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JP2001505777A - 微生物の代謝経路のモジュレート法、及びこの方法によって得られる微生物 - Google Patents

微生物の代謝経路のモジュレート法、及びこの方法によって得られる微生物

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JP2001505777A
JP2001505777A JP52652598A JP52652598A JP2001505777A JP 2001505777 A JP2001505777 A JP 2001505777A JP 52652598 A JP52652598 A JP 52652598A JP 52652598 A JP52652598 A JP 52652598A JP 2001505777 A JP2001505777 A JP 2001505777A
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yeast
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レスリー アレン グリヴェール
ド マットス マールテン ヨースト テイクセイラ
ヨランダ ブロム
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ユニヴェルシテイト ファン アムステルダム
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、ある特定の炭素源の存在下における微生物の代謝経路を変更する方法提供し、かつ微生物に加えこのような変更を使用し、並びにこのような方法によって製造された微生物に加えこのような変更を使用する。本発明の好ましい実施態様は、バイオマス収量が向上した新規酵母菌株、これらの酵母を得る方法、及びこれらの酵母の可能性のある用途を提供する。このバイオマス収量は、いくつかのグルコースで抑制された遺伝子の転写を制御しているタンパク質をコードしている遺伝子の変更された発現をもたらすDNA構築物の、酵母への導入によって、向上される。これらの酵母は、グルコース抑制に対する感受性がより低く、その結果、呼吸能の増加、エタノール生成の減少、及び糖のバイオマスへの転化の増大を生じる。

Description

【発明の詳細な説明】 微生物の代謝経路のモジュレート法、及びこの方法によって得られる微生物 本発明は、バイオテクノロジーの分野、特に微生物、詳細には酵母の培養の分 野に関する。 微生物の培養は、十分に確立されかつ当業者には十分に理解されている比較的 古い技術である。通常、この技術は目的の微生物を、それが生存、増殖及び分裂 できる培地に入れることを含む。通常この培地は、微生物がこれを行うことがで きるために必要な栄養素を全て含んでいる。 微生物は、多くの異なる目的のために培養される。これには、バイオマスの製 造、抗生物質の製造、微生物(天然の又は遺伝子操作された)によって発現され た有用なタンパク質の製造、それ自身が有用な微生物の製造(例えば、醸造又は パン焼き、ドウのふくらませなど)を含む。微生物の培養技術は、その歴史が比 較的長く数多く使用されてきたために、非常にうまく最適化されており、その結 果培養される微生物の収量及び増殖速度の一層の増大は、達成困難である。しか しながら、微生物培養の経費の点及び膨大な量が必要とされる点から、このよう な改良(しかしパーセントで言うと小さい)が依然望まれている。 微生物培養に関する問題点のひとつは、これらは、ある特定の炭素源に対する 好みを示すことが多いが、この炭素源は、その微生物の最良の収量及び/又は増 殖速度をもたらさないことである。このような好ましい炭素源の利用可能性は、 別の利用可能な炭素源の代謝の抑制をもたらすことが多いであろう(この別の炭 素源は、より高い収量をもたらすことが多い。)。例えばS.セレビシアエは、他 の多くの微生物同様に、特定の炭素源、窒素源及びエネルギー源を著しく好んで いる。このような好みのひとつは、他の発酵性及び非発酵性の炭素化合物よりも むしろグルコースを使用することに関係している(1、2を参照のこと)。この挙 動は、グルコースを含む炭素源混合物において培養した場合に、この酵母のジオ ーキシー増殖を引き起こす。グルコース上で増殖している酵母細胞は、高い増殖 速度を発揮するが、これは恐らく中間産物が、この糖の異化作用に由来すること ができる容易さに関連しているであろう。グルコースは、酵母細胞における酵素 相補体(enzyme complement)及び代謝パターンに関する根元的な結果を有してい る(図1)。この糖の上での増殖時には、他の炭素源の代謝に必要とされる酵素は 、存在しないか、もしくは、mRNA又はタンパク質の活性分解(カタボライト不活 性化)、mRNAの合成の抑制(カタボライト抑制)、又はこれら両方の結果として 、総量が強力に削減されているかのいずれかである。このような酵素は、透過酵 素、並びに様々な糖の利用に関連した重要な酵素、糖新生及びグリオキシル酸回 路の酵素を含んでいる。更に、ミトコンドリア呼吸鎖の成分の合成が抑制され、 その結果低い呼吸能となる。グルコースにより抑制された細胞、又は過剰なグル コースで短期間パルスされた細胞は、細胞質ピルベートの脱炭酸及びそれに続く アルコールデヒドロゲナーゼの作用により、エタノールを生成する。クラブトリ ー効果として公知のこの一連の反応は、解糖に必要な細胞質NAD+を再生する。ク ラブトリー反応の基本の大部分は解明されていないが(3)、S.セレビシアエの大 規模製造時のこれらの反応の発生は、細胞の収量が低下するので望ましくない。 グルコース上で増殖している酵母細胞によるエタノール生成の抑制は、現時点で は、この糖の供給速度を制限することによって達成されている。この方法は、不 完全な混合が短期間のクラブトリー反応のひきがねとなることができる点で、部 分的にのみ成功している。加えてこれには、細胞がそれらの最大能以下で増殖す るように強制されるという欠点がある。これらの問題点又は同様の問題点は、多 くの微生物、特に真核生物、より詳細には酵母において生じる。本発明は、代謝 経路がモジュレートされたような微生物、例えば糖/グルコース代謝が好気的発 酵から酸化へとシフトされているような微生物を製造する方法で、この炭素源の 微生物の利用可能性によって引き起こされたグルコースの酸化的代謝の抑制を阻 害又は回避する能力を持つ微生物を提供すること含む方法を提供することにより 、このような問題点を解決することができるような一般的メカニズムを提供する 。驚くべきことに、(特に)真核微生物の代謝経路の複雑な調節メカニズムにおけ る単一の(良く選択された)スポットでの簡単な干渉によって、この代謝経路を 、あるメカニズム(発酵)から別のメカニズム(酸化)へと向け直すことが可能 であることを、我々は発見した。代謝の周りの調節システムは複雑であるので、 一般には、単一のポイントでの干渉が何らかの意味を持つことは 疑わしいか(当初の状態を回復しようとする、あらゆる種類の正及び負の恒常性 メカニズムのため)、もしくは、悲惨な結果ではないとしても有害であるか(フィ ードバック−メカニズムの破壊が可能であっても)であろうと考えられている。 我々は、簡単な修飾、特に転写活性化レベルの修飾が、微生物の代謝を破壊する ことなく、代謝メカニズムの望ましい切り替えをもたらすことを発見した。 特に本発明は、多くの微生物、特に酵母に該当するような、微生物の好ましい 炭素源がグルコースである場合について、この問題点を解決している。工業的に 最も重要な酵母のひとつは、(当然のことながら)サッカロミセス・セレビシア エ(出芽酵母:Saccharomyces cerevisiae)である。我々はこの理由で、我々の 発明を説明するためのモデルとして、本微生物を選択した。その重要性のために 、当然、これは本発明の極めて好ましい実施態様でもある。ハンセヌラ(Hansenu la)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)などの他の周知の工業用酵母菌、及びそ の他の菌株も、当然本発明の範囲内である。 以下に説明するように、グルコースを好む結果として、多くの場合に好気的発 酵経路の代謝低下をもたらすことは、理解されるであろう。バイオマス及び/又 は有用なタンパク質の産生における収量などについて、酸化的/糖新生経路が好 ましいことも明らかであろう。この経路は、グルコースが利用できる場合に抑制 され、かつ他の炭素源が利用できる場合に使用されるような代謝の一部であるこ とが多い。従って本発明の重要な態様は、抑制された代謝を、好ましくない炭素 源の代謝経路の活性化によって、著しい程度回復するような方法を提供すること である。 前述の活性化は、該経路の酵素をコードしている少なくとも1個の遺伝子の少 なくとも1個の転写アクチベーターを伴う微生物を提供することによって、達成 されることが好ましい。 前述の活性化を達成する非常に適した好ましい方法は、転写アクチベーターを コードしている組換え核酸の微生物への導入によって、該アクチベーターが提供 されるような方法によるものである。この組換え核酸は、発現ベクターであるこ とが好ましい。このようなベクターは、自律的複製するベクターであることがで きるが、宿主ゲノムに組込まれたベクターを使用することが好ましい。しかしな がら、(位置指定)突然変異のような、他の方法によっても達成され得る。 発現された転写アクチベーターを得る方法は、2種類ある。本発明のひとつの 実施態様において、転写アクチベーターは、該微生物によって構成的に発現され る。別の実施態様において、転写アクチベーターは、例えばグルコースの存在に よる誘導時に、微生物によって発現することができる。当業者は、様々な環境及 び所望の最終結果のために、いずれを使用できるかを決定することができるであ ろう。多くの例において、該アクチベーターの導入に使用されるベクターは、宿 主ゲノムへの組込みが可能であることが好ましい。別の実施態様においては、自 己複製ベクターが使用できる。 グルコース存在時のそれらの活性化以外の代謝経路の抑制解除を達成する非常 に効果的な方法は、提供された転写アクチベーターが、Hap4タンパク質、もしく はそれらの機能的同等物、誘導体又はフラグメントであることによる。機能的同 等物、誘導体又はフラグメントとは、関りのある経路からの関りのある遺伝子の トランス活性化において同じ活性を依然有している分子と定義される(種類に関 してであって、量は必要ではない)。バイオマス製造及びこれらの微生物自身の 他の利用に関する有用性以外の、別の重要な利用は、組換えタンパク質、相同又 は異型のものの製造を含む。従って、本発明は、更に、本発明の微生物を製造し 、この微生物が関心のあるタンパク質などをコードしている核酸を更に含むよう な方法も提供する。関心のある多くのタンパク質は、酵母又は他の微生物におい て明らかにされ、かつ製造されている。これらは、本願明細書において繰り返す 必要なない。 本発明の方法に従って製造された微生物も、本発明の一部である。これらは、 それらが由来する生物と比較した場合に、多くの態様が改善されていて、例えば これらは、培養時に改善されたバイオマス収量を有することができ;増強された グルコース酸化を示すことができ;増強された酸化的糖代謝及び/又は減少され た好気的発酵を発揮することができる。通常、嫌気性の培養条件下では、本発明 の微生物は、この代謝経路のモジュレーションでは提供されない対応する微生物 と、本質的に同じ挙動を見せるであろう。 改良された微生物、特に改良された酵母を得る方法には、バイオマスへの糖の 最適の転化が必要であるような、あらゆる工業的工程における適用がある。これ らの改良された酵母の使用は、短縮された加工時間及び消費されたグルコース当 たりのバイオマス量の増加のために、経費削減につながるであろう。本発明は、 例えばパン焼き用の酵母の(好気的)製造工程において、又は風味を増した酵母 抽出物の供給源として、良く適用される。更に本発明は、代謝物及び異種遺伝子 産物、例えば医薬、農業又は食品の部門での適用のための酵素、化学物質の前駆 体、バイオサーファクタント及び脂肪酸などの製造の増加に繋がるであろう。 パン焼き用の酵母又は醸造用の酵母での用途に関連して、生成相におけるアル コール合成の減少が、増殖又は嫌気的発酵時のアルコール生成に負に作用するこ とがなく、このことがドウのふくらませ又は醸造工程にとって極めて重大である ことに注意しなければならない。本発明は、酵母が、その増強された呼吸能を用 いることができる場合、すなわち好気的条件下でのみ、アルコール生成を減少す る。 本発明は、更にグルコース抑制、又は更に酵母の呼吸機能に直接関係しない方 法のグルコース不活性化の操作に関して適用することができる。グルコース以外 の炭素源、例えばガラクトース、スクロース又はマルトースなどの取込み及び代 謝は、グルコースによって抑制される。栄養分のない(lean)ドウの酵母発酵は、 小麦粉の中に存在するアミラーゼの作用によりデンプンからドウ中で生成される 、主要基質としてのマルトースに左右される。この小麦粉は、グルコースはもと より、加えて様々な量の他の糖類を含有している。形質膜を通じてのマルトース の転移に寄与することができるマルトース透過酵素、及びマルトース代謝酵素で あるマルターゼは、グルコースの抑制及び不活性化の両方の影響下にある(4)。 これは、CO2生成およびそれによるふくらまし活性には負に作用するので、マ ルトースの取込み及び活用に対するグルコースの作用を減少するための手段は、 有用であろう。従って、本発明が、該酵母菌株のふくらまし活性を改善しさえす ることは注目に値する。詳細な説明 前述のように、非常に重要な微生物は、サッカロミセス・セレビシアエである 。我々は、他の微生物の典型として、グルコースの存在に対するその反応が、い か に変化し得るかを、詳細に説明する。グルコースの存在下では、サッカロミセス は、「クラブトリー」反応を示し、好気的発酵によりエタノール生成へと切り替 わる。 ある実施態様において本発明は、クラブトリー効果が減ったか、もしくは、存 在しないような、微生物、特に酵母、より詳細にはS.セレビシアエの生産株の構 築によって、このような問題に対する解決法を提唱する。この方法の原理は、グ ルコース制御に対し感受性のないプロモーター由来の特異的転写アクチベーター の過剰発現による、グルコースで抑制可能な遺伝子の制御された調節解除である 。発酵から酸化的代謝への釣り合いの取れた生じたシフトは、増殖速度の上昇及 びエタノール生成の減少に繋がる。S. セレビシアエの代謝におけるグルコース制御 酸化/糖新生から、発酵増殖へのシフト時の酵素相補体の広範な変化は、ほと んどの場合、グルコースに対する反応における対応する遺伝子の転写の誘導又は 抑制の結果である。発現がこの糖によって抑制されるような遺伝子は、下記の3 つのグループに分けることができる: 1.他の炭素源、例えばガラクトース、スクロース、マルトース、グリセロール 、乳酸及びエタノールの取込み及び代謝に必要な遺伝子。 2.糖新生及びグリオキシル酸回路に特有の遺伝子。 3.クレブス回路の酵素及び呼吸鎖の成分をコードしている遺伝子。 各グループは、調節について個別の特徴を示しているにもかかわらず、いくつか の共通の転写因子及びメカニズムが関っており、かつこれらは、主要なグルコー スの抑制/抑制解除経路を形成している(MGRP;2)。図3に示されるように、こ の経路における重要な事象は、グルコースによって発生したシグナルに対する応 答におけるいくつかの重要な転写因子の活性化又は阻害である。このシグナルの 性質は、不明である。しかしながらその主な作用は、グルコースで調節されたプ ロモーターで、転写抑制を軽減しかつ転写活性化を促進すると考えられている、 Snf1/Snf4複合体、タンパク質/トレオニンキナーゼの作用の阻害又は逆作用で ある(5)。現時点で、Snf1/Snf4が転写調節因子を直接リン酸化するという証拠は ないが、遺伝子研究は、Snf1/Snf4の重要な直接的又は間接的標的が、転写因 子Mig1、Ssn6/Tup1及びHap2/3/4であることを示唆している。Mig1は、多くのグ ルコースで抑制可能な遺伝子において転写リプレッサーとして作用する、ジンク フィンガータンパク質である(6)。Ssn6/Tup1は、恐らく遺伝子−又はファミリー 特異的転写因子と一緒に、非常に多くの遺伝子において転写のリプレッサーとし て作用する(7)。対照的にHap2/3/4複合体は、転写アクチベーターである。これ は、主にミトコンドリア電子伝達系、クレブス回路、ヘム生合成及び糖新生に関 係したタンパク質をコードしている限られた数の遺伝子の、非発酵性の炭素源に よる転写の誘導のために必要とされる(8,9,10,11,12)。Hap2/3/4複合体による転 写調節は、培地の炭素の状態の変化に反応してこれらの酵素の抑制解除を調整す る主要メカニズムである(11,13)。Hap複合体の活性は、このアクチベーターサブ ユニットHap4の利用可能性によって制御され、その合成はグルコースによってほ ぼ1/5倍に抑制される(13)。酵母における転写及び転写制御 典型的な酵母プロモーターは、調節タンパク質の標的部位として機能する、い くつかのシス−作用エレメントからなる(図2)。RNAポリメラーゼII複合体による 転写開始の位置は、開始部位(I)に位置している。TATA-ボックス(T)は、多くの プロモーターにおいて、転写開始を起動するために必須であることが示されてい る。これは、RNAポリメラーゼII基本転写因子TFIIDの標的部位であり、これは、 他の基本転写因子及びRNAポリメラーゼIIの集合体を、安定した転写開始前複合 体へと凝集する(nucleate)。これらの基本調節エレメントに加え、少なくとも1 個の上流活性化配列(UAS)が転写には必要である。UASエレメントは、転写調節タ ンパク質のDNA-結合部位として機能し、基本転写機構(machinery)と相互作用し 、特異的調節を媒介すると考えられている。多くの例において、酵母プロモータ ーは、いくつかのTATA-及びUAS-エレメントからなり、これらは共に、隣接する 遺伝子の転写効率を決定する。更に、酵母プロモーターは、オペレーター又は上 流抑制配列(URS)及び上流誘導配列(UIS)を含むことができる。特異的タンパク質 と結合することによって、これらのエレメントは、全体の転写調節に寄与する。Hap2/3/4 複合体による炭素源−依存型転写調節 いくつかのミトコンドリア呼吸鎖の成分及び糖新生の酵素をコードしている遺 伝子の炭素源に依存した転写は、Hap2/3/4複合体によって調節されている。Hap2 及びHap3は、S.セレビシアエのイソ-1-シトクロムcをコードしている遺伝子のU AS2領域に結合することが可能なタンパク質として、最初に同定された(14)。こ の領域は、炭素源応答に関与していて、多くの他の真核生物のプロモーターにお いて見つかっているCCAATボックスエレメントに非常に良く似た配列モチーフを 含んでいる。これら2種のタンパク質は、相互依存方式でDNAに結合する。Hap4 は、DNAに直接接触はしていないようであるが、他の2種のタンパク質のDNA結合 には必要である。配列の分析から、その存在が活性化に必須であるような、C-末 端に位置した、非常に酸性の領域が明らかになった。この領域の、酵母のGal4タ ンパク質の活性化ドメインによる置換は、活性を回復し、このことは、これがD NAに結合したHap2/Hap3複合体の主要な活性化ドメインを提供することを示唆 している(13)。S.セレビシアエにおけるHap2及びHap3の遺伝子の転写は、炭素源 によって実質的に影響を受けないが、Hap4遺伝子の発現は、グルコースで抑制可 能である(13)。このことは、Hap4が、炭素源に応答して転写活性化を調節するそ の能力の点で、この複合体の重要な成分であることを示唆している。 Hap2及びHap3タンパク質の構造の洞察は、相当する遺伝子の単離及び配列決定 によって得られた。HAP2遺伝子は、265残基のタンパク質をコードしているが、 その非常に塩基性のC-末端領域における進化的に保存された(evolutionarily-co nserved)65個のアミノ酸コアは、複合体形成及びDNAへの結合の両方にとって必 要かつ十分なものである(図4)。HAP3遺伝子は、114残基のタンパク質をコードし ていて、これは複合体形成及びDNA-結合のために必要な90個のアミノ酸コア(B- ドメイン)を含んでいる(図5)。HAP4遺伝子は、そのC-末端ドメインの中に2つ の非常に酸性の領域を含む554残基のタンパク質をコードしている(13;図6)。こ れらはいずれも、転写活性化に必要であるように思われる。 HAP2及びHAP3に対応している遺伝子は、広範な微生物から単離されている(15) 。これらのコードされたタンパク質は、NF-Y、CBF又はCPと称される 異型複合体を形成し、これらは、進化的に保存されたCCAATボックスエレメント に結合することによって、転写を活性化する。Hap2-及びHap3-相同サブユニット は、DNAと同様の接触をする。ヒトのCP1複合体に関して、Hap2及びHap3相同体が 、酵母のそれらと、in vitroにおいて交換可能であることが示されている(16)。 しかしながら、ヒトCP1複合体は、2個以上のサブユニットからなるにもかかわ らず、これらはいずれも、S.セビシアエのHap4タンパク質には相当していないよ うに見える。これらのHap相同複合体は、ある増殖条件下での遺伝子誘導に特異 的に関ることはないが、多数の遺伝子の基本レベルの発現に必要な一般的な転写 因子として機能する。 Hap複合体(酵母サッカロミセス・セレビシアエにおいて)は、多くの代謝過 程の調節に関連しているので、その発現の修飾が、細胞生理に際立った影響を及 ぼすことが予想される。同化過程に関して、その役割について今日までにわかっ ていることは多いとはいえないが、S.セレビシアエにおける異化作用ネットワー ク(すなわち、エネルギー保存機構)に関して、呼吸鎖(ここではミトコンドリ アの)の成分は、Hap2/314複合体の制御下で著しい量合成されている。Hap-依存 型調節は、少なくともクラブトリー効果として公知の生理現象に関連していると 結論付けることは、正しいように思われる。その生理的直接の影響は、上昇した レベルのグルコースが存在する時は常に起こる、呼吸から発酵の異化作用へのカ タボライトシフトである。これは、エネルギーの保存効率の著しい低下を生じ: わずか2モルのATPが、エタノール及び二酸化炭素に発酵されたグルコース1モ ルから合成される一方で、(二酸化炭素へ)酸化されたグルコース1モル当たり のATPのモル数(当量)は、何倍も高い(正確な数値は依然論議の的である)。重 要な間接作用は、同化能の低下であり:S.セレビシアエの得ることができる最大 増殖速度は、呼吸可能な条件下で最高であることがわかっている。結論として、 条件が、呼吸への異化フラックスが増加するようなものである限り、収率(Yglu cose 、消費されたグルコース量当たりの得られた細胞数と定義される)はかなり 高く、かつ微生物はより早く増殖するであろう。別の言い方をすると、このよう な条件下では、異化及び同化フラックスを通しての総炭素フラックスの分配は、 後者に向けられるであろう。従って、炭素源の大部分は、バイオマス形 成に向けられ、かつ所定のバイオマス濃度が、短縮された期間のうちに達成され る。前述の調節(クラブトリー効果)のために、完全な呼吸異化作用は、連続し てグルコース利用可能性が非常に低い好気的条件下の場合のみに生じ、これは実 際の設定に合致することの少ない条件である。 本発明において、異化フラックスのグルコースで調節された分配の阻害又は回 避は、Yglucose値の増加及びより速い増殖速度の両方を生じるはずである。ここ で、呼吸と発酵の間のエネルギー効率の差が大きいために、呼吸フラックスの比 較的小さい増加が、バイオマス収量の著しい増加をもたらすことがあると予想で きる点は重要である。全ての同化工程は増強され、かつ同化作用はタンパク質合 成を含むので、この増加は、バイマス製造それ自身のみではなく、特異的タンパ ク質の生成にとっても有益であると予想される。 グルコースで抑制された遺伝子の発現の修飾は、Hap4に加えて、グルコース抑 制シグナルカスケードの他の因子を干渉することにより達成することができる。 Snf1又はHxk2のような、このカスケードの上流レギュレーターにおける突然変異 は全て(図3参照)、SUC2、GAL、MAL及び呼吸遺伝子のグルコース抑制を軽減する が、これらの突然変異体は、広範な表現型欠損を示し(1,17,18)、かつ酵母の工 業的用途には適していない。SUC、MAL及びGAL遺伝子の抑制解除も、一般的グル コースリプレッサ−Mig1の除去により達成することができ、これは実験用菌株に おいて、マルトース代謝のグルコース制御の部分的軽減を生じる(19)。しかしこ れは、呼吸遺伝子のグルコース抑制には影響を及ぼさず、かつ発酵的−酸化的代 謝、増殖速度又は細胞塊の収量において変化を生じない。 我々は今回、HAP4遺伝子を過剰発現する構築物で形質転換された酵母が、いく つかの遺伝子、中でも呼吸成分をコードしている遺伝子の転写のグルコース抑制 に対して、非感受性になることを発見した。これは、この酵母菌株の呼吸能の増 強及びエタノール生成の減少を生じる。この変更された好気的糖代謝は、バイオ マス収量の劇的な増加及び増殖速度の著しい上昇に繋がる。 本発明は、酵母においていくつかの遺伝子のグルコース抑制を抑制解除してい るタンパク質をコードしている相同遺伝子を含むDNA構築物の、酵母への導入を 含むような、グルコースの好気的発酵速度の減速を伴う形質転換された酵母を 提供する。 本発明の相同遺伝子HAP4は、下記節に記された方法によって、酵母に形質転換 された環状ベクターDNA構築物へとクローニングされる。このベクターは、E.コ リ及び酵母の両方で複製が可能なDNA配列、DNAフラグメントの該ベクターへのク ローニングが可能な配列、各々、酵母又はE.コリの選択的維持が可能であるよう な酵母マーカー遺伝子及び細菌マーカー遺伝子を含んでいる。このベクターの酵 母への形質転換後に、これは自己複製され、かつプラスミド損失に対する選択圧 が耐えられる限りは維持されるであろう。非選択的増殖(すなわち、この場合に はロイシン存在下での増殖)時に、このプラスミドは失われるであろう。実用性 の観点からは、酵母が非選択的に増殖することが好ましい。これには、酵母染色 体の変更された遺伝子の組込みによる、HAP4の発現の変更を必要とするであろう 。“変更された”とは、天然のプロモーターが、構成的に活性がある別のプロモ ーターによって、もしくは、染色体の異なる座、例えばSIT2座においてHAP4遺伝 子に融合されたプロモーターなどからなるDNA構築物の組込みよって交換された ことを意味する(20)。相同の酵母配列の組込みは、良く説明された効率的方法で あり(21)、(工業用)酵母菌株に容易に適用することができる。こうして得られた 酵母は、安定した形質転換体であり、かつ変更されたHAP4遺伝子は、選択圧なし でゲノムにおいて維持することができる。染色体で変更されたHAP4遺伝子を有す る酵母は、原核細胞のDNA配列が潜在するプラスミドを含む本発明で同じく説明 された形質転換体とは対照的に、形質転換体が、原核細胞のDNAを完全に持たな いようにする方法で構築することができる。サッカロミセスを起源とする相同DN Aのみの組込みによって、いずれの異種DNAも導入することなく、酵母を改良する ことができる。 本発明は、ADH1プロモーターの制御下で、酵母にHAP4を発現しているDNA構築 物を導入することによって、酵母の酸化的代謝の重要な転写レギュレーターを過 剰発現することによる、グルコース代謝の変化の誘導を含み、その活性はグルコ ースによりおよそ10倍増強される。あるいは、グルコースの存在とは無関係に、 構成的に発現される他の強力なプロモーターを使用することによって、発現レベ ルの上昇が達成される。これは特に、流加バッチ培養法の用途について重 要であり、ここでは、グルコース濃度は、クラブトリー効果を最小化するために 、低く保たれる。解糖サイクルの酵素、例えばグリセルアルデヒドリン酸デヒド ロゲナーゼ(GPD)などをコードしている遺伝子、もしくはリボソーム発現に関連 した遺伝子に属するいくつかのプロモーター、例えば延長因子(EF)の転写のため のプロモーターなどは、よく特徴づけられていて、かつ酵母遺伝子の過剰発現に 関して広範に使用されている。これらのプロモーターは、S.セレビシアエから単 離されており、かつ酵母のための発現ベクターにおいてクローニングされている (22)。単離されたHAP4遺伝子のコード領域は、これらのプロモーターの後ろにク ローニングされ、その後このプロモーター−HAP4融合体は、発現の調節が変更さ れたHAP4遺伝子が、該酵母ゲノムに組込まれるような構築物において、再度クロ ーニングされた。この方法は、より酸化的な増殖のために前述のあらゆる利点を 発揮し、加えていずれの原核細胞のDNA配列も含むことのないような形質転換体 をもたらしている。 本発明で説明した酵母菌株は、実験用菌株及び工業用の生産酵母菌株の両方を 含んでいる。Hap4の過剰発現は、最初に実験用菌株において、ADH1プロモーター の制御下での、HAP4遺伝子が潜在している自己複製プラスミドの導入によって達 成された。この遺伝子操作した菌株の代謝の挙動を、以下に説明したように詳細 に試験し、グルコース上で増殖する際に酸化的代謝が顕著に増加することを示し た。工業用の生産株は、前記プラスミドで形質転換され、Hap4を過剰生産するプ ラスミドを含む形質転換体の選択が可能になるような優性マーカーの導入により わずかに修飾された。この工業用菌株のHap4過剰発現に対する反応は、実験用菌 株のそれに類似していて、すなわち、呼吸機能のグルコース抑制は軽減され、そ の結果グルコース代謝が、発酵から酸化的代謝へとシフトされる。前述の全ての 利点を伴う安定した酵母菌株を得るために、構成的に発現されたHap4のゲノム組 込みを、下記節に詳細に記したように行った。実験 サッカロミセス・セレビシアエ菌株DL1を、YCplac111::ADH1(ADHプロモータ ーの後ろに配置された遺伝子は全く無い)又はYCplac111::ADH1-HAP4(ADH1プロ モーターの制御下でHAP4を発現する)で形質転換した。酵母菌 株のYCplac111::ADH1による形質転換体、いわゆる“空”のプラスミドは、例え ばLEU2マーカー遺伝子をコードしたプラスミドの差異に起因した、Hap4の過剰生 産型及び野生型の何らかの生理的差異を防止するために必要である。形質転換さ れた酵母菌株の命名は以下の通りである:DL1は、YCplac111::ADH1で形質転換さ れた菌株DL1を意味する一方で、DL1HAPは、YCplac111::ADH1-HAP4で形質転換さ れたDL1を意味している。これらの菌株におけるHAP4mRNAの発現レベルを、図9 に示した。DL1におけるHAP4の発現は、グルコースによって強力に抑制されてい る。ADH1プロモーターの制御下でのHAP4を伴うプラスミドの導入は、グルコース 2%含有培地において増殖されたDL1HAPにおけるHAP4の発現レベルの上昇に繋が っている。このレベルは、HAP4及び呼吸成分をコードしている遺伝子の転写を抑 制しない非発酵性炭素源上で増殖した場合の野生型DL1細胞のHAP4の発現レベル と同等である。 呼吸機能の転写制御に対するHAP4過剰発現の作用を調べるために、我々はまず 、呼吸鎖の成分をコードしている様々な遺伝子のmRNAレベルを試験した。図9に 示したように、グルコース含有培地におけるHAP4の上昇したレベルは、呼吸鎖の 酵母ユビキノール−シトクロムcオキシドレダクターゼ(QCR)複合体の11kDaサブ ユニットをコードしている、QCR8の転写の抑制解除をもたらした。同様の結果が 、いくつかの他の呼吸成分をコードしている遺伝子に関して得られた(表I)。プ ロモーター領域にHap結合ボックスを持たないグルコースで抑制された遺伝子で ある、SUC2の転写は、グルコース上でのHAP4の過剰発現によっては誘発されない 。 呼吸成分のmRNAの上昇したレベルが、Hap4を過剰発現する菌株のより高い呼吸 能をもたらすかどうかを試験するために、我々は、前節において説明したように 、細胞の酸素消費率を測定した。グルコース含有複合培地において振盪フラスコ 培養で増殖したDL1HAP細胞の呼吸能は、野生型細胞と比較して2倍に増大してい る(表II)。非発酵性炭素源である乳酸が存在する中で増殖した場合、その呼吸能 は、野生型及びHap過剰発現菌株の両方について同様のレベルにまで、およそ5 倍に更に増加される。 Hap4過剰発現菌株の生理的特徴を更に決定するには、良く規定された無機培地 における管理された条件(一定のpH、曝気、攪拌)下での増殖が必要であった( “発酵槽中でのバッチ培養”の節を参照のこと)。従って、グルコース30g/L(3 %)を含有する規定された無機塩培地の中でのDL1の好気的増殖を、DL1HAP細胞 の増殖と比較した。増殖曲線(提示せず)から算出されたように、DL1は、指数 的に増殖し、比増殖率は0.16±0.01/hである一方で、DL1HAPの増殖率は0.18±0. 01/hであった。従ってHap4の過剰発現は、11%の増殖率の増加をもたらした。 指数増殖時には6時間にわたって、試料を1時間間隔で採取し、基質の消費及 びバイオマス及び生成物の合成を測定した。この時間経過時の平均のバイオマス 収量、すなわち消費されたグルコース1g当たりの生成されたバイオマスの量は、 DL1について10.1gであり、DL1HAPについて14.8gであった。従ってHap4の過剰生 成は、野生型と比較してバイオマス収量の46%の増加をもたらし、このことは実 験を通じて比較的一定している(図10参照のこと)。 この培地中に存在する他の炭素化合物の分析は、エタノール生成が、野生型と 比べてDL1HAPにおいて著しく減少した(38%)ことを示した(表IV)。エタノール 生成の減少は、アセテート量の2.3倍の増加を伴っている一方で、グリセロール 量は、DL1HAP細胞において1/3.5に減少していた。この実験時の酸素消費は、DL1 と比べてDL1HAPの方がおよそ2倍高かった。従って全てのデータは、HAP4の過剰 発現による、発酵から酸化的代謝への炭素代謝のシフトに一致している。このこ とは更に、両方の菌株における炭素フラックスについてまとめている表Vにおい て詳細に説明されている。TCAサイクルにおいて産生されたCO2の量は、この実験 時に消費された酸素の量から算出される。 嫌気的条件下での増殖時には、両方の菌株は、増殖率、エタノール生成及びバ イオマス収量に関して同じである(データは示さず)。このことは、HAP4の過剰発 現が、酵母の好気的増殖時のみその作用を発揮することを意味している。醸造又 はドウのふくらましのような、嫌気的アルコール発酵に左右される方法はHAP4の 過剰発現の影響を受けないであろう。従って本発明は、工業用酵母菌株の好気的 生成相におけるバイオマス収量の最適化に、非常に良く適用できる。 グルコース抑制における菌株に依存した変動を考慮して(23,19)、いくつかの 工業的菌株におけるHAP4の発現の調節が、前述の及び文献に記された(13)実験用 菌株に類似している、すなわち、その発現がグルコースによって抑制されること がわかった(データは示さず)ことに言及しなければならない。工業用菌株にお いてHAP4の構成的に高い発現レベルを得るために、我々は、酵母菌株のゲノムの HAP4遺伝子のコード領域に融合された(グリセルアルデヒド−リン酸デヒドロゲ ナーゼ、GDP1及び延長因子1-α、TEF2の)構成的に活性のあるプロモーターから なるDNA構築物を組込んだ。この組込みプラスミドは、プロモーター−HAP4融合 体が、酵母のSIT2遺伝子部分を表現しているDNA配列にと隣接するように構築さ れる(図11及び13を参照のこと)。従って、このプロモーター−HAP4融合体を含む プラスミド全体の組込みは、酵母ゲノムのSIT2座に生じた。アセトアミダーゼ(a mdS)をコードしている遺伝子の存在は、該プラスミドを組込んだ細胞が、窒素源 としてアセトアミドを含有する培地上で増殖することを可能にするのに対して、 形質転換していない細胞はこの培地で増殖することが不可能である。このプラス ミドは、酵母における複製を可能にする配列を全く含んでいないので、このゲノ ムにおける該プラスミドの組込みが、アセトアミド上で増殖する能力を獲得する ためには必要である。 菌株DS28911、DS18332及びDS19806は、プラスミドpKSPO2-GDPDHAP4又はpKSPO2 -TEFHAP4により形質転換した。ゲノム中に組込まれたプラスミドによる形質転換 体は、アセトアミドを含有するプレート上で選択した。pKSPO2-GPDHAP4を含む形 質転換体はDS28911GH、DS18332GH又はDS19806GHと称し、pKSPO2-TEFHAP4を含む 形質転換体は、DS28911TH、DS18332TH又はDS19806THと称した。いくつかの形質 転換体において、組込みの位置を、サザンブロット法により分析し、ここでは、 SIT2及び/又はHAP4配列を有するゲノムDNAフラグメントを、可視化した(図13を 参照のこと)。様々なフラグメントの長さは、図13及び14に示されたように、組 込みがHAP4座で優先的に生じたことを明らかにした。これらの(染色体数が等し い(anaploid))形質転換体は、1個又はそれ以上のグルコースで抑制されたHAP4 遺伝子及び構成的に活性化されたプロモーターの制御下にあるHAP4遺伝子の 両方を含有する。 これらの形質転換体におけるHAP4の発現レベルを調べるために、2%グルコー スを含有する培地において好気的に増殖した細胞のmRNAを分析した。GPDHAP4(GH )又はTEFHAP4(TH)のいずれかを含む菌株毎のある選択された形質転換体のmRNA発 現レベルを、図15に示した。HAP4mRNAの様々なレベルが、異なる菌株において及 び2種の異なるプロモーターについて得られた。呼吸鎖のサブユニットをコード しているグルコースで抑制された遺伝子であるQCR8の発現に対するHAP4の過剰発 現の作用を、4種の個別の形質転換体について分析した。QCR8の明白かつ再現可 能な抑制解除を示している菌株は、更なる試験で選択し、かつ図15に示した。負 荷の対照として、構成的に発現された遺伝子(PDA、ピルベートデヒドロゲナー ゼのサブユニットをコードしている(24))を可視化し、これは、QCR8のより高い 発現が、HAP4の過剰発現に起因していることを示している。従ってこの組込まれ た構成的に発現されたHAP4は、前述のADH1プロモーターの制御下でのHAP4をコー ドしたプラスミドの作用と類似の、呼吸成分の転写抑制の軽減を生じるように見 える。 組込まれたGPDHAP4(GH)又はTEFHAP4(TH)融合体を伴うDS28911、DS18322及びDS 19806の呼吸能を試験するために、我々は、4%グルコースを含有する培地にお いて増殖した細胞における酸素消費率を測定した。表IVに示したように、グルコ ース上でのHAP4の過剰発現は、呼吸能の増大をもたらし、これは、対応する野生 型において認められた値の2.2〜4.1倍の範囲であった。乳酸含有培地において増 殖された細胞の呼吸能は、野生型よりも7.7倍高かった。従って呼吸機能のグルコ ース抑制の緩和は、部分的ではあるが、プラスミド上のADH-HAP4融合体を含む実 験用菌株DL1によって得られるものと同等あるいはこれより高くさえある。従っ て、後者の菌株の生理的利点は、前述の組込まれ構成的に発現されたHAP4が潜在 している工業用菌株にも適用できると予測することができる。 これらの修飾された工業用菌株の適用には、酵母に由来しないあらゆる配列の 除去が必要である。この形質転換体は、ゲノムのプラスミドpKSPO2-GDPDHAP4又 はpKSPO2-TEFHAP4の全体を含む。しかしこれらの“酵母で ない”プラスミド配列は、図13に示したように、ゲノムの同じDNAセグメントの 相同的組換えにより除去することができる。プラスミド配列を欠いている細胞は 、アセトアミドをコードしている遺伝子を依然含んでいる細胞にとっては毒素で あるフルオロアセトアミドを含有する培地上で増殖することにより選択すること ができる。このプラスミドがHAP4座で組込まれた場合には、この組換え事象は、 加えてGDP-又はTHF-HAP融合体の欠失を引き起こし、野生型株を生じるであろう 。この染色体配列は、SIT2座での組込み後のみ、組換え体が、依然GDP-又はTHF- HAP融合体を含む細胞を生じることができる。これらの“クリーンな”形質転換 体は、ここで、酵母配列のみを含み、かつ工業用用途に適している。 これらのクリーンな形質転換体を得るために、菌株DS28911、DS18322及びDS19 806は、Sfil切断部位で線状化されたプラスミドpKSPO2-GDPDHAP4又はpKSPO2-TEF HAP4で形質転換した(図11B参照)。このことは、サザンブロット分析によって示 されたように、SIT2座でのより高い組込み効率に繋がった。予想されたいくつか の形質転換体のDNAフラグメント(図13)及び得られたフラグメント(図14)と の比較は、SIT2座でのHAP4過剰発現菌株の新たなセットを明らかにした。このHA P4、QCR8及びPDA1の発現レベルは、グルコースを2%含有する培地で増殖された 細胞から単離されたmRNAのノーザンブロット法により測定した。図17Aに示した ように、これらの菌株においても同様に、HAP4発現の上昇が、QCR8のグルコース 抑制の緩和をもたらすことが認められた。その後我々は、相同的組換えによって 、それらのプラスミド配列(アセトアミダーゼ遺伝子を含む)を失ったフルオロ アセトアミド耐性細胞を選択した。ゲノム中のGDP-又はTHF-HAP融合体を依然保 持している形質転換体は、サザンブロット分析により、正確な染色体配列を証明 することによって選択した。図16Bは、形質転換体DS18322GH15及びDS18322TH25 に由来した、クリーンな3種の形質転換体の例を示している。図17Bに示したよ うに、前述のプラスミド配列の除去は、HAP4の過剰発現又はQCR8の抑制のいずれ に対しても負の作用を示さない。従って、これらの菌株におけるHAP4の過剰発現 の酸化的代謝に対する作用は、前述のものに類似していると予想するこ とができる。実験手順 クローニング法 一般的クローニング法(プラスミド単離、制限酵素、ゲル電気泳動、連結)は 全て、Maniatisらの著書「分子クローニング、実験マニュアル」(コールド・スプ リング・ハーバー・ラボラトリー、コールド・スプリング・ハーバー、N.Y(1982 年))に記されたように実施した。DNA制限酵素は、ニューイングランド・バイオ ラボ社(Biolabs)、ベーリンガー・マンハイム社(Boehringer)又はベセスダ・リ サーチ・ラボラトリー社(BRL)から購入した。これらの酵素は、製造者の指示し た条件及び緩衝液において使用した。組換えプラスミドYCplac111::ADH1-HAP4の構築 セントロメアのプラスミドYCplac111::ADH1及びYCplac111::ADH1-HAP4は、E. コリ及び酵母において自己複製することが可能であり、かつHAP4のコード配列を 伴わない(YCplac111::ADH1)か、もしくは、伴う、ADH1プロモーター領域を含 んでいる。YCplac111::ADH1-HAP4の構築は、図7に概略を示した。 YCplac111::ADH1は、YCplac111に由来し(25)、かつBamHI及びSmaIの切断部位 の間に、pBPH1由来の723bp EcoRVプロモーターフラグメントを有している。ベク ターpBH1は、pAC1に由来し(27)、これは、酵母のアルコールデヒドロゲナーゼI プロモーターを含むpMAC561由来のBamI/HindIIIフラグメントを保持するYCp50誘 導体である(28)。 HAP4のコード領域は、pSLF406由来のHAP4の単離による先の構築物におけるADH 1プロモーターの後ろにクローニングした(13)。pSLF406は、BspHIで切断したと ころ、これは、該コード配列の開始コドンに対して-1の位置でHAP4を切断した。Bs pHI末端は、平滑化し、その後PstIで該DNAを切断し、HAP4フラグメントを得、か つアガロースゲルから単離した。YCplac111は、SamI及びPstIで切断し、かつ前 記HAP4フラグメントと連結して、YCplac111::ADH1-HAP4を生成した。組換え体組込みプラスミドp425-GPDHAP4、p425-TEFHAP4、pKSPO2- GPDHAP4 、及びpKSPO2-TEFHAP4の構築 プラスミドpKSPO2を、HAP4と、GPD1又はTEF2プロモーターの融合体の組込みに 使用した。これらの融合体は、最初にGPD1(p425GPD)又はTEF2プロモーター領域( p425TEF)のいずれかを含むシャトルベクターにおいて構築した(22)。HAP4遺伝子 を含むpSLF406からの2651bpフラグメント(13)は、前段で説明したように、BspHI で切断し、平滑化し、かつPstIで切断した後に単離した。このHAP4フラグメント は、ベクターp425GPD又はp425TEFのSamI及びPstI切断部位でクローニングし、各 々、ベクターp425-GPDHAP4及びp425-TEFHAP4を得た。これらのシャトルベクター は、E.コリ及び酵母において自己複製することができるが、選択圧が存在する場 合、すなわちレシピエント菌株がLEU2栄養要求性である場合には、酵母において のみ維持される。栄養要求性マーカーを持たない工業用菌株において、GPDHAP又 はTEFHAP融合体の組込みが、変更されたHAP遺伝子を酵母において安定して維持 するために必要である。従って、プロモーター-HAP4フラグメントは、組込みベ クターpKSPO2(Gistbrocadesで構築され、提供された)へと、再度クローニング した。3359bpであるEcl136II-SalI GPDHAP4フラグメントは、p425-GDPHAP4から 単離し、かつ3081bpであるEcl136II-SalIフラグメントは、p425-TEFHAP4から単 離し、これらを、SamI及びSalIで切断したpKSP02にクローニングした。様々なク ローニング工程を、概略的に図11に示した。図12は、GPDHAP4及びTEFHAP4融合体 のDNA配列を示している。形質転換法 E.コリの形質転換は、電気穿孔法を用い、バイオラド社のE.コリパルサーで、 製造業者の指示に従って行った。 酵母細胞は、Itoらによって記されたLiAc法に従って形質転換した(29)。菌株D L1のプラスミドYCplac111::ADH1-HAP4による形質転換体は、2%グルコース、2 %寒天、0.67%酵母用窒素ベース(ディフコ社)を含有し、必要なアミノ酸は補 充したが、ロイシンを含まないプレート上で選択した。工業用菌株DS28911、DS1 8332及びDS19806は、1.8%窒素非含有寒天(オキソイド社)、1.17%酵母用炭素ベ ース(ディフコ社)、30mMリン酸緩衝液pH6.8及び5mM アセトアミド(シグマ社)からなる培地上で平板培養した。形質転換体の逆選択 プラスミドpKSPO2-GPDHAP4又はpKSPO2-TEFHAP4の組込み後、該ゲノム由来のプ ラスミド配列と組換えた形質転換体を選択するために(図13を参照のこと)、1.8 %窒素非含有寒天、1.17%酵母用炭素ベース、30mMリン酸緩衝液、60mMフルオロ アセトアミド(フルカ社)及び0.1%(NH4)2SO4を含有するプレート上で、逆選択 を行った。形質転換体は、YPD培地において、3〜4日間毎日この培養物を希釈し て、60〜70世代増殖した。これらの培養物のアリコートを、フルオロアセトアミ ドを含有するプレート上で平板培養し、アセトアミド遺伝子を組換えた細胞を選 択した。GPDHA4又はTEFHAP4融合体の存在は、サザンブロット分析で試験した。フラスコバッチ培養における酵母の増殖 振盪フラスコ培養のために、酵母細胞を、YPD(1%酵母抽出物、1%バクトペ プトン、3%D-グルコース)、YPEG(酵母抽出物、1%バクトペプトン、2%エタ ノール、2%グリセロール)、YPL(乳酸培地:1.5%乳酸、2%Na-乳酸塩、0.1% グルコース、8mM MgSO4、45mM(NH)2PO4、0.5%酵母抽出物)、又は3%D-グルコ ースを含み、かつ形質転換されたプラスミド維持のための選択圧を得るのに適し たアミノ酸を補充した無機培地(0.67%酵母用窒素ベース)のいずれかにおいて 増殖した。 全ての培養物は、プレートからのコロニーを5ml培地に接種することによって 調製した予備培養物から接種した。ノーザンブロット分析及び酸素消費能の測定 のために、野生型及び修飾された工業用酵母菌株を、YPDにおいて一晩予備培養 し、YCplac111::ADH1-HAP4を含む菌株DL1及び空のYCplac111ベクターを含むDL1 菌株は、アミノ酸を追加した無機培地において、一晩予備培養した。これらの培 養物を用いて、100ml YPEG及び/又はYPD培地に接種し、かつ一晩28℃でOD600約 (〜)1.5になるまで増殖し、その後細胞を遠心分離により収集した。発酵槽−バッチ培養における酵母の増殖 形質転換された酵母細胞は、30g/L D-グルコースを含有し、40mg/Lウラシル 及びL-ヒスチジンが補充された無機のEvans選択培地において増殖した。この無 機培地は、以下を含有していた:NaH2PO4・2H2O、10mM;KCl、10mM;MgCl2・6H2O 、1.25mM;NH4Cl、0.1mM;Na2SO4、2mM;C6H9NO6、2mM;CaCl2、20mM;ZnO、25. 3mM;FeCl3・H2O、99.9mM;MnCl2、50.5mM;CuCl2、5mM;CoCl2、10mM;H3BO3、 5.2mM;Na2MoO4・2H2O、0.08mMである。この培地を120℃で加熱滅菌した後、ろ 過滅菌したビタミンを、1L当たりの最終濃度が下記になるように添加した:ミオ イノシトール、0.55mM;ニコチン酸、0.16mM;D(+)パントテン酸カルシウム、0. 02mM;ピリドキシン−HCl、0.013mM;サイアミン-HCl、0.006mM;ビオチン、0.0 2mM。 培養は、New Brunswick Scientific Bioflow発酵槽において、28℃で、900rpm の撹拌速度で実施した。pHは、2モル/L NaOH自動添加により、pH5.0で一定に 保った。消泡剤(BDH)を、一定の間隔で自動添加した。この発酵槽に、空気を、 流量0.8L/分でフラッシュした。この培養物の開始時の作業容量は、1.0又は1.4 Lであった。試料30mlを、培養の純度、乾燥重量、基質消費、生成物合成につい て分析するために、1時間毎に採取した。培養物の光学濃度及び乾燥重量の測定 培養物の光学的細胞濃度は、分光光度計を用いて600nmにおいて測定した。培 養物の乾燥重量は、培養物10.0mlを遠心分離し、細胞を脱イオン水で洗浄し、細 胞ペレットを80℃で一晩乾燥して、測定した。対応する(parallel)検体は、1% 未満の変動であった。液体培地における基質消費及び生成物合成 炭素化合物、例えばグルコース、エタノール、グリセロール、アセテート及び ピルベートなどの濃度は、バイオラド社のAminex HPX87H有機酸カラムを用いたH PLC分析により、65℃で、測定した。このカラムは、5mM H2SO4で溶離した。2142 屈折率検出装置(LKB)及びSpectraphysics SP4270積分器により検出した。CO2 産生及びO2消費の分析 発酵槽において培養する間に、溶解した二酸化炭素の濃度を、cervomex IRPA4 04ガス分析装置を用いて、及び酸素を、Taylor cervomex OA272ガス分析 装置を用いて、連続してモニタリングした。実験の時間経過に応じたガスの消費 /産生の絶対量を、ガス濃度の平均により算出し、培養物の減少した容積に対し 補正した。 フラスコ−バッチ増殖細胞の酸素消費能の測定値については、細胞を収集し、 氷冷した脱イオン水で3回洗浄し、かつオキシグラフ(oxygraph)緩衝液(1%酵 母抽出物、0.1%KH2PO4、0.12%(NH4)2SO4、pH4.5)中に、200 ODユニット/ml で再懸濁した。細胞の酸素消費能は、クラーク電極で、基質として0.1mMエタノ ールを用い測定した。RNA の単離、ノーザンブロット分析及びDNAフラグメントの標識 細胞を収集し、RNAを単離し、変性していない1.2%アガロースゲル上で分離し 、かつDe Windeによって記されたように(30)、ニトロセルロースフィルター上に 移した。1本鎖のサケ精液DNA 50μg/mlを含有するハイブリダイゼーション緩 衝液(50%ホルムアミド、25mMNaPi、pH6.5、5×SSc、5×Denhardt、Maniatisが 記した方法に従う(31))中で、予備ハイブリダイゼーションを実行した。この試 験においてプローブとして使用したDNAフラグメントは、pJH1由来の840bpのHind III-SalIフラグメント(30);酵母アクチンを含む1.6kbのBamHI-KpnIフラグメン ト(24);QCR2遺伝子を含むYE23SH由来の2.5kbのHindIII-SalIフラグメント(25); 酵母のPAD1遺伝子を含むpAZ6由来の1333bpのNcoI-HindIIIフラグメント(24);及 びSUC2遺伝子を含むYE23R-SOD/SUC由来の1.2kbのBamHI-HindIIIフラグメント(26 )を含んでいた。フラグメントは、Maniatisらが記したように、ニックトランス レーションにより、32Pで標識した。標識したプローブは、予備ハイブリダーイ ゼーション緩衝液に添加し、かつハイブリダイゼーションを、42℃で一晩行った 。ブロットを、2×SSC 0.1%SDSで1度、1×SSC 0.1%SDSで1回、最後に0.5×SS C 0.1%SDSで洗浄した。ブロットを、完全に風乾し、オートラジオグラフィーを 、コダック社のXomat100フィルムで行うか、もしくは、Storm 840 Molecular Dy namics Phosphorimagerにより分析した。染色体DNAの単離及びサザンブロッティング 染色体DNAは、Hoffman及びWilsonの記した方法(34)に従い、単離した。 この染色体DNA10μlを、BamHI又はEcoRIのいずれかで切断した。切断したDNAは 、1%アガロースゲル上で分離し、Maniatisが記したように(31)、ニトロセルロ ースフィルター上に移した。このフィルターの予備ハイブリダイゼーションを、 65℃で、6×SSC、5×Denhardt、0.5%SDS及び100μg/mlサケ精液DNA中で行った 。予備ハイブリダイゼーションの4時間後に、pKSPO2-GPDHAP由来の放射能標識 したKpnI-XbaIフラグメント(図11B及び13を参照のこと)を添加し、65℃で一晩 ハイブリダイゼーションを継続した。ブロットは、2×SSC 0.1%SDSで1度、1×SS C 0.1%SDSで1回、最後に0.5×SSC 0.1%SDSで洗浄した。ブロットを、完全に 風乾し、放射能活性を可視化し、かつStorm 840 Molecular Dynamics Phosphori magerにより分析した。図面の説明 図1. グルコースで抑制されたサッカロミセス・セレビシアエ細胞の炭素代謝の簡略図 。いくつかの中間産物のみを表示し、グルコース以外の炭素源の利用に関する特 異的経路は、マルトース及びガラクトースについてのみ記した。 図2. 典型的な酵母プロモーターの転写調節。ATGは、対応する翻訳のオープンリーデ ィングフレームの開始コドンを意味する。略号:UIS、上流誘発配列;UAS、上流 活性化配列;URS、上流抑制配列;T、TATA-ボックス;I、開始部位。 図3. 酵母のいくつかの遺伝子のグルコース抑制に関連した調節経路の該略。 活性化機能は(+)として、抑制/不活性化機能は(−)として、及びまだ解明 されていない相互作用は(?)として表わした。 図4. HAP2遺伝子のヌクレオチド及びアミノ酸配列 図5. HAP3遺伝子のヌクレオチド及びアミノ酸配列 図6. HAP4遺伝子のヌクレオチド及びアミノ酸配列 図7. ADH1プロモーター由来の、HAP4が発現された、酵母のシャトルベクターであるYC plac111::ADH1-HAP4の構築の詳細な説明。プラスミドは、縮尺通りには描かれて いない。 図8. ADH1-HAP4融合体のヌクレオチド及びアミノ酸配列 図9. HAP4過剰発現のノーザンブロット分析。YCplac111::ADH1(WT)を含むDL1及びYCpl ac111::ADH1-HAP4を含むDL1(+HAP4)は、2%グルコース(D)又は2%エタノール/2 %グリセロール(EG)を含有する培地上で増殖した。RNA全体を、HAP4、アクチン( ATC)、QCR8、又はSUC2mRNAに特異的なプローブと、ハイブリダイゼーションした 。 図10. バイオマス収量。YCplac111::ADH1を含むDL1(DL1)及びYCplac111::ADH1-HAP4を 含むDL1(DL1HAP)は、発酵槽で増殖した。乾燥重量及びグルコース濃度の測定用 試料は、1時間間隔で採取した。 図11. A.プラスミドp425-GPDHAP4、p425-TEFHAP4の構築 B.プラスミドpKSPO2-GPDHAP4、pKSPO2-TEFHAP4の構築 図12. A.HAP4のコード領域に融合されたGDP1プロモーターのヌクレオチド及びアミノ酸 配列 B.HAP4のコード領域に融合されたTFE2プロモーターのヌクレオチド及びアミノ酸 配列 示されたフラグメントは、pKSPO2にクローニングされたフラグメントであり、か つゲノムに組込まれた配列を表わしている。 図13. HAP4及びSIT座でのゲノムDNA、並びにSIT2座又はHAP4座のいずれかでのプラスミ ドpKSPO2-GPD1又はpKSPO2-TEFHAP4の組込み後、フルオロ アセトアミド(Fac)上での逆選択後の、染色体再編成の概略。KpnI-XbaIプローブ (太い黒棒で示した)とハイブリダイゼーションしたBamI又はEcoRIで切断した 後に発生したフラグメントは、図13及び15に示された、サザンブロット法での比 較のために可視化した。SITpr:SIT2プロモーター、HAP4pr:HAP4プロモーター、G /Tpr:GPD又はTEFプロモーター、B:BamHI、E:EcoRI、K:KpnI、X:XbaI、FacR:フ ルオローアセトアミド耐性。 図14. HAP4座で組込まれたpKSPO2-GPDHAP(GH)又はpKSPO2-TEFHAP(TH)を伴う形質転換体 のBamHIで切断した染色体DNAのサザンブロット。これらのブロットは、図12に示 されたKpnI-XbaIプローブとハイブリダイゼーションし、SIT2及び/又はHAP4配 列を含むフラグメントを可視化した。放射活性は可視化し、かつstorm 840 Mole cular Dynamics Phosphorimagerにより分析した。 図15. 図14のように、HAP4座で組込まれたpKSPO2-GPDHAP(GH)又はpKSPO2-TEFHAP(TH)を 伴なう形質転換体の全てのmRNAのノーザンブロット。これらのブロットは、HAP4 、QCR8又はPDA1に特異的なプローブで、ハイブリダイゼーションした。 図16. SIT2座で組込まれたpKSPO2-GPDHAP(GH)又はpKSPO2-TEFHAP(TH)を伴う形質転換体 のBamHI又はEcoRIで切断した染色体DNA(A)、並びにフルオロアセトアミドで逆選 択した後のGPDHAP4又はTEFHAP4融合体を含む3種のクリーンな形質転換体の(B) のサザンブロット。これらのブロットは、図12に示されたKpnI-XbaIプローブで ハイブリダイゼーションし、SIT2及び/又はHAP4配列を含むフラグメントを可視 化した。 図17. 図16のように、SIT2座で組込まれたpKSPO2-GPDHAP(GH)又はpKSPO2-TEFHAP(TH)を 伴なう形質転換体の全てのmRNAのノーザンブロット。これらのブロットは、HAP4 、QCR8又はPDA1 mRNAに特異的なプローブで、 ハイブリダイゼーションした。 表I 転写に対するHAP4の誘導された発現の作用 表II DL1及びDL1HAP酵母細胞の酸素消費能 表III バイオマス収量 表IV 発酵槽中でのバッチ増殖時の培地中の炭素化合物、データは数回の実験の平均値表V 消費されたグルコースの%モルCで示された炭素フラックス 炭素バランス DL1=103%、DL1HAP=108% 表VI 工業用菌株の酸素消費能
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12R 1:865) (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(GH,GM,KE,LS,M W,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY ,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM ,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY, CA,CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,E S,FI,GB,GE,GH,GM,GW,HU,ID ,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ, LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD,M G,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT ,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL, TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US,UZ,V N,YU,ZW (72)発明者 ブロム ヨランダ オランダ エヌエル―1312 テーイェー アルメール トッカータストラート 17

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.ある特定の炭素源の存在下において好ましい代謝経路を有し、この好ましい 代謝経路を阻害又は回避する能力を持つ微生物を提供する方法であって、この特 定の炭素源の存在下において好ましくない少なくとも1種の代謝経路の抑制を、 抑制解除又は回避する能力を持つ該微生物を提供することを含む方法。 2.前記炭素源が、グルコースである、請求の範囲第1項記載の方法。 3.前記微生物が酵母である、請求の範囲第1又は2項記載の方法。 4.前記酵母が、サッカロミセスである、請求の範囲第3項記載の方法。 5.前記サッカロミセスが、サッカロミセス・セレビシアエである、請求の範囲 第4項記載の方法。 6.前述の他の炭素源の抑制された代謝が、呼吸経路又は糖新生を含む、請求の 範囲第1〜5項のいずれか1項に記載の方法。 7.前述の抑制された代謝が、好ましくない炭素源の代謝経路の活性化によって 、著しい程度回復される、請求の範囲第1〜6項のいずれか1項に記載の方法。 8.前記活性化が、前記経路の酵素をコードする少なくとも1個の遺伝子に関す る少なくとも1種の転写アクチベーターを含む微生物を提供することによって達 成される、請求項7記載の方法。 9.前記転写アクチベーターが、該アクチベーターをコードする組換え核酸の該 微生物への導入によって提供される、請求の範囲第8項記載の方法。 10.前記組換え核酸が、発現ベクターである、請求の範囲第9項記載の方法。 11.前記組換え核酸が、該微生物と同じ種に由来する、請求の範囲第9及び10項 記載の方法。 12.前記転写アクチベーターが、該微生物により構成的に発現される、請求の範 囲第8〜11項のいずれか1項に記載の方法。 13.前記転写アクチベーターが、誘導時に該微生物により発現され得る、請求の 範囲第8〜11項のいずれか1項に記載の方法。 14.前記アクチベーターの発現が、グルコースの存在によって誘発される、請求 の範囲第13項記載の方法。 15.前記転写アクチベーターが、HAP4タンパク質、もしくはその機能的同等 物、誘導体又はフラグメントである、請求の範囲第8〜14項のいずれか1項に記 載の方法。 16.前記微生物が、目的のタンパク質をコードする組換え核酸を含む、請求の範 囲第1〜15項のいずれか1項に記載の方法。 17.前記組換え核酸が、発現ベクターである、請求の範囲第16項記載の方法。 18.前述の目的のタンパク質が、異種タンパク質である、請求の範囲第16又は17 項記載の方法。 19.請求の範囲第1〜18項のいずれか1項に記載の方法によって得ることができ る微生物。 20.培養時のバイオマス収量が向上した、請求の範囲第19項記載の微生物。 21.増強されたグルコース酸化を示す、請求の範囲第19又は20項記載の微生物。 22.増加した酸化的糖代謝を示す、請求の範囲第19、20又は21項記載の微生物。 23.減少したエタノール生成を示す、請求の範囲第19〜22項のいずれか1項に記 載の微生物。 24.嫌気的培養条件下で、請求の範囲第1〜18項のいずれか1項に記載の機能で は提供されない対応する微生物と、実質的に同じように挙動する、請求の範囲第 19〜23項のいずれか1項に記載の微生物。
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