向に押すことによって付勢し
てもよい。
【0068】また、第2実施形態では、ナット定着装置
30に剪断力を付与して、ナット部材53の緩む方向に
伸びた状態からの復元力でナット部材53を締付け方向
に引っ張ることによって付勢したが、これに限らず、図
7に示すように、ナット定着装置30のコイルばねを巻
く向きを逆にしたナット定着装置31を用いて、ナット
定着装置31の縮んだ状態からの復元力でナット部材5
3を締付け方向に押すことによって付勢してもよい。
【0069】また、各実施形態では、弾性部材として、
コイルばね、渦巻きばねを用いたが、これに限らず、板
ばね等その他のばねを用いてもよい。
【0070】
【発明の効果】本発明のナット定着装置および補強構造
によれば、次のような効果が得られる。ナット部材を締
付け方向に付勢するナット定着装置を設けたので、例え
ば、地震や台風等によって弾性限界を超える引張力が繰
り返し作用し、ボルト部材が塑性変形して構造体に係合
されたナット部材が緩む場合でも、ナット定着装置の付
勢力によってナット部材が自動的に回転され、これらの
変形による歪みが解消されることになる。すなわち、ナ
ット部材と構造体との間に隙間が生じてもすぐに解消さ
れるから、ナット部材を常に構造体に定着させて、ボル
ト部材の塑性変形による残留歪みの蓄積を防止でき、構
造体の変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る補強構造に水平力
を付与する前および付与した後を示す立面図である。
【図2】前記実施形態に係るナット定着装置の全体斜視
図である。
【図3】前記実施形態に係る補強構造に付与された水平
力とこの水平力による歪みとの関係を示す図である。
【図4】前記実施形態に係る補強構造のボルト部材に作
用する引張力とこの引張力による歪みとの関係を示す図
である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るナット定着装置を
示す全体斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る補強構造を示す断
面図である。
【図7】本発明の変形例に係るナット定着装置を示す全
体斜視図である。
【図8】従来例に係る補強構造に水平力を付与する前お
よび付与した後を示す立面図である。
【図9】従来例に係る補強構造に付与された水平力とこ
の水平力による歪みとの関係を示す図である。
【符号の説明】
10,60,100 補強構造 20,30 ナット定着装置 23 弾性部材としての渦巻きばね 40 構造体としての基本構造 52 ボルト部材 53 ナット部材

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 構造体にその一端側で係合されたボルト
    部材と、このボルト部材の他端側に螺合されて前記構造
    体に係合されたナット部材とを備えた補強構造におい
    て、 前記ナット部材を前記ボルト部材に対して締付け方向に
    付勢するナット定着装置を備えていることを特徴とする
    補強構造。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の補強構造において、 前記ナット定着装置は、前記ナット部材の外周側を付勢
    することを特徴とする補強構造。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の補強構造にお
    いて、 前記ナット定着装置は、弾性部材を備え、この弾性部材
    で前記ナット部材を締付け方向に引っ張ることにより付
    勢することを特徴とする補強構造。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の補強構造において、 前記弾性部材は、コイルばねであって、その一端部分が
    前記ボルト部材に支持され、その他端部分が前記ナット
    部材に連結されていることを特徴とする補強構造。
  5. 【請求項5】 請求項3に記載の補強構造において、 前記弾性部材は、渦巻きばねであって、その一端部分が
    前記構造体に支持され、その他端部分が前記ナット部材
    に連結されていることを特徴とする補強構造。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の補強構造において、 前記ナット部材と前記構造体との間にはアンカープレー
    トが介装され、前記弾性部材は、前記アンカープレート
    を介して前記構造体に支持されていることを特徴とする
    補強構造。
  7. 【請求項7】 構造体にその一端側で係合されたボルト
    部材の他端側に螺合され、かつ前記構造体に係合された
    ナット部材を前記構造体に定着させるナット定着装置で
    あって、 前記ナット部材を前記ボルト部材に対して締付け方向に
    付勢することを特徴とするナット定着装置。
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KR101291009B1 (ko) * 2013-01-08 2013-08-07 경북대학교 산학협력단 가새 실험용 지그기구
CN114045934A (zh) * 2021-11-09 2022-02-15 中建八局第二建设有限公司 单层铝合金穹顶网壳结构及安装方法

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