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JP2001224678A - 軟骨移植用材料の製造方法 - Google Patents

軟骨移植用材料の製造方法

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Publication number
JP2001224678A
JP2001224678A JP2000040129A JP2000040129A JP2001224678A JP 2001224678 A JP2001224678 A JP 2001224678A JP 2000040129 A JP2000040129 A JP 2000040129A JP 2000040129 A JP2000040129 A JP 2000040129A JP 2001224678 A JP2001224678 A JP 2001224678A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
culture
period
gel
cartilage
collagen
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000040129A
Other languages
English (en)
Inventor
Mitsuo Ochi
光夫 越智
Masakazu Kuriwaka
正和 栗若
Yuji Uchio
祐司 内尾
Kenzo Kawasaki
賢三 河▲崎▼
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Tissue Engineering Co Ltd
Original Assignee
Japan Tissue Engineering Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Tissue Engineering Co Ltd filed Critical Japan Tissue Engineering Co Ltd
Priority to JP2000040129A priority Critical patent/JP2001224678A/ja
Publication of JP2001224678A publication Critical patent/JP2001224678A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生体との親和性が高く良好な軟骨細胞移植材
料を、効率よく提供する。 【解決手段】 患者から採取した軟骨細胞を、形質維持
増殖期間で液体培地中での単層培養に付し、次いで必要
基質放出期間でコラーゲンゲル内でのゲル包埋培養に付
す。好ましくは、全培養期間を3週間として、軟骨細胞
を、2週間の単層培養と、次いで1週間のコラーゲンゲ
ル包埋培養に付す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軟骨移植用材料の
製造方法に関し、特にコラーゲンゲルを基材とする軟骨
移植用材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、自然修復不可能な関節軟骨損
傷に対して、移植という手段が取られている。しかし、
軟骨移植は、欠損部と同等の大きさの正常軟骨を必要と
するため、新たな欠損部の傷害が問題となる。近年、こ
のような関節軟骨損傷に対して、軟骨細胞と生体材料と
を組合わせた組織工学的手法を用いた軟骨欠損の修復法
が開発されている。
【0003】このような方法には、生体吸収性高分子で
ある乳酸やグリコール酸重合体などを足場として、これ
に軟骨細胞を播種する方法がある (Vacantiら; Plast.
Reconstr. Surg. 88 (1991)753-)。しかし、この方法に
は、生体内で分解されて生じる低分子が酸性であり毒性
があること、また、細胞の足場としての能力にかけると
いう問題点が指摘されている。
【0004】また、コラーゲンスポンジを足場として、
これに軟骨細胞を播種することにより軟骨組織の再建に
成功している報告例もある(浅敷ら; Biomaterial 17 (1
996)155-162)。この場合、細胞の足場としての能力に優
れているが、基材自体が多孔質であるため、軟骨細胞が
コラーゲンスポンジから漏出したり、軟骨基質を保持す
ることができないという欠点が指摘されている。
【0005】一方、培養軟骨細胞を浮遊液の状態で移植
する方法が開発され(Brittbergら;New Eng. J Med. 331
(1994) 889-895)、欧米では臨床応用されている。この
方法では、骨膜を縫着した軟骨欠損部に細胞浮遊液とし
て軟骨細胞を注入することが特徴とされており、良好な
術後成績も得られている。
【0006】しかし、この方法では移植細胞の漏出とい
う問題があり、さらに、培養時に軟骨細胞が培養液に接
するために、軟骨細胞が産生した軟骨基質が培養液中に
流出する問題もある。また、長期間の単層培養では本来
の形質を失うとされる軟骨細胞が、移植後、硝子軟骨細
胞としての機能を発現できるのかという問題が指摘され
ていた。
【0007】これらの技術に対して、本発明者である越
智ら(島根医科大)の開発したコラーゲンゲル内培養自
家軟骨細胞移植術が報告された(日本醫事新報 No.3875
(1998)33-36)。この方法では、軟骨細胞がコラーゲン
ゲル内で培養されるため、軟骨基質がコラーゲン内に保
持され漏出を防止するという利点を有する。また、越智
らは、特定のコラーゲンゲル内で軟骨細胞を三次元培養
することによって、軟骨細胞の形質を損なうことなく、
適度な強度を保持する培養軟骨材料の作製に成功し、良
好な臨床実績を上げている(日本整形外科学会誌、73(1
999)S591)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、軟骨細胞の移
植は患者自身の細胞を使用するものであり、上記の移植
術用に患者から採取できる軟骨細胞には限りがある。こ
のため、採取された細胞からできるだけ十分量の移植材
料を効率よく製造することが望まれるが、臨床の現場で
は、良質な移植片を十分に入手することが困難である。
これを補うためにコラーゲンゲルでの包埋培養前に液体
培地による単層培養を行うことがあるが、軟骨細胞を液
体培地中で培養し続けると、脱分化が起こり、軟骨細胞
の形態及び形質を維持することができなくなる。その一
方、ゲル包埋培養の期間を延長することは、軟骨移植材
料の調製時間が長期化するため、一刻も早く移植したい
と思う患者の希望に沿うことができない。さらに、感染
症を考慮して、生体外(in vitro)となる期間をできる
だけ短くすることが必要である。
【0009】従って、本発明の目的は、患者から採取し
た軟骨細胞から、効率よく良好な軟骨移植片を製造する
ことができる軟骨移植用材料の製造方法を提供すること
である。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明
は、コラーゲンゲルを基材とする軟骨移植用材料の製造
方法であって、採取した軟骨細胞を、形質維持増殖期間
の単層培養に付した後、コラーゲンゲルに移して、前記
形質維持増殖期間と同じかそれよりも短い必要基質放出
期間のゲル包埋培養に付すことを特徴としている。請求
項2に記載の発明は、請求項1において、前記形質維持
増殖期間と前記必要基質放出期間との比が、1:1〜
5:1であることを特徴としている。請求項3に記載の
発明は、請求項2において、前記形質維持増殖期間と前
記必要基質放出期間との比が、2:1であることを特徴
としている。請求項4に記載の発明は、請求項3におい
て、前記形質維持増殖期間が10日から20日であり、
前記必要基質放出期間が5日から10日であることを特
徴としている。請求項5に記載の発明は、請求項1乃至
請求項4において、前記コラーゲンがニワトリ、ブタ由
来であることを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明者らは、上記諸目的を解決
するために鋭意検討努力した結果、採取した軟骨細胞を
液体培地で所定期間、単層培養し、その後にコラーゲン
ゲル内で所定期間ゲル包埋培養することによって、諸目
的を達成できることを見出した。
【0012】即ち、本発明の製造方法は、単にコラーゲ
ンゲルでのゲル包埋培養の期間を延長させるのではな
く、その前に液体培地で所定期間の単層培養を行うもの
であり、また、単に単層培養後の軟骨細胞をコラーゲン
ゲル内に配置させるだけでなく、液体培地での所定の培
養期間とコラーゲンゲル包埋培養での所定の培養期間を
組合わせて行うものである。
【0013】このため本発明では、以下に規定する形質
維持増殖期間の単層培養により、単層培養中で軟骨細胞
の形態及び形質がほとんど変化することなく、適当な数
まで増殖させることができる。また単層培養された軟骨
細胞について、その後、以下に規定する必要基質放出期
間のコラーゲンゲル包埋培養を行うので、軟骨細胞から
産生されたコラーゲンがコラーゲンゲルへ放出され、コ
ラーゲンゲル内に維持される。この組み合わせによっ
て、生体に対して高い親和性を備えた良質な軟骨移植用
材料を効率よく得ることができる。
【0014】本発明に用いられる軟骨細胞は、移植用と
して患者から採取された細胞であり、硝子軟骨、線維性
軟骨、弾性軟骨から得たもののいずれも使用できる。好
ましくは、移植後の修復を理想的に行うためには、非荷
重部の軟骨から採取された関節軟骨細胞を用いる。細胞
は、組織から採取された後、常法に従って結合組織など
を除去して調製される。
【0015】採取された軟骨細胞は、液体培地中での単
層培養に付された後、コラーゲンゲル包埋培養に付され
る。単層培養を開始する際の細胞播種密度は、特に限定
しないが、より効率的に軟骨移植用材料を得るために、
5×103個/cm2よりも多い濃度が好ましく、1×1
4個/cm2〜1×105個/cm2の範囲とすることが
より好ましい。
【0016】軟骨細胞の全培養期間は、軟骨細胞の増殖
能及び軟骨移植用材料の準備期間の観点から、1週間か
ら6週間、好ましくは2週間から4週間である。この範
囲内の全培養期間において、適切な軟骨移植用材料の効
率よい提供を実現することができる。このような全培養
期間での軟骨細胞の培養は、以下で規定する液体培地で
の単層培養とコラーゲンゲル内でのゲル包埋培養とで構
成される。
【0017】液体培地での単層培養は、形質維持増殖期
間で行われる。この形質維持増殖期間は、液体培地での
単層培養によって軟骨細胞の形質を維持しながら増殖さ
せることができる期間である。この形質維持増殖期間で
は、採取された軟骨細胞が液体培地中で単層を形成しな
がら増殖し、期間満了時には、軟骨細胞としての形態及
び形質をほぼ維持した状態の十分な量の軟骨細胞を得る
ことができる。
【0018】形質維持増殖期間は、形質を維持すること
ができる期間であればよく、好ましくは、続いて行われ
る所定期間のコラーゲンゲル包埋培養の終了後に必要な
量の基質をゲル内に保持できるような、最小限の細胞数
を確保するまでの期間とすることができる。また、より
好ましくは、ゲル包埋培養開始時に基質産生に必要な細
胞数となるまでの期間とすることができる。この期間
は、後述するコラーゲンゲル包埋培養条件を考慮して決
定される。
【0019】最も好ましくは、形質維持増殖期間は、軟
骨組織の形質を維持することができる最大の期間、即
ち、最大形質維持増殖期間とすることができる。この最
大形質維持増殖期間とすることによって、単層培養終了
後に、軟骨細胞形質を維持した最大量の軟骨細胞を得る
ことができる。
【0020】単層培養を、この最大形質維持増殖期間を
越えて行った場合には、培養中に脱分化が起こって、軟
骨細胞の形態及び形質を有しない線維芽細胞様の細胞が
優位となる。このため、形質維持増殖期間よりも短い必
要基質放出期間でコラーゲンゲル包埋培養を行ったとし
ても、軟骨細胞移植材料では線維芽細胞が優位であるた
め、軟骨基質の産生が十分に行われず、良好な軟骨移植
用材料を得ることができない。
【0021】一方、単層培養を、短期間にし過ぎると軟
骨細胞の増殖が十分でなく、その後に、その形質維持増
殖期間と同期間のコラーゲンゲル包埋培養を行っても、
必要な基質量をゲルに放出することができず、軟骨移植
用材料としての親和性に劣る。また、この場合に、ゲル
包埋培養を、形質維持増殖期間よりも長い期間で行って
も、全体として適当な軟骨基質濃度で生体に対して高い
親和性を有する軟骨移植用材料を得るまでの時間が延長
されて、本発明における全培養期間を超過し、効率よく
良好な移植材料を得ることができない。
【0022】コラーゲンゲル包埋培養は、必要基質放出
期間で行われる。この必要基質放出期間は、形質維持増
殖期間と同じかそれよりも短い期間であり、ゲル包埋さ
れた単層培養後の軟骨細胞から、必要な量の軟骨基質が
ゲルに放出される期間である。ゲルに放出された軟骨基
質は、コラーゲンゲルの三次元構造によってゲル内に保
持される。必要基質放出期間の満了時には、軟骨基質濃
度が、生体での軟骨基質濃度に近くなり、生体との親和
性が高い使用可能な状態になる。必要基質放出期間は、
軟骨細胞が、ゲル中に軟骨基質を放出することができれ
ばよく、好ましくは、必要基質放出期間は、ゲル包埋培
養後に軟骨移植用材料として十分量の軟骨基質が保持さ
れるまでの期間とすることができる。これよりも短い
と、コラーゲンゲル内の軟骨基質濃度が十分でなく、生
体への親和性を高いものにすることできないため、好ま
しくない。
【0023】最も好ましくは、この必要基質放出期間
は、軟骨移植用材料として良好な基質濃度の軟骨基質を
上記形質維持増殖期間後の軟骨細胞がコラーゲンゲル中
に放出することができる最小の期間、即ち、最小必要基
質放出期間である。この最小必要基質放出期間とするこ
とによって、短時間で生体への親和性が高い軟骨移植用
材料を得ることができる。
【0024】このような形質維持増殖期間及び必要基質
放出期間は、単層培養中の軟骨細胞の増殖速度とゲル包
埋培養中の軟骨細胞の増殖速度とが異なることに起因し
ており、良質な軟骨移植用材料を効率よく提供するとい
う観点から、全培養期間における比率を1:1〜5:1
とすることが好ましい。全培養期間の半分に満たない期
間を形質維持増殖期間とすることは、十分な基質産生を
実現するための細胞数を形質維持増殖期間で確保できな
いため、好ましくなく、形質維持増殖期間を最大形質維
持増殖期間としたときに、これと同じ長さを越える必要
基質放出期間にすると、全培養期間が必要以上に長期化
するために好ましくない。一方、形質維持増殖期間を最
大形質維持増殖期間としたときであっても、これに対し
て1/5よりも短い必要基質放出期間とすることは、十
分な量の軟骨基質をゲル内に保持するには短期間すぎる
ので好ましくなく、十分な量の軟骨基質を確保できる長
さの必要基質放出期間に対して5倍を越える長さの形質
維持増殖期間とすることは軟骨細胞様形態維持が困難な
ため好ましくない。全培養期間における形質維持増殖期
間と必要基質放出期間との最も好ましい比率は、2:1
である。
【0025】本発明の製造方法は、全培養期間を約3週
間とし、形質維持増殖期間を、最大形質維持増殖期間と
なる10日から20日、例えば2週間(14日)、必要
基質放出期間を、5日から10日、例えば1週間(7
日)であることが最も好ましい。これにより、より効率
よく、生体への親和性の高い軟骨移植材料を作製するこ
とができる。
【0026】単層培養に用いられる液体培地には、軟骨
細胞の通常の培養に用いられる液体培地がそのまま適用
可能であり、例えば血清含有ダルベッコ最小必須培地
(DMEM)、ハムF−12(HAM F−12)など
が挙げられ、この培地には、抗生物質などが添加されて
もよい。
【0027】また、コラーゲンゲル包埋培養に用いられ
るコラーゲンは、軟骨細胞の増殖の足場として人体に安
全なものであれば、いずれのものを用いることができ
る。このようなコラーゲンには、例えば、日本などBME
(ウシ海綿状脳症)の発生していない国由来のウシなどの
皮膚から得られるI型コラーゲンや、ブタ、ニワトリ由
来のコラーゲンが挙げられる。
【0028】さらに安全性を確保するために、例えばBM
E(ウシ海綿状脳症)と無関係のブタ、ニワトリ由来のコ
ラーゲンを使用することが好ましく、アレルギー反応を
低減化するため、コラーゲン末端のテロペプチドを切断
したアテロコラーゲンを使用することがさらに好まし
い。これらのコラーゲンは、どれも高純度の製品が入手
可能である。
【0029】コラーゲン溶液の調製濃度は、使用目的に
より0.1〜5.0%の幅で調製可能である。0.1%よりも低
いと、軟骨細胞がコラーゲン中で増殖する際の足場とし
ての機能が十分でなく、5.0%よりも高いと、細胞や軟
骨基質がゲル内で均一化するにはゲルの粘性が高すぎる
ため、好ましくない。好ましくは、更に包埋培養に適当
な硬さとなる0.3%〜3.0%の範囲内である。コラーゲン
溶液の溶媒には、軟骨細胞の培養に不活性な溶媒から選
択される。
【0030】コラーゲン溶液は、軟骨細胞の培養液とコ
ラーゲンとを混合して調製される。この混合される培養
液は、上述した単層培養に使用可能な液体培地と同一の
ものとすることができる。
【0031】このコラーゲン溶液は、所定の濃度のコラ
ーゲンが溶解されてゲル状となることから、産生された
軟骨基質をこのゲル内にほとんど保持することができ
る。この軟骨基質は、もともと生体中の軟骨組織に保持
されて軟骨組織を誘導する基となる物質であるため、移
植材料にこのような軟骨基質が保持されると、移植後の
良好な軟骨再建を実現することができる。多孔質のポリ
マーやコラーゲンスポンジの様に、培養液と細胞が接し
ている培養形態では、本発明のコラーゲンゲルのように
基材中に軟骨基質を保持することができないので、効率
的な軟骨の再建は期待できない。
【0032】軟骨細胞は、上記のようなコラーゲン溶液
と混合されて適当な培養器に播種される。培養器中で
は、コラーゲン溶液は軟骨細胞の培養に適した上記の濃
度に調製されている。得られたコラーゲンゲルでは、軟
骨細胞は、ゲルの下層に沈むことがなく、ほぼ均一に分
散され、この包埋状態で細胞の培養が行われる。培養を
継続することにより軟骨細胞から産生された軟骨基質
は、コラーゲンゲル中に蓄積される。
【0033】本発明における軟骨基質は、通常の軟骨細
胞が生体内又は培養条件下で産生する物質及び培養条件
下で産生される物質のいずれかである。このような物質
には、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ケラタン硫
酸などのグリコサミノグリカンやプロテオグリカン、タ
イプIIコラーゲンなどが挙げられる。軟骨基質の有無
及び量は、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPL
C)、RT−PCR法などを用いて常法により測定する
ことができる。
【0034】このようにして得られた軟骨移植用材料
は、生体との親和性も非常に高く、効率よく軟骨の修復
を行うことができる。
【0035】本発明の軟骨移植用材料を使用することが
できる適応症としては、軟骨損傷、離断性骨軟骨炎、変
形性関節症、関節リューマチなどが挙げられるが、その
範囲に限定されるものではなく、軟骨欠損に起因する疾
患全般に適用可能である。
【0036】
【実施例】以下、本発明の内容を実施例を用いて具体的
に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるもので
はない。
【0037】(1)軟骨細胞の調製 日本白色家兎の膝、股、肩関節から関節軟骨を採取し、
0.25%トリプシンおよび0.25%コラゲナーゼで酵素処理を
行い軟骨細胞を単離した。この軟骨細胞を、10%ウシ
胎児血清、1%抗生物質(10,000U/mlのペニシリ
ン、10mg/mlのストレプトマイシン及び25μg/m
lのファンギゾン)を添加したダルベッコ最小必須培地
(DMEM;Gibco社製)に懸濁した。懸濁細胞を、単
層培養及びゲル包埋培養の観点から、2.0×106個/m
lの細胞密度で125μL(2.5×105個)ずつ、A
群、B群、C群及びD群に分けた。それぞれの細胞群
は、6連とした。各細胞群での培養の組み合わせを表1
に示す。各細胞群は、単層培養及びゲル包埋培養を所定
期間ずつ組合わせた合計3週間の培養に付した。
【0038】
【表1】
【0039】単層培養は、細胞数に応じて、プラスチッ
ク製の6穴培養プレート、100mmディッシュ、15
0mmディッシュを用いた。培養は、5%CO2及び9
5%空気下で37℃にて行い、3日毎に培養液を新鮮な
ものに交換した。この際、L−アスコルビン酸(50μ
g/ml)を培地の0.1%の容量で2日毎に添加し
た。各群の細胞を、培養プレートに播種し、ほぼ集密状
態となる1、2週毎に、0.25%トリプシン処理(10分
間)及び0.25%タイプI、IIコラゲナーゼ処理(30分
間)を常法に従って行い、継代した。
【0040】ゲル包埋培養は、細胞を125μLのコラ
ーゲン(アテロコラーゲン:高研社製)に再懸濁してゲ
ル包埋し、プラスチック製の6穴プレートにそれぞれ配
置した。単層培養と同様の条件下で培養を行い、約30
分後にゲルが白濁してきたら、上記DMEM培地125
μLをゲル上に添加した。
【0041】単層培養を行わないD群の細胞について
は、上記細胞調製液中の細胞(2.5×105)を125
μLのコラーゲン(アテロコラーゲン:高研社製)に再
懸濁して、上述のようにゲル包埋及び培養を行った。
【0042】単層培養後にゲル包埋培養を行うB群及び
C群の細胞については、それぞれ2週間及び1週間の単
層培養後に、継代時と同一の条件で細胞を回収して、回
収した全細胞を125μLのコラーゲンに再懸濁して、
上述のようにゲル包埋及び培養を行った。
【0043】各細胞群の培養では、1週間毎に細胞数の
推移、組織学的変化を観察し、軟骨基質の産生を確認し
た。
【0044】軟骨基質の産生量を定量するために、コラ
ーゲンゲル内のコンドロイチン硫酸産生量を定量した。
コンドロイチン硫酸の異性体比(コンドロイチン6硫酸
/コンドロイチン4硫酸)を、HPLCによって得られ
るそれぞれの量から算出した。最近の知見によれば、軟
骨中に存在するコンドロイチン硫酸の90%以上がコン
ドロイチン6硫酸として存在する。一方、コンドロイチ
ン4硫酸は、腱などの線維性組織中多く認められる。コ
ンドロイチン硫酸の定量は、細胞を含むゲル包埋培養後
のコラーゲンゲルを、コラゲナーゼ処理して回収した
後、更にコンドロイチナーゼ及びヒアルロニダーゼで消
化し、HPLCを用いて分析した。ゲル包埋後の細胞数
は、上記コラゲナーゼ処理後の分散した細胞を、血球計
算盤を用いて計測した。
【0045】また、RT−PCR法によって、2型コラ
ーゲン、アグリカンの発現を確認した。培養後の細胞を
回収して各細胞からmRNAを採取し、逆転写酵素及び
続いて、2型コラーゲン及びアグリカンの各プライマー
を用いて、RT−PCRを行った。その後、得られた増
幅産物をゲルに流して、コントロール(ウサギの正常軟
骨細胞のmRNA)と比較し、細胞における細胞中のコ
ラーゲンの発現及びアグリカンの発現を確認した。ここ
で2型コラーゲンの発現は、軟骨細胞であることを示
し、アグリカンの発現は、軟骨基質の産生を示してい
る。
【0046】細胞形態は、トルイジンブルーによる染色
及びサフラニンー0による染色により行った。また、抗
2型コラーゲン抗体を用いて、抗2型コラーゲン抗体免
疫染色を常法に従って行い、細胞の同定と光学顕微鏡に
よる形態観察を行った。
【0047】3週間の全培養期間後の細胞数、基質産生
量、細胞形態を表2に示す。細胞数及び基質産生量は、
6連の平均値である。また、細胞数の推移を図1(A
群:×、B群:〇、C群:△、D群:□)に示す。
【0048】
【表2】
【0049】表2に示されるように、単層培養とゲル包
埋培養とを組合わせたB群及びC群の細胞では、全培養
期間終了後において、トルイジンブルー染色、サフラニ
ンー0染色及び免疫染色の結果から軟骨細胞様形態が維
持されていることが確認された。また同時に、コンドロ
イチン硫酸の測定結果、並びにII型コラーゲン及びアグ
リカンのmRNAの発現結果から、基質の産生が認めら
れた。
【0050】このうち、B群の細胞群(2週間の単層培
養及び1週間のゲル包埋培養)は、全培養期間終了後で
軟骨細胞様形態を示しており、コンドロイチン硫酸の産
生量も十分であった。また、全培養期間終了後の細胞数
については、単層培養開始時(2.5×105)の約12倍
であった(図1、〇)。単層培養期間よりもゲル包埋培
養期間の方が長いC群の細胞では、基質産生及び形態の
維持が認められたものの、細胞数では、単層培養の期間
を長く行ったB群の細胞群には及ばなかった(図1、
△)。このことから、形質を維持可能な単層培養期間と
それよりも短いゲル包埋培養期間で培養を行うことによ
って、最終的に基質産生量と細胞数との双方を満足でき
ることが明らかであった。
【0051】また、B群と同様に単層培養とゲル包埋培
養とを組合わせたC群の細胞群は細胞数において単層培
養開始時の約5倍程度であり(図1、△)、ゲル包埋培
養のみを行ったD群の細胞群の細胞数(図1、□)と比
較して細胞増加の程度に大差がなかった。この結果か
ら、単に単層培養とゲル包埋培養とを組合わせただけで
は、十分に効率よく軟骨移植用材料を提供できないこと
が明らかであった。
【0052】なお、B群及びC群では、全培養期間終了
後の細胞数が、単層培養終了後よりも低くなっている。
これは、ゲル包埋培養中の細胞の増殖速度が、単層培養
中での増殖速度と比較して低いことに加えて、単層培養
からの回収及びゲル包埋過程での効率が低く、全量をゲ
ル包埋培養に適用することが不可能であるためと考えら
れる。図1においてB群及びC群のゲル中での予想増殖
を、点線で示した。この場合であっても、全培養期間終
了時におけるB群の細胞数とC群の細胞数との差は明ら
かであり、B群が、細胞数及び基質の量の双方から、効
率よく軟骨移植用材料を提供できる細胞群であると判定
できた。
【0053】また、単層培養のみを行ったA群の細胞で
は、細胞数が4群の中では最も増えたが、各種染色の結
果などから線維芽細胞が優位であることが確認された。
このため、細胞形態が線維芽細胞に脱分化したことは明
らかであり、また、基質の産生も殆ど認められなかっ
た。ゲル包埋培養のみを行ったD群の細胞では、形態維
持及び基質の産生は認められたが、ゲル包埋培養時での
細胞増殖の程度が小さく、全体として移植用材料の提供
という観点から好ましくないことが明らかであった。
【発明の効果】本発明によれば、生体との親和性が高く
良好な軟骨細胞移植材料を、効率よく提供することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の実施例に係る軟骨細胞の各
種培養条件下による増殖の推移を示したグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 栗若 正和 島根県出雲市天神町556−3 サンレモタ ウン2−102 (72)発明者 内尾 祐司 島根県出雲市塩冶有原1−35 10−105号 (72)発明者 河▲崎▼ 賢三 島根県出雲市小山町2 401号 Fターム(参考) 4C081 AB04 AB11 CD121 CD131 CD34 DA12 DC02 DC05 4C097 AA01 BB01 CC02 CC03 DD05 DD15 EE19 FF03 FF10 SC07

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コラーゲンゲルを基材とする軟骨移植用
    材料の製造方法であって、 採取した軟骨細胞を、形質維持増殖期間の単層培養に付
    した後、コラーゲンゲルに移して、前記形質維持増殖期
    間と同じかそれよりも短い必要基質放出期間のゲル包埋
    培養に付すことを特徴とする軟骨移植用材料の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 前記形質維持増殖期間と前記必要基質放
    出期間との比が、1:1〜5:1であることを特徴とす
    る請求項1に記載の軟骨移植用材料の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記形質維持増殖期間と前記必要基質放
    出期間との比が、2:1であることを特徴とする請求項
    2に記載の軟骨移植用材料の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記形質維持増殖期間が10日から20
    日であり、前記必要基質放出期間が5日から10日であ
    ることを特徴とする請求項3に記載の軟骨移植用材料の
    製造方法。
  5. 【請求項5】 前記コラーゲンがニワトリ、ブタ由来で
    あることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか
    1項に記載の軟骨移植用材料の製造方法。
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