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JP2001294819A - 金属表面被覆剤 - Google Patents

金属表面被覆剤

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Publication number
JP2001294819A
JP2001294819A JP2000113939A JP2000113939A JP2001294819A JP 2001294819 A JP2001294819 A JP 2001294819A JP 2000113939 A JP2000113939 A JP 2000113939A JP 2000113939 A JP2000113939 A JP 2000113939A JP 2001294819 A JP2001294819 A JP 2001294819A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin
metal surface
group
acid
coating agent
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000113939A
Other languages
English (en)
Inventor
Koichiro Saeki
康一郎 佐伯
Hidetaka Nakanishi
秀高 中西
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Shokubai Co Ltd filed Critical Nippon Shokubai Co Ltd
Priority to JP2000113939A priority Critical patent/JP2001294819A/ja
Publication of JP2001294819A publication Critical patent/JP2001294819A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 被膜が密着性、耐食性等の基本性能に優れ、
しかも、充分に薄膜化しうる金属表面被覆剤を提供す
る。 【解決手段】 水系媒体中に陽イオン性樹脂及び/又は
両イオン性樹脂の分散体を含んでなる金属表面被覆剤で
あって、該陽イオン性樹脂及び/又は両イオン性樹脂
は、1級アミノ基及び2級アミノ基のうち少なくとも1
つを有する樹脂を含み、該分散体の動的光散乱法測定に
よる平均粒子径は、100nm以下である金属表面被覆
剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属表面被覆剤に
関する。
【0002】
【従来の技術】金属表面の被覆は、金属に様々な機能を
付与する目的で、各種の処理や塗装により行われてお
り、例えば、防錆処理による被膜を形成した後、各種の
塗料による塗装等が行われている。これらの中で、防錆
処理は、金属表面に耐食性を与え、また、各種の塗料に
より形成される塗膜を密着させるための塗装下地性を与
えるために行われるものであり、金属表面の保護や美装
にとって不可欠である。
【0003】このような防錆処理は、金属表面に酸化膜
や無機塩の薄い膜を形成する化成処理をし、更に耐食性
や塗装下地性を充分なものとするために塗装処理を施す
ことにより行われている。防錆処理における化成処理で
は、通常、クロメート系処理剤が用いられるため、化成
処理時にクロムイオンが排出されないようにする必要か
ら生産コストが上昇し、また、金属製品からクロムイオ
ンが溶出することによる環境汚染等のおそれがあった。
更に、防錆処理工程として、化成処理及び塗装処理の2
つの工程を要した。
【0004】特開昭58−177473号公報には、水
分散性シリカ、トリ及び/又はジアルコキシシラン化合
物の加水分解物、陽イオン性樹脂及び/又は両イオン性
樹脂、並びに、リン酸化合物を含む金属表面処理用組成
物が開示されている。この金属表面処理用組成物は、防
錆処理において化成処理を不要とすることができ、防錆
処理鋼板の生産コストの抑制や公害防止に有効なもので
ある。しかしながら、より耐食性を向上させて防錆処理
膜を薄膜化させることにより、防錆処理鋼板の電気溶接
を可能としたり、加工性を向上させたりする工夫の余地
があった。
【0005】特開平10−1782号公報には、窒素原
子を分子内に1個以上有する有機高分子化合物とリン酸
化合物とを含有する水系の金属表面処理剤が開示されて
いる。また、特開平10−1788号公報には、窒素原
子を分子内に1個以上有する有機高分子化合物と酸化剤
とを含有する水系の金属表面処理剤が開示されている。
これらの金属表面処理剤は、金属表面をリン酸塩や酸化
物被膜により保護して耐食性を発揮するものである。し
かしながら、これらもまた、耐食性をより高めて防錆処
理膜を薄膜化させる工夫の余地があった。
【0006】特開2000−15176号公報には、電
気亜鉛メッキ鋼板の上層に、特定の水性コロイダルシリ
カと、粒径が100nm以下でフリーの乳化剤を含まな
い水性樹脂とを含有する水溶液の乾燥皮膜を形成した有
機被覆亜鉛メッキ鋼板が開示されている。この有機被覆
亜鉛メッキ鋼板は、クロメート処理をなくして耐食性等
を向上したものである。しかしながら、被膜を形成する
水性樹脂において、耐食性を向上させて防錆処理膜をよ
り薄膜化させたり、密着性を向上させて塗装下地性をよ
り向上させたりする工夫の余地があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記現状に
鑑みてなされたものであり、被膜が密着性、耐食性等の
基本性能に優れ、しかも、充分に薄膜化しうる金属表面
被覆剤を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、水系媒体中に
陽イオン性樹脂及び/又は両イオン性樹脂の分散体を含
んでなる金属表面被覆剤であって、上記陽イオン性樹脂
及び/又は両イオン性樹脂は、1級アミノ基及び2級ア
ミノ基のうち少なくとも1つを有する樹脂を含み、上記
分散体の動的光散乱法測定による平均粒子径は、100
nm以下である金属表面被覆剤である。以下に本発明を
詳述する。
【0009】本発明の金属表面被覆剤は、水系媒体中に
陽イオン性樹脂及び/又は両イオン性樹脂の分散体を含
んでなる。上記水系媒体は、水を主成分とする均一な媒
体である。このような媒体としては特に限定されず、例
えば、水や、水にアルコール等の親水性溶剤を含めたも
の等が挙げられる。
【0010】上記分散体が、陽イオン性樹脂及び/又は
両イオン性樹脂によって形成されることにより、金属表
面被覆剤により形成される被膜が各種の金属表面や塗膜
に対して充分な密着性を有し、かつ、腐食性物質を充分
に遮断して金属表面を保護する作用が向上することにな
り、金属表面に優れた耐食性を付与することができるこ
とになる。
【0011】上記陽イオン性樹脂及び/又は両イオン性
樹脂の金属表面被覆剤における含有割合としては特に限
定されず、例えば、金属表面被覆剤1000gあたり、
陽イオン性樹脂及び/又は両イオン性樹脂の不揮発分と
して5〜600gであることが好ましい。5g未満であ
ると、金属表面との密着性が充分でなくなるおそれがあ
り、600gを超えると、被膜の膜厚が厚くなり過ぎて
防錆処理鋼板の電気溶接や加工性等が劣るおそれがあ
る。より好ましくは、10〜400gである。即ち、金
属表面被覆剤100重量%に対して、陽イオン性樹脂及
び/又は両イオン性樹脂の重合体成分(不揮発分)の好
ましい含有量が、0.5〜60重量%である。より好ま
しくは、1〜40重量%である。
【0012】本明細書中において陽イオン性樹脂とは、
分子中の主鎖又は側鎖に陽イオンを形成する基を有する
樹脂を意味する。本明細書中では、分子中の主鎖又は側
鎖に陽イオンを形成する原子を有する樹脂も含むことと
する。また、両イオン性樹脂とは、分子中の主鎖又は側
鎖に陽イオンを形成する基と陰イオンを形成する基とを
有する樹脂を意味する。本明細書中では、分子中の主鎖
又は側鎖に陽イオンを形成する原子を有する樹脂と、陰
イオンを形成する原子を有する樹脂もまた含むこととす
る。
【0013】上記陽イオン性樹脂は、分子中の主鎖又は
側鎖に陽イオンを形成する基として1級アミノ基、2級
アミノ基、3級アミノ基の陽イオン性窒素原子のうち少
なくとも1つを有する樹脂等が挙げられる。また、上記
両イオン性樹脂は、分子中の主鎖又は側鎖に陽イオン性
窒素原子と陰イオンを形成する基としてカルボキシル
基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基のうち少なくとも
1つを有する樹脂が挙げられ、カルボキシル基を有する
樹脂であることが好ましい。これらの樹脂としては特に
限定されず、例えば、以下の(1)〜(17)に示すも
の等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種
以上を併用してもよい。
【0014】分子中の主に主鎖に陽イオンを形成する基
として陽イオン性窒素原子を有する陽イオン性樹脂とし
ては、例えば以下のものが挙げられる。 (1)ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポ
リアルキレンイミン等のポリアミン誘導体からなる陽イ
オン性樹脂。 (2)ポリカルボン酸とポリアミンとの縮合により生成
するポリアミドポリアミン及びその誘導体からなる陽イ
オン性樹脂。 (3)エポキシ樹脂等のポリグリシジル化合物とアミン
及び/又はポリアミンとの反応により得られるアミンエ
ポキシ付加物及びその誘導体からなる陽イオン性樹脂。 (4)ウレタンプレポリマー等のポリイソシアネート化
合物とアミン及び/又はポリアミンとの反応により得ら
れる陽イオン性尿素系樹脂。 (5)クロロメチル基及び/又はヒドロキシメチル基を
有する重合体とアミン及び/又はポリアミンとの反応に
より得られるアミノメチル基を有する陽イオン性樹脂。 (6)ポリハロアルカン、エピハロヒドリン及びポリエ
ピハロヒドリンのうち少なくとも1種とアミン及び/又
はポリアミンとの重縮合物からなる陽イオン性樹脂。
【0015】分子中の主に側鎖に陽イオンを形成する基
として陽イオン性窒素原子を有する陽イオン性樹脂とし
ては、例えば以下のものが挙げられる。 (7)ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート
等のアミノエステル基を有するビニル化合物、ビニルピ
リジン、ビニルイミダゾール及びそれらの塩類等の陽イ
オン性窒素原子を有する化合物のうち少なくとも1種の
化合物から得られる重合体、並びに、これらの化合物と
共重合可能な他の単量体とから得られる共重合体からな
る陽イオン性樹脂。 (8)ビニルホルムアミド重合体の酸又は塩基性物質に
よる加水分解物等の方法により得られるポリビニルアミ
ン類からなる陽イオン性樹脂。 (9)アリルアミン又はジアリルアミン及びその塩類の
陽イオン性窒素原子を有する化合物のうち少なくとも1
種の化合物から得られる重合体、並びに、これらの化合
物と共重合可能な他の単量体とから得られる共重合体か
らなる陽イオン性樹脂。 (10)(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、
ポリウレタン樹脂、アルキッド樹脂又はマレイン化ポリ
ブタジエン等のカルボキシル基を有する樹脂の全てのカ
ルボキシル基をエチレンイミン、プロピレンイミン、ヒ
ドロキシエチルエチレンイミン及びヘキサメチレンジエ
チレンウレア等のアジリジン化合物並びにグリシジルア
ミン及びその塩等の塩基性窒素原子を有するアルキル化
剤のうち少なくとも1種の化合物と反応させることによ
って得られる陽イオン性樹脂。 (11)(メタ)アクリル系樹脂等のグリシジル基を有
する樹脂のグリシジル基を、アンモニア又はアミン化合
物と反応させることによって得られる陽イオン性樹脂。 (12)(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル
基を有する化合物のグリシジル基を、アンモニア又はア
ミン化合物と反応させた陽イオン性窒素原子を有する化
合物から得られる重合体、並びに、これらの化合物と共
重合可能な他の単量体とから得られる共重合体からなる
陽イオン性樹脂。
【0016】上記分子中の主鎖又は側鎖に陰イオンを形
成する基としてカルボキシル基を有する両イオン性樹脂
としては、例えば以下のものが挙げられる。 (13)上記陽イオン性樹脂にクロロ酢酸等を用いて陰
イオン性基としてカルボキシル基を導入した両イオン性
樹脂。 (14)(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、
ポリウレタン樹脂、アルキッド樹脂又はマレイン化ポリ
ブタジエン等のカルボキシル基を有する樹脂の一部のカ
ルボキシル基を、エチレンイミン、プロピレンイミン、
ヒドロキシエチルエチレンイミン及びヘキサメチレンジ
エチレンウレア等のアジリジン化合物並びにグリシジル
アミン及びその塩等の塩基性窒素原子を有するアルキル
化剤のうち少なくとも1種の化合物と反応させることに
よって得られる両イオン性樹脂。 (15)(メタ)アクリル系樹脂等のカルボキシル基と
グリシジル基を有する樹脂のグリシジル基を、アンモニ
ア又はアミン化合物と反応させることによって得られる
両イオン性樹脂。 (16)(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル
基を有する化合物のグリシジル基を、アンモニア又はア
ミン化合物と反応させたものと、(メタ)アクリル酸、
クロトン酸及びマレイン酸等のカルボキシル基を有する
化合物から得られる重合体、並びに、これらの化合物と
共重合可能な他の単量体とから得られる共重合体からな
る両イオン性樹脂。 (17)上記(7)、(9)又は(12)の陽イオン性
窒素原子を有する化合物のうち少なくとも1種の化合物
と、(メタ)アクリル酸、クロトン酸及びマレイン酸等
のカルボキシル基を有する化合物のうち少なくとも1種
の化合物との共重合体、並びに、これらの化合物と共重
合可能な他の単量体とから得られる共重合体からなる両
イオン性樹脂。 尚、上記の分類は一例であって、もちろん主鎖、側鎖の
両方に陽イオン性窒素原子を有する樹脂であってもよ
い。
【0017】上記陽イオン性樹脂及び上記両イオン性樹
脂は、いずれも通常の方法によって合成することができ
る。また、陽イオン性窒素原子の一部又は全部を、塩
酸、硝酸、ギ酸、酢酸等の有機酸及び/又は無機酸によ
り中和して用いてもよく、両イオン性樹脂のカルボキシ
ル基の一部又は全部を、アンモニア、アミン化合物、苛
性ソーダ等の有機及び/又は無機塩基性化合物にて中和
してもよい。
【0018】上記陽イオン性樹脂における陽イオン性窒
素原子の存在量としては特に限定されず、例えば、コロ
イド滴定法、電導度滴定法等の測定法により測定した場
合に、陽イオン性樹脂1g当たり0.1〜24ミリモル
であることが好ましい。また、上記両イオン性樹脂にお
ける陽イオン性窒素原子及び陰イオン性カルボキシル基
の存在量としては特に限定されず、例えば、上記と同様
の測定法により測定した場合に、両イオン性樹脂1g当
たりそれぞれ0.01〜20ミリモルであることが好ま
しい。陽イオン性窒素原子や陰イオン性カルボキシル基
の存在量が上記の範囲をはずれると、各種の金属表面と
塗膜とを充分に密着させることができなくなるおそれが
ある。
【0019】上記陽イオン性樹脂及び/又は両イオン性
樹脂は、1級アミノ基及び2級アミノ基のうち少なくと
も1つを有する樹脂を含む。これにより、陽イオン性樹
脂は、1級アミノ基及び2級アミノ基のうち少なくとも
1つを有し、両イオン性樹脂は、カルボキシル基と、1
級アミノ基及び2級アミノ基のうち少なくとも1つとを
有することになり、1級アミノ基や2級アミノ基が3級
アミノ基やアミド基よりも密着性に優れた作用を有する
ことから、各種の金属表面や塗膜への密着性が優れたも
のとなる。上記陽イオン性樹脂及び/又は両イオン性樹
脂は、1級アミノ基及び2級アミノ基のうち少なくとも
1つを側鎖に有することが好ましい。これにより、1級
アミノ基や2級アミノ基が3級アミノ基やアミド基より
も密着性に優れた作用を有することから、各種の金属表
面や塗膜への密着性が優れたものとなる。
【0020】上記1級アミノ基及び上記2級アミノ基と
は、例えば、下記一般式(1);
【0021】
【化1】
【0022】(式中、R1 、R2 、R3 、R4 及びR5
は、同一若しくは異なって、水素原子、ハロゲン原子、
置換基を有してもよいアルキル基、アラルキル基又はア
リール基を表す。aは、0又は1の整数を表す。bは、
1以上の整数を表す。)で表される基等が挙げられる。
上記1級アミノ基及び上記2級アミノ基が陽イオン性樹
脂及び/又は両イオン性樹脂中に2つ以上存在する場合
には、これらは同一であってもよく、異なっていてもよ
い。
【0023】上記一般式(1)中、R1 、R2 、R3
4 及びR5 が、アルキル基、アラルキル基又はアリー
ル基を表す場合には、これらは炭素数が20以下である
ことが好ましい。より好ましくは、炭素数が10以下で
ある。上記アルキル基及び上記アラルキル基は、直鎖状
であってもよく、分岐状であってもよい。
【0024】上記一般式(1)中、アルキル基、アラル
キル基又はアリール基が置換基を有する場合には、該置
換基としては特に限定されず、例えば、シアノ基、ハロ
ゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシル
基、カルボアルコキシル基等が挙げられる。
【0025】上記アルコキシル基又は上記カルボアルコ
キシル基は、炭素数が20以下であることが好ましい。
より好ましくは、炭素数が10以下である。また、これ
らは、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
【0026】上記1級アミノ基及び2級アミノ基のうち
少なくとも1つを側鎖に有する陽イオン性樹脂としては
特に限定されず、例えば、上記例示のうち(1)、
(7)、(8)、(9)、(10)、(11)又は(1
2)に示した樹脂等の1級アミノ基及び2級アミノ基の
うち少なくとも1つを側鎖に有する陽イオン性樹脂が挙
げられる。上記ポリビニルアミン類やポリアリルアミン
類及びこれらの塩は、炭素数1〜4のアルキル基のモノ
置換体又はジ置換体、該置換体の4級化物であってもよ
い。
【0027】上記ポリビニルアミン類及びその塩として
は特に限定されず、例えば、ポリビニルアミン、ポリメ
タビニルアミン、ポリビニルアミン塩酸塩、ポリビニル
エチルアミン塩酸塩、ポリメタビニルメチルアミン塩酸
塩、ポリビニル−N−トリメチルアンモニウムブロミド
等が挙げられる。
【0028】上記ポリアリルアミン類及びその塩として
は特に限定されず、例えば、ポリアリルアミン、ポリア
リルアミン塩酸塩、ポリアリルエチルアミン塩酸塩、ポ
リアリルジメチルエチルアンモニウム塩酸塩、ジアリル
アミン塩酸塩重合体、ジアリルメチルアミン塩酸塩重合
体、ジアリルジメチルアンモニウム塩酸塩重合体;これ
らの二酸化イオウ共重合体、アクリルアミド共重合体、
ジアリルアミン塩酸塩誘導体共重合体等が挙げられる。
【0029】上記ポリビニルアミン類の調製方法として
は特に限定されず、例えば、ポリビニルホルムアミドの
酸又は塩基性物質による加水分解;ポリニトロエチレン
やその誘導体の還元;ポリアクリルアミドのホフマン分
解;N−ビニルフタルイミドポリマーのアルカリ還元に
よる方法等が挙げられる。また、上記ポリアリルアミン
類の調製方法としては特に限定されず、例えば、ポリア
リルアミン塩酸塩のアルカリ還元による方法等が挙げら
れる。
【0030】上記カルボキシル基を有する樹脂の全ての
カルボキシル基を変性した樹脂において、カルボキシル
基を有する樹脂は、少なくとも一種の不飽和カルボン酸
を含む単量体成分を重合して得た重合体であることが好
ましい。上記不飽和カルボン酸としては特に限定され
ず、例えば、(メタ)アクリル酸、ケイ皮酸、クロトン
酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン
酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸やそのモノエステ
ル類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2
種以上を併用してもよい。
【0031】上記単量体成分は、必要に応じて、不飽和
カルボン酸の他に、不飽和カルボン酸と共重合可能で、
かつ、カルボキシル基と反応しない不飽和単量体を使用
することができる。
【0032】上記不飽和単量体としては特に限定され
ず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アク
リル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル
等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリロ
ニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミ
ド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の不飽和
アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル
エステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエー
テル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等の
α−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ
化ビニル等のハロゲン化α,β−不飽和モノマー類;ス
チレン、α−メチルスチレン等のα,β−不飽和芳香族
モノマー類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよ
く、2種以上を併用してもよい。
【0033】上記カルボキシル基を有する重合体の重合
方法としては、公知の重合法を用いることができ、特に
限定されず、例えば、バルク重合法、溶液重合法、乳化
重合法、懸濁重合法等により行うことができる。この場
合、必要に応じて、メルカプタン化合物等の連鎖移動剤
を用いて重合度の制御を行うことができる。上記カルボ
キシル基を有する重合体の形態としては特に限定され
ず、例えば、水溶性、水希釈性、水分散性、非水分散
性、溶剤溶解性等であることが挙げられる。上記カルボ
キシル基を有する重合体は単独で用いてもよく、2種以
上を併用してもよい。
【0034】上記カルボキシル基を有する樹脂の全ての
カルボキシル基を変性した樹脂において、カルボキシル
基を1級及び/又は2級アミノ基に変性する方法として
は特に限定されず、例えば、アルキレンイミンを用いる
方法;ポリオキシアルキレンポリアミン等のポリアミン
を用いる方法等が挙げられる。これらの中でも、特にア
ルキレンイミンを用いて開環付加させる方法が好まし
い。
【0035】上記アルキレンイミンとしては特に限定さ
れず、例えば、下記一般式(2)で表される化合物等が
挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を
併用してもよい。
【0036】
【化2】
【0037】上記一般式(2)中、R1 、R2 、R3
4 及びR5 は、上記と同じである。このようなアルキ
レンイミンとしては特に限定されず、例えば、エチレン
イミン、1,2−プロピレンイミン、1,2−ドデシレ
ンイミン、1,1−ジメチルエチレンイミン、フェニル
エチレンイミン、ベンジルエチレンイミン、ヒドロキシ
エチルエチレンイミン、アミノエチルエチレンイミン、
2−メチルプロピレンイミン、3−クロロプロピルエチ
レンイミン、メトキシエチルエチレンイミン、ドデシル
アジリジニルフォルメイト、N−エチルエチレンイミ
ン、N−(2−アミノエチル)エチレンイミン、N−
(フェネチル)エチレンイミン、N−(2−ヒドロキシ
エチル)エチレンイミン、N−(シアノエチル)エチレ
ンイミン、N−フェニルエチレンイミン、N−(p−ク
ロロフェニル)エチレンイミン等が挙げられる。これら
の中でも、エチレンイミンや1,2−プロピレンイミン
が工業的に入手しやすく好適である。
【0038】上記アルキレンイミンを用いる方法におい
て、アルキレンイミンによりカルボキシル基を有する重
合体におけるカルボキシル基を全て変性すると、−CO
O−基に1級及び/又は2級アミノ基が結合した下記一
般式(3)で表される基を有する重合体が得られる。
【0039】
【化3】
【0040】上記一般式(3)中、R1 、R2 、R3
4 、R5 、a及びbは、上記と同じである。重合体中
の不飽和カルボン酸量と重合体中のカルボン酸の変性に
用いられるアルキレンイミンの量は、変性後の陽イオン
性樹脂における陽イオン性窒素原子の存在量が上記陽イ
オン性樹脂における陽イオン性窒素原子の好ましい存在
量の範囲となれば特に限定されない。
【0041】上記アルキレンイミンを用いる方法におい
て、アルキレンイミンによって変性されるカルボキシル
基は、重合体中の不飽和カルボン酸量として、1〜30
重量%であることが好ましい。1重量%未満であると、
金属表面被覆剤により形成される被膜の密着性が充分で
なくなるおそれがある。30重量%を超えると、被膜の
耐水性等の基本性能が低下するおそれがある。より好ま
しくは、1〜15重量%である。上記アルキレンイミン
を用いる方法において、変性に用いられるアルキレンイ
ミンの量は、重合体中の不飽和カルボン酸量と当モル量
以上であれば特に限定されず、重合体中の不飽和カルボ
ン酸量に対して当モル量〜10倍モル量が好ましい。1
0倍モル量を超えると、金属表面被覆剤により形成され
る被膜の耐水性が充分でなくなるおそれがある。より好
ましくは当モル量〜5倍モル量である。上記アルキレン
イミンを用いる方法において、カルボキシル基を有する
樹脂の全てのカルボキシル基を変性する場合には、例え
ば、トルエンやキシレン等の極性の低い反応溶媒を用い
る等の適当な条件を採用することによりカルボキシル基
を有する樹脂の全てのカルボキシル基をアルキレンイミ
ンによって変性した樹脂が得られる。
【0042】上記1級アミノ基及び2級アミノ基のうち
少なくとも1つを側鎖に有する両イオン性樹脂としては
特に限定されず、例えば、上記例示のうち(7)、
(8)、(9)、(10)、(11)又は(12)に示
した樹脂等に(13)に示した方法によりカルボキシル
基を導入した樹脂や、(14)、(15)、(16)又
は(17)の1級アミノ基及び2級アミノ基のうち少な
くとも1つを側鎖に有する両イオン性樹脂が挙げられ
る。上記陽イオン性樹脂にクロロ酢酸等を用いて陰イオ
ン性基としてカルボキシル基を導入する方法は工程が煩
雑であること、上記陽イオン性窒素原子を有する化合物
とカルボキシル基を有する化合物との反応によって共重
合体を得る方法は、例えば、アリルアミンと不飽和カル
ボン酸とが低重合性であることや(メタ)アクリル酸ア
ミノエチルが不安定な単量体であるために特別な配慮が
必要であること、上記カルボキシル基を有する樹脂の一
部のカルボキシル基を変性する方法が最も容易であるこ
と等から、カルボキシル基を有する樹脂の一部のカルボ
キシル基を変性する方法が好ましい。上記カルボキシル
基を有する樹脂の一部のカルボキシル基を変性した樹脂
において、カルボキシル基を有する樹脂は、少なくとも
一種の不飽和カルボン酸を含む単量体成分を重合して得
た重合体であることが好ましい。上記不飽和カルボン酸
としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル
酸、ケイ皮酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;
マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボ
ン酸やそのモノエステル類等が挙げられる。これらは単
独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】上記単量体成分は、必要に応じて、不飽和
カルボン酸の他に、不飽和カルボン酸と共重合可能で、
かつ、カルボキシル基と反応しない不飽和単量体を使用
することができる。
【0044】上記不飽和単量体としては特に限定され
ず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アク
リル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル
等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリロ
ニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミ
ド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の不飽和
アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル
エステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエー
テル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等の
α−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ
化ビニル等のハロゲン化α,β−不飽和モノマー類;ス
チレン、α−メチルスチレン等のα,β−不飽和芳香族
モノマー類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよ
く、2種以上を併用してもよい。
【0045】上記カルボキシル基を有する重合体の重合
方法としては、公知の重合法を用いることができ、特に
限定されず、例えば、バルク重合法、溶液重合法、乳化
重合法、懸濁重合法等により行うことができる。この場
合、必要に応じて、メルカプタン化合物等の連鎖移動剤
を用いて重合度の制御を行うことができる。上記カルボ
キシル基を有する重合体の形態としては特に限定され
ず、例えば、水溶性、水希釈性、水分散性、非水分散
性、溶剤溶解性等であることが挙げられる。上記カルボ
キシル基を有する重合体は単独で用いてもよく、2種以
上を併用してもよい。
【0046】上記カルボキシル基を有する樹脂の一部の
カルボキシル基を変性した樹脂において、カルボキシル
基を1級及び/又は2級アミノ基に変性する方法として
は特に限定されず、例えば、アルキレンイミンを用いる
方法;ポリオキシアルキレンポリアミン等のポリアミン
を用いる方法等が挙げられる。これらの中でも、特にア
ルキレンイミンを用いて開環付加させる方法が好まし
い。
【0047】上記アルキレンイミンとしては特に限定さ
れず、例えば、上記一般式(2)で表される化合物等が
挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を
併用してもよい。
【0048】上記アルキレンイミンを用いる方法におい
て、アルキレンイミンによりカルボキシル基を有する重
合体におけるカルボキシル基を全て変性すると、−CO
O−基に1級及び/又は2級アミノ基が結合した上記一
般式(3)で表される基を有する重合体が得られる。
【0049】重合体中の不飽和カルボン酸量と重合体中
のカルボン酸の変性に用いられるアルキレンイミンの量
は、変性後の両イオン性樹脂における陽イオン性窒素原
子の存在量が上記両イオン性樹脂における陽イオン性窒
素原子の好ましい存在量の範囲となれば特に限定されな
い。
【0050】上記アルキレンイミンを用いる方法におい
て、アルキレンイミンによって変性されるカルボキシル
基は、重合体中の不飽和カルボン酸量として、1〜30
重量%であることが好ましい。1重量%未満であると、
金属表面被覆剤により形成される被膜の密着性が充分で
なくなるおそれがある。30重量%を超えると、被膜の
耐水性等の基本性能が低下するおそれがある。より好ま
しくは、1〜15重量%である。上記アルキレンイミン
を用いる方法において、変性に用いられるアルキレンイ
ミンの量は、重合体中の不飽和カルボン酸量と0.1倍
モル量〜当モル量未満であれば特に限定されないが、例
えば、水等の極性の高い反応溶媒を用いる等の適当な条
件を採用することにより、重合体中の不飽和カルボン酸
量と当モル量以上であってもカルボキシル基を有する樹
脂の一部のカルボキシル基をアルキレンイミンによって
変性した樹脂が得られる。このため、上記アルキレンイ
ミンを用いる方法において、変性に用いられるアルキレ
ンイミンの量は、重合体中の不飽和カルボン酸量に対し
て0.1倍モル量〜10倍モル量が好ましい。0.1倍
モル量未満では、導入される陽イオン性窒素原子量が少
なく金属に対する密着性が充分でなくなるおそれがあ
り、10倍モル量を超えると、金属表面被覆剤により形
成される被膜の耐水性が充分でなくなるおそれがある。
より好ましくは、0.5倍モル量〜5倍モル量である。
【0051】上記陽イオン性樹脂及び上記両イオン性樹
脂はまた、それにより形成される被膜の性能が優れたも
のになることから、主鎖構造に炭素−炭素結合、アミド
結合、ウレタン結合、アミンエポキシ結合を有するもの
が好ましい。これにより、被膜の耐水性等の基本的な性
能が優れたものとなる。
【0052】上記金属表面被覆剤において、分散体を形
成する樹脂すべてにおける陽イオン性樹脂及び/又は両
イオン性樹脂含有割合は特に限定されず、例えば、分散
体を形成する樹脂の不揮発分全量に対して、陽イオン性
樹脂及び/又は両イオン性樹脂の不揮発分が10〜10
0重量%であることが好ましい。10重量%未満では陽
イオン性樹脂及び/又は両イオン性樹脂の作用が充分に
発揮されないおそれがある。より好ましくは20〜10
0重量%であり、最も好ましくは50〜100重量%で
ある。
【0053】上記1級アミノ基及び2級アミノ基のうち
少なくとも1つを側鎖に有する陽イオン性樹脂及び/又
は両イオン性樹脂の含有割合としては特に限定されず、
例えば、陽イオン性樹脂及び/又は両イオン性樹脂の不
揮発分全量に対して、1級アミノ基及び2級アミノ基の
うち少なくとも1つを側鎖に有する陽イオン性樹脂及び
/又は両イオン性樹脂の不揮発分が10〜100重量%
であることが好ましい。10重量%未満では1級アミノ
基及び2級アミノ基のうち少なくとも1つを側鎖に有す
る陽イオン性樹脂及び/又は両イオン性樹脂の作用が充
分に発揮されないおそれがある。より好ましくは30〜
100重量%であり、更に好ましくは50〜100重量
%であり、最も好ましくは70〜100重量%である。
【0054】本発明の金属表面被覆剤における分散体
は、陽イオン性樹脂及び/又は両イオン性樹脂以外の樹
脂を含んでいてもよい。このような樹脂の種類としては
特に限定されず、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリウ
レタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキ
シ樹脂、アルキド樹脂等が挙げられ、これらは単独で用
いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】本発明の金属表面被覆剤において、分散体
の動的光散乱法測定による平均粒子径は、100nm以
下である。上記分散体は、上述した樹脂以外の成分を含
んでいてもよい。上記水系媒体中における分散体の形態
としては特に限定されず、例えば、エマルション、サス
ペンジョン等のいずれのものであってもよい。
【0056】上記動的光散乱法測定は、例えば、大塚電
子社製のダイナミック光散乱光度計「DLS−700」
(商品名)により行うことができる。上記測定条件を下
記に記載する。 クロック周期:20μsec CORRE.CHANNEL:256 角度:90° 積算回数:100 測定温度:25℃ TEMP MODE:WATER これにより得られたデータの解析を修正Maquart
法により行うことで、分散体の平均粒子径を求めること
ができる。
【0057】本発明の金属表面被覆剤においては、分散
体の動的光散乱法測定による平均粒子径が、100nm
以下であることにより、化成処理を施すことなく、金属
基材に対してノンクロムの防錆処理を行うことができ、
かつ、従来の防錆処理と同等以上の耐食性と塗装下地性
とを付与することができ、また、1μm以下の膜厚であ
っても、被膜が充分な耐食性や基本性能を有するもので
ある。本発明が上記効果を奏する理由は必ずしも定かで
はないが、例えば、(1)分散体により形成される被膜
において、分散体が充分に、かつ、均一に被膜中に充填
されて融着することにより、被膜の緻密性が特段に向上
すること、(2)被膜の平均膜厚を1μm以下として
も、金属表面が陽イオン性樹脂及び/又は両イオン性樹
脂によって充分に被覆されることになること、(3)陽
イオン性樹脂及び/又は両イオン性樹脂が1級アミノ基
及び2級アミノ基のうち少なくとも1つを有する樹脂を
含むことによって、陽イオン性樹脂及び/又は両イオン
性樹脂の有する作用が充分となること等により、これら
の作用が相乗的に発揮されて、被膜が各種の金属表面や
塗膜に対して充分な密着性を有し、かつ、腐食性物質を
充分に遮断して金属表面を保護する作用が1μm以下の
ノンクロムの防錆処理を行うのに充分なものとなるため
と考えられる。
【0058】上記分散体の動的光散乱法測定による平均
粒子径が、100nmを超えると、化成処理を施すこと
なく金属基材に対してノンクロムの防錆処理を行った場
合に、分散体により形成される被膜において、分散体が
充分に充填されない箇所が生じて緻密性が充分でなくな
るため、被膜欠陥を生じて充分な耐食性と塗装下地性と
を付与することができないこととなる。上記平均粒子径
としては、例えば、10〜100nmであることが好ま
しい。10nm未満であると、充分な耐食性を付与しう
る分散体を調製しにくくなるおそれがある。より好まし
くは、20〜95nmであり、更に好ましくは、30〜
90nmであり、最も好ましくは、40〜85nmであ
る。
【0059】上記分散体の粒子径における分布状態とし
ては特に限定されず、例えば、均一に近い分布状態であ
ることが好ましい。また、100nmを超える粒径の分
散体が以下に記載するような全分散体中における個数割
合であることが好ましい。 300nmを超える粒径の分散体の個数割合:0〜5% 200nmを超え300nm以下の分散体の個数割合:
0〜5% 150nmを超え200nm以下の分散体の個数割合:
0〜15% 100nmを超え150nm以下の分散体の個数割合:
0〜20%
【0060】100nmを超える分散体の個数割合が上
記の範囲を超えると、分散体により形成される被膜にお
いて、被膜欠陥を生じるおそれがある。より好ましく
は、100nmを超える分散体の個数割合が30%以下
であったり、粒子径が300nmを超える分散体がなか
ったりすることであり、更に好ましくは、100nmを
超える分散体の個数割合が20%以下であったり、粒子
径が200nmを超える分散体がなかったりすることで
あり、特に好ましくは、100nmを超える分散体の個
数割合が10%以下であったり、粒子径が150nmを
超える分散体がなかったりすることである。
【0061】上記分散体における平均粒子径の調整方法
としては特に限定されず、例えば、水系媒体中で乳化重
合や懸濁重合等を行うことにより陽イオン性樹脂及び/
又は両イオン性樹脂を重合して分散体とする際に調整す
る方法(重合による調整方法);陽イオン性樹脂及び/
又は両イオン性樹脂を水系媒体中に機械的に分散させて
分散体とする際に調整する方法(分散による調整方法)
等が挙げられる。これらの中でも、分散体の粒子径が均
一となることから、重合による調整方法により行うこと
が好ましい。
【0062】上記平均粒子径の調整方法において、重合
による調整方法では、単量体、重合開始剤、界面活性
剤、乳化剤、分散剤等の種類や使用量;重合温度、重合
時間、滴下条件等の重合条件等を適宜設定することによ
り行うことができる。また、分散による調整方法では、
ホモミキサー等の分散機による攪拌速度や攪拌時間等を
適宜設定することにより行うことができる。更に、重合
による調整方法と分散による調整方法とを組み合わせて
行ってもよい。上記単量体、重合開始剤、界面活性剤、
乳化剤、分散剤等としては、例えば、エマルションやサ
スペンジョンを調製するために用いることができるもの
等であれば特に限定されない。
【0063】本発明の金属表面被覆剤が防錆処理を目的
とする金属表面処理剤として用いられる場合には、水系
媒体や分散体中に、リン酸化合物;有機イオウ化合物;
多官能架橋剤;水分散性シリカ、並びに、トリ及び/若
しくはジアルコキシシラン化合物又はその加水分解物の
うち少なくとも1つを含んでもよい。これらの化合物を
含むことにより、金属表面被覆剤により形成される被膜
がより優れた耐食性等の性能を金属表面に付与すること
ができることになる。
【0064】上記リン酸化合物としては特に限定され
ず、例えば、オルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、
メタリン酸、フィチン酸;モリブデン酸やタングステン
酸とリン原子とにより形成されるヘテロポリ酸等が挙げ
られる。また、リン酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリ
ウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン
酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸一水
素マグネシウム、リン酸一水素亜鉛等のリン酸の金属
塩;リン酸アンモニウム、リン酸一水素アンモニウム、
リン酸二水素アンモニウム等のリン酸のアンモニウム
塩;リン酸ヒドラジニウム等のリン酸のアミン塩;リン
酸エチル等のリン酸エステル等も挙げられる。これらは
単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】上記リン酸化合物の含有割合としては特に
限定されず、例えば、陽イオン性樹脂及び/又は両イオ
ン性樹脂の有する陽イオン性窒素原子の一部又は全部を
塩とするために用いられるリン酸等の金属表面被覆剤に
含まれるすべてのリン酸化合物を含めて、陽イオン性樹
脂及び/又は両イオン性樹脂の不揮発分100重量部に
対して、0.5〜50重量部であることが好ましい。
0.5重量部未満であると、リン酸化合物の有する作用
が充分に発揮できなくなるおそれがある。50重量部を
超えると、被膜の耐水性、耐アルカリ性が充分でなくな
るおそれがあり、また、塗膜との密着性が劣るおそれが
ある。より好ましくは、1〜40重量部である。更に、
本発明の金属表面被覆剤における上記リン酸化合物の含
有割合としては特に限定されず、例えば、金属表面被覆
剤1000gあたり、0.1〜300gであることが好
ましい。0.1g未満であると、リン酸化合物の有する
作用が充分に発揮できなくなるおそれがある。300g
を超えると、被膜の耐水性、耐アルカリ性が充分でなく
なるおそれがあり、また、塗膜との密着性が劣るおそれ
がある。より好ましくは、0.6〜160gである。
【0066】上記有機イオウ化合物は、活性イオウを発
生させる作用や、有機イオウ化合物中のイオウ原子が金
属原子と共有結合を形成する作用を有する化合物であ
る。上記活性イオウとは、金属原子と共有結合を形成す
ることができるイオウ原子や、このようなイオウ原子を
有する金属硫化物を意味する。
【0067】上記有機イオウ化合物を含むことにより、
活性イオウを発生させて、金属原子とイオウ原子とが繰
り返し共有結合で結合した被覆層を金属表面に形成させ
ることができる。また、有機イオウ化合物におけるイオ
ウ原子と金属表面における金属原子とが共有結合で結合
された被覆層を形成させることができる。
【0068】上記金属原子とイオウ原子とが繰り返し共
有結合で結合した被覆層としては、例えば、−(Mp
q )−で表される繰り返し単位により形成される被覆
層等が挙げられる。上記繰り返し単位において、Mは、
金属原子を表す。また、p及びqは、整数を表し、各繰
り返し単位で同一であっても異なっていてもよい。
【0069】上記活性イオウを有機イオウ化合物より発
生させたり、有機イオウ化合物におけるイオウ原子と金
属表面における金属原子とを共有結合で結合させたりす
るには、例えば、熱エネルギーを与えたり、紫外線、電
子線等の活性エネルギー線等を照射したりすることによ
り行うことができる。
【0070】上記有機イオウ化合物は、上述した作用を
有する化合物であれば特に限定されず、例えば、チウラ
ム類、ジチオカルバミン酸金属塩類、キサントゲン酸
類、キサントゲン酸金属塩類、ジチオモルフォリン類、
チアゾール類及びチオ尿素類縁体からなる群より選択さ
れる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。こ
れらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用し
てもよい。これらの中で、チウラム類、ジチオカルバミ
ン酸金属塩類、キサントゲン酸類、キサントゲン酸金属
塩類、ジチオモルフォリン類及びチアゾール類は、主
に、活性イオウを発生させる作用を有する化合物であ
り、例えば、それぞれ下記式(4−a)〜(9−a)で
表される化学構造を有する化合物が挙げられる。また、
チオ尿素類縁体は、主に、有機イオウ化合物中のイオウ
原子が金属原子と共有結合を形成する作用を有する化合
物である。
【0071】上記有機イオウ化合物におけるチウラム
類、ジチオカルバミン酸金属塩類、キサントゲン酸類、
キサントゲン酸金属塩類、ジチオモルフォリン類、チア
ゾール類及びチオ尿素類縁体としては、例えば、下記一
般式(4−b)〜(10)で表される化合物等が挙げら
れる。
【0072】
【化4】
【0073】
【化5】
【0074】上記式中、Mは、金属原子を表す。上記一
般式中、Rは、同一若しくは異なって、水素原子、炭素
数1〜20の置換基を有してもよい直鎖若しくは分岐状
のアルキル基、炭素数6〜20の置換基を有してもよい
アリール基、又は、炭素数7〜20の置換基を有しても
よいアラルキル基を表す。同じ窒素原子に結合している
Rがともに水素原子でない場合には、2つのRは、互い
に結合していてもよい。nは、2〜20の整数を表す。
Meは、1〜4価の金属原子を表す。mは、1〜4の整
数を表す。また、金属塩の形態だけでなく、ピペリジン
塩やピペリコン塩となっていてもよい。上記置換基とし
ては特に限定されず、例えば、炭素数1〜10のアルキ
ル基を有するアミノ基等が挙げられる。
【0075】上記1〜4価の金属原子としては特に限定
されず、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マ
グネシウム、カルシウム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ア
ルミニウム、テルル等の金属原子が挙げられる。これら
の中でも、亜鉛原子であることが好ましい。
【0076】上記有機イオウ化合物の中でも、活性イオ
ウをより多く発生させたり、有機イオウ化合物中のイオ
ウ原子が金属原子とより多くの共有結合を形成したりす
ることができることから、イオウ原子の含有割合が多い
ものが好ましい。また、金属表面被覆剤中に添加しやす
く分散させやすいことから、油状又は液状物であること
が好ましい。このような有機イオウ化合物としては、例
えば、上記一般式で表される化合物では、イオウ原子の
含有割合が多いものとして、上記Rの炭素数が8以下で
あるもの等が挙げられ、油状又は液状物として、上記R
の炭素数が3以上であるもの等が挙げられる。
【0077】上記有機イオウ化合物の含有割合としては
特に限定されず、例えば、陽イオン性樹脂及び/又は両
イオン性樹脂の不揮発分100重量部に対して、1〜5
0重量部であることが好ましい。1重量部未満である
と、有機イオウ化合物の有する作用が発揮されないおそ
れがあり、50重量部を超えると、金属表面被覆剤によ
り得られる被膜の耐水性等が充分でなくなるおそれがあ
る。より好ましくは、1〜40重量部である。更に、本
発明の金属表面被覆剤における上記有機イオウ化合物の
含有割合としては特に限定されず、例えば、金属表面被
覆剤1000gあたり、2.5〜300gであることが
好ましい。2.5g未満であると、有機イオウ化合物の
有する作用が発揮されないおそれがあり、300gを超
えると、被膜の耐水性等の基本的な性能が充分でなくな
るおそれがある。より好ましくは、5〜200gであ
る。即ち、金属表面被覆剤100重量%に対して陽イオ
ン性樹脂及び/又は両イオン性樹脂の重合体成分(不揮
発分)の好ましい含有量が、0.5〜60重量%であ
る。より好ましくは、1〜40重量%である。更に有機
イオウ化合物の好ましい含有量は、0.25〜30重量
%である。より好ましくは、0.5〜20重量%であ
る。
【0078】上記多官能架橋剤は、陽イオン性樹脂及び
/又は両イオン性樹脂を架橋することができるものであ
れば特に限定されず、例えば、アルデヒド基、ケトン
基、アルキルハライド基、イソシアネート基、チオイソ
シアネート基、ブロックイソシアネート基、活性二重結
合基、エポキシ基、カルボキシル基、無水酸基、活性エ
ステル基、オキサゾリン基、水酸基、アジリニル基等の
うち1種又は2種以上の官能基を2つ以上有する化合物
又は重合体が挙げられる。このような化合物又は重合体
としては、例えば、多官能イソシアネート、メラミン樹
脂、エポキシ樹脂、オキサゾリン樹脂等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよ
い。
【0079】上記多官能架橋剤の含有割合としては特に
限定されず、例えば、陽イオン性樹脂及び/又は両イオ
ン性樹脂の不揮発分100重量部に対して、0.5〜3
0重量部であることが好ましい。0.5重量部未満であ
ると、多官能架橋剤の有する作用が充分に発揮できなく
なるおそれがある。30重量部を超えると、金属表面被
覆剤により形成される被膜における金属表面や塗膜との
密着性が劣るおそれがあり、また、被膜の基本性能が低
下するおそれがある。より好ましくは、1〜20重量部
である。更に、本発明の金属表面被覆剤における上記多
官能架橋剤の含有割合としては特に限定されず、例え
ば、金属表面被覆剤1000gあたり、0.1〜300
gであることが好ましい。0.1g未満であると多官能
架橋剤の有する作用が充分に発揮できなくなるおそれが
ある。300gを超えると、金属表面被覆剤により形成
される被膜における金属表面や塗膜との密着性が劣るお
それがあり、また、被膜の基本性能が低下するおそれが
ある。より好ましくは、1〜200gである。
【0080】上記水分散性シリカとは、ケイ酸の縮合体
であるコロイダルシリカとして一般的に総称されるもの
を意味する。上記水分散性シリカとしては特に限定され
ず、例えば、粒子径が5〜100μmであるものが好ま
しい。このようなものとしては、市販品を用いることが
でき、例えば、スノーテックスO、スノーテックスN、
スノーテックスNCS、スノーテックス20、スノーテ
ックスC(いずれも商品名、日産化学社製)、Cata
loid SN、Cataloid Si−500(い
ずれも商品名、触媒化成工業社製)等が挙げられる。ま
た、表面処理されたものとして、例えば、アルミン酸で
処理されたCataloid SA(商品名、触媒化成
工業社製)、も用いることができる。これらは単独で用
いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】上記水分散性シリカを金属表面被覆剤中に
含有させる態様としては特に限定されず、例えば、その
ままの形態で金属表面被覆剤中に含有させることができ
るが、分散性を向上させるために、陽イオン性樹脂及び
/又は両イオン性樹脂や第4級アンモニウム塩等のアミ
ン類であらかじめ表面処理をしたり、エチレンイミン等
のアジリジン誘導体を表面上にグラフトさせたりして金
属表面被覆剤中に含有させることが好ましい。
【0082】上記水分散性シリカの含有割合としては特
に限定されず、例えば、陽イオン性樹脂及び/又は両イ
オン性樹脂の不揮発分100重量部に対して、5〜30
重量部であることが好ましい。5重量部未満であると、
水分散性シリカの有する作用が充分に発揮できなくなる
おそれがあり、30重量部を超えると、被膜の膜厚が厚
くなり過ぎて防錆処理鋼板の電気溶接や加工性等が劣る
おそれがある。より好ましくは、5〜25重量部であ
る。更に本発明の金属表面被覆剤における上記水分散性
シリカの含有割合としては特に限定されず、例えば、金
属表面被覆剤1000gあたり、0.5〜180gであ
ることが好ましい。0.5g未満であると、水分散性シ
リカの有する作用が充分に発揮できなくなるおそれがあ
り、180gを超えると、被膜の膜厚が厚くなり過ぎて
防錆処理鋼板の電気溶接や加工性等が劣るおそれがあ
る。より好ましくは、1.5〜100gである。
【0083】上記トリ及び/若しくはジアルコキシシラ
ン化合物又はその加水分解物としては特に限定されず、
例えば、トリ及び/又はジアルコキシシラン化合物を、
酸により加水分解を行って得られるものを用いることが
できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用
してもよい。
【0084】上記トリ及び/又はジアルコキシシラン化
合物とは、ケイ素原子に対して1個又は2個の有機基
と、3個又は2個のアルコキシル基とが結合したシラン
化合物を意味する。このようなシラン化合物としては特
に限定されず、以下に示すもの等が挙げられる。
【0085】上記ケイ素原子に対して1個の有機基と、
3個又は2個のアルコキシル基とが結合したシラン化合
物としては、例えば、メチルトリエトキシシラン等のア
ルキル基を有するシラン化合物;ビニルトリエトキシシ
ラン、ビニル−トリス−(β−メトキシエトキシ)シラ
ン等のビニル基を有するシラン化合物;γ−メタアクリ
ロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリロイル
基を有するシラン化合物;β−(3,4−エポキシシク
ロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、γ−グリシ
ドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ環を有
するシラン化合物;γ−クロロプロピルトリメトキシシ
ラン等のハロゲン原子を有するシラン化合物;γ−メル
カプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基を
有するシラン化合物;γ−アミノプロピルトリエトキシ
シラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピ
ルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエ
トキシシラン、γ−(3−アミノエチル)−アミノプロ
ピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基を有するシラ
ン化合物等が挙げられる。
【0086】上記ケイ素原子に対して2個の有機基と、
3個又は2個のアルコキシル基とが結合したシラン化合
物としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルメチル
ジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメ
トキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシ
ラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン等が挙
げられる。上記トリ及び/又はジアルコキシシラン化合
物の中でも、陽イオン性樹脂及び/又は両イオン性樹脂
との混和性や分散安定性等が優れることから、アミノ基
を有するものが好ましい。
【0087】上記トリ及び/又はジアルコキシシラン化
合物の加水分解に用いる酸としては特に限定されず、例
えば、塩酸、リン酸、硫酸等の鉱酸;ギ酸、酢酸、乳酸
等の有機酸等が挙げられる。これらは単独で用いてもよ
く、2種以上を併用してもよい。
【0088】上記加水分解の方法としては、通常の加水
分解方法を用いることができ、特に限定されず、例え
ば、トリ及び/又はジアルコキシシラン化合物を単独で
加水分解してもよく、水分散性シリカや陽イオン性樹脂
及び/又は両イオン性樹脂の共存下で加水分解してもよ
い。これらの方法の中でも、水分散性シリカの共存下で
加水分解すると、トリ及び/又はジアルコキシシラン化
合物と水分散性シリカとで反応が起こって水分散性シリ
カが表面処理され、両者を一体化して分散させることが
できるため好ましい。上記加水分解により、トリ及び/
又はジアルコキシシラン化合物の50重量%以上を加水
分解物として金属表面被覆剤中に分散させることが好ま
しい。より好ましくは、完全に加水分解物として分散さ
せることである。
【0089】上記加水分解により、有機基を有するケイ
酸やポリケイ酸誘導体が生成し、アルコールが副生する
ことになる。本発明の金属表面被覆剤には、このように
生成した加水分解物をそのまま用いてもよく、減圧留去
等の方法によりアルコールの一部又は全部を除去してか
ら用いてもよい。
【0090】上記トリ及び/若しくはジアルコキシシラ
ン化合物又はその加水分解物の含有割合としては特に限
定されず、例えば、陽イオン性樹脂及び/又は両イオン
性樹脂の不揮発分100重量部に対して、SiO2 に換
算して5〜30重量部であることが好ましい。5重量部
未満であると、トリ及び/若しくはジアルコキシシラン
化合物又はその加水分解物の有する作用が充分に発揮で
きなくなるおそれがある。30重量部を超えると、被膜
の膜厚が厚くなり過ぎて防錆処理鋼板の電気溶接や加工
性等が劣るおそれがあり、また、金属表面被覆剤の安定
性が悪くなるおそれがある。より好ましくは、10〜2
5重量部である。更に、本発明の金属表面被覆剤におけ
る上記トリ及び/若しくはジアルコキシシラン化合物又
はその加水分解物の含有割合としては特に限定されず、
例えば、金属表面被覆剤1000gあたり、0.5〜1
80gであることが好ましい。0.5g未満であるとト
リ及び/若しくはジアルコキシシラン化合物又はその加
水分解物の有する作用が充分に発揮できなくなるおそれ
がある。180gを超えると、被膜の膜厚が厚くなり過
ぎて防錆処理鋼板の電気溶接や加工性等が劣るおそれが
あり、また、金属表面被覆剤の安定性が悪くなるおそれ
がある。より好ましくは、3〜100gである。
【0091】本発明の金属表面被覆剤は、更に必要に応
じて、無機顔料や有機顔料等の充填剤;防錆剤等の添加
剤等を含有してもよい。これらの充填剤や添加剤等はそ
れぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよ
い。上記無機顔料としては、水不溶性又は水分散性のい
ずれのものを用いてもよく、特に限定されず、例えば、
微粉末状シリカ、タルク、ケイソウ土、炭酸カルシウ
ム、クレー、二酸化チタン、アルミニウムシリケート、
アルミナゾル、マグネシアゾル、チタニアゾル、ジルコ
ニアゾル等が挙げられる。
【0092】上記無機顔料の含有割合としては特に限定
されず、例えば、陽イオン性樹脂及び/又は両イオン性
樹脂の不揮発分100重量部に対して、100重量部以
下であることが望ましい。より好ましくは、50重量部
以下である。100重量部を超えると、被膜の膜厚が厚
くなり過ぎて防錆処理鋼板の電気溶接や加工性等が劣る
おそれがある。
【0093】上記有機顔料としては特に限定されず、例
えば、通常、金属表面被覆剤に使用される有機顔料を用
いることができる。上記防錆剤としては特に限定され
ず、例えば、タンニン酸、没食子酸等が挙げられる。
【0094】上記金属表面被覆剤における溶液のpHと
しては、0.5〜13であれば特に限定されず、例え
ば、0.5〜7であることが好ましい。0.5未満であ
ると、金属表面が浸食されるおそれがある。7を超える
と、金属表面に対する作用が充分でなくなるおそれがあ
り、また、溶液の安定性が劣るおそれがある。より好ま
しくは、1〜6である。このようなpHに調整するに
は、pH調整剤等を用いることが好ましい。上記pH調
整剤としては特に限定されず、例えば、上述したリン酸
等の酸等が挙げられ、耐食性が向上することから、リン
酸を用いることが好ましい。
【0095】上記金属表面被覆剤はまた、必要に応じ
て、通常用いることができる導電性顔料、重金属を有す
る化合物、エッチング剤、エッチング助剤、多価アニオ
ン、アルミニウムイオン、酸化剤、潤滑剤、着色剤等を
含んでいてもよい。また、更に必要に応じて、硬化剤、
増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を含んでいてもよ
い。
【0096】本発明の金属表面被覆剤は、金属表面処理
剤として用いて防錆処理することができるものである。
上記防錆処理の方法としては特に限定されず、例えば、
化成処理されていない金属基材に対して塗装することに
より行ってもよく、化成処理された金属基材に対して塗
装することにより行ってもよい。この場合、本発明の金
属表面被覆剤が、クロム化合物等による化成処理を施す
ことなく、金属基材に対してノンクロムの防錆処理を行
うことができ、かつ、従来の防錆処理と同等以上の耐食
性と塗装下地性とを付与することができるものであるこ
とから、生産コストを抑制し、また、環境汚染を抑制す
るために、クロム化合物等により化成処理されていない
金属基材に対して塗装することにより、化成処理工程を
なくしたノンクロムの防錆処理とすることが望ましい。
【0097】上記金属基材としては特に限定されず、例
えば、鉄、鋼、合金鋼、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウ
ム、アルミニウム合金等の金属;これらの金属表面に亜
鉛等を含む金属をメッキや溶射等により被覆した金属等
が挙げられる。これらの中でも、本発明の金属表面被覆
剤による被膜が充分にその作用を発揮することができる
ことから、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウ
ム合金等の金属や、亜鉛等を含む金属をメッキや溶射等
により被覆した金属を用いることが好ましい。より好ま
しくは、金属表面が亜鉛を含む場合である。
【0098】上記金属表面被覆剤の塗装方法としては特
に限定されず、例えば、ハケ塗り、スプレー塗装、ロー
ル塗装、浸漬塗装等の通常の方法が挙げられる。上記金
属表面被覆剤を塗装した後の乾燥及び硬化処理方法は特
に限定されない。熱あるいは熱風による乾燥の場合は、
例えば、雰囲気温度が常温〜250℃で数秒〜数分程度
乾燥することが好ましい。より好ましくは、80〜20
0℃、更に好ましくは、100〜180℃である。この
場合、金属基材表面の最終到達温度は、常温〜250℃
であることが好ましい。より好ましくは80〜200
℃、更に好ましくは、100〜200℃である。金属基
材表面の最終到達温度が80℃以上、好ましくは100
℃以上であると、有機イオウ化合物を含む場合には、活
性イオウを充分に発生させることができることになる。
【0099】上記金属表面被覆剤により形成される被膜
の膜厚としては特に限定されず、例えば、平均膜厚とし
て0.1〜5μmであることが好ましい。より好ましく
は、0.2〜3μmであり、更に好ましくは、0.3〜
2μmであり、最も好ましくは、0.4〜1.0μmで
ある。防錆処理による被膜の膜厚を1μm以下とする
と、防錆処理鋼板が被膜により絶縁されにくくなること
から、電気溶接が可能となる。また、鋼板を加工すると
きに被膜が充分な追従性を有することになることから、
防錆処理鋼板の加工性を向上させることができる。
【0100】本発明の金属表面被覆剤は、金属表面に対
して優れた耐食性を付与し、かつ、充分な密着性と基本
性能とを有するものである。また、それにより形成され
る被膜上に、塗装前処理工程で行われる付着油分除去
(脱脂)が行われたり、各種の塗料による塗装が施され
ても、被膜が剥離したり基本性能が損なわれたりするこ
とがないものである。このため、金属表面処理剤として
用いられることにより、化成処理を施すことなく、金属
基材に対してノンクロムの防錆処理を行うことができる
ものである。また、1μm以下の膜厚として、防錆処理
鋼板の汎用性・実用性をより高めることができることと
なる。
【0101】本発明の金属表面被覆剤はまた、上述した
金属表面処理剤として用いることができる他に、耐食性
や密着性等を付与することを目的とするプライマー塗
料、美粧性等を付与することを目的とするプレコートメ
タル(PCM)用塗料等として用いることができる。こ
れにより、優れた耐食性と基本性能とを有する塗装鋼板
を作製することができることになる。本発明の金属表面
被覆剤で処理された鋼板は、本発明の好ましい実施形態
である。
【0102】
【実施例】以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説
明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるもの
ではない。なお、「部」は、「重量部」を示す。
【0103】調製例1 攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下漏斗
を備えた1Lのフラスコに、脱イオン水707部と、2
5%アニオン性活性剤(「ハイテノール18E」、商品
名、第一工業製薬社製)水溶液40部、及び、0.1%
硫酸鉄水溶液1部を仕込んだ後、窒素を導入しつつ70
℃に昇温した。アクリル酸48部、メチルメタクリレー
ト57部、ブチルアクリレート157部及びスチレン1
38部からなる単量体混合物80部をフラスコ内に添加
し15分攪拌を行った後、1.8%過酸化水素水14部
と3%L−アスコルビン酸水溶液13部を添加し初期重
合を開始した。15分後、残りの単量体を1.5時間か
けて滴下した。この間、0.8%過酸化水素水32部と
3%L−アスコルビン酸水溶液29部とを1.5時間か
けて滴下した。滴下終了後、70℃で2時間熟成後に冷
却し、25%アンモニア水14部を添加し、均一に攪拌
して重合体を得た。この重合体に、13%エチレンイミ
ン水溶液220部を40℃以下にて1時間にわたり滴下
後、50℃で4時間反応することで、不揮発分30%の
両イオン性樹脂(A)を得た。この両イオン性樹脂
(A)の平均粒子径は、50nmであった。実施例中に
おいて、平均粒子径の測定は、上述した動的光散乱法測
定によった。
【0104】調製例2 アクリル酸24部、メチルメタクリレート80部、ブチ
ルアクリレート157部及びスチレン138部からなる
単量体混合物、及び、13%エチレンイミン水溶液11
0部を用いた他は、調製例1と同様に実施した。得られ
た両イオン性樹脂(B)の平均粒子径は、50nmであ
った。
【0105】調製例3 硫酸鉄水溶液を添加せずに重合した他は、調製例1と同
様に実施した。得られた両イオン性樹脂(C)の平均粒
子径は、80nmであった。 調製例4 1.8%過酸化水素水7部と3%L−アスコルビン酸水
溶液6部とを用いて初期重合を実施した他は、調製例3
と同様に実施した。得られた両イオン性樹脂(D)の平
均粒子径は、90nmであった。
【0106】調製例5 1.8%過酸化水素水5部と3%L−アスコルビン酸水
溶液4部とを用いて初期重合を実施した他は、調製例3
と同様に実施した。得られた両イオン性樹脂(E)の平
均粒子径は、110nmであった。 調製例6 初期重合を65℃で実施した他は、調製例3と同様に実
施した。得られた両イオン性樹脂(F)の平均粒子径
は、150nmであった。 調製例7 初期重合を60℃で実施した他は、調製例3と同様に実
施した。得られた両イオン性樹脂(G)の平均粒子径
は、180nmであった。
【0107】実施例1 調製例1で得た両イオン性樹脂(A)100部に85%
リン酸3.5部を加え、充分に攪拌することで、pHが
約3の金属表面被覆剤を得た。次に、板厚0.5mmの
電気亜鉛メッキ鋼板を脱脂後、水洗乾燥して試験板とし
た。この鋼板に、得られた金属表面被覆剤をバーコータ
ーにて乾燥後に所定の膜厚となるように塗布し、120
℃の熱風乾燥機内で1分間加熱乾燥を行い表面被覆板を
得た。このときの試験板の最終到達温度は80℃であっ
た。この表面被覆板の耐食性を見るため、JIS−Z2
371による塩水噴霧試験を行い、白錆発生面積率が5
%以上になる時間で評価した。
【0108】実施例2〜4 両イオン性樹脂として表1に示したものを用いた他は、
実施例1と同様に表面被覆板を得て評価した。 実施例5 乾燥後の膜厚を1.5μmとした以外は、実施例1と同
様に表面被覆板を得て評価した。 実施例6 乾燥後の膜厚を3.0μmとした以外は、実施例1と同
様に表面被覆板を得て評価した。
【0109】実施例7 調製例3で得た両イオン性樹脂(C)100部に有機イ
オウ化合物として、テトラブチルチウラムジスルフィド
50部、ノニオン性乳化剤20部、水30部を含んでな
る乳化液を6部と85%リン酸3.5部を加え、充分に
攪拌することで得られた、pHが約3の金属表面被覆剤
を用いた他は実施例1と同様に表面被覆板を得て評価し
た。 実施例8 調製例3で得た両イオン性樹脂(C)100部に多官能
架橋剤としてエポクロスWS−500(商品名、日本触
媒社製)を4部と85%リン酸3.5部を加え、充分に
攪拌することで得られた、pHが約3の金属表面被覆剤
を用いた他は実施例1と同様に表面被覆板を得て評価し
た。 実施例9 調製例3で得た両イオン性樹脂(C)100部に水分散
性コロイダルシリカ液スノーテックスC(商品名、日産
化学社製)を7.5部と85%リン酸3.5を加え、充
分に攪拌することで得られた、pHが約3の金属表面被
覆剤を用いた他は実施例1と同様に表面被覆板を得て評
価した。 実施例10 調製例3で得た両イオン性樹脂(C)100部にγ−ア
ミノプロピルトリエトキシシランを3部と85%リン酸
3.5部を加え、充分に攪拌することで得られた、pH
が約3の金属表面被覆剤を用いた他は実施例1と同様に
表面被覆板を得て評価した。表1に実施例1〜10の評
価結果を示した。
【0110】
【表1】
【0111】比較例1〜3 両イオン性樹脂として表2に示したものを用いた他は、
実施例1と同様に表面被覆板を得て評価した。 比較例4 乾燥後の膜厚を1.5μmとした以外は、比較例1と同
様に表面被覆板を得て評価した。 比較例5 乾燥後の膜厚を3.0μmとした以外は、比較例1と同
様に表面被覆板を得て評価した。表2に比較例1〜5の
評価結果を示した。
【0112】
【表2】
【0113】
【発明の効果】本発明の金属表面被覆剤は、上述の構成
よりなるので、金属表面に化成処理を施す必要をなくし
てノンクロムの防錆処理を行うことができることから、
生産コストを抑制したり、環境汚染を抑制したりするこ
とができ、また、1μm以下の膜厚として、防錆処理鋼
板の汎用性・実用性をより高めることができるものであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4J038 CA111 CG031 CG061 CG071 CG141 CH201 CK021 CK041 CR071 DB221 DB391 DB491 DD001 DD121 DG001 DG061 DG261 DJ011 GA06 GA09 MA08 MA10 MA14 NA03 NA12 NA24 PC02 4K044 AA02 AA06 BA21 BB01 BC02 BC04 BC14 CA53

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水系媒体中に陽イオン性樹脂及び/又は
    両イオン性樹脂の分散体を含んでなる金属表面被覆剤で
    あって、該陽イオン性樹脂及び/又は両イオン性樹脂
    は、1級アミノ基及び2級アミノ基のうち少なくとも1
    つを有する樹脂を含み、該分散体の動的光散乱法測定に
    よる平均粒子径は、100nm以下であることを特徴と
    する金属表面被覆剤。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003155451A (ja) * 2001-11-19 2003-05-30 Nippon Paint Co Ltd 鋼材用水性被覆剤、被覆方法及び被覆鋼材
JP2015526531A (ja) * 2012-05-22 2015-09-10 ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. 多孔質無機酸化物被膜を製造するための組成物および方法

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