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JP2002131509A - 複合レンズ、それを用いたレンズ装置および複合レンズの製造方法 - Google Patents

複合レンズ、それを用いたレンズ装置および複合レンズの製造方法

Info

Publication number
JP2002131509A
JP2002131509A JP2000319625A JP2000319625A JP2002131509A JP 2002131509 A JP2002131509 A JP 2002131509A JP 2000319625 A JP2000319625 A JP 2000319625A JP 2000319625 A JP2000319625 A JP 2000319625A JP 2002131509 A JP2002131509 A JP 2002131509A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
lens
compound
lens element
adhesive
eccentricity
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000319625A
Other languages
English (en)
Inventor
Yoshito Miyatake
義人 宮武
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Matsushita Electric Industrial Co Ltd filed Critical Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority to JP2000319625A priority Critical patent/JP2002131509A/ja
Publication of JP2002131509A publication Critical patent/JP2002131509A/ja
Pending legal-status Critical Current

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 収差補正のための設計の自由度が高く、偏心
の小さい複合レンズおよび複合レンズの製造方法を提供
し、更に解像度の高いレンズ装置を提供することにあ
る。 【解決手段】 第1のレンズ素子11と第2のレンズ素
子12とで複合レンズを構成する。その際、第1のレン
ズ素子11としては、第2のレンズ素子12と対向する
対向面(後面14)に有効領域を包含する凹面17を有
し、凹面17の外縁となるエッジ19で第2のレンズ素
子12と接触するように形成されたものを用いる。第1
のレンズ素子11は凹面17の外側で第2のレンズ素子
12に接着する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複合レンズ、それ
を用いたレンズ装置および複合レンズの製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、パーソナルコンピュータの進歩、
普及と相俟って、電子スチルカメラが急速に普及してい
る。電子スチルカメラに用いられる固体撮像素子の総画
素数は100万画素を超え、最近では総画素数が300
万画素を超える固体撮像素子を搭載した電子スチルカメ
ラも商品化されるようになった。また、ビデオカメラに
おいても動画の他に高画質の静止画を撮影できる機能が
搭載されるようになっている。
【0003】電子スチルカメラの撮像レンズとしては、
当初は固定焦点レンズが搭載されていたが、最近ではズ
ーム比が2倍〜3倍のズームレンズが搭載されるように
なってきている。また、成形加工による非球面ガラスレ
ンズの製造技術が進歩したことに伴い、ビデオカメラ用
ズームレンズには非球面ガラス成形レンズが導入され、
レンズ構成枚数の削減、結像特性の向上、レンズ装置の
光学全長の短縮、低コスト化などが図られている。ま
た、電子スチルカメラ用ズームレンズにおいても、同様
に、非球面ガラス成形レンズが導入されるようになって
いる。
【0004】電子スチルカメラで撮影される画像の画質
は、撮像レンズ、固体撮像素子、信号処理回路により支
配されるので、撮像レンズには、画面全体の解像度が高
く、解像度均一性、照度均一性も良好であることが要求
される。特に、最近における固体撮像素子の画素数の増
大の点からは、解像度の向上が望まれている。
【0005】解像度の向上を図るには、ズームレンズの
解像度に関する設計性能を向上させるとともに、レンズ
材料として屈折率の誤差が小さいものを用い、レンズ素
子、鏡筒およびスペーサの加工精度や、組み立て精度を
向上させる必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、構成部
品の加工精度や組み立ての精度の向上を図ると、撮像レ
ンズのコストが高くなってしまうという問題がある。ま
た、偏心に関する敏感度が極端に大きくならないような
レンズ設計も行われているが、すべてのレンズ面の偏心
に関する敏感度を十分に小さく出来る訳ではないので、
解像度の向上には限界がある。
【0007】一方、組み立て精度を向上させる手段とし
て、二枚のレンズ素子の接合や、二枚のレンズ素子の突
き当ての採用が挙げられる。
【0008】接合による複合レンズは、凹面を有するレ
ンズ素子と、この凹面と同じ曲率半径の凸面を有するレ
ンズ素子とが、この凹面と凸面で合わされ、各面の有効
領域全体に塗布された接着剤によって固着されて構成さ
れている。この場合、接着剤の厚さを例えば5μm〜2
0μmと非常に薄くできるので、対向するレンズ面間の
間隔誤差は非常に小さくなる。よって、この対向するレ
ンズ面間の偏心も非常に小さくでき、組み立て精度の向
上を図ることができる。
【0009】しかし、接合する二つのレンズ面は同一の
曲率半径の球面にしなければならないので、二枚のレン
ズ素子を分離する場合に比べて収差補正に利用できるパ
ラメータの数が一つ少なくなり、それだけ収差補正のた
めの設計の自由度が低くなるために、所望の結像性能を
得にくいという問題がある。
【0010】突き当てによる複合レンズは、二枚のレン
ズ素子を互いの有効領域の外側で直接接触させ、鏡筒に
よってその状態を保持することによって構成されてい
る。この場合、寸法誤差を発生しやすいスペーサが不要
になるため、対向するレンズ面間の間隔誤差を小さくで
き、よって対向するレンズ面間の偏心を非常に小さくで
きる。しかし、鏡筒内でのレンズ素子の偏心に注意する
必要があるので、各レンズ素子の偏心を小さくする必要
があり、特に各レンズ素子と鏡筒との間のはめ合い公差
を厳しくする必要がある。
【0011】最近では、偏心に関する敏感度が高い一部
のレンズ素子を調心することが行われている。調心は、
レンズ系全体またはレンズ群の偏心が小さくなるよう
に、レンズ素子の位置を調整することである。しかし、
調心だけでは組み立て精度の向上を図るのは困難とい
え、従って解像度の向上も困難と言える。
【0012】本発明の課題は、収差補正のための設計の
自由度が高く、偏心の小さい複合レンズおよび複合レン
ズの製造方法を提供し、更に解像度の高いレンズ装置を
提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明にかかる複合レンズは、少なくとも第1のレン
ズ素子と第2のレンズ素子とを有する複合レンズであっ
て、第1のレンズ素子は、第2のレンズ素子と対向する
対向面に有効領域を包含する凹面を有し、前記凹面の外
縁または前記凹面の外側で第2のレンズ素子と接触し、
且つ、前記凹面の外側で第2のレンズ素子に固着されて
いることを特徴とする。
【0014】本発明にかかる複合レンズは、更に下記
(1)、(2)に示す態様とすることで更に好ましいも
のとなる。 (1)上記第2のレンズ素子の対向面が、中心部を有効
領域、外周部を有効領域の外側の領域とする凸面で形成
され、上記第1のレンズ素子における凹面の外側が円錐
面または光軸に垂直な平面で形成され、上記第1のレン
ズ素子における凹面の外側と前記第2のレンズ素子にお
ける有効領域の外側の領域とが当該複合レンズの外周を
取り巻く環状の溝を構成し、前記溝に接着剤が充填され
ている態様。 (2)上記第2のレンズ素子が、対向面に有効領域を包
含する凹面と光軸に垂直な平面とを有し、上記第1のレ
ンズ素子が、凹面の外側に光軸に垂直な平面を有し、前
記平面で第2のレンズ素子の前記平面に接着されている
態様。
【0015】このように、本発明の複合レンズにおいて
は、従来の接合で形成された複合レンズのように各レン
ズ素子の対向面を曲率半径の等しい凹面と凸面とで構成
する必要がないため、有効領域における収差補正のため
の設計の自由度を高くすることができる。なお、本発明
における「有効領域」とはレンズ素子の表面においてレ
ンズ面として正常に機能する領域をいう。
【0016】更に、本発明の複合レンズにおいて二枚の
レンズ素子は接着されているため、本発明の複合レンズ
を鏡筒内に設置した場合に、二つのレンズ素子間の偏心
が鏡筒の加工精度から受ける影響は全くないといえる。
【0017】本発明にかかる複合レンズでは、接着剤は
光吸収材料を含有するものであるのが好ましい。更に、
少なくとも一方のレンズ素子における有効領域を構成し
ない面の一部または全部に、光吸収材料で形成された光
吸収膜が設けられているのが好ましい。
【0018】また、上記目的を達成するために本発明に
かかる複合レンズの製造方法の第1の態様は、上記
(1)に記載の複合レンズの製造方法であって、上記第
1のレンズ素子を凹面の外縁で上記第2のレンズ素子と
接触させる工程と、調心手段によって、接触状態にある
レンズ素子間の偏心が小さくなるように位置関係を調整
する工程と、上記溝に接着剤を充填し、前記接着剤を硬
化させる工程とを少なくとも有することを特徴とする。
【0019】本発明にかかる複合レンズの製造方法の第
2の態様は、上記(2)に記載の複合レンズの製造方法
であって、上記第1のレンズ素子および上記第2のレン
ズ素子のうち少なくとも一方の上記平面に接着剤を塗布
し、互いの上記平面が重なり合うように上記第1のレン
ズ素子と上記第2のレンズ素子とを接触させる工程と、
接触状態にあるレンズ素子間の偏心が小さくなるように
位置関係を調整する工程と、上記接着剤を硬化させる工
程とを少なくとも有することを特徴とする。
【0020】このように、本発明にかかる複合レンズの
製造方法においては、例えば調心手段によって二枚のレ
ンズ素子の位置関係の調整が行われ、この状態で接着さ
れるので、偏心の極めて小さい複合レンズを作製するこ
とができる。
【0021】次に上記目的を達成するために、本発明に
かかるレンズ装置は、上記本発明にかかる複合レンズ
と、前記複合レンズを内部に配置し得るように構成され
た鏡筒とを少なくとも有するレンズ装置であって、前記
複合レンズは、それを構成するレンズ素子のうちのいず
れか一つのレンズ素子の側面のみが鏡筒の内壁と接触す
るように鏡筒内部に配置されていることを特徴とする。
【0022】このように、本発明にかかるレンズ装置で
は、偏心の極めて小さい複合レンズを用いるために、そ
の分だけ偏心による解像度の低下が小さくなり、そのた
めに高解像度のレンズ装置を提供することができる。ま
た、複合レンズはそれを構成する複数のレンズ素子のう
ちいずれか一つのレンズ素子のみが鏡筒の内壁に接触し
て保持されるため、複合レンズのうち鏡筒に接触してい
ないレンズ素子の外径公差、このレンズ素子の側面が近
接する鏡筒の内壁の内径公差は非常に緩くなる。そのた
め、鏡筒の内壁に接触しないレンズ素子の低コスト化を
計ることができる。即ち、本発明を用いれば、低コスト
で解像度の高いレンズ装置を提供することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】(実施の形態1)以下、本発明の
実施の形態1にかかる複合レンズ、複合レンズの製造方
法およびレンズ装置について、図1〜図5を参照しなが
ら説明する。図1は、本発明の実施の形態1にかかる複
合レンズを示す断面図である。図2は、レンズ素子の偏
心を説明するための概略線図である。図3は、レンズ素
子群の偏心を説明するための概略線図である。図4は本
発明の実施の形態1にかかる複合レンズの製造方法を示
す断面図である。図5は実施の形態1にかかるレンズ装
置を示す断面図である。
【0024】図1の例に示すように、本発明の実施の形
態1にかかる複合レンズは、少なくとも二枚のレンズ素
子(11,12)で構成される。図1の例では、本発明
の複合レンズは、第1のレンズ素子(以下、「第1レン
ズ」という。)11と第2のレンズ素子(以下、「第2
レンズ」という。)12との二枚で構成されており、第
1レンズ11が物体側となる。第2レンズ12は第1レ
ンズ11よりも外径が大きくなるように形成されてい
る。なお、本明細書では、レンズ素子の物体側にある面
を前面、反対側にある面を後面という。従って、第1レ
ンズ11においては後面14が対向面となり、第2レン
ズ12においては前面15が対向面となる。
【0025】第1のレンズ素子11における第2のレン
ズ素子12と対向する対向面(後面14)は有効領域を
包含する凹面17を有している。なお、凹面17におい
て有効領域の直径(有効径)は凹面の直径(エッジ径)
よりも僅かに小さいものとなっている(後述する表1を
参照)。図1の例では第1レンズ11の前面13にも有
効領域を包含する凹面が形成されている。第2レンズ1
2の両面は、中心部を有効領域、外周部を有効領域の外
側の領域とする凸面で形成されている。
【0026】第1レンズ11の前面13と後面14の有
効領域、および第2レンズ12の前面15の有効領域は
全て球面で形成されている。それに対し、第2レンズ1
2の後面16の有効領域は非球面で形成されている。第
1レンズ11の後面14における凹面17の曲率半径の
絶対値は、第2レンズ12の前面15の曲率半径の絶対
値より小さくなっている。第1レンズ11と第2レンズ
12とはいずれも光学ガラス製である。
【0027】また、図1の例では、凹面17の外側は円
錐面18で形成されている。このため、第1レンズ11
の凹面17の外側と第2レンズ12における有効領域の
外側の領域とは複合レンズの外周を取り巻く環状の溝を
構成する。また、凹面17の外縁は第2レンズ12に向
けて突起する環状のエッジ19となり、第1レンズ11
はこのエッジ19によって第2レンズ12の前面15と
接触している。第2レンズ12の対向面(前面15)お
いては、エッジ19との接触部位の内側に有効領域が存
在する。
【0028】円錐面18と第2レンズの前面15におけ
る有効領域の外側の領域とで構成された溝の断面はV字
形を呈している。この断面形状がV字状の溝には、接着
剤21が充填されている。この接着剤21により第1レ
ンズ11と第2レンズ12とが固着される。但し、本発
明においてレンズ素子間を固着する方法は、このような
接着剤による方法に限定されず、その他融着による方法
や、接着剤を用いない光学的接着による方法等であって
も良い。
【0029】なお、本実施の形態は図1に示す態様に限
定されるものではなく、第1レンズと第2レンズとの間
に上記したような断面形状がV字状の溝が形成されるの
であれば特に限定されるものではない。例えば、第1レ
ンズの11の後面14を凸面で形成し、第2レンズ12
の前面15に凹面と円錐面とを形成することもできる。
更に、第1レンズ11の後面14を図1に示すように凹
面と円錐面で形成し、第2レンズ12の前面15を平面
や凹面で形成することもできる。
【0030】図1の例では、二枚のレンズ素子の前面と
後面,即ち合計四つの面の有効領域には反射防止膜(図
示せず)が設けられている。第1レンズ11の側面22
と前面13に設けられた円錐面23とには光吸収膜が設
けられている。27は第2レンズ12の側面を示してい
る。図1に示す複合レンズの数値データを表1に、非球
面データを表2に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】表1において、曲率半径に*印を付した面
は非球面であり、非球面は以下の数1で表される。ここ
で、hはレンズ面上の点の光軸からの高さ、zはサグ
量、rは近軸曲率半径、κは円錐定数、a4、a6、a
8、a10はそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球
面係数である。
【0034】
【数1】
【0035】本発明において、第1レンズ11の後面1
4における凹面17と第2レンズ12の前面15は非球
面で形成することもできる。このような少なくとも一方
の面が非球面のレンズ素子は成形技術により作製するこ
とができる。第1レンズ11を成形技術により作製する
場合、金型加工の都合により、凹面17と円錐面18と
の境界に形成されるエッジの先端部分の断面形状は略円
弧の形状としても良い。また、第2レンズ12の前面1
5は、第2レンズ12の前面15に第1レンズ11のエ
ッジ19を安定した状態で接触させるため、有効領域の
部分を非球面とし、第1レンズ11のエッジ19と接触
する部分及びその近傍を球面としても良い。
【0036】次に、図2を用いてレンズ素子における偏
心について説明する。図2では、レンズ素子20のレン
ズ面S1およびS2はともに球面である。レンズ面が球
面の場合、一枚のレンズ素子では各レンズ面に球心(曲
率中心)がただ一つ存在する。レンズ面が球面である場
合、一つの球面に対応する球心はただ一つ存在するの
で、例えば図1に示した第1レンズ11では、球心が二
つ存在することになる。レンズ面S1の球心C1とレン
ズ面S2の球心C2とを結んだ直線Lが光軸となり、二
つのレンズ面S1およびS2それぞれは光軸Lを中心と
して回転対称である。レンズ素子の側面201の中心N
から光軸Lに下した垂線の長さがレンズ素子の偏心量で
ある。なお、レンズ素子の側面201の中心Nとは、レ
ンズ素子20に外接する球面のうち半径が最小となるも
のの中心と一致する点である。
【0037】次に、k個のレンズ素子で構成され、各レ
ンズ素子の全てのレンズ面が球面であるレンズ素子群の
偏心について図3を用いて説明する。レンズ素子がk個
の場合、レンズ面の球心は全部で2k個存在するが、各
球心を通る直線は一般的には存在しない。そこで、図3
に示すように、ある直線Lを考え、第j面の球心Cj
(i=1、2、…)からこの直線Lに下した垂線の長さ
をejとし、下記の数2で定義されるEが最小となるよ
うな直線を基準軸と考える。このような基準軸は一般に
はただ1つ存在するので、Eを総合的な偏心量と考える
ことができる。
【0038】
【数2】
【0039】偏心が小さい状態とは、Eが0に非常に近
い状態である。任意のレンズ素子を基準軸と垂直に平行
移動するか、レンズ素子を傾斜させることによりEが変
化する。従って、一部または全部のレンズ素子を適切な
方向に平行移動または適切な向きに傾斜させることによ
り、Eを小さくすることができ、全てのレンズ素子が理
想的なレンズ素子であるなら、E=0とすることができ
る。なお、図1に示す二つのレンズ素子を突き当てる構
成であっても、第1レンズ11のエッジ19のつくる円
と第1レンズ11の光軸との垂直度がEに関係するた
め、第1レンズ11のエッジ19の加工時には、この点
に注意する必要がある。
【0040】なお、レンズ面が非球面の場合には、球面
レンズの球心に相当するものが存在しない。そこで、非
球面の中央部は球面で近似することができるので、この
球面の曲率中心を球心と考えるか、あるいは、非球面に
最も近い球面を想定して、その球面の曲率中心を球心と
考えるとよい。
【0041】図1の例で示した複合レンズでは、第1レ
ンズ11を固定し、第2レンズ12を第1レンズ11の
エッジ19に接触させながらずらすことで、第2レンズ
12の二つの球心を移動させることができる。従って、
数2でk=2とした場合のEが極力小さくなるように、
第1レンズ11に対して第2レンズ12を適切な方向に
適切な量だけ移動させれば、第1レンズ11と第2レン
ズ12との偏心を小さくすることができる。なお、第2
レンズ12を移動させるとき、第2レンズ12の後面1
6の球心は大きく移動するが、前面15の球心はほとん
ど移動しない。これは第2レンズ12の前面15を第1
レンズ11のエッジ19に突き当てているためである。
【0042】従来からの接合によって二枚のレンズ素子
を固着させる場合は、各レンズ素子の対向面は互いに曲
率半径が等しい球面に限定されるので、収差補正のため
の設計の自由度が低いと言える。これに対し、図1で示
したように本実施の形態にかかる複合レンズにおいて
は、各レンズ素子の対向面を同じ曲率半径の球面とする
必要がなく、ある程度自由に設定できるので、従来の接
合による複合レンズに比べて、収差補正のための設計の
自由度が高いといえる。そのため、本実施の形態にかか
る複合レンズを用いてレンズ装置を構成した場合は、レ
ンズ装置全体の収差をより良好に補正できる。しかも、
鏡筒に組み込む前に偏心の小さい状態で一体化されてい
るため、レンズ装置全体の偏心による解像度の低下を抑
制することもできる。
【0043】次に、図4を用いて図1に示す複合レンズ
の製造方法について説明する。図1に示す複合レンズは
以下の(1)〜(3)に示す工程によって製造される。 (1)最初に、第1レンズ11を凹面17の外縁、即ち
エッジ19で第2レンズ12と接触させる。 (2)接触状態にある第1レンズ11と第2レンズ12
との間の偏心が小さくなるように位置関係を調整する。 (3)V字状の溝に接着剤を充填し、接着剤を硬化させ
る。
【0044】図4の例では、位置関係の調整にベルクラ
ンプ装置などの調心手段が用いられている。重ね合わさ
れた第1レンズ11と第2レンズ12とは、ベルクラン
プ装置を構成する二つの円筒状ホルダー25と26との
間に挟み込まれる。円筒状ホルダー25と26とはそれ
ぞれ、共通の軸24を回転中心軸として回転可能に構成
されている。位置関係の調整は、円筒状ホルダー25と
26とによって適度の圧力を加えながら、第1レンズ1
1の位置を固定した状態で、第2レンズ12の位置を微
妙にずらすことによって行われる。
【0045】位置関係の調整によって偏心が小さくなる
ようにするため、偏心測定装置とレンズ素子微動装置と
を用いることができる。偏心測定装置は、接触させた二
枚のレンズ素子(11、12)に平行に近い光を照射
し、その透過光または反射光によるスポット像を顕微鏡
で観察する装置である。偏心測定装置を用いる場合は、
レンズホルダーとしては、レンズ素子をその側面で挟持
し得、且つ、レンズホルダーの中心軸(図4に示す軸2
4参照)に沿って平行光が通過できるように窓が形成さ
れたものが用いられる。
【0046】例えば透過光を用いる場合は、第2レンズ
12を前面15がレンズホルダーの外側に向くようにし
てレンズホルダーに装着し、後面16側からレンズホル
ダーの窓を介して平行光を照射し、この平行光が第2レ
ンズ12を透過して出来るスポット像が前面15側に配
置された顕微鏡の視野の中心に来るようにレンズホルダ
ーの位置を調整する。次に第2レンズ12の上に第1レ
ンズ11を接触させ、二枚のレンズ素子を透過して出来
るスポット像が顕微鏡の視野の中心にくるように第1レ
ンズ11の位置を調整すれば良い。
【0047】反射光を用いる場合は、上記と同様にレン
ズホルダーに第2レンズ12を装着し、前面15側から
平行光を照射し、この平行光が前面を透過し、後面16
で反射して、更に前面15を透過してできるスポット像
が顕微鏡の視野の中心にくるようにレンズホルダーの位
置を調整する。次に、第2レンズ12の上に第1レンズ
11を接触させ、第1レンズ11の前面で反射してでき
るスポット像が顕微鏡の視野の中心にくるように第1レ
ンズ11の位置を調整すればよい。
【0048】このような位置関係の調整によって、第1
レンズ11と第2レンズ12との合計四つの面の偏心が
小さい状態がつくり出され、その状態が保持される。
【0049】更に図4の例では、第1のレンズ11と第
2レンズ12との間に形成されるV字状の溝に充填され
る接着剤としては、紫外線硬化性樹脂が用いられてい
る。接着剤の硬化は紫外線の照射によって行われる。な
お、接着剤21が第2レンズ12の側面27から盛り上
がってしまうと、完成した複合レンズを鏡筒に挿入でき
なくなる場合があるので、接着剤21が硬化した後、余
分な接着剤は除去するのが好ましい態様である。
【0050】接着剤21のV字状の溝への充填は、接着
剤の粘度が低く、濡れ性が良好な場合は、V字状の溝の
一部に接着剤を着けると良く、毛細管現象によりV字状
の溝の全体に瞬時に接着剤が広がっていく。接着剤の粘
度が高い場合は、円筒状ホルダー25と26とを一定速
度で回転させながら、自動吐出装置によって接着剤を一
定速度で一定量だけ吐出させて行うのが好ましい。自動
吐出装置を用いると、接着剤を過不足なく溝に充填する
ことができる。接着剤の硬化により、第1レンズ11と
第2レンズ12とが偏心の小さい状態で固着された複合
レンズが完成する。
【0051】本発明において接着剤21としては、上述
の紫外線硬化性樹脂の他に、加熱硬化性樹脂や、紫外線
硬化性と加熱硬化性との両方の特性を有する樹脂などを
用いることができる。紫外線硬化性樹脂は紫外線照射に
より短時間で硬化するので、量産性を高めることができ
るという利点がある。加熱硬化性樹脂を用いる場合に
は、硬化に必要な時間が長いので、加熱中に二枚のレン
ズ素子(11、12)がずれないようにベルクランプ装
置で二枚のレンズ素子11,12を挟んでおく必要があ
る。
【0052】紫外線硬化性と加熱硬化性との両方の特性
を有する樹脂を用いる場合には、調心後に接着剤をV字
状の溝に充填し、紫外線照射により仮硬化を行い、その
後、ベルクランプ装置からはずし、加熱室で完全に硬化
させると良い。このように紫外線硬化性樹脂が仮硬化す
れば、二枚のレンズ素子(11、12)の間の位置関係
は固定状態となるので、加熱硬化中も二枚のレンズ素子
(11、12)の間で位置ずれは生じない。
【0053】紫外線硬化性樹脂は一般に透明または淡黄
色であるが、紫外線硬化性樹脂に適度に光吸収材料を添
加すると、光吸収材料が複合レンズ内で生じる不要光を
吸収するので、コントラストの低下を抑制できる。しか
し、光吸収材料により紫外線が深部に到達しなくなるの
で、樹脂の表面しか硬化しないという問題を生じる。と
ころが、紫外線硬化性樹脂と加熱硬化性樹脂とを混合
し、適度に光吸収材料を添加したものを接着剤として用
いると、紫外線照射により樹脂の表面近傍は硬化するの
で、接着力は弱いが二枚のレンズ素子間の位置関係を保
持することができる。よって、樹脂の内部の紫外線で硬
化しなかった部分を、後で加熱により硬化させれば、十
分な接着力を確保することができる。
【0054】本実施の形態において接着剤21が第1レ
ンズ11または第2レンズ12と接触する面積は、接着
強度とレンズ装置の外径などを考慮して適宜設定すれば
良い。なお、充填された接着剤21がリング状を呈して
おり、このリングの外径はレンズ素子の外形によって一
義的に決定されるので、実際には接着剤の接触面積を設
定する代わりに、充填される接着剤の幅を設定すれば良
い。なお、ここでいう充填された接着剤の幅とは、図1
の例で説明するとエッジ19から円錐面18の外縁まで
の距離をいう。
【0055】具体的には、二枚のレンズ素子(11、1
2)の外径がいずれも20mm以下の場合は、充填され
る接着剤の幅は0.3mm〜2mmとするのが好まし
い。充填される接着剤の幅が0.3mmより狭い場合は
十分な接着強度が得られず、2mmより広い場合は複合
レンズの外径が大きくなり、これを用いたレンズ装置の
外径も大きくなってしまうからである。また、二枚のレ
ンズ素子(11、12)の外径がいずれも20mm以上
の場合は、充填された接着剤の幅は外径が小さい方のレ
ンズ素子の外径の10%程度とするのが好ましい。
【0056】複合レンズの外径を小さくするため、充填
される接着剤の幅をできる限り小さくし、なおかつ接着
力を確保するのが好ましい態様である。従って、接着剤
は図の例に示すようにV字状の溝の全周にわたって充填
されているのが好ましい。但し、本発明はこれに限定さ
れるものではなく、必要な接着強度を確保できるのであ
れば、接着剤はV字状の溝の一部、好ましくは少なくと
も3箇所の部分に充填されていても良い。
【0057】ところで、図1および図4の例では第1レ
ンズ11のエッジ19と第2のレンズ素子12の前面1
5とが接触している部分によって、各レンズ素子の有効
領域への接着剤21の侵入が抑制される。また、有効領
域へ侵入した接着剤21の量が有効領域の面積に対して
僅かであれば実用上問題はない。しかし、侵入した接着
剤21の量が多いと実用上問題を生じるので、接着剤2
1としては粘度と濡れ性が適切なものを選択する必要が
ある。
【0058】通常、接着剤21の粘度が高すぎたり濡れ
性が良くない場合には、接着剤21がV字状の溝の奥ま
で侵入しないという問題を生じ、反対に濡れ性が良くて
粘度が低すぎる場合には、接着剤21が有効領域に侵入
し易くなるという問題を生じる。従って、本発明におい
ては、接着剤を着ける面を良く洗浄し、接着剤21とし
ては室温における粘度が1.0×10-3Pa・s〜1.
0×102Pa・sのものを用いるのが好ましい。
【0059】更に、接着剤21の有効領域への侵入の抑
制を図るには、V字状の溝のV字の角度も重要となる。
V字の角度は用いる接着剤の粘度に合わせて適宜設定す
れば良い。例えば上述の粘度を持つ接着剤を用いるので
あれば、5度〜30度程度にすれば良い。
【0060】ところで、レンズ素子の前面および後面に
反射防止膜が設けられている場合は、反射防止膜の付着
強度に注意する必要がある。ガラスと反射防止膜との付
着力が弱いと、二枚のレンズ素子間の接着力が弱くなっ
てしまうからである。従って、本発明においては、レン
ズ素子の外周部分に反射防止膜が設けられていない領域
を設け、接着剤とガラスとの接触面積を大きくするのが
好ましい。
【0061】次に、図5を用いて本発明のレンズ装置に
ついて説明する。図5では本発明のレンズ装置を構成す
る鏡筒と複合レンズのみが示されている。複合レンズと
しては図1に示されたものが用いられており、複合レン
ズは鏡筒内部に配置された状態にある。複合レンズは、
第1レンズ11側から鏡筒28内部へと、第1レンズ1
1の前面13の周辺部が位置決め用の段差部29の後面
30と接触するまで挿入されている。
【0062】本発明のレンズ装置においては、複合レン
ズを構成するレンズ素子のうちいずれか一つのレンズ素
子の側面のみが鏡筒の内壁と接触すれば良い。図5の例
では、図1の例からも分かるように第1レンズ11の外
径は第2レンズ12の外径よりも小さくなっている。そ
のため、第2レンズ12の側面27のみが鏡筒28の内
壁に接触し、第1レンズ11の側面22は鏡筒28の内
壁に接触しない状態となっている。
【0063】このように、一方のレンズ素子の外径が他
方のレンズ素子の外径よりも小さくなっている複合レン
ズを用いると、一方のレンズ素子の側面だけを鏡筒の内
壁に接触させることになる。そのため、レンズ装置全体
の偏心を小さくしようとした場合、第2レンズ12と鏡
筒28との間のはめ合い公差を厳しくするために、鏡筒
28と接触する第2レンズ12は外径公差を厳しくする
必要があるが、鏡筒28に接触しない第1レンズ11は
外径公差を非常に緩くすることができるので、第1レン
ズ11の低コスト化を図ることができる。
【0064】なお、第1レンズ11の外径と外径公差
は、複合レンズとして完成した状態で、第1レンズ11
の縁が第2レンズ12の縁からはみ出さないように決め
ると良い。第1レンズ11の縁が第2レンズ12の縁か
らはみ出した場合は、複合レンズを鏡筒28に挿入でき
なくなるからである。
【0065】また、第1レンズ11と第2レンズ12と
の間の偏心は予め非常に小さくされており、複合レンズ
を鏡筒内部に挿入した場合でも第1レンズ11と第2レ
ンズ12との間の偏心は小さい状態が維持されるため、
鏡筒28内における第2レンズ12の側面27と接触す
る部分のはめ合い公差のみを厳しくすれば良い。従っ
て、例えば鏡筒28を量産性の良いプラスチックの成形
加工で作製しても、鏡筒28の寸法公差の厳しい部分が
少ないために歩留まりが向上し、それによって鏡筒28
の低コスト化を図れ、ひいてはレンズ装置の低コスト化
を図ることができる。
【0066】一般に不要光の低減を図るには、レンズ素
子の側面等の有効領域を構成しないの一部または全部
に光吸収膜を設けるのが好ましいが、側面に設けた光吸
収膜の厚さ誤差や厚さむらにより、鏡筒内に配置された
レンズ素子に偏心を生じさせる場合がある。そのため、
従来のレンズ装置においては、鏡筒内のレンズ面の偏心
を小さくしたい場合、光吸収膜を設けないか、光吸収膜
の膜厚を非常に薄くすることが行われていた。しかし、
この場合、不要光の低減が不十分であったり、コスト高
になるという問題が生じる場合がある。
【0067】一方、本発明のレンズ装置の場合には、図
5の例に示すように一方のレンズ素子の側面は鏡筒内部
と接触しないようにできるので、このレンズ素子の側面
に厚めの光吸収膜を設けることができる。よって、従来
に比べて不要光の低減を図ることができ、コストの低減
化を図ることができる。また、必要であれば、鏡筒内部
と接触させるレンズ素子の側面に薄い光吸収膜を設ける
こともできる。本発明のレンズ装置において光吸収膜
は、接着剤を硬化させた後に着けるとよい。
【0068】このように本発明の実施の形態1によれ
ば、レンズ装置を構成した場合の収差補正が良好で、偏
心の非常に小さい複合レンズを製造することができる。
更に、この本発明の複合レンズをレンズ装置における偏
心公差の厳しい部分のレンズとして用いれば、低コスト
で高解像度のレンズ装置を実現することができる。
【0069】(実施の形態2)次に、本発明の実施の形
態2にかかる複合レンズ、複合レンズの製造方法および
レンズ装置について、図6を参照しながら説明する。図
6は、本発明の実施の形態2にかかる複合レンズを示す
断面図である。
【0070】図6の例に示すように、本発明の実施の形
態2にかかる複合レンズも、実施の形態1にかかる複合
レンズと同様に、対向する二枚のレンズ素子(31、3
2)、即ち、物体側から順に第1のレンズ素子(以下、
「第1レンズ」という。)31と第2のレンズ素子(以
下、「第2レンズ」という。)32とで構成されてい
る。
【0071】図6の例に示す実施の形態2にかかる複合
レンズにおいても、第1レンズ31における第2レンズ
32に対向する対向面(後面34)には有効領域(レン
ズ面)を包含する凹面37を有している。また、第1レ
ンズは凹面37の外側に光軸に垂直な平面38を有して
いる。図6の例では、更に第1レンズ31に形成された
平面38の外側に、頂点を第2レンズ32側に有する円
錐面39が形成されている。第1レンズ31の前面33
は中心部を有効領域、外周部を有効領域の外側の領域と
する凸面で形成されている。第1レンズ31は負メニス
カスレンズである。
【0072】図6の例では、第2レンズ32は、第1レ
ンズ31に対向する対向面(前面35)に、第1レンズ
31と同様に、有効領域を包含する凹面41と光軸に垂
直な平面42を有している。また、第1レンズ31と同
様に平面42の外側には、頂点を第1レンズ31側に有
する円錐面43が形成されている。第2レンズ32の後
面36には、前面35と同様に、中心から外側に向けて
凹面、光軸に垂直な平面、円錐面が順に形成されてい
る。第2レンズは両凹レンズである。なお、凹面37、
41において有効領域の直径(有効径)は凹面の直径
(エッジ径)よりも僅かに小さいものとなっている(後
述する表3を参照)。
【0073】図6の例において、第1レンズ31の前面
33および後面34の有効領域、および第2レンズ32
の後面36の有効領域は球面である。一方、第2レンズ
32の前面35の有効領域は非球面である。第1レンズ
31と第2レンズ32とはいずれも光学ガラス製であ
る。なお、本実施の形態において、第1レンズ31の後
面34の有効領域は非球面にすることもできる。
【0074】図6の例では、第1レンズ31は凹面37
の外側で、即ち平面38で第2レンズ32と接触してお
り、平面38と第2レンズ32に形成された平面42と
が接着されて、第1レンズ31と第2レンズ32とが固着
される。なお、図6の例において平面38と平面42と
の間には接着剤が介在するため第1レンズ31と第2レ
ンズ32とは厳密には接触していない状態にあると考え
られるが、本発明でいう「接触」にはこのような状態も
含まれる。
【0075】二枚のレンズ素子(31、32)の前面及
び後面(33、34、35、36)の有効領域には反射
防止膜が設けられている。また、第1レンズ31の側面
46と第2レンズ32の側面47とには、光吸収膜が設
けられている。図6に示す複合レンズの数値データを表
3に、非球面データを表4に示す。非球面の定義は数1
と同一である。
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】このように本実施の形態における複合レン
ズにおいても、従来の接合による複合レンズの場合と比
べて、収差補正のための設計の自由度は高いといえる。
そのため、本実施の形態にかかる複合レンズを用いてレ
ンズ装置を構成した場合であっても、レンズ装置全体の
収差を良好に補正できる。しかも、鏡筒に組み込む前に
偏心の小さい状態で一体化されているため、レンズ装置
全体の偏心による解像度の低下を抑制することもでき
る。
【0079】図6に示す本発明の実施の形態2にかかる
複合レンズは、以下の(1)〜(3)に示す工程によっ
て製造される。 (1)最初に、第1レンズ31および第2レンズ32の
うち少なくとも一方に形成された平面(38又は42)
に接着剤を塗布し、二枚のレンズ素子(31、32)を
平面38と平面42とが重なり合うように接触させる。 (2)接触状態にあるレンズ素子(31、32)間の偏
心が小さくなるように位置関係を調整する。 (3)接着剤を硬化させる。
【0080】上記製造工程において、接着剤の塗布は、
例えば第1レンズ31を後面34が上になった状態で固
定台の上に配置し、後面34の平面38に紫外線硬化樹
脂をリング状に塗布することによって行うことができ
る。また、上記製造工程においても、位置関係の調整に
は、図4で示したと同様のベルクランプ装置等の調心手
段を用いることができる。重ね合わされた第1レンズ3
1と第2レンズ32とは、図4の例と同様に、二つの円
筒状ホルダーの間に挟み込まれる。
【0081】位置関係の調整は、二つの円筒状ホルダー
によって適度の圧力を加えながら、第1レンズ31の位
置を固定した状態で、第2レンズ32の位置を微妙にず
らすことによって行われる。上記製造工程においても位
置関係の調整によって偏心が小さくなるようにするた
め、偏心測定装置とレンズ素子微動装置とを用いること
ができる。偏心測定装置を用いる場合は、図4で説明し
た同様に、レンズホルダーとしては、レンズ素子をその
側面で挟持し得、且つ、レンズホルダーの中心軸に沿っ
て平行光が通過できるように窓が形成されたものが用い
られる。また、図4で説明したように透過光または反射
光を用いて位置関係の調整が行われる。
【0082】このような位置関係の調整によって、第1
レンズ31と第2レンズ32との合計四つの面の偏心が
小さい状態がつくり出され、その状態が保持される。接
着剤として紫外線硬化樹脂を用いた場合は紫外線の照射
によって硬化が行われる。接着剤の硬化によって、第1
レンズ31と第2レンズ32とが偏心の小さい状態で固
着された複合レンズが完成する。
【0083】本発明の実施の形態2にかかる複合レンズ
の製造方法においても、実施の形態1の場合と同様に、
接着剤としては上述の紫外線硬化性樹脂の他に、加熱硬
化性樹脂、紫外線硬化性と加熱硬化性とを有する樹脂な
どを用いることができる。また、紫外線硬化性樹脂と加
熱硬化性樹脂とを混合してなり、更に適度に光吸収材料
が添加されたものを接着剤として用いることもできる。
【0084】接着剤と第1レンズ31または第2レンズ
32とが接触する面積は、接着強度とレンズ装置の外径
などを考慮して適宜設定すれば良い。なお、実施の形態
2にかかる製造方法においても、接触面積を設定する代
わりに、リング状に塗布された接着剤の幅を設定すれば
良い。
【0085】具体的には、二枚のレンズ素子(31、3
2)の外径がいずれも20mm以下の場合は、リング状
に塗布された接着剤の幅は0.3mm〜2mmとするの
が好ましい。リング状に塗布された接着剤の幅が0.3
mmより狭い場合は十分な接着強度が得られず、2mm
より広い場合は複合レンズの外径が大きくなり、これを
用いたレンズ装置の外径が大きくなってしまうからであ
る。また、二枚のレンズ素子(31、32)の外径がい
ずれも20mm以上の場合は、リング状に塗布された接
着剤の幅は外径が小さい方のレンズ素子の外径の10%
程度とするのが好ましい。
【0086】本実施の形態においても、塗布された接着
剤の幅をできる限り小さくし、なおかつ接着力を確保す
るのが好ましい態様である。従って、接着剤は平面38
または平面42の全周にわたって塗布するのが好まし
い。但し、本実施の形態においてもこれに限定されるも
のではなく、必要な接着強度を確保できるのであれば、
平面38または平面42の一部、好ましくは少なくとも
三箇所の部分に塗布されていれば良い。
【0087】なお、接着剤を第1レンズ31の平面38
および/または第2レンズ32の平面42に塗布すると
き、接着剤45の量が過剰であると、レンズ素子の有効
領域にはみ出し、有効光束を遮るので、接着剤の量は最
小限にする必要がある。このため、接着剤の塗布には、
吐出口を平面38または平面42上で円運動させながら
接着剤を一定速度で一定量だけ吐出するように構成した
自動吐出装置を用いるのが好ましい態様である。
【0088】図6の例では、第1レンズ31の外径は第
2レンズ32の外径より大きくなっている。これは実施
の形態1の場合と同様に、レンズ装置を構成する場合
に、二枚のレンズ素子の一方の側面のみを鏡筒に接触さ
せ、他方を鏡筒に接触させないようにするためである。
このため、本実施の形態にかかる複合レンズを用いてレ
ンズ装置を構成する場合においても、鏡筒と接触するレ
ンズ素子のみ外径公差を厳しくすれば良く、レンズ装置
の低コスト化を図ることができる。また、鏡筒に接触し
ないレンズ素子の側面には光吸収膜を厚めに設けること
ができ、不要光の低減を図ることもできる。
【0089】なお、本実施の形態においても、鏡筒と接
触するレンズ素子に光吸収膜を設けることはできるが、
この場合は、光吸収膜の厚みを薄くするとともに、厚さ
誤差、厚さむらに注意する必要がある。光吸収膜の厚さ
誤差や厚さむらにより鏡筒内における偏心が問題となる
場合には、鏡筒に接触するレンズ素子の側面には光吸収
膜を設けないのが好ましい。
【0090】このように本発明の実施の形態2によれ
ば、レンズ装置を構成した場合の収差補正が良好で、偏
心の非常に小さい複合レンズを製造することができる。
更に、この本発明の複合レンズをレンズ装置における偏
心公差の厳しい部分のレンズとして用いれば、低コスト
で高解像度のレンズ装置を実現することができる。
【0091】(実施の形態3)本発明の実施の形態3に
かかる複合レンズ、複合レンズの製造方法およびレンズ
装置について図7〜図9を参照しながら説明する。図7
は、本発明の実施の形態3にかかる複合レンズを示す断
面図である。図7の例では、複合レンズは三枚のレンズ
素子で構成されている。複合レンズは物体側から順に第
1のレンズ素子(以下、「第1レンズ」という。)5
1、第2のレンズ素子(以下、「第2レンズ」とい
う。)52、第3のレンズ素子(以下、「第3レンズ」
という。)53を重ね合わせて形成されている。
【0092】図7の例では、第2レンズ52の第3レン
ズ53に対向する対向面(後面55)は有効領域を包含
する凹面57を有している。凹面57の外側は光軸に垂
直な平面58で形成されている。このため、凹面57の
外側と第3レンズ53における有効領域の外側の領域と
は、複合レンズの外周を取り巻く環状の溝を構成する。
凹面57の外縁はエッジ59となり、第2レンズ52は
このエッジ59で第3レンズ53と接触している。な
お、第2レンズ52の前面は中心部を有効領域、外周部
を有効領域の外側の領域とする凹面で形成されている。
【0093】第3レンズ53の前面56は中心部を有効
領域、外周部を有効領域の外側の領域とする凸面で形成
されている。第3レンズ53の前面においては、エッジ
59との接触部位の内側に有効領域が存在する。第3レ
ンズ53は正メニカスレンズである。
【0094】第2レンズ52の平面58と第3レンズ5
3の前面66における有効領域の外側の領域とで構成さ
れた溝の断面はV字形を呈している。この断面形状がV
字状の溝には接着剤61が充填されており、第2レンズ
52と第3レンズ53とはこの接着剤61によって接着
されている。
【0095】このように第2レンズ52と第3レンズ5
3とにおいては、実施の形態1と同様に、対向面を同じ
曲率半径の球面とする必要がなく、収差補正のための設
計の自由度が高くなっている。なお、本実施の形態にか
かる複合レンズでは、実施の形態1と異なり、更に第1
レンズ51が第2レンズ52に接合によって固着されて
いる。第1レンズ51の両面は凸面で形成されており、
第1レンズ51の後面の曲率半径と第2レンズ52の前
面の曲率半径とは同じである。
【0096】図7の例では、三枚のレンズ素子(51、
52、53)はいずれも光学ガラス製である。第3レン
ズ53の後面54の有効領域が非球面である以外は、第
1レンズから第3レンズの前面および後面の有効領域は
すべて球面である。第2レンズ52の凹面57の曲率半
径の絶対値は、第3レンズ53の前面56の曲率半径の
絶対値より小さくなっており、第2レンズ52と第3レ
ンズ53との間には空気が封じ込まれた状態となってい
る。一方、第1レンズ51と第2レンズ52とは接合さ
れているため、これらの間には空気は存在していない。
【0097】三枚のレンズ素子(51、52、53)の
空気に接する合計4つの面の有効領域には反射防止膜が
着けられている。また、第1のレンズ素子51の側面6
2、第2レンズ52の側面63には、光吸収膜が着けら
れている。
【0098】複合レンズの数値データを表5に、非球面
データを表6に示す。非球面の定義は数1と同一であ
る。
【0099】
【表5】
【0100】
【表6】
【0101】図7の例では、第1レンズ51はその外径
が第2レンズ52の外径よりわずかに小さくなるよう形
成されており、第2レンズ52はその外径が第3レンズ
53の外径よりわずかに小さくなるように形成されてい
る。これは、実施の形態1で説明したように、第1レン
ズ51側から鏡筒に挿入することを想定し、第1レンズ
51の前面の周辺部と第3レンズ53の側面64が鏡筒
に接触し、第1レンズ51の側面62と第2レンズ52
の側面63とが鏡筒の内壁に接触しないようにするため
である。こうすると、第3レンズ53の外径公差は厳し
いが、第1レンズ51と第2レンズ52の外径公差は非
常に緩くすることができる。
【0102】図7の例で示す複合レンズは、本発明の実
施の形態1にかかる複合レンズの製造方法を用いて作製
することができる。具体的には、最初に第1レンズ51
または第2レンズ52のどちらかの対向面の外周部に接
着剤を塗布して重ね合わせ、位置関係を調整し、接着剤
を硬化させる。次に、第1レンズ52が接合された第2
レンズ52と第3レンズ53とを図4で説明した工程に
従って固着することによって、図7の例に示す複合レン
ズを得ることができる。なお、第1レンズ51と第2レ
ンズ52との固着、第2レンズ52と第3レンズ53と
の固着には、前述のベルクランプ装置や、偏心測定装置
とレンズ素子微動装置を用いることができる。
【0103】本実施の形態において接着剤61として
は、実施の形態1および2と同様に、紫外線硬化性樹
脂、加熱硬化性樹脂、紫外線硬化性と加熱硬化性とを有
する樹脂などを用いることができる。また、紫外線硬化
性樹脂と加熱硬化性樹脂とを混合し、さらに適度に光吸
収材料を添加したものを用いることもできる。なお、第
2レンズ52の平面58の外側には更に円錐面が設けら
れているが、これは溝の開口を大きくして接着剤61の
充填を容易に行うためである。
【0104】本実施の形態にかかる複合レンズにおいて
も、第2レンズ52と第3レンズ53との対向面におい
ては、収差補正のための設計の自由度が高いため、三枚
のレンズ素子(51、52、53)は、偏心が非常に小
さい状態で固定される。このため、この複合レンズは鏡
筒に組み込まれた状態においても偏心が小さく、この複
合レンズを用いて構成したレンズ装置では装置全体の収
差を良好に補正でき、高解像度のレンズ装置を実現する
ことができる。
【0105】図8は本発明の実施の形態3にかかるレン
ズ装置を示す断面図である。図8ではレンズ装置は概略
的に示されており、レンズ装置を構成する鏡筒について
は省略している。図8に示されたレンズ装置には、図7
に示した複合レンズが組み込まれている。このレンズ装
置は三つのレンズ群で構成されたズームレンズを有して
いる。レンズ群は物体側から第1レンズ群111、第2
レンズ群112、第3レンズ群113の順で配置されて
いる。
【0106】第1レンズ群111は、物体側から順に第
1のレンズ素子(以下「第1レンズ」という。)11
4、第2のレンズ素子(以下「第2レンズ」という。)
115および第3のレンズ素子(以下「第3レンズ」と
いう)116で構成されている。
【0107】第2レンズ群112は、物体側から順に第
4のレンズ素子(以下「第4レンズ」という。)11
7、第5のレンズ素子(以下「第5レンズ」という)1
18、第6のレンズ素子(以下「第6レンズ」という)
119および第7のレンズ素子(以下「第7レンズ」と
いう)120で構成されている。
【0108】第2レンズ群を構成するレンズ素子のう
ち、第5レンズ118から第7レンズ120までの三枚
レンズ素子を組み合わせて構成した複合レンズ123
が、図7で示した複合レンズである。第5レンズ118
と第6レンズ119とは接合され、第6レンズ119と
第7レンズ120とは突き当てて周辺部が接着剤で固着
されている。この三枚のレンズ素子のうち第7レンズ1
20の外径が最も大きくなっている。そのため、この複
合レンズを鏡筒に設置したとき、第7レンズ120の側
面だけが鏡筒の内壁と接触し、第5レンズ118の側面
と第6レンズ119の側面とは鏡筒の内壁と接触しない
ようになっている。
【0109】第3レンズ群113は、第8のレンズ素子
(以下「第8レンズ」という)121で構成されてい
る。第2レンズ群112の物体側(第1レンズ群111
側)の近傍には絞り122が配置されている。
【0110】第1レンズ114と第2レンズ115とは
いずれも曲率の強い面を像側に向けた負メニスカスレン
ズ、第3レンズ116は曲率の強い面を物体側に向けた
正メニスカスレンズである。また、第4レンズ117、
第5レンズ118および第8レンズ121は両凸レンズ
である。第6レンズ119は両凹レンズ、第7レンズ1
20は正メニスカスレンズである。
【0111】第2レンズ115の前面(物体側の面)、
第4レンズ117の前面(物体側の面)および第7レン
ズ120の後面(像側の面)における有効領域は非球面
で形成されている。第4レンズ117の後面(像側の
面)は平面である。他のレンズ素子の有効領域はすべて
球面で形成されている。
【0112】第3レンズ群113の像側には水晶板で構
成される光学ローパスフィルタ124が配置され、その
像側には固体撮像素子125が配置される。光学ローパ
スフィルタ124の物体側の面126には可視光を透過
し赤外光を反射する光学多層膜が蒸着されている。固体
撮像素子124においては撮像面127の物体側にカバ
ーガラス128が設けられている。ズームレンズにより
物体に対応する像が固体撮像素子125の撮像面127
に形成される。
【0113】第1レンズ群111と第2レンズ群112
とはレンズ系全体の焦点距離を可変とするために移動可
能に構成されている。また、第3レンズ群113も撮影
距離が変化した場合のフォーカス調整のために移動可能
に構成されている。撮影距離が変化した場合のフォーカ
ス調整は、第1レンズ群111と第2レンズ群112と
を固定し、第3レンズ群113を光軸方向に移動させる
ことにより行う。撮影距離が短くなるにつれて、第3レ
ンズ群113が物体側に出ていく。
【0114】図8に示されたズームレンズは、非使用時
に第1レンズ群111、第2レンズ群112および第3
レンズ群113をすべて固体撮像素子125側に寄せて
沈胴構成にすることができる。そのため非使用時の光学
全長(第1レンズ114の前面の頂点から固体撮像素子
の撮像面までの距離)を短くすることができる。
【0115】図8に示すズームレンズにおいて、第2レ
ンズ群112を構成する第4レンズ117から第7レン
ズ120までの4枚のレンズ素子には厳しい偏心公差が
要求される。しかし、三枚のレンズ素子118、119
および120は、図7で説明したように偏心の小さい状
態で一体化されている。従って、この三枚のレンズ素子
の偏心による解像度の劣化は小さいといえ、ズームレン
ズ全体の解像度は良好となる。更に、第4レンズ117
の調心を行うことにより、第2レンズ群112の偏心状
態をさらに小さくすることができる。
【0116】図9は図8に示す第2レンズ群112の鏡
筒内の構成を示す図である。複合レンズ123は、第5
レンズ118の前面の周辺部を鏡筒129の段差130
のエッジ131に接触させ、第7レンズ120の側面1
32を鏡筒129の内壁に接触させることによって位置
決めされている。
【0117】第5レンズ118の側面133と、第6レ
ンズ119の側面134は鏡筒129の内壁に接触しな
いので、第5レンズ118および第6レンズ119の外
径公差は非常に緩くできる。そのため、第5レンズ11
8および第6レンズ119はその分だけ低コストで製造
できる。第4レンズ117は鏡筒内に設置された後に調
心されるため、偏心公差を緩くできる。
【0118】こうすると、第2レンズ群112は組み立
てが容易となり、また、鏡筒129は加工精度の厳しい
箇所が減少するので、鏡筒129をプラスチックの成形
加工により作製することができ、そのためズームレンズ
全体の低コスト化を図れる。また、第5レンズ118の
側面133と第6レンズ119の側面134とが鏡筒1
29の内壁に接触しないので、第5レンズ118の側面
133、第6レンズ119の側面134および両者の間
にある斜面の全部または一部に厚めの光吸収膜を設ける
ことができる。この場合、不要光の低減を図れ、像面に
おけるフレアを低減することができる。
【0119】第2レンズ群の112の組み立ては次の手
順により行われる。最初に、鏡筒129内に像側から一
体化された複合レンズ123を組み込み、第7レンズ1
20の後面の有効領域の外側と鏡筒129とに接触する
ように、微少量の接着剤を鏡筒129の内壁の三箇所に
塗布し、この接着剤によって複合レンズを鏡筒129内
に固定する。
【0120】次に、鏡筒129の物体側から第4レンズ
117を組み込み、偏心測定装置を利用して、第4レン
ズ117を光軸と垂直な方向に微小移動させながら、第
4レンズ117から第7レンズ120までの四枚のレン
ズ素子間の偏心が小さくなるように第4レンズの117
の位置を調整する。
【0121】このとき、第4レンズ117の後面は平面
であるため、第4レンズ117を鏡筒129に接触させ
ながら微小移動させても、第4レンズ117は傾斜する
ことはない。第4レンズ117の前面と鏡筒129とに
接触するように微小量の接着剤を鏡筒129の内壁の三
箇所に塗布し、この接着剤によって第4レンズ117を
鏡筒129内に固定する。よって、第2レンズ群112
を構成する四枚のレンズ素子117、118、119、
120の各面の偏心状態は非常に小さくなる。
【0122】このように、偏心公差の厳しい第2レンズ
群112として、偏心の小さい複合レンズと調心を用い
ることにより偏心を十分に小さくできる。また、第1レ
ンズ群111を構成する三枚のレンズ素子114、11
5、116の偏心公差は、第2レンズ群112の四枚の
レンズ素子117、118、119、120の偏心公差
より小さく、第3レンズ群113を構成する第8レンズ
121の偏心公差はさらに小さい。従って、レンズ系全
体の偏心による結像特性の劣化は非常に小さくなり、高
解像度のズームレンズを実現することができる。また、
鏡筒の大部分をプラスチックの成形加工品とすることも
でき、鏡筒の低コスト化を図れる。
【0123】ズームレンズの光学全長を短くすることが
要望されているが、このためには、空気間隔を極力短く
すればよい。しかし、各レンズ群のパワーを大きくせざ
るを得なくなるため、高解像度を得ようとすると各レン
ズ素子の偏心公差、空気間隔公差が非常に厳しくなる。
そこで、図8に示した複合レンズ123のように、隣接
するレンズ素子を突き当てて偏心が小さくなるように互
いの位置関係を調整し、二枚のレンズ素子を周辺部で接
着すれば、ズームレンズ全体の偏心による解像度低下を
避けることができ、高解像度のズームレンズを提供する
ことができる。
【0124】(実施の形態4)本発明の実施の形態4に
かかる複合レンズおよび複合レンズの製造方法およびレ
ンズ装置について図10〜図12を参照しながら説明す
る。図10は本発明の実施の形態4にかかる複合レンズ
を示す断面図である。図10の例では複合レンズは三枚
のレンズ素子で構成されている。複合レンズは物体側か
ら順に第1のレンズ素子(以下、「第1レンズ」とい
う。)71、第2のレンズ素子(以下、「第2レンズ」
という。)72、第3のレンズ素子(以下、「第3レン
ズ」という。)73を重ね合わせて形成されている。こ
の複合レンズは、図6で示した実施の形態2にかかる複
合レンズの第2レンズ32に、第3レンズ73を接合し
て構成されている。
【0125】図10の例では第1レンズ71と第2レン
ズ72とは図6の例と同様に形成されており、また図6
の例と同様に平面で接着されている。即ち、第1レンズ
71の後面76と第2レンズ72の前面75は、有効領
域を包含する凹面と、光軸に垂直な平面とを有してい
る。第1レンズ71は前面74が凸面の負メニスカスレ
ンズである。第2レンズ72は両凹レンズである。第3
レンズ73は正メニスカスレンズである。第2レンズ7
2の前面75の有効領域が非球面である以外は、他の面
の有効領域はすべて球面である。なお、第2レンズ72
と第3レンズ73とは接合されており、三枚のレンズ素
子71、72、73は一体化されている。
【0126】第1レンズ71の前面74および後面7
6、第2レンズ72の前面75、第3レンズ73の後面
77には、各有効領域に反射防止膜が設けられている。
また、第1レンズ71の側面78、第2レンズ72の側
面79、第3レンズ73の側面80には光吸収膜が設け
られている。
【0127】複合レンズの数値データを表7に、非球面
データを表8に示す。非球面の定義は数1と同一であ
る。
【0128】
【表7】
【0129】
【表8】
【0130】図10の例で示す複合レンズは、本発明の
実施の形態2にかかる複合レンズの製造方法を用いて作
製することができる。具体的には、最初に第2レンズ7
2と第3レンズ73とを偏心が小さくなるように接合に
よって固着する。次に、第3レンズ73が接合された第
2レンズ72と第1レンズ71とを実施の形態2で説明
した工程にしたがって固着することによって、図10の
例に示す複合レンズを得ることができる。なお、第2レ
ンズ72と第3レンズ73との固着、第1レンズ71と
第2レンズ72との固着には、前述のベルクランプ装置
や、偏心測定装置とレンズ素子微動装置を用いることが
できる。
【0131】本実施の形態において接着剤としては、実
施の形態1および2と同様に、紫外線硬化性樹脂、加熱
硬化性樹脂、紫外線硬化性と加熱硬化性とを有する樹脂
などを用いることができる。また、紫外線硬化性樹脂と
加熱硬化性樹脂とを混合し、さらに適度に光吸収材料を
添加したものを用いることもできる。
【0132】本実施の形態にかかる複合レンズにおいて
も、第1レンズ71と第2レンズ72との対向面におい
ては、収差補正のための設計の自由度が高くなってい
る。また、三枚のレンズ素子(71、72、73)は、
偏心が非常に小さい状態で固定される。このため、この
複合レンズは鏡筒に組み込まれた状態においても偏心が
小さく、この複合レンズを用いて構成したレンズ装置で
は装置全体の収差を良好に補正でき、高解像度のレンズ
装置を実現することができる。
【0133】図11は本発明の実施の形態4にかかるレ
ンズ装置を示す断面図である。図11ではレンズ装置は
概略的に示されており、レンズ装置を構成する鏡筒につ
いては省略している。図11に示されたレンズ装置に
は、図10で示した複合レンズが組み込まれている。こ
のレンズ装置は四つのレンズ群で構成されたズームレン
ズを有している。レンズ群は、物体側から第1レンズ群
141、第2レンズ群142、第3レンズ群143、第
4レンズ群144の順で配置されている。
【0134】第1レンズ群141は、物体側から順に第
1のレンズ素子(以下「第1レンズ」という。)14
5、第2のレンズ素子(以下「第2レンズ」という。)
146および第3のレンズ素子(以下「第3レンズ」と
いう)147で構成されている。
【0135】第2レンズ群142は、物体側から順に第
4のレンズ素子(以下「第4レンズ」という。)14
8、第5のレンズ素子(以下「第5レンズ」という)1
49および第6のレンズ素子(以下「第6レンズ」とい
う)150で構成されている。
【0136】この第2レンズ群142は図10で示した
複合レンズと同一のものである。第2レンズ群142を
構成する三枚のレンズ素子148、149、150は偏
心が小さくなるように一体化されているので、偏心によ
る解像度の劣化は非常に小さいといえる。この三枚のレ
ンズ素子のうち第4レンズ148の外径が最も大きなっ
ている。そのため、この複合レンズを鏡筒に設置したと
き、第4レンズ148の側面だけが鏡筒の内壁と接触
し、第5レンズ149の側面と第6レンズ150の側面
とは鏡筒の内壁と接触しないようになっている。
【0137】第3レンズ群143は、物体側から順に第
7のレンズ素子(以下「第7レンズ」という)151、
第8のレンズ素子(以下「第8レンズ」という)152
および第9のレンズ素子(以下「第9レンズ」という)
153で構成されている。
【0138】第4レンズ群144は第10のレンズ素子
(以下「第10レンズ」という)154で構成されてい
る。第4レンズ群144の像側には光学ローパスフィル
タ156が配置され、その像側には固体撮像素子157
が配置されている。固体撮像素子157において撮像面
158の物体側にはカバーガラス159が配置されてい
る。
【0139】第1レンズ群141と第3レンズ群143
とは、固体撮像素子に対して位置が固定されるように配
置されている。ズーム位置の変更は、第2レンズ群14
2を光軸に沿って移動させ、固体撮像素子157の撮像
面158におけるフォーカス状態が最良となるように第
4レンズ群144を光軸に沿って移動させることによっ
て行われる。
【0140】図11に示すズームレンズにおいて、第2
レンズ群142には厳しい偏心公差が要求される。しか
し、第2レンズ群142を構成する三枚のレンズ素子1
48、149、150は図10で説明したように偏心の
小さい状態で一体化されている。また鏡筒の内壁と接触
する第4レンズ148と鏡筒との間のはめ合い公差のみ
を厳しくすれば良いため、第2レンズ群142は鏡筒内
でも偏心の少ない状態で保持される。即ち、第2レンズ
群142では偏心による解像度の劣化が非常に小さいの
で、レンズ系全体の解像度を高めることができる。この
ため、本実施の形態にかかるレンズ装置を用いれば、高
解像度のズームレンズを提供することができる。
【0141】図12は図11に示したズームレンズを用
いたビデオカメラを示す断面図である。図11ではビデ
オカメラは概略的に示されている。図12の例に示すよ
うに、ビデオカメラは、筐体191の下部に小型のビデ
オテープレコーダ192が配置され、上部前側に撮像レ
ンズ193が配置されている。撮像レンズ193として
図11に示したズームレンズが用いられている。
【0142】撮像レンズ193の像側には固体撮像素子
194が配置されている。撮像レンズ193と固体撮像
素子194の間には光学ローパスフィルタ195が配置
されている。筐体191の上部後側には電子ビューファ
インダ196が配置されている。電子ビューファインダ
196は、バックライト197、小型の液晶パネル19
8、接眼レンズ199で構成されている。そのため観察
者が接眼レンズ199を覗くと、液晶パネル198の表
示画像の拡大された虚像を見ることができる。
【0143】撮像レンズ193においては、偏心公差の
厳しい第2レンズ群として、偏心が小さくなるように一
体化された複合レンズ(図10参照)が用いられてい
る。そのため、撮像レンズ193は高解像度であり、高
解像度のビデオカメラを提供することができる。
【0144】(実施の形態5)本発明の実施の形態5に
かかる複合レンズ、複合レンズの製造方法およびレンズ
装置について図13〜図16を参照しながら説明する。
図13は本発明の実施の形態5にかかる複合レンズを示
す断面図である。図13の例では、複合レンズは三枚の
レンズ素子で構成されている。複合レンズは物体側から
順に第1のレンズ素子(以下、「第1レンズ」とい
う。)81、第2のレンズ素子(以下、「第2レンズ」
という。)82、第3のレンズ素子(以下、「第3レン
ズ」という。)83を重ね合わせて形成されている。
【0145】また、図13の例では、第2レンズ82に
おける第1レンズと対向する前面および第3レンズと対
向する後面は、図1で示した第1レンズ11の後面14
と同様に有効領域を包含する凹面と円錐面とを有してい
る。第2レンズ82は両凹レンズである。このため図1
3の例に示す複合レンズでは、第1レンズ81と第2レ
ンズ82との接触および第2レンズ82と第3レンズ8
3との接触は、図1の例で示した第1レンズ11と第2
レンズ12との接触と同様に行われている。よって、六
つのレンズ面のパラメータを独立に変えることができ、
収差補正のための設計の自由度は高いものとなってい
る。
【0146】なお、第1レンズ81と第3レンズ83と
は両凸レンズである。各レンズ素子(81、82、8
3)の前面と後面には、有効領域に反射防止膜が設けら
れている。第1レンズ81の側面86と第2レンズ82
の側面87には光吸収膜が設けられている。
【0147】複合レンズの数値データを表9に、非球面
データを表10に示す。非球面の定義は数1と同一であ
る。
【0148】
【表9】
【0149】
【表10】
【0150】図13の例で示す複合レンズは、本発明の
実施の形態1にかかる複合レンズの製造方法を用いて作
製することができる。具体的には、最初に第1レンズ8
1と第2レンズ82とを、図4で説明した工程に従って
位置関係の調整、接着剤85の充填、接着剤の硬化を行
って固着する。次に、第1レンズ81が固着された第2
レンズ82と第3レンズ83とを同様に固着することに
よって、図13の例に示す複合レンズを得ることができ
る。なお、第1レンズ81と第2レンズ82との固着、
第2レンズ82と第3レンズ83との固着には、前述の
ベルクランプ装置や、偏心測定装置とレンズ素子微動装
置を用いることができる。
【0151】本実施の形態において接着剤としては、実
施の形態1および2と同様に、紫外線硬化性樹脂、加熱
硬化性樹脂、紫外線硬化性と加熱硬化性とを有する樹脂
などを用いることができる。また、紫外線硬化性樹脂と
加熱硬化性樹脂とを混合し、さらに適度に光吸収材料を
添加したものを用いることもできる。
【0152】こうして、収差補正が良好で、偏心の非常
に小さい三枚構成の複合レンズを作製することができ
る。この複合レンズをレンズ装置における偏心公差の厳
しい部分のレンズとして用いると、収差補正が良好で高
解像度のレンズ装置を実現することができる。
【0153】図14は、本発明の実施の形態5にかかる
レンズ装置を示す断面図である。図14ではレンズ装置
は概略的に示されており、レンズ装置を構成する鏡筒に
ついては省略している。図14に示されたレンズ装置に
は、実施の形態5にかかる複合レンズが組み込まれてい
る。
【0154】このレンズ装置は、七枚のレンズ素子で構
成された撮像レンズを有している。レンズ素子は、物体
側から第1のレンズ素子(以下、「第1レンズ」とい
う。)91、第2のレンズ素子(以下、「第2レンズ」
という。)92、第3のレンズ素子(以下、「第3レン
ズ」という。)93、第4のレンズ素子(以下、「第1
レンズ」という。)94、第5のレンズ素子(以下、
「第5レンズ」という。)95、第6のレンズ素子(以
下、「第6レンズ」という。)96、第7のレンズ素子
(以下、「第7レンズ」という。)97の順に配置され
ている。
【0155】図14の例では、第4レンズ94、第5レ
ンズ95および第6レンズ96で構成された複合レンズ
は図13で示した複合レンズと同様のものである。この
三枚のレンズ素子のうち第6レンズ96の外径が最も大
きくなっている。そのため、この複合レンズを鏡筒に設
置したとき、第6レンズ96の側面だけが鏡筒の内壁と
接触し、第4レンズ94の側面と第5レンズ95の側面
とは鏡筒の内壁と接触しないようになっている。
【0156】また、第1レンズ91と第2レンズ92と
は凸面を物体側に向けた負メニスカスレンズである。第
3レンズ93および第7レンズ97は両凸レンズであ
る。第4レンズ94の前面99の有効領域および第6レ
ンズ96の後面100の有効領域は非球面で形成されて
いる。他のレンズ素子の有効領域はすべて球面で形成さ
れている。
【0157】第3レンズ93と第4レンズ94との間の
空間には絞り98が配置されている。第7レンズ97の
像側には複数の水晶板を貼り合わせて構成した光学ロー
パスフィルタ102が配置され、更にその像側には固体
撮像素子103が配置されている。光学ローパスフィル
タ102の物体側の面104には可視光を透過し赤外光
を反射する光学多層膜が蒸着されている。固体撮像素子
103における撮像面105の物体側にはカバーガラス
106が設けられている。撮像レンズにより物体に対応
する像が固体撮像素子103の撮像面105に形成され
る。
【0158】フォーカス調整は、第3レンズ93から第
7レンズ97までの位置を固体撮像素子103に対して
固定し、第1レンズ91と第2レンズ92とを一体化さ
せた状態で光軸方向に移動させることにより行われる。
【0159】第4レンズ94、第5レンズ95および第
6レンズ96で構成された複合レンズ(レンズ群10
1)は、レンズ装置において偏心公差が厳しい部分に配
置されている。しかし、レンズ群101は偏心が非常に
小さい状態で一体化されており、また鏡筒の内壁と接触
する第6レンズ96のみ外径公差を厳しくすれば良いた
め、レンズ群101は鏡筒内でも偏心の少ない状態で保
持される。即ち、レンズ群101では偏心による解像度
の劣化が非常に小さいので、レンズ系全体の解像度を高
めることができる。このようにして、偏心公差の厳しい
部分に、複数のレンズ素子を偏心が非常に小さくなるよ
うに一体化して用いることにより、高解像度の撮像レン
ズを提供することができる。
【0160】図15は図14に示した撮像レンズを用い
た電子スチルカメラを示す断面図である。図15では電
子スチルカメラは概略的に示されている。図15の例に
示すように、電子スチルカメラは、筐体171の前側に
撮像レンズ172が配置されている。この撮像レンズ1
72は図14に示したものと同一の撮像レンズである。
【0161】撮像レンズ172の像側には固体撮像素子
173が配置されている。撮像レンズ172と固体撮像
素子173との間には光学ローパスフィルタ174が配
置されている。筐体171の後側には液晶モニタ175
が配置されている。固体撮像素子173と液晶モニタ1
75とは近接している。
【0162】撮像レンズ172において、第1レンズ9
1と第2レンズ92とは前側鏡筒176に組み込まれ、
第3レンズ93から第7レンズ97までは後側鏡筒17
7に組み込まれている。固体撮像素子173は後側鏡筒
177の後端に取り付けられている。前側鏡筒176は
2本のガイドポール178(他の1本は図示せず)に沿
って移動可能に構成されている。
【0163】撮像レンズ172では、厳しい偏心公差が
要求される第4レンズ94、第5レンズ95および第6
レンズ96は偏心が小さくなるように調整して一体化さ
れているため、撮像レンズ172は高解像度である。こ
のため、高解像度で、コンパクトな電子スチルカメラを
実現することができる。
【0164】撮像レンズとして図8に示したズームレン
ズを用いることもできる。このズームレンズにおいて
も、厳しい偏心公差が要求される第2レンズ群112の
一部に、本発明の偏心が小さくなるように調整して一体
化された複合レンズが用いられているので、電子スチル
カメラは高解像度となる。また、この場合、非使用時に
は沈胴により光学全長を短くすることができる。そのた
め、高解像度で、非使用時にはカメラ本体がコンパクト
になる電子スチルカメラを実現することができる。
【0165】図16は図14に示した撮像レンズを用い
た投写型表示装置を示す断面図である。図16におい
て、222はランプ、223は凹面鏡である。230お
よび231はダイクロイックミラーである。229、2
32、236および238は平面ミラーである。23
3、234および239はフィールドレンズである。2
35および237はリレーレンズである。240、24
1、242、246、247および248は偏光板であ
る。243、244および245は液晶パネルである。
249は色合成プリズム、256は投写レンズである。
投写レンズ256としては、図10に示した撮像レンズ
を変形して、バックフォーカスを長くしたものが用いら
れている。
【0166】光源221は、ランプ222、凹面鏡22
3、前面ガラス板224で構成されている。ランプ22
2は超高圧水銀ランプであり、赤、緑、青の色成分を含
む光を放射する。凹面鏡223は楕円面鏡であり、ガラ
ス製の基材225の内面226を回転楕円面とし、内面
226に可視光を反射し且つ赤外光を透過させる光学多
層膜を蒸着して構成したものである。
【0167】ランプ222は発光体の中心が凹面鏡の第
1焦点に位置するように凹面鏡223と一体化されてお
り、ランプ221の発光体から放射される光は凹面鏡2
23で反射されて第2焦点に発光体像を形成するように
進む。前面ガラス板224は、入射側の面227に、可
視光を透過し且つ赤外光と紫外光とを反射する光学多層
膜を蒸着し、出射側の面228に反射防止膜を蒸着して
構成したものである。前面ガラス板224は、凹面鏡2
23からの出射光から赤外光と紫外光とを除去する。
【0168】凹面鏡223から出射した光は、平面ミラ
ー229で反射された後、青透過ダイクロイックミラー
230に入射し、青色光は透過し、赤色光と緑色光とは
反射する。赤色光と緑色光とは緑反射ダイクロイックミ
ラー231に入射し、赤色光は透過し、緑色光は反射す
る。青色光は平面ミラー232で反射されて、フィール
ドレンズ233に入射する。緑色光は直接フィールドレ
ンズ234に入射する。赤色光は第1リレーレンズ23
5、平面ミラー236、第2リレーレンズ237、平面
ミラー238を順に通過してフィールドレンズ239に
入射する。
【0169】各フィールドレンズ233、234、23
9を出射した光は、それぞれ入射側偏光板240、24
1、242を透過して、対応する液晶パネル243、2
44、245に入射する。フィールドレンズ233、2
34、239は、液晶パネル243、244、245の
周辺部の画素に入射する主光線を液晶層と垂直にするた
めに用いられている。液晶パネル243、244、24
5には、映像信号に応じて旋光性の変化として光学像が
形成される。
【0170】液晶パネル243、244、245からの
出射光は、出射側偏光板246,247,248を透過
して、色合成プリズム249に入射する。色合成プリズ
ム249は、四つの直角プリズムの各斜面に、赤反射ダ
イクロイック多層膜および青反射ダイクロイック多層膜
を設け、赤反射ダイクロイック多層膜と青反射ダイクロ
イック多層膜とがX字に交差するように四つの直角プリ
ズムを接合して構成されている。色合成プリズム249
に入射した3つの原色光は、赤反射ダイクロイック多層
膜と青反射ダイクロイック多層膜により1つの光に合成
され、合成された光は投写レンズ256に入射する。
【0171】こうして、三つの液晶パネル243、24
4、245に形成された光学像は、輝度変化の画像に変
換されて、投写レンズ256により離れて配置されるス
クリーン上に拡大投写される。
【0172】投写型表示装置の小型化および高解像度化
を図ろうとすると、液晶パネル243、244、245
の画面サイズを小さくし、且つ、画素数を多くする必要
があり、また投写レンズ256として高解像度のものを
用いる必要がある。即ち、投写レンズ256として、偏
心公差が非常に厳しいものを用いる必要がある。
【0173】そのため、図16の例では、図14で示し
た撮像レンズ(偏心が小さくなるように調心されて一体
化された複合レンズが、厳しい偏心公差が要求される部
分に用いられた撮像レンズ)を、投写レンズとして用い
られている。こうして、図16に示した投写型表示装置
は高解像の投写画像を得ることができる。
【0174】図16の例では、ライトバルブ装置として
透過型の液晶パネルを用いた投写型表示装置について説
明したが、反射型液晶パネルや、傾斜角可変の微小ミラ
ーを2次元配列したライトバルブなど、映像信号に応じ
て光学的特性の変化として光学像を形成するものを用い
ることができる。
【0175】以上、本発明の複合レンズを撮像レンズ、
投写レンズに用いる場合について説明したが、本発明の
複合レンズは結像を目的とするレンズ装置であれば適用
でき、この場合偏心を小さくできるために高解像度とす
ることができる。また、本発明の複合レンズを用いたレ
ンズ装置は、結像を目的とするレンズ装置を用いる光学
装置であれば利用することができる。
【0176】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、偏心の小
さい複合レンズを提供することができ、この複合レンズ
を用いることにより高解像度の撮像レンズや高解像度の
投写レンズ等といったレンズ装置を提供することができ
る。また、この複合レンズを導入した高解像度のレンズ
装置を用いることにより高解像度の電子スチルカメラ、
高解像度のビデオカメラあるいは高解像度の投写型表示
装置をも提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる複合レンズを示
す断面図である。
【図2】レンズ素子の偏心を説明するための概略線図で
ある。
【図3】レンズ素子群の偏心を説明するための概略線図
である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかる複合レンズの製
造方法を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1にかかるレンズ装置を示
す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2にかかる複合レンズを示
す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態3にかかる複合レンズを示
す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態3にかかるレンズ装置を示
す断面図である。
【図9】図8に示す第2レンズ群112の鏡筒内の構成
を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態4にかかる複合レンズを
示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態4にかかるレンズ装置を
示す断面図である。
【図12】図11に示したズームレンズを用いたビデオ
カメラを示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態5にかかる複合レンズを
示す断面図である。
【図14】本発明の実施の形態5にかかるレンズ装置の
概略を示す断面図である。
【図15】図14に示した撮像レンズを用いた電子スチ
ルカメラを示す断面図である。
【図16】図14に示した撮像レンズを用いた投写型表
示装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
11,31 第1レンズ 12,32 第2レンズ 21,45,61 接着剤 23,48 光吸収膜 24 ベルクランプ装置 28 鏡筒 51,71,81 第1レンズ 52,72,82 第2レンズ 53,73,83 第3レンズ 91〜97 レンズ素子 98 絞り 111 第1レンズ群 112 第2レンズ群 113 第3レンズ群 114〜121 レンズ素子 122 絞り 123 複合レンズ 124 光学ローパスフィルタ 125 固体撮像素子 129 鏡筒 141 第1レンズ群 142 第2レンズ群 143 第3レンズ群 144 第4レンズ群 145〜154 レンズ素子 161 絞り 162,174,194 光学ローパスフィルタ 163,173,193 固体撮像素子 171,191 筐体 172,192 撮像レンズ 175 液晶モニタ 195 電子ビューファインダ 196 液晶パネル 197 接眼レンズ 222 ランプ 223 凹面鏡 230,231 ダイクロイックミラー 229,232,236,238 平面ミラー 233,234,239 フィールドレンズ 235,237 リレーレンズ 240,241,242,246,247,248 偏
光板 243,244,245 液晶パネル 249 色合成プリズム 256 投写レンズ

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも第1のレンズ素子と第2のレ
    ンズ素子とを有する複合レンズであって、第1のレンズ
    素子は、第2のレンズ素子と対向する対向面に有効領域
    を包含する凹面を有し、前記凹面の外縁または前記凹面
    の外側で第2のレンズ素子と接触し、且つ、前記凹面の
    外側で第2のレンズ素子に固着されていることを特徴と
    する複合レンズ。
  2. 【請求項2】 上記第2のレンズ素子の対向面が、中心
    部を有効領域、外周部を有効領域の外側の領域とする凸
    面で形成され、 上記第1のレンズ素子における凹面の外側が円錐面また
    は光軸に垂直な平面で形成され、上記第1のレンズ素子
    における凹面の外側と前記第2のレンズ素子における有
    効領域の外側の領域とが当該複合レンズの外周を取り巻
    く環状の溝を構成し、前記溝に接着剤が充填されている
    請求項1記載の複合レンズ。
  3. 【請求項3】 上記第2のレンズ素子が、対向面に有効
    領域を包含する凹面と光軸に垂直な平面とを有し、 上記第1のレンズ素子が、凹面の外側に光軸に垂直な平
    面を有し、前記平面で第2のレンズ素子の前記平面に接
    着されている請求項1記載の複合レンズ。
  4. 【請求項4】 接着剤が光吸収材料を含有するものであ
    る請求項2または3のいずれかに記載の複合レンズ。
  5. 【請求項5】 少なくとも一方のレンズ素子における有
    効領域を構成しない面の一部または全部に、光吸収材料
    で形成された光吸収膜が設けられている請求項1から請
    求項4のいずれかに記載の複合レンズ。
  6. 【請求項6】 請求項2に記載の複合レンズの製造方法
    であって、上記第1のレンズ素子を凹面の外縁で上記第
    2のレンズ素子と接触させる工程と、接触状態にあるレ
    ンズ素子間の偏心が小さくなるように位置関係を調整す
    る工程と、上記溝に接着剤を充填し、前記接着剤を硬化
    させる工程とを少なくとも有することを特徴とする複合
    レンズの製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項3に記載の複合レンズの製造方法
    であって、上記第1のレンズ素子および上記第2のレン
    ズ素子のうち少なくとも一方の上記平面に接着剤を塗布
    し、互いの上記平面が重なり合うように上記第1のレン
    ズ素子と上記第2のレンズ素子とを接触させる工程と、
    接触状態にあるレンズ素子間の偏心が小さくなるように
    位置関係を調整する工程と、上記接着剤を硬化させる工
    程とを少なくとも有することを特徴とする複合レンズの
    製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1から請求項5のいずれかに記載
    の複合レンズと、前記複合レンズを内部に配置し得るよ
    うに構成された鏡筒とを少なくとも有するレンズ装置で
    あって、前記複合レンズは、それを構成するレンズ素子
    のうちのいずれか一つのレンズ素子の側面のみが鏡筒の
    内壁と接触するように鏡筒内部に配置されていることを
    特徴とするレンズ装置。
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