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JP2001112493A - 微生物によるカルボニル化合物の製法 - Google Patents

微生物によるカルボニル化合物の製法

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Publication number
JP2001112493A
JP2001112493A JP29753799A JP29753799A JP2001112493A JP 2001112493 A JP2001112493 A JP 2001112493A JP 29753799 A JP29753799 A JP 29753799A JP 29753799 A JP29753799 A JP 29753799A JP 2001112493 A JP2001112493 A JP 2001112493A
Authority
JP
Japan
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compound
carbonyl compound
microorganism
carbonyl
nitrile
Prior art date
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Pending
Application number
JP29753799A
Other languages
English (en)
Inventor
Yasushi Aoki
裕史 青木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Resonac Holdings Corp
Original Assignee
Showa Denko KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Showa Denko KK filed Critical Showa Denko KK
Priority to JP29753799A priority Critical patent/JP2001112493A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ニトリル化合物を原料とするカルボニル化合
物の高収率の製法を提供すること、ポリニトリル化合物
から特定のシアノ基のみをカルボニル基に変換しシアノ
基を有するカルボニル化合物の高収率の製法を提供する
こと、さらに当該反応を触媒する微生物属を提供するこ
と。 【解決手段】 バークホルデリア(Burkholderia)属微生
物を用いてニトリル化合物のシアノ基(CN)をCOY
基(但し、YはNH2またはOHを表わす。)に変換す
ることを特徴とするカルボニル化合物の製法および当該
反応に適用されるバークホルデリア属微生物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ニトリル化合物の
シアノ基(CN)をCOY基(但し、YはNH2またはO
Hを表わす。)に変換する能力を有する微生物を用い
て、ニトリル化合物を原料としてカルボニル化合物を得
る方法および当該方法に適用される微生物に関する。
【0002】
【産業上の利用分野】本発明の方法により取得されるカ
ルボニル化合物は、医薬、農薬、染料、その他化学品の
合成原料として有用である。
【0003】
【従来の技術】各種のニトリル化合物を原料としてカル
ボニル化合物を得る製法としては、金属触媒存在下、シ
アノ基を高温かつ強アルカリで加水分解する方法等が行
われている。しかしながら、これらの方法は、反応の過
程で生ずる廃棄物の処理、また生成する副反応物の除去
が困難である、などの課題がある。
【0004】さらに、分子内に複数のシアノ基を有する
化合物の特定のシアノ基のみを化学的に加水分解し、選
択的にシアノ基を有するカルボニル化合物を取得する為
には、未反応のまま残すべきシアノ基を保護したり、ま
たは特定のシアノ基のみが加水分解され生成した物質を
混合物中より単離することが必要となるが、いずれも工
程は多段階かつ煩雑となり、実用に供すべき方法は確立
されていない。
【0005】これらの課題に対し、微生物の持つ選択的
シアノ基加水分解能を利用したカルボニル化合物の製法
が知られている。例えば米国特許第4,629,700号では、
ロドコッカス(Rhodococcus )属の微生物を用いた、フ
タロニトリルからシアノ安息香酸の製法、また各種脂肪
属ジニトリルからシアノ基を有するカルボニル化合物の
製法が開示されている。また特開昭58-209987号公報で
は、コリネバクテリウム(Corynebacterium )属、また
はノカルディア(Nocardia)属微生物を用いた、芳香族
ニトリルからの芳香族カルボン酸アミドの製法が開示さ
れている。更に、欧州特許第178,106号では、ロドコッ
カス(Rhodococcus )属を含む4属のグラム陽性細菌を
用いた、ポリニトリルからの選択的シアノ基加水分解に
よるシアノ基を有するカルボニル化合物の製法が開示さ
れている。しかしながら、これら従来より知られる一連
の微生物属を用いた方法の反応収率、反応選択性は工業
的に実施するには必ずしも十分でなく、実用に供される
に至っていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、微生物反応
の選択性を生かし、ニトリル化合物を原料とするカルボ
ニル化合物の工業的に実施し得る高収率の製法を提供す
ること、ポリニトリル化合物から特定のシアノ基のみを
カルボニル基に変換することによるシアノ基を有するカ
ルボニル化合物の工業的に実施し得る製法を提供するこ
とを課題とする。さらに当該反応において高収率を与え
ることができる微生物属を探索し、提供することを課題
とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】発明者は上記課題に対
し、既存の公知微生物、ならびに土壌等の環境中より得
られる広範な微生物属を対象として鋭意検討を重ねた結
果、新たに、バークホルデリア属微生物が、ニトリル化
合物のシアノ基を加水分解する能力を持つことを見いだ
すに至り、本発明を完成した。
【0008】すなわち本発明は、以下の事項に関する。 [1] バークホルデリア(Burkholderia)属微生物を用い
てニトリル化合物のシアノ基(CN)をCOY基(但
し、YはNH2またはOHを表わす。)に変換すること
を特徴とするカルボニル化合物の製法。 [2] カルボニル化合物がカルボン酸である[1]に記載の
カルボニル化合物の製法。 [3] カルボニル化合物がカルボン酸アミドである請求
項1に記載のカルボニル化合物の製法。 [4] ニトリル化合物が、芳香族モノニトリル化合物ま
たは複素環式モノニトリル化合物である[1]〜[3]に記載
のカルボニル化合物の製法。 [5] ニトリル化合物が、分子内に2個以上のシアノ基
を有するポリニトリル化合物であり、カルボニル化合物
が、シアノ基を有するカルボニル化合物である[1]〜[3]
に記載のカルボニル化合物の製法。 [6] ポリニトリル化合物がo−フタロニトリル、イソ
フタロニトリルまたはテレフタロニトリルであり、シア
ノ基を有するカルボニル化合物が、対応するo−、m
−、またはp−シアノ安息香酸である[5]に記載のカル
ボニル化合物の製法。 [7] 用いる微生物がバークホルデリア・セパシアSD
814(FERM P-17597)であることを特徴とする[1]〜
[6]に記載のカルボニル化合物の製法。 [8] バークホルデリア・セパシアSD814(FERM P
-17597)。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
本発明によれば、一般的に広く知られるバークホルデリ
ア属の微生物を通常の方法で培養し、得られた菌体を、
ニトリル化合物を含有する水溶液、または懸濁液に懸濁
し作用させることにより、簡便に目的のカルボニル化合
物を高変換率で取得することができる。
【0010】尚、本明細書において使用する用語「カル
ボニル化合物」は、脂肪族、芳香族または複素環式のC
OY基(但し、YはNH2またはOHを表わす。)を有
する化合物、あるいは該化合物の混合物を表わす。
【0011】従来、バークホルデリア属微生物を用い
て、ニトリル化合物からカルボニル化合物の製法は知ら
れておらず、本発明において発明者により新規に見いだ
されたものである。
【0012】本発明で使用されるバークホルデリア属の
微生物としては、例えば、発明者により、日本国内の土
壌より、n-パラフィンを唯一の炭素源、及びエネルギー
源とする培地を用いて分離された、バークホルデリア・
セパシアSD814(FERMP-17597)が挙げられる。本
微生物の菌学的性質は以下に示す通りである。
【0013】 バークホルデリア・セパシアSD814(FERM P-17597)株の菌学的性質 形態 :桿菌 大きさ :長径1〜3μm、短径0.5〜1μm グラム染色性 :陰性 胞子形成 :形成しない 運動性 :あり 鞭毛 :極多毛 酸素に対する態度 :好気性 オキシダーゼ :陽性 カタラーゼ :陽性 集落の色調 :淡黄色 蛍光色素の生成 :陰性 水溶性色素の生成 :陰性 PHBの蓄積 :陽性 40℃での生育 :陽性 アルキ゛ニンシ゛ヒト゛ロラーセ゛ :陰性 脱窒反応 :陰性 ゼラチン液化 :陽性 でんぷんの分解 :陰性 各種化合物の資化性 資化する :グルコース、D-キシロース、D-リボース、レ ブリン酸、2,3-ブチレングリコール、トリ プタミン 資化しない :L-ラムノース、メサコン酸、D-酒石酸 キノン系 :Q-8 菌体内DNAのGC含量 :66 mol% なお本菌株の同定は、Bergey's Manual of Systematic
Bacteriology Vol.1(1984)、Bergey's Manual of Deter
minative Bacteriology ninth Edition(1994)、ならび
にMicrobiology and Immunology,36,1251(1992、Yabuuc
hi et.al)を総合して実施されたものである。
【0014】本菌株は、グラム陰性の胞子非形成菌であ
ること、好気的であること、PHBを蓄積すること、キノ
ン系がQ-8であること、更に各種の有機物に対する資化
性、等から、バークホルデリア・セパシアであると推定
された。しかしながら、水溶性色素を形成しない点にお
いて、既存のバークホルデリア・セパシアとは異なるも
のである。
【0015】これらの菌学的検討の結果、本菌株はバー
クホルデリア・セパシアの新菌株であると結論されたた
め、バークホルデリア・セパシアSD814と命名さ
れ、工業技術院生命工学研究所に生命研寄託第FERM P-
17597号として寄託されている。
【0016】本発明の反応は、最も簡便には、例えばバ
ークホルデリア・セパシアSD814をLB液体培地、1
%ペプトンなどの栄養培地で、20℃〜40℃、望ましくは
25℃〜30℃の温度で24時間程度培養し、得られた培養液
に、ニトリル化合物を1ppm〜50%、望ましくは10ppm〜1
0%添加し、引き続き同様の温度で1時間〜200時間程度
撹拌し続けることにより達せられる。なお添加されるニ
トリル化合物は必ずしも全量が溶解していなくてもよい
が、反応液中での溶解性や分散性を改善するような溶
媒、界面活性剤等を添加することもできる。また反応の
進行によるニトリル化合物の消費に応じて、連続的ある
いは間欠的にニトリル化合物を添加してもよく、この場
合のニトリル化合物の反応液中濃度は前記の限りではな
い。
【0017】微生物を培養するための培地炭素源として
は、グルコースやシュークロース、フルクトース等の糖
類、エタノールや酢酸、クエン酸、コハク酸、乳酸、安
息香酸、脂肪酸などの有機物又はこれらのアルカリ金属
塩、n-パラフィンなどの脂肪族炭化水素類、芳香族炭化
水素類、また例えばペプトン、肉エキス、魚エキス、大
豆粉、ふすま等の天然有機物を、単独、あるいはこれら
の組み合わせにより、通常0.01%〜30%、望ましくは0.
1%〜10%程度の濃度で用いることができる。
【0018】微生物を培養するための培地窒素源として
は、例えば硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝
酸ナトリウム、硝酸カリウムなどの無機窒素化合物、ま
た尿素、尿酸などの含窒素有機物、ペプトン、肉エキ
ス、魚エキス、大豆粉、等の天然有機物を単独、あるい
はこれらの組み合わせにより、通常0.01%〜30%、望ま
しくは0.1%〜10%程度の濃度で用いることができる。
またこれら菌株によりシアノ基が加水分解を受けCOY
基(但し、YはNH2またはOHを表わす。)になるよ
うな反応原料は、培養中にあらかじめ添加しておくこと
により、反応の進行と共に加水分解により遊離するアン
モニウムイオンが微生物の窒素源となることから有用で
ある。
【0019】さらに必要に応じて、リン酸2水素カリウ
ム等のリン酸塩、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、酢酸
カルシウム、塩化マンガン、硫酸銅、硫酸亜鉛、硫酸コ
バルト、硫酸ニッケルなどの金属塩が菌の生育改善のた
めに添加される。添加濃度は培養条件により異なるが、
通常、リン酸塩に関しては0.01%〜5%、マグネシウム
塩においては10ppm〜1%、他の化合物では0.1ppm〜1000
ppm程度である。また選択する培地により、ビタミン
類、アミノ酸、核酸などの供給源として例えば酵母エキ
ス、カザミノ酸、酵母核酸を1ppm〜100ppm程度添加する
ことにより、菌の生育を改善することができる。
【0020】菌のニトリルに対する反応性を向上するた
めに、ニトリル加水分解酵素の誘導源として、培養中に
ニトリル化合物、例えばベンゾニトリル、トルニトリ
ル、テレフタロニトリル、イソフタロニトリル、グルコ
ノニトリル、アジポニトリル、n-ブチロニトリル、イソ
ブチロニトリル、及びこれらの誘導体などを10ppm〜10
%添加することは有用である。また、ニトリル加水分解
酵素の誘導源をかねて、反応原料とするニトリル化合物
を、培養開始時点から添加しておくことも有用である。
また、ニトリル化合物を微生物の炭素源および/または
窒素源として、先に述べた種々の炭素源、窒素源に代え
て、あるいは併用して培養に用いることも、ニトリル加
水分解酵素活性の誘導に有用である。
【0021】いずれの成分を用いた場合も培地のpHは、
5〜9、望ましくは6〜8に調整されることが望ましい。ま
た前記のごとき培地であらかじめ培養された微生物菌体
を、遠心分離、膜ろ過などの方法により培養液から分取
し、反応原料であるニトリル化合物を含む水、生理食塩
水、または培養のpHと同等のpHに調整されたリン酸、酢
酸、ホウ酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン
などとこれらの塩よりなる緩衝液等に再度懸濁し、反応
することは、反応液中の夾雑物を低減し、のちの生成物
の分取を簡便にするために有用である。反応中のpHは、
十分な濃度の緩衝液を用いる場合においては通常維持さ
れうるが、反応の進行により上記pHを逸脱する場合にお
いては、水酸化ナトリウム、アンモニアなどを用い適宜
調整することが望ましい。
【0022】反応液中に生成したカルボニル化合物は、
その反応液中での性状により、遠心分離、膜ろ過、減圧
乾燥、蒸留、溶媒抽出、塩析、イオン交換、各種クロマ
トグラフィーなど通常用いられる様々な方法で取得され
る。
【0023】反応生成物が水溶液として得られる場合
は、生成物が溶解した条件下で、遠心分離、膜ろ過など
の方法により、微生物菌体を除去しておくことが好適で
ある。また反応生成物が固形物として得られ、結晶が十
分に大きい場合はステンレスメッシュ等を用いて生成物
を分取することができる。結晶が微生物との分別が困難
な程度に微少な場合は、それらが溶解するような条件、
例えばカルボン酸であればアルカリ条件下などにより一
度水溶液として、遠心分離、膜ろ過等の方法により菌体
を除去し、しかる後に条件を回復し再度沈殿させ分取す
る方法は好適である。ただし反応液の直接蒸留など、微
生物が除かれることが自明な手法をとることができる場
合においてはこの限りではない。
【0024】反応生成物の性質によっては、反応液中に
生成物が蓄積することにより、反応速度が低下する場合
がある。このような場合は、生成物の濃度に応じて反応
液中に、水、生理食塩水、反応緩衝液を追加し連続的に
希釈してゆく方法は好適である。また反応速度が低下し
た時点で菌を分取し、上清を生産物溶液として回収し、
分取した菌は再度反応原料を含む溶液あるいは懸濁液に
戻すことにより、反応速度を回復することができる。こ
れらの方法は、微生物のニトリル加水分解活性が維持さ
れる範囲において、繰り返し、あるいは継続して行うこ
とができる。
【0025】本発明はさらに、本発明に適用可能な微生
物の、無細胞抽出液、さらに無細胞抽出液から上記反応
を触媒する成分を濃縮・抽出したもの、等を用いても同
様に実施することができる。さらには、本反応に適用可
能な微生物もしくはその抽出液、抽出成分を、難溶性の
担体に固定化し、この固定化物を原料溶液に接触させる
ことによっても達成される。このような固定化担体とし
ては、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポ
リ−N−ビニルホルムアミド、ポリアリルアミン、ポリ
エチレンイミン、メチルセルロース、グルコマンナン、
アルギン酸塩、カラギーナン、キトサン、ポリウレタン
類、ポリエステル類、更にこれらの重合、架橋化物な
ど、微生物もしくはその抽出成分を包合した水難溶性の
固形分を形成するような化合物を単独、もしくは混合し
て用いることができる。また、活性炭、多孔質セラミッ
クス、多孔質ポリマー成型体、ニトロセルロース膜な
ど、あらかじめ固形物として形成された物体上に微生物
もしくはその抽出液、抽出成分を保持させたもの、ある
いは該物体上に微生物を成育させた、固形物/微生物菌
体の複合体を用いることもできる。
【0026】本発明の原料として用いられるニトリル化
合物は、例えば脂肪族ニトリル、芳香族ニトリル、複素
環式ニトリル、等を好ましく用いることができる。
【0027】脂肪族ニトリルの例としては、アセトニト
リル、プロピオニトリル、n-ブチロニトリル、イソブチ
ロニトリル、n-バレロニトリル、イソバレロニトリル、
カプロニトリル、マロノニトリル、サクシノニトリル、
アジポニトリル、グルコノニトリル、アクリロニトリ
ル、メタクリロニトリル等を挙げることができる。
【0028】また芳香族ニトリルの例としてはベンゾニ
トリル、トルニトリル、オルトフタロニトリル、テレフ
タロニトリル、イソフタロニトリル、及びこれら芳香族
ニトリル化合物の置換体、例えば塩素化物、フッ素化
物、ニトロ化物、アミノ化物、等を挙げることができる
オルトフタロニトリル、テレフタロニトリル及びイソフ
タロニトリルが好ましく例示される。
【0029】また複素環式ニトリルの例としては、3-シ
アノピリジン、4-シアノピリジン、シアノインドール
類、等を挙げることができる。
【0030】本発明の方法によるシアノ基の加水分解反
応により得られるカルボニル化合物、すなわちカルボン
酸とカルボン酸アミドの生成比率は、原料として選択さ
れたニトリル化合物の種類により異なる。
【0031】カルボニル化合物がカルボン酸とカルボン
酸アミドの混合物として生成される場合は、カルボン酸
とカルボン酸アミドの構成比は、HPLCやガスクロマトグ
ラフなどの通常知られる方法により分析することができ
る。カルボン酸とカルボン酸アミドの混合物として取得
したい場合は、反応液をそのまま前記の種々の分離方法
により分離するのみで取得することができる。
【0032】一方、ニトリル化合物によっては、カルボ
ン酸またはカルボン酸アミドのみを生成する場合があ
り、このような場合、本発明の方法は、カルボン酸また
はカルボン酸アミドの高純度の製法となりうる。例え
ば、ほぼカルボン酸のみを生成する場合のニトリル化合
物の例としては、フタロニトリル類が挙げられ、好まし
くはテレフタロニトリルおよびイソフタロニトリルが例
示される。この場合生成されるカルボニル化合物はそれ
ぞれp−シアノ安息香酸およびm−シアノ安息香酸であ
り、いずれも変換率はほぼ100%である。
【0033】また、カルボン酸アミドのみを生成するニ
トリル化合物の例としては、3−シアノピリジンおよび
4−シアノピリジンを好ましく挙げることができる。こ
の場合生成されるカルボニル化合物は、それぞれニコチ
ンアミドおよびイソニコチンアミドであり、いずれも変
換率はほぼ100%である。
【0034】さらに本発明によれば、複数のシアノ基を
有するポリニトリル化合物の特定のシアノ基のみを加水
分解しシアノ基を有するカルボニル化合物に変換するこ
とができる。たとえば、バークホルデリア・セパシア
SD814を用いたイソフタロニトリルの変換反応にお
いて、イソフタロニトリルの2つのシアノ基のうち一方
のシアノ基に対する選択性は高く、反応で消費されるイ
ソフタロニトリルはほぼ100%、一方のシアノ基のみが
加水分解された3-シアノ安息香酸が生成される。2つの
シアノ基の両方が加水分解された化合物、例えばフタル
酸等は生成しない。すなわち、本発明は、化学的に等価
な複数のシアノ基、例えば芳香環上の複数のシアノ基の
うち特定のシアノ基のみを高度に選択的に加水分解し、
シアノ基を有するカルボニル化合物のみを高い選択率で
取得することができる製法である。
【0035】本発明の方法は、また、生成されるカルボ
ニル化合物が、カルボン酸またはカルボン酸アミドのど
ちらか一方の場合は、それぞれの化合物の純度の高い製
造方法となりうる。
【0036】
【実施例】以下に本発明を実施例を用いてさらに詳しく
説明する。これら実施例は本発明の範囲を規定するもの
ではない。
【0037】[実施例1]バークホルデリア・セパシア
SD814を、LB寒天培地に画線し、30℃の恒温槽で24
時間培養した。形成されたコロニーから、1白金耳をか
きとり、500mL容のバッフル付きフラスコ中の LB液体
培地100mLに懸濁した。フラスコを、30℃の恒温回転振
盪培養器に設置し、毎分120回転、24時間培養した。得
られた微生物菌体を、10,000gの遠心により回収し、培
養液と等容の50mM リン酸ナトリウム/カリウム緩衝液
(pH=7)に懸濁した。菌懸濁液にイソフタロニトリルを
0.2%(質量/体積)添加し、30℃の恒温回転振盪培養器に
設置し、毎分120回転、72時間反応した。得られた反応
液を、2mol/lの塩酸を用いてpH2とし、反応液と等容の
酢酸エチルを添加し撹拌、抽出を行った。得られた酢酸
エチル層を適宜希釈し、逆相HPLC(カラム:Shodex DS-
613、溶離液:50%アセトニトリル/5mMリン酸カリウム
緩衝液pH3.0、流速1mL/min、検出:UV 210nm)により分
析したところ、反応液中に3-シアノ安息香酸標品と保持
時間が一致するピーク成分を認めた。ピーク成分を分取
し、GC-マススペクトル解析に供試し、それぞれ標品と
同一の構造を示唆するフラグメントパターンを与えるこ
とを確認した。HPLCにおける標品との吸光度の相対比較
の結果から、3-シアノ安息香酸の反応液中濃度は1260pp
mであった。なおこのとき反応液中に、3−シアノベン
ズアミド、及びイソフタル酸は検出されなかった。同H
PLC条件にてイソフタロニトリルの消費量を算出した
ところ、消費イソフタロニトリルに対する3-シアノ安息
香酸の収率は99.5%であった。
【0038】[実施例2]バークホルデリア・セパシア
SD814を、実施例1と同様の方法により培養し、菌
体懸濁液を調製した。菌懸濁液にテレフタロニトリルを
0.2%(w/v)添加し、30℃の恒温回転振盪培養器に設置
し、毎分120回転、72時間反応した。得られた反応液
を、2mol/lの塩酸を用いてpH2とし、反応液と等容の酢
酸エチルを添加し撹拌、抽出を行った。得られた酢酸エ
チル層を適宜希釈し、逆相HPLC(カラム:Shodex DS-61
3、溶離液:50%アセトニトリル/5mMリン酸カリウム緩
衝液pH3.0、流速1mL/min、検出:UV 240nm)により分析
したところ、反応液中に4-シアノ安息香酸標品と保持
時間が一致するピーク成分を認めた。ピーク成分を分取
し、GC-マススペクトル解析に供試し、それぞれ標品と
同一の構造を示唆するフラグメントパターンを与えるこ
とを確認した。HPLCにおける標品との吸光度の相対比較
の結果から、4-シアノ安息香酸の反応液中濃度は1720p
pmであった。なおこのとき反応液中に、4−シアノベン
ズアミド、及びテレフタル酸は検出されなかった。同H
PLC条件にてテレフタロニトリルの消費量を算出した
ところ、消費テレフタロニトリルに対する4-シアノ安
息香酸の収率は99.2%であった。
【0039】[実施例3]バークホルデリア・セパシア
SD814を、LB寒天培地に画線し、30℃の恒温槽で24
時間培養した。形成されたコロニーから、1白金耳をか
きとり、500mL容のバッフル付きフラスコ中の無機塩培
地100mLに接種した。無機塩培地の組成を以下に示す。 (無機塩培地) KH2PO4 1.5 g Na2HPO4 1.5 g MgSO4 7aq 0.2 g CaSO4 2aq 10 mg FeSO4 7aq 5 mg Yeast extract 20 mg/L 接種後、直ちにグルコース0.5%、イソフタロニトリ
ルを0.2%添加し、フラスコを、30℃の恒温回転振盪培
養器に設置し、毎分120回転、144時間培養した。得られ
た培養液を、2mol/lの塩酸を用いてpH2とし、反応液と
等容の酢酸エチルを添加し撹拌、抽出を行った。得られ
た酢酸エチル層を適宜希釈し、実施例1と同様の逆相HPL
Cにより分析したところ、3-シアノ安息香酸標品と保持
時間が一致するピーク成分を認めた。ピーク成分を分取
し、GC-マススペクトル解析に供試し、それぞれ標品と
同一の構造を示唆するフラグメントパターンを与えるこ
とを確認した。HPLCにおける標品との吸光度の相対比較
の結果から、反応液中の3-シアノ安息香酸濃度は710ppm
と算出された。
【0040】[実施例4]バークホルデリア・セパシア
SD814を、実施例3と同様に培養し無機塩培地100m
Lに接種後、ただちにグルコースを0.5%、テレフタロニ
トリルを0.2%(質量/体積)添加し、フラスコを、30℃の
恒温回転振盪培養器に設置し、毎分120回転、144時間培
養した。得られた培養液を、実施例3と同様に抽出し、
実施例2と同様の逆相HPLCにより分析したところ、4-
シアノ安息香酸標品と保持時間が一致するピーク成分を
認めた。ピーク成分を分取し、GC-マススペクトル解析
に供試し、標品と同一の構造を示唆するフラグメントパ
ターンを与えることを確認した。HPLCにおける標品との
吸光度の相対比較の結果から、4−シアノ安息香酸の反
応液中濃度は1210ppmと算出された。
【0041】[実施例5]バークホルデリア・セパシア
SD814を、LB寒天培地に画線し、30℃の恒温槽で24
時間培養した。形成されたコロニーから、1白金耳をか
きとり、500mL容のバッフル付きフラスコ中の LB液体
培地100mLに懸濁した。フラスコを、30℃の恒温回転振
盪培養器に設置し、毎分120回転、24時間培養した。得
られた微生物菌体を、10,000gの遠心により回収し、培
養液と等容の50mM リン酸ナトリウム/カリウム緩衝液
(pH=7)に懸濁した。菌懸濁液に3-シアノピリジンを0.
2%(質量/体積)添加し、30℃の恒温回転振盪培養器に設
置し、毎分120回転、72時間反応した。得られた反応液
を10,000g で遠心し、上清を、ガスクロマトグラフ(カ
ラム担体:島津製作所製Thermon-3000/SHINCARBON A、
気化室温度:300℃、カラム温度:250℃定温、キャリ
ア:窒素60mL/min、検出:FID)により分析したとこ
ろ、反応液中にニコチンアミド標品と保持時間が一致す
るピーク成分を認めた。同反応液をGC-マススペクトル
解析に供試し、ニコチンアミド標品と同一の構造を示唆
するフラグメントパターンを与えることを確認した。ガ
スクロマトグラフにおける標品とのFID強度の相対比較
の結果から、ニコチンアミドの反応液中濃度は420ppmで
あった。なおこのとき反応液中に、ニコチン酸は検出さ
れなかった。
【0042】[実施例6]バークホルデリア・セパシア
SD814を、実施例5と同様に培養、集菌し調製した
菌懸濁液に4-シアノピリジンを0.2%(質量/体積)添加
し、30℃の恒温回転振盪培養器に設置し、毎分120回
転、72時間反応した。得られた反応液を10,000gで遠心
し、上清を、実施例6と同様の条件のガスクロマトグラ
フにより分析したところ、反応液中にイソニコチンアミ
ド標品と保持時間が一致するピーク成分を認めた。同反
応液をGC-マススペクトル解析に供試し、イソニコチン
アミド標品と同一の構造を示唆するフラグメントパター
ンを与えることを確認した。HPLCにおける標品との吸光
度の相対比較の結果から、イソニコチンアミドの反応液
中濃度は520ppmであった。なおこのとき反応液中に、イ
ソニコチン酸は検出されなかった。
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、ニトリル化合物を原料
として、簡便で効率よくカルボニル化合物を得ることが
出来る。また、ポリニトリル化合物、特に芳香族ポリニ
トリル化合物を原料として、様々な産業分野で有用なシ
アノ基を有する安息香酸化合物を、簡便で効率よく得る
ことが出来る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) (C12N 1/20 (C12N 1/20 C12R 1:01) C12R 1:01) (C12P 13/02 (C12P 13/02 C12R 1:01) C12R 1:01)

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 バークホルデリア(Burkholderia)属微生
    物を用いてニトリル化合物のシアノ基(CN)をCOY
    基(但し、YはNH2またはOHを表わす。)に変換す
    ることを特徴とするカルボニル化合物の製法。
  2. 【請求項2】 カルボニル化合物がカルボン酸(YはO
    Hを表わす。)である請求項1に記載のカルボニル化合
    物の製法。
  3. 【請求項3】 カルボニル化合物がカルボン酸アミド
    (YはNH2を表わす。)である請求項1に記載のカル
    ボニル化合物の製法。
  4. 【請求項4】 ニトリル化合物が、芳香族モノニトリル
    化合物または複素環式モノニトリル化合物である請求項
    1乃至3のいずれかに記載のカルボニル化合物の製法。
  5. 【請求項5】 ニトリル化合物が、分子内に複数のシア
    ノ基を有するポリニトリル化合物であり、カルボニル化
    合物が、シアノ基を有するカルボニル化合物である請求
    項1乃至3のいずれかに記載のカルボニル化合物の製
    法。
  6. 【請求項6】 ポリニトリル化合物がo−フタロニトリ
    ル、イソフタロニトリルまたはテレフタロニトリルであ
    り、シアノ基を有するカルボニル化合物が、対応するo
    −、m−、またはp−シアノ安息香酸である請求項5に
    記載のカルボニル化合物の製法。
  7. 【請求項7】 用いる微生物がバークホルデリア・セパ
    シアSD814(FERM P-17597)である請求項1乃至
    6のいずれかに記載のカルボニル化合物の製法。
  8. 【請求項8】 バークホルデリア・セパシアSD814
    (FERM P-17597)。
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