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JP2001191120A - 捻り加工用制御データ作成方法 - Google Patents

捻り加工用制御データ作成方法

Info

Publication number
JP2001191120A
JP2001191120A JP2000259514A JP2000259514A JP2001191120A JP 2001191120 A JP2001191120 A JP 2001191120A JP 2000259514 A JP2000259514 A JP 2000259514A JP 2000259514 A JP2000259514 A JP 2000259514A JP 2001191120 A JP2001191120 A JP 2001191120A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
axis
rotation angle
long material
around
long
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000259514A
Other languages
English (en)
Inventor
Kenzo Takeda
謙三 武田
Manabu Maruyama
学 丸山
Hideo Meguri
秀夫 廻
Yoshihiro Kageyama
善浩 影山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Honda Motor Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Honda Motor Co Ltd filed Critical Honda Motor Co Ltd
Priority to JP2000259514A priority Critical patent/JP2001191120A/ja
Publication of JP2001191120A publication Critical patent/JP2001191120A/ja
Pending legal-status Critical Current

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  • Bending Of Plates, Rods, And Pipes (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 熟練した作業者の勘や経験則に頼らずに長尺
材の軸心回りで相対回転する1対の型を用いて設計どお
りに精度よく長尺材に捻り加工を施すことができる捻り
加工用制御データ作成方法を提供する。 【解決手段】 長尺製品51の形状を表現する形状デー
タで特定される長尺製品51の軸心回り捻れ角△θに基
づき、長尺材に加えられる捻りモーメントは算出され
る。算出された捻りモーメントに基づき、軸心回りで相
対回転する第1および第2型の間で長尺材に引き起こさ
れる弾塑性捻れ変形量は算出される。算出された弾塑性
捻れ変形量は、形状データに基づき算出された軸心回り
相対回転角に足し合わせられる。こうして弾塑性捻れ変
形量に応じて第1および第2型の間で軸心回り実回転角
が特定されれば、弾性復元力いわゆるスプリングバック
に起因する長尺製品の形状誤差は十分に解消されること
ができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、長尺材の長手方向
すなわち軸方向に間隔を置いて配置される第1および第
2型の間で引き起こされる軸心回り相対回転を通じて長
尺材に捻れ変形を施す捻り加工機に関し、特に、そうい
った捻り加工機に用いられる制御データを生成する制御
データ作成方法に関する。
【0002】なお、本明細書中、「曲線」には、湾曲し
た線のみならず線分の連結によって描き出される線(例
えば折れ線)が含まれるものとする。
【0003】
【従来の技術】例えば1対の金型で真っ直ぐな金属製長
尺材(例えば棒材や角材)の両端を把持し、長尺材の軸
心回りで金型間に相対回転を生じさせると、長尺材に捻
れ変形は引き起こされる。この捻れ変形によれば、1対
の金型の間で長尺材は均一な捻れ角で捻られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一般に、工作機の動作
は例えばNC(数値制御)プログラムといった制御プロ
グラムによって制御されることができる。1対の金型を
利用して長尺材に捻れ変形を施すにあたって、制御プロ
グラムには、所望の捻り加工を実現する金型の軸心回り
回転角といった制御データが規定されなければならな
い。しかしながら、こういった制御データを記述するこ
とは熟練した作業者にとっても難しい。作業者の勘や経
験則に基づき記述される制御データに従って製品の試作
が繰り返され、試作が繰り返されるたびに制御データは
書き換えられる。こうした試作が数十回と繰り返される
結果、最終的に、所望どおりに捻れ変形を実現すること
ができる制御データは確立されていく。
【0005】特に、自動車を始めとする工業製品の分野
では、均一な捻れ角で長尺材を捻ることによって実現さ
れるデザインのほか、徐々に変化する捻れ角で長尺材を
捻ることによって実現されるデザインが出現しつつあ
る。これまでのところ、こうした複雑なデザインに従っ
て長尺材に捻れ変形を引き起こすことができる捻り加工
機は提案されていない。
【0006】本発明は、上記実状に鑑みてなされたもの
で、熟練した作業者の勘や経験則に頼らずに長尺材の軸
心回りで相対回転する1対の型を用いて設計どおりに精
度よく長尺材に捻り加工を施すことができる捻り加工用
制御データ作成方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、第1発明によれば、軸心回りで捻れる長尺製品の形
状を表現する形状データに基づき、軸心回りで相対回転
する第1および第2型の間で軸心回り相対回転角を算出
する工程と、形状データで特定される長尺製品の軸心回
り捻れ角に基づき、長尺材に加えられる捻りモーメント
を算出する工程と、算出された捻りモーメントに基づ
き、長尺材に引き起こされる弾塑性捻れ変形量を算出す
る工程と、算出された弾塑性捻れ変形量および軸心回り
相対回転角に基づき、第1および第2型の間で軸心回り
実回転角を算出する工程とを備えることを特徴とする捻
り加工用制御データ作成方法が提供される。
【0008】一般に、金属材を始めとする長尺材は弾性
変形を経て塑性変形に至る。こういった長尺材が用いら
れる場合には、第1および第2型の間で軸心回りに捻り
変形が加えられても、長尺材が第1および第2型の相対
回転から解放されると同時に弾性復元力いわゆるスプリ
ングバックに応じて加工後の長尺製品に形状誤差が生じ
てしまう。弾塑性捻れ変形量に応じて第1および第2型
の間で軸心回り実回転角が特定されれば、そういった弾
性復元力いわゆるスプリングバックに起因する長尺製品
の形状誤差は十分に解消されることができる。特に、そ
ういった弾塑性捻れ変形量は捻りモーメントに基づき幾
何学的に算出されることから、実測データの収集といっ
た手間をできる限り省くことが可能となる。
【0009】弾塑性捻れ変形量は、例えば、捻りモーメ
ントT、剪断弾性係数Gおよび断面二次極モーメントI
pを用いて表現されればよい。捻りモーメントTや断面
二次極モーメントIpは例えば長尺製品の形状データに
基づき算出されることができる。剪断弾性係数Gは例え
ば引っ張り試験で取得される縦弾性係数(ヤング率)や
ポアソン比に基づき取得されることができる。ただし、
剪断弾性係数Gは材質ごとに予め既知であることが多
い。したがって、捻りモーメントTや剪断弾性係数G、
断面二次極モーメントIpで弾塑性捻れ変形量が表現さ
れれば、実測データの収集といった手間をできる限り省
くことが可能となる。
【0010】捻りモーメントを算出するにあたっては、
前記長尺材の断面に沿って剪断歪み分布が特定されれば
よい。剪断歪み分布は、捻れの中心すなわち軸心からの
距離に基づき幾何学的に算出されることができる。この
剪断歪み分布に基づけば剪断応力分布は導き出されるこ
とができる。こうして剪断応力分布が明らかとなれば、
前述の捻りモーメントは算出されることができる。
【0011】また、第2発明によれば、軸心回りで捻れ
る長尺製品の形状を表現する形状データに基づき、軸心
回りで相対回転する第1および第2型の間で軸心回り相
対回転角を算出する工程と、少なくとも第1および第2
型のいずれか一方で長尺材の断面変形に基づき引き起こ
される長尺材の捻れ変化量を取得する工程と、取得され
た捻れ変化量および軸心回り相対回転角に基づき、第1
および第2型の間で軸心回り実回転角を算出する工程と
を備えることを特徴とする捻り加工用制御データ作成方
法が提供される。
【0012】特に、中空の長尺材では、第1および第2
型の間で捻れ変形が引き起こされる際に、第1および第
2型の出口や入り口で長尺材の断面変形すなわち凹みが
生じてしまう。こうした凹みが引き起こされている間に
第1および第2型との間に軸心回りの相対回転が実現さ
れても、長尺材には十分な塑性捻れ変形は生じることは
ない。したがって、第1および第2型の間では形状デー
タに基づく幾何的な位置関係どおりに十分な捻れ変形は
引き起こされることはできず、加工後の長尺製品に形状
誤差が生じてしまう。前述のように導き出された捻れ変
化量に基づき第1および第2型の間で軸心回り実回転角
が特定されれば、そういった断面変形に起因する長尺製
品の形状誤差は十分に解消されることができる。このと
き、捻れ変化量は、前記長尺材の長手方向に延びる稜線
の本数に基づき特定されることができる。一般に、捻れ
変形の場合には、前述のような断面変形すなわち凹みは
長尺材の稜線で生成されやすい。
【0013】さらに、第3発明によれば、軸心回りで捻
れる長尺製品の形状を表現する形状データに基づき、軸
心回りで相対回転する第1および第2型の間で軸心回り
相対回転角を算出する工程と、少なくとも第1および第
2型のいずれか一方に対する長尺材のクリアランス量を
取得する工程と、取得されたクリアランス量および軸心
回り相対回転角に基づき、第1および第2型の間で軸心
回り実回転角を算出する工程とを備えることを特徴とす
る捻り加工用制御データ作成方法が提供される。
【0014】一般に、押し出し加工で成形される形材と
いった長尺材の寸法精度には所定範囲の公差すなわちば
らつきが許容される。こういった公差に拘わらず第1型
や第2型の貫通孔に対して長尺材を確実に通過させるに
は、長尺材の設計寸法と貫通孔の寸法との間にクリアラ
ンスすなわちガタを持たせる必要がある。たとえ公差が
存在しなくても、第1型や第2型の貫通孔に対して長尺
材をスムーズに通過させるには、長尺材の外形と貫通孔
の内面との間にクリアランスすなわちガタを持たせる必
要がある。こうしたクリアランスが解消されて第1型や
第2型が完全に長尺材に接触するまで、第1および第2
型の間に相対回転が実現されても長尺材には実質的に捻
れ変形は生じることはない。したがって、第1および第
2型の間では形状データに基づく幾何的な位置関係どお
りに十分な捻れ変形は引き起こされることはできず、加
工後の長尺製品に形状誤差が生じてしまう。前述のよう
に導き出されたクリアランス量に基づき第1および第2
型の間で軸心回り実回転角が特定されれば、そういった
クリアランスすなわちガタに起因する長尺製品の形状誤
差は十分に解消されることができる。
【0015】前述の軸心回り相対回転角を算出するにあ
たって、捻り加工用制御データ作成方法は、例えば、軸
心回りで捻れる長尺製品の形状を表現する形状データを
取得する工程と、形状データに基づき、軸心方向に特定
される単位送り量当たりの軸心回り比捻れ角を算出する
工程と、算出された軸心回り比捻れ角に基づき、軸心回
りで相対回転する第1および第2型の間で長尺製品の軸
心回り捻れ角を算出する工程とを備えればよい。
【0016】かかる制御データ作成方法によれば、軸心
方向に沿って変動する長尺製品の捻れ角は軸心回り比捻
れ角によって表現されることができる。長尺材の捻れ変
形を実現する第1および第2型の間では、こうした軸心
回り比捻れ角に基づき軸心回り捻れ角が特定されること
ができる。長尺材が第1および第2型を通過する間に、
特定された軸心回り捻れ角に従って第1型や第2型の回
転が制御されれば、形状データで規定される捻れ角に従
って長尺材には捻れ変形が引き起こされることができ
る。このとき、捻れ角は徐々に増加してもよく徐々に減
少してもよい。こうした形状データは例えばCAD(コ
ンピュータ支援設計)システムから取り込まれればよ
い。
【0017】以上のような捻り加工用制御データ作成方
法は、コンピュータで実行されるソフトウェアプログラ
ムとして構成されてもよい。こうしたソフトウェアプロ
グラムは、例えばFD(フロッピー(登録商標)ディス
ク)やCD(コンパクトディスク)、DVD(デジタル
ビデオディスク)といった可搬性の記録媒体を通じてコ
ンピュータに取り込まれてもよく、LAN(構内通信
網)やWAN(広域通信網)、インターネットといった
ネットワークを通じてコンピュータに取り込まれてもよ
い。
【0018】なお、捻り加工を実現するにあたって、前
述の弾塑性捻れ変形量、捻れ変化量およびクリアランス
量は、必ずしも単独で利用される必要はなく、それらの
いかなる組み合わせで利用されてもよい。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照しつつ本発
明の一実施形態を説明する。
【0020】図1は押し通し曲げ加工機の全体構成を概
略的に示す。この押し通し曲げ加工機10は、長尺材1
1の前進移動を案内する前後1対の第1および第2型す
なわち固定型12および可動型13と、固定型12およ
び可動型13に向かって長尺材11を送り込む送り機構
14とを備える。こうした押し通し曲げ加工機10で
は、後述されるように、長尺材11の進行方向に直交す
る平面内で可動型13が移動すると、長尺材11に曲げ
変形(塑性変形)が引き起こされる。
【0021】送り機構14は、例えば長尺材11の後端
に接触する押し金すなわちスライダ15と、送りモータ
16の回転力をスライダ15の推進力に変換するねじ軸
17とを備える。送りモータ16の働きを通じてねじ軸
17が順方向に回転すると、その回転に応じてスライダ
15は前進し、ねじ軸17が逆方向に回転すると、スラ
イダ15は後退することができる。スライダ15の前進
は長尺材11の前進を引き起こす。スライダ15の前進
量すなわち長尺材11の送り量はねじ軸17の回転量す
なわち送りモータ16の回転量に応じて決定されること
ができる。送りモータ16にはいわゆるサーボモータが
用いられればよい。
【0022】こうした押し通し曲げ加工機10では、中
実の長尺材や中空の長尺材11が加工されることができ
る。中空の長尺材11は、例えばアルミニウム製の押し
出し材すなわち形材や鉄製のパイプ材に代表されること
ができる。一般に、長尺材11ではその全長にわたって
共通の断面形状が規定される。ただし、断面形状は長尺
材11の全長にわたって常に一定である必要は必ずしも
ない。
【0023】前述の送り機構14や固定型12はいわゆ
る振り子部材19に支持される。振り子部材19の円柱
形外周面は、図2から明らかなように、半円筒面に沿っ
て配置される軸受け20を通じて支持台21に支持され
る。こうした振り子部材19の働きによれば、長尺材1
1は、固定型12とともに固定型12の中心軸22回り
で回転することができる。こうした回転は、後述される
ように、例えば長尺材11の軸心回りで固定型12と可
動型13との間に相対回転を生み出す。この相対回転は
長尺材11の軸心回りで長尺材11に捻れ変形を引き起
こす。振り子部材19の回転は、例えばサーボモータで
構成される駆動モータ23の働きを通じて実現されれば
よい。
【0024】図2に示されるように、固定型12には、
長尺材11の外形を象った貫通孔24が形成される。こ
の貫通孔24によって長尺材11の前進移動は案内され
る。長尺材11の断面形状は、図2に示される貫通孔2
4から明らかなように、円形や楕円形、三角形その他の
多角形といった単純な形状であってもよいばかりでな
く、その他の複雑な形状であっても差し支えない。貫通
孔24の形状は長尺材11の断面形状に合わせ込まれれ
ばよい。
【0025】図2から明らかなように、中空の長尺材1
1が加工される場合には、固定型12に囲まれる長尺材
11の中空空間には芯金すなわち中子25が差し込まれ
ることが望ましい。周知のように、こうした押し通し曲
げ加工機10では、固定型12側貫通孔24の出口付近
で最も大きな曲げ応力が長尺材11に作用する。このと
き、長尺材11が中空であると、貫通孔24の縁で長尺
材11の断面形状が押し潰されることがある。その結
果、長尺材11に対する曲げ変形の変形量に大きな誤差
が生じたり長尺材11の外周面に不要な窪みが形成され
たりしてしまう。長尺材11の内側から中子25が接触
すれば、こうした長尺材11の押し潰しはできる限り回
避されることができる。
【0026】図1から明らかなように、中子25には、
中子25を前後移動させる制御モータ26が連結され
る。この制御モータ26の働きによって中子25は長尺
材11に対して出し入れされる。しかも、本実施形態で
は、固定型12の中心軸22回りで中子25を回転させ
る制御モータ27が中子25に連結される。この制御モ
ータ27は、前述のように振り子部材19の回転に伴っ
て固定型12が中心軸22回りに回転すると、この回転
に応じて中子25を中心軸22回りに回転させることが
できる。制御モータ26、27には例えばサーボモータ
が用いられればよい。
【0027】図1および図3を参照し、可動型13に
は、固定型12と同様に、長尺材11の外形を象った貫
通孔28が形成される。この貫通孔28によって長尺材
11の前進移動は案内される。この貫通孔28の形状は
例えば固定型12側貫通孔24の形状に一致することが
望ましい。
【0028】可動型13は、固定型12の中心軸22の
延長線に直交する移動平面内で移動することができる。
可動型13の移動は、例えば上下動部材29の上下動と
水平動部材30の水平動との組み合わせによって実現さ
れる。上下動部材29は、上下方向すなわち垂直方向に
変位自在に水平動部材30に案内される。同時に、水平
動部材30は、水平方向に変位自在に案内部材31に支
持される。上下動部材29の変位は例えば上下動モータ
32の働きによって実現されればよく、水平動部材30
の変位は例えば水平動モータ33の働きによって実現さ
れればよい。例えば、上下動モータ32や水平動モータ
33は、微小な回転角で回転軸の回転量を制御すること
ができるサーボモータその他の駆動源から構成されれば
よい。
【0029】しかも、この可動型13は、前述の移動平
面でその位置を変えながらその姿勢を変化させることが
できる。こうした可動型13の姿勢変化は、垂直方向に
延びる回転軸34が形成された回転部材35や、水平方
向に延びる1対の揺動軸36が形成された揺動部材37
の働きを通じて実現される。上下動部材29に形成され
た支持孔38に回転軸34が受け止められると、回転部
材35は垂直軸回りで回転することができる。その一方
で、回転部材35に形成される支持孔39に2つの揺動
軸36が受け止められると、揺動部材37は水平軸回り
で揺動することができる。回転部材35の回転や揺動部
材37の揺動は、個々に、例えばサーボモータで構成さ
れる駆動モータ(図示せず)の働きによって実現されれ
ばよい。ここでは、揺動軸36の揺動中心は中心軸22
の延長線上で回転軸34の回転中心に直交することが望
ましい。
【0030】図4は、以上のような押し通し曲げ加工機
10が組み込まれた押し通し曲げ加工システム41の全
体構成を概略的に示す。この押し通し曲げ加工システム
41では、押し通し曲げ加工機10の動作はNC(数値
制御)コントローラ42によって制御される。この制御
を実現するにあたって、NCコントローラ42は、例え
ば図5に示されるように押し通し曲げ加工機10に対し
て三次元機械座標系xyzを設定する。この機械座標系
xyzは、例えば固定型12の中心軸22に重なり合う
z座標軸と、貫通孔24の出口が臨む1平面上で固定型
12の水平方向および垂直方向をそれぞれ規定するx座
標軸およびy座標軸とを備える。中心軸22回りで特定
される固定型12の姿勢すなわち軸心回り回転角は機械
座標系xyzに従って指定されるz軸回り回転角Cによ
って特定されることができる。
【0031】可動型13の移動平面HVは、機械座標系
xyzのxy平面に平行な姿勢に保持されることが望ま
しい。こうした移動平面HVの設定によれば、可動型1
3の位置は、機械座標系xyzに従って指定されるx座
標値やy座標値によって簡単に特定されることができ
る。このとき、可動型13のz座標値は、いわゆるアプ
ローチ距離すなわち固定型12および可動型13間の距
離に基づき特定されればよい。このアプローチ距離は可
動型13の移動に拘わらず一定に保持される。
【0032】例えば可動型13の移動平面HVと中心軸
22の延長線(機械座標系xyzのz座標軸)との交点
は可動型13の基準位置に設定されることができる。こ
の基準位置に可動型13が位置決めされると、2つの貫
通孔24、28を相次いで通過する長尺材11には移動
平面HVに沿った可動型13の拘束力は加えられない。
すなわち、真っ直ぐな長尺材11は直進し、このとき長
尺材11にはいかなる曲げ変形も引き起こされない。こ
うして可動型13の基準位置が特定されると、可動型1
3の姿勢は、例えば機械座標系xyzに従って指定され
るy軸(V軸)回り回転角Bやx軸(H軸)回り回転角
Aによって特定されることができる。しかも、可動型1
3の基準位置が確立されると固定型12の中心軸22に
よって長尺材11の軸心は特定される。
【0033】再び図4を参照し、NCコントローラ42
には、エンジニアリングワークステーション(EWS)
やパーソナルコンピュータ(パソコン)といったコンピ
ュータ装置43で算出されたNC加工プログラムが供給
される。このNC加工プログラムには、例えば長尺材1
1の送り位置すなわち送り量ごとに関連付けられた可動
型13の位置や姿勢、軸心回りの固定型12の姿勢とい
った制御データが規定される。前述の機械座標系xyz
に従って可動型13のx座標値やy座標値が指定される
と、NCコントローラ42は、そういったx座標値やy
座標値を確立する水平動モータ33や上下動モータ32
の回転量を規定する駆動指令値を押し通し曲げ加工機1
0に向けて出力する。機械座標系xyzに従って可動型
13のy軸回り回転角Bやx軸回り回転角Aが指定され
ると、NCコントローラ42は、これら回転角を確立す
る回転部材35や揺動部材37の回転を引き起こす駆動
モータの駆動指令値を押し通し曲げ加工機10に向けて
出力する。さらに、機械座標系xyzに従って固定型1
2のz軸回り回転角Cが指定されると、NCコントロー
ラは、このz軸回り回転角Cを確立する振り子部材19
の回転を引き起こす駆動モータ23の駆動指令値を押し
通し曲げ加工機10に向けて出力する。
【0034】コンピュータ装置43には、本発明に係る
押し通し曲げ加工機用制御データ作成方法を実現するN
C加工プログラム作成ソフトウェアが組み込まれる。こ
のNC加工プログラム作成ソフトウェアは、例えば、コ
ンピュータ支援設計(CAD)システムを実現するCA
Dソフトウェアの1モジュール(いわゆるアドオンソフ
トウェア)として機能することができる。こうしてCA
Dソフトウェアに組み入れられれば、NC加工プログラ
ム作成ソフトウェアは、制御データ作成方法を実現する
にあたって、CADソフトウェアに組み込まれた既存の
機能を流用することが可能となる。ただし、NC加工プ
ログラム作成ソフトウェアはCADソフトウェアに組み
入れられる必要は必ずしもなく、必要とされる全ての機
能をNC加工プログラム作成ソフトウェア単独で備えて
いてもよい。NC加工プログラム作成ソフトウェアは、
例えばFD(フロッピーディスク)44やCD(コンパ
クトディスク)45、DVD(デジタルビデオディス
ク)、その他の可搬性記録媒体からコンピュータ装置4
3に取り込まれてもよく、無線や有線を問わずネットワ
ークを通じてコンピュータ装置43に取り入れられても
よい。
【0035】本発明に係る押し通し曲げ加工機用制御デ
ータ作成方法を実現するにあたって、NC加工プログラ
ム作成ソフトウェアは、例えばLAN(構内通信網)や
WAN(広域通信網)、インターネットといったネット
ワーク46を通じて長尺製品の形状データを取得する。
取得した形状データを用いて、NC加工プログラム作成
ソフトウェアは前述のようなNC加工プログラムを作成
する。
【0036】形状データは、例えばサーバコンピュータ
47に構築される製品データベースから取り込まれれば
よい。製品データベースには、例えばCAD端末48上
で設計された製品のCADデータが格納されればよい。
こうしたCADデータは、前述と同様に、例えばFD
(フロッピーディスク)やCD(コンパクトディス
ク)、DVD(デジタルビデオディスク)、その他の可
搬性記録媒体から製品データベースに取り込まれてもよ
く、無線や有線を問わずネットワーク49を通じて製品
データベースに取り入れられてもよい。
【0037】いま、例えば図6に示されるように、均一
断面の形材に曲げ変形および捻れ変形が施されて形成さ
れる長尺製品51が設計された場面を想定する。CAD
システム上で設計された長尺製品51はCADデータと
して製品データベースに格納される。こうしたCADデ
ータには、単一の全体座標系XYZに従って長尺製品5
1の形状を表現する形状データが少なくとも含まれる。
形状データには例えばワイヤフレームモデルやサーフェ
スモデル、ソリッドモデルといった表現方法が用いられ
ればよい。形状データは、少なくとも、長尺製品51の
断面形状と、長尺製品51の全長にわたって長尺製品5
1の曲がり具合および捻れ具合とを特定すればよい。長
尺製品51の曲がり具合や捻れ具合は、各断面で同一の
位置を通過する2本の曲線(例えば稜線)で表現される
ことができる。
【0038】操作者は、まず、コンピュータ装置43上
でNC加工プログラム作成ソフトウェアを立ち上げる。
NC加工プログラム作成ソフトウェアは、操作者の入力
操作に基づき製品データベースから長尺製品51の形状
データを取り込む。入力操作には例えばキーボードやマ
ウスが用いられればよい。取り込まれた形状データに基
づき、コンピュータ装置43の画面上には長尺製品51
の三次元像が再現されることができる。この再現にあた
っては、例えばCADソフトウェアの画像処理機能が用
いられてもよい。
【0039】こうして長尺製品51の三次元形状が確認
されると、NC加工プログラム作成ソフトウェアは、固
定型12の貫通孔24を通過する長尺材11の送り位置
Wを決定する。送り位置Wは、例えば押し通し曲げ加工
機10に長尺材11がセットされる際に確立されるスラ
イダ15の最後退位置すなわち加工前の待機位置を基準
に規定されればよい。こうした基準で送り位置Wが設定
されると、スライダ15が前進して長尺材11を送り出
すにつれて送り位置Wのz座標値はマイナス側に減少し
ていく。このような送り位置Wは、後述されるように、
長尺製品51の長手方向に延びる中立軸に基づき決定さ
れる。
【0040】送り位置Wが決定されると、NC加工プロ
グラム作成ソフトウェアは、各送り位置Wごとに、可動
型13の位置や姿勢と固定型12の軸心回りの姿勢とを
特定する。可動型13の位置は例えば機械座標系xyz
のx座標値やy座標値に基づき規定されればよい。可動
型13の姿勢は例えば機械座標系xyzのy軸回り回転
角Bやx軸回り回転角Aに基づき規定されればよい。固
定型12の軸心回りの姿勢は例えば機械座標系xyzの
z軸回り回転角Cに基づき規定されればよい。これらの
x座標値およびy座標値や、y軸回り回転角Bおよびx
軸回り回転角A、z軸回り回転角Cによって制御データ
は作成されることができる。こうした制御データによれ
ば、スライダ15の前進速度すなわち長尺材11の送り
速度が決定されると、可動型13のx軸方向移動速度や
y軸方向移動速度、y軸回り回転速度、x軸回り回転速
度、固定型12のz軸回り回転速度は決定されることが
できる。決定された速度に従って可動型13の位置や姿
勢並びに固定型12の姿勢が変化する限り、各送り位置
Wごとに制御データで指定される可動型13の位置や姿
勢並びに固定型12および可動型13の間の相対回転は
確実に確立されることができる。
【0041】制御データにNCプログラムヘッダやNC
プログラムフッタの記述が追加されると、例えば図7に
示されるようにNC加工プログラムは完成する。完成し
たNC加工プログラムは最終的にNCコントローラ42
に供給される。NCコントローラ42は、NC加工プロ
グラムに従って押し通し曲げ加工機10を作動させる。
図7に示されるNC加工プログラムに従えば、長尺材1
1は一定の送り速度F=6000mm/分で固定型12
および可動型13を通り抜ける。例えば送り位置W=−
1424.000mmが確立されると、可動型13は、
前述の基準位置すなわち移動平面HVの原点位置からx
座標値X=0.000mmおよびy座標値Y=0.44
6mmで特定される座標位置に移動する。このとき、可
動型13の姿勢は、y軸回り回転角B=0.000度お
よびx軸回り回転角A=0.159度で特定される。続
いて長尺材11が送り位置W=−1504.072mm
に到達すると、可動型13は、x座標値X=0.000
mmおよびy座標値Y=4.409mmで特定される座
標位置に移動する。このとき、可動型13の姿勢は、y
軸回り回転角B=0.000度およびx軸回り回転角A
=3.157度で規定される姿勢に変化する。例えば長
尺材11が送り位置W=−1601.907mmに到達
すると、可動型13は、x座標値X=0.090mmお
よびy座標値Y=8.515mmで特定される座標位置
に移動する。このとき、可動型13の姿勢は、y軸回り
回転角B=−0.065度およびx軸回り回転角A=
6.092度で規定される姿勢に変化する。同時に、固
定型12は、中心軸22回りで回転してz軸回り回転角
C=0.7091度で規定される姿勢に変化する。こう
して各送り位置Wを通過するたびに、可動型13は、x
座標値Xやy座標値Yで規定される位置に移動しなが
ら、y軸回り回転角Bやx軸回り回転角Aで規定される
姿勢に変化する。同時に、固定型12と可動型13との
間にはz軸回り回転角Cで規定される相対回転が確立さ
れる。隣接する送り位置W同士の間では、x座標値Xお
よびy座標値Yやy軸回り回転角Bやx軸回り回転角
A、z軸回り回転角Cは例えば等速で変化すればよい。
【0042】送り位置Wを決定するにあたって、NC加
工プログラムは長尺製品51の重心線を取得する。この
重心線は、長尺製品51の全長にわたって各断面で特定
される重心の位置を特定する。この重心線を特定するに
あたって、NC加工プログラム作成ソフトウェアは、例
えば図8および図9に示されるように、長尺製品51の
断面形状52を表現する二次元データと、断面形状52
の各頂点に対応する稜線を表現する三次元データとを利
用する。ただし、各稜線に断面形状52の各頂点を対応
させるにあたって、各頂点に形成される角取りは無視さ
れる。すなわち、稜線は、断面形状52の作図過程で利
用される角取り以前の頂点によって描き出される。
【0043】詳述すると、NC加工プログラム作成ソフ
トウェアは、まず、二次元データで特定される断面形状
52の各頂点と、三次元データで特定される稜線との対
応関係を取得する。この取得には例えばGUI(グラフ
ィックユーザインターフェース)が用いられればよい。
すなわち、操作者は、図9に示されるように、コンピュ
ータ装置43の画面上に描き出された稜線の三次元像に
基づき第1および第2ガイド線53a、53bを指定す
るとともに、同様に図8に示されるように、画面上に描
き出された断面形状52に基づき例えば第1および第2
ガイド点54a、54bを指定する。ここでは、指定の
順番に従って、第1ガイド線53aと第1ガイド点54
aとが相互に関連付けられ、第2ガイド線53bと第2
ガイド点54bとが相互に関連付けられる。こうした指
定には例えばマウス操作が用いられればよい。
【0044】こうして二次元データと三次元データとが
関連付けられると、NC加工プログラム作成ソフトウェ
アは、断面に沿って2つのガイド点54a、54bと重
心55との位置関係を取得する。この取得には例えばG
UIが用いられればよい。すなわち、操作者は、図8に
示されるように、コンピュータ装置43の画面上に描き
出される長尺製品51の断面形状52にxy座標系を重
ね合わせればよい。こうしてxy座標系が設定される
と、NC加工プログラム作成ソフトウェアは、xy座標
系に従って第1および第2ガイド点54a、54bのx
座標値およびy座標値や重心55のx座標値およびy座
標値を算出する。ただし、ここでは、2つのガイド点5
4a、54bに対する重心55の相対的な位置関係が導
き出されれば十分である。図8に示されるようにxy座
標系の座標原点が重心55に重ね合わせられれば、重心
55のx座標値やy座標値は算出される必要はなくな
る。
【0045】続いてNC加工プログラム作成ソフトウェ
アは、図10に示されるように、三次元データで規定さ
れる2つの稜線すなわち第1および第2ガイド線53
a、53bに対して複数の切断平面57a〜57gを規
定する。こうした切断平面57a〜57gの設定にあた
っては、第1および第2ガイド線53a、53bは各々
同数の部分線に等分割されればよい。各切断平面57a
〜57gは、部分線の分割点58a〜58gで第1およ
び第2ガイド線53a、53bの接線に直交する。各切
断平面57a〜57gでは、第1ガイド線53aと切断
平面57a〜57gとが交差する位置で第1ガイド点5
4aは特定されることができ、第2ガイド線53bと切
断平面57a〜57gとが交差する位置で第2ガイド点
54bは特定されることができる。
【0046】こうして各切断平面57a〜57g上で第
1および第2ガイド点54a、54bの位置が特定され
ると、NC加工プログラム作成ソフトウェアは、前述の
ように2つのガイド点54a、54bと重心55との位
置関係に基づき、切断平面57a〜57g上で重心55
の位置を特定する。こうして算出された重心55が順番
に連結されていくと、例えば図11に示されるように、
重心線59は描き出されることができる。重心55同士
を結ぶにあたって曲率の連続性が考慮されれば、滑らか
で精度の高い重心線59が得られることができる。その
他、こうして得られる重心線59の精度を高めるには、
重心55同士の間隔すなわち切断平面57a〜57g同
士の間隔は狭められることが望ましい。重心線59は長
尺製品51の曲がり具合を表現する。
【0047】こうした重心線59は例えばベジエ曲線や
Bスプライン曲線、NURBS(非一様有理Bスプライ
ン)曲線といったパラメトリック曲線で表現されること
ができる。こうした表現方法では、例えば図12に示さ
れるように、曲線61の曲がり具合は複数の制御点6
2、63によって規定されることができる。こういった
制御点62、63には、表現される曲線61上で座標値
を与えるノット62が必ず含まれる。ノット62の配置
は、隣接するノット62間を結ぶ直線64と、表現され
る曲線61との乖離すなわちトレランスTOLに基づき
決定される。トレランスTOLが一定に保持される結
果、曲率の大きな曲線61部分ではノット62の間隔は
狭められ、反対に曲率の小さな曲線61部分ではノット
62の間隔は広げられる。しかも、トレランスTOLが
大きくなればノット62の間隔は広げられ、トレランス
TOLが小さくなればノット62の間隔は狭められる。
重心線59では、隣接するノット62の間で曲線61の
長さは測定される。
【0048】こうして重心線59に沿ってノット62の
間隔が取得されると、NC加工プログラム作成ソフトウ
ェアは、例えば図13に示されるように、長尺製品51
の三次元形状を特定する全体座標系XYZに、固定型1
2を基準に特定される局部座標系すなわち機械座標系x
yzを規定する。こうした機械座標系xyzは、前述の
ように重心線59上で特定されたノット62ごとに規定
される断面65a〜65gを基準に設定されればよい。
【0049】各断面65a〜65gを特定するにあたっ
て、NC加工プログラム作成ソフトウェアは、例えば図
14に示されるように、各ノット62ごとに重心線59
に対して接線ベクトル66を算出する。各ノット62で
は、この接線ベクトル66が直交する切断平面67が特
定されることができる。この切断平面67に描き出され
る長尺製品51の断面形状によって各断面65a〜65
gは特定されることができる。こうしてパラメトリック
曲線で表現される重心線59に従って各断面65a〜6
5gが特定されると、長尺製品51の曲率が大きくなれ
ばなるほど断面65a〜65gの枚数は増加し、きめ細
かく可動型13の移動を制御することが可能となる。し
かも、トレランスTOLの大きさを意図的に変更すれ
ば、長尺製品51に要求される寸法精度に応じて断面6
5a〜65gの枚数は意図的に変更されることが可能と
なる。
【0050】各切断平面67に長尺製品51の断面形状
を描き出すにあたって、NC加工プログラム作成ソフト
ウェアは、固定型12の貫通孔24と機械座標系xyz
との位置関係を取得する。この取得には例えばGUIが
用いられればよい。すなわち、操作者は、例えば図15
に示されるように、コンピュータ装置43の画面上に描
き出された長尺製品51の断面形状に対して機械座標系
xyzを位置合わせすればよい。このとき、機械座標系
xyzのx座標軸やy座標軸の向きは、固定型12に形
成される貫通孔24の形状すなわち中心軸22回りの向
きに応じて設定される。z座標軸の向きは固定型12の
中心軸22に一致する。ここで、固定型12の中心軸2
2は、例えば長尺製品51の断面形状で特定される重心
Gに一致する。その結果、前述のように長尺製品51の
曲がり具合を表現する重心線59によって長尺製品51
の軸心は特定されることができる。
【0051】各断面65a〜65gごとに機械座標系x
yzが設定されると、NC加工プログラム作成ソフトウ
ェアは、例えば図16に示されるように、重心線59に
基づき可動型13の位置や姿勢を特定する。この特定に
あたって、NC加工プログラム作成ソフトウェアは、ま
ず、機械座標系xyz上で固定型12および可動型13
の間のアプローチ距離Lを特定する。このアプローチ距
離Lは、固定型12側貫通孔24の出口と、基準位置に
位置決めされた可動型13との間で固定型12の中心軸
22方向に沿って測定される。こうしたアプローチ距離
Lは、例えば操作者の入力操作などを通じて予めNC加
工プログラム作成ソフトウェアに取り込まれればよい。
【0052】特定されたアプローチ距離Lに基づき機械
座標系xyz上には可動型13の移動平面HVが規定さ
れる。この移動平面HVを規定するにあたって、NC加
工プログラム作成ソフトウェアは、アプローチ距離Lに
基づき機械座標系xyz上のz座標値を規定すればよ
い。その結果、機械座標系xyzのxy平面はz座標軸
に沿ってアプローチ距離Lで平行移動させられる。こう
して移動平面HVが規定されると、NC加工プログラム
作成ソフトウェアは、移動平面HVと重心線59との交
差点68でx座標値やy座標値を算出する。算出された
x座標値やy座標値によって可動型13の幾何的位置は
特定されることができる。こうして特定された可動型1
3の幾何的位置には、単純に、形状データで特定される
長尺製品51の三次元形状が反映される。
【0053】このように機械座標系xyzに従って可動
型13のx座標値やy座標値を取得するにあたっては、
長尺製品51の三次元像が機械座標系xyzのyz平面
やxz平面に投影されればよい。例えば図17に示され
るように、長尺製品51の三次元像が機械座標系xyz
のyz平面に投影されると、投影された三次元像と移動
平面HVとの交差に基づき可動型13のy座標値は特定
されることができる。このとき、移動平面HV上で長尺
製品51の接線方向69が特定されれば、可動型13の
x軸回り回転角Aが導き出されることができる。図18
に示されるように、長尺製品51の三次元像が機械座標
系xyzのxz平面に投影されると、同様に、投影され
た三次元像と移動平面HVとの交差に基づき可動型13
のx座標値は特定されることができる。同時に、移動平
面HV上で長尺製品51の接線方向70が特定されれ
ば、可動型13のy軸回り回転角Bが導き出されること
ができる。
【0054】こうして可動型13の位置や姿勢を特定す
ると同時に、NC加工プログラム作成ソフトウェアは、
各断面65a〜65gに設定される機械座標系xyzに
基づき固定型12の中心軸22回りの姿勢、すなわち、
軸心回りで相対回転する固定型12および可動型13の
相対回転角を特定する。この特定にあたって、NC加工
プログラム作成ソフトウェアは、まず、隣接する機械座
標系xyzに基づき、長尺製品51の軸心方向すなわち
重心線59に沿って特定される単位送り量当たりの軸心
回り比捻れ角を算出する。
【0055】この軸心回り比捻れ角の算出にあたって、
NC加工プログラム作成ソフトウェアは、例えば図19
に示されるように、隣接する機械座標系xyz同士の間
でxy座標平面同士を互いに重ね合わせる。この重ね合
わせにあたっては、例えば行列演算などを用いて1対の
機械座標系xyzの間でz座標軸の向きが揃えられれば
よい。こうした座標平面同士の重ね合わせにあたって、
xy座標平面およびx 1 1 座標平面では、全体座標系
XYZに従ってz座標軸回りの回転角は保持される。し
たがって、重ね合わせられたxy座標平面およびx1
1 座標平面に基づけば、1対の断面65a、65b同士
の間で軸心回り捻れ角θは導き出されることができる。
【0056】こうして隣接する断面65a〜65g同士
の間で軸心回り捻れ角θが算出されると、NC加工プロ
グラム作成ソフトウェアは、前述のように断面65a〜
65g同士の間で測定される重心線59の長さ、すなわ
ち、ノット62間で測定される曲線61の長さを用いて
軸心回り比捻れ角ψを算出する。すなわち、軸心回り捻
れ角θは重心線59の長さによって除算される。こうし
て算出された軸心回り比捻れ角ψは、例えば図20に示
されるように、累積される重心線59の長さに対して次
々とプロットされる。その結果、長尺製品51の軸心方
向に沿って軸心回り比捻れ角ψの変動を示す分布曲線7
1は導き出される。ただし、この分布曲線71では、重
心線59の長さで特定される軸心方向位置に固定型12
が位置決めされた際に可動型13の位置で特定される軸
心回り比捻れ角ψがプロットされる。
【0057】続いてNC加工プログラム作成ソフトウェ
アは分布曲線71上で軸心回り比捻れ角ψの最大値72
を検出する。この最大値72は、軸心回り比捻れ角ψ=
0で始まり軸心回り比捻れ角ψ=0で終わる1捻り区間
73内で検出される。最大値72が検出されると、NC
加工プログラム作成ソフトウェアは、最大値72に至る
分布曲線71aを単純増加曲線に描き直すと同時に、最
大値72を通過した分布曲線71bを単純減少曲線に描
き直す。単純増加曲線によれば軸心回り比捻れ角ψ=0
から最大値72までに軸心回り比捻れ角ψは減少するこ
とはなく、単純減少曲線によれば最大値72から軸心回
り比捻れ角ψ=0までに軸心回り比捻れ角ψは増大する
ことはない。最大値72に至る分布曲線71aや、最大
値72を通過した分布曲線71bでは、例えば図21に
示されるように、極大値75とこの極大値75に隣接す
る極小値76とが平均化される。図21から明らかなよ
うに、平均化で描き出される直線77は、極小値76を
含む分布曲線71との間に、極大値75を含む分布曲線
71と直線77との間に区画される領域78と同一面積
の領域79を区画する。
【0058】こうして分布曲線71が単純増加曲線およ
び単純減少曲線で表現されると、NC加工プログラム作
成ソフトウェアは、例えば図22に示されるように、ア
プローチ距離Lに基づき加工域81を描き出す。この加
工域81は、軸心方向すなわち重心線59の長さ方向に
アプローチ距離Lを特定する上辺82と、この上辺82
の両端に接続されて、傾斜度で軸心回り比捻れ角ψの許
容変化率を特定する可動型側斜辺83および固定型側斜
辺84とによって囲まれる。許容変化率は例えば固定型
12の中心軸22回り最大回転速度に基づき決定され
る。
【0059】NC加工プログラム作成ソフトウェアは、
最大値72に至る分布曲線71aでは、可動型13の位
置を特定する上辺82の一端を基準に加工域81を分布
曲線71に沿って移動させる。移動の間に上辺82の一
端以外で加工域81が分布曲線71に交差すると、NC
加工プログラム作成ソフトウェアは、交差した領域で加
工域81の外枠に沿って分布曲線71を描き直す。反対
に、最大値72を通過した分布曲線71bでは、固定型
12の位置を特定する上辺82の他端を基準に加工域8
1は分布曲線71に沿って移動させられる。移動の間に
上辺82の他端以外で加工域81が分布曲線71に交差
すると、同様に、交差した領域で分布曲線71は加工域
81の外枠に沿って描き直される。同時に、前述の最大
値72を挟む分布曲線71は、例えば図22から明らか
なように、加工域81に基づき、少なくともアプローチ
距離Lにわたって均一な軸心回り比捻れ角ψを示す直線
85に描き直される。こうした直線85によれば最大値
72を挟む分布曲線71は平均化される。
【0060】こうして加工域81に基づき完全に分布曲
線71が描き直されると、NC加工プログラム作成ソフ
トウェアは、重心線59の長さに沿って各断面65a〜
65gごとに固定型12の中心軸22回り回転角を算出
する。すなわち、NC加工プログラム作成ソフトウェア
は、例えば図23から明らかなように、直線85の入り
口86に至る分布曲線71上で断面65a〜65gごと
に特定される軸心回り比捻れ角ψに、可動型13および
固定型12の間で測定されるアプローチ距離Lを掛け合
わせる。この乗算によって固定型12の軸心回り相対回
転角は導き出される。その一方で、NC加工プログラム
作成ソフトウェアは、直線85の入り口86を通過した
分布曲線71に基づき、断面65a〜65gごとにアプ
ローチ距離Lにわたって軸心回り比捻れ角ψの積分値を
算出する。この積分値によって固定型12の軸心回り相
対回転角は特定されることができる。
【0061】ここで、以上のような捻れ加工の原理を簡
単に説明する。いま、固定型12が中心軸22回りに回
転角θ1で回転すると、例えば図24に示されるよう
に、固定型12および可動型13の間では長尺材11に
捻れ変形が引き起こされる。断面形状が均一であれば、
固定型12および可動型13の間で長尺材11は均等に
捻れる。したがって、図25に示されるように、アプロ
ーチ距離Lにわたって均一に比捻れ角ψ1は分布する。
比捻れ角ψは、長尺材11の軸心方向に沿った単位長さ
当たりの捻れ角を意味する。
【0062】長尺材11が微小距離D1で軸心方向に送
られると、可動型13を通過した長尺材11では前述の
比捻れ角ψ1は保持される。このとき、固定型12が前
述の回転角θ1よりも大きな回転角θ2で特定される姿
勢を確立すると、固定型12および可動型13の間で長
尺材11は均等に捻れる結果、例えば図26に示される
ように、固定型12および可動型13の間には均一に比
捻れ角ψ2が分布する。この比捻れ角ψ2が保持された
まま長尺材11が再び微小距離D2で可動型13を通過
すると、図27に示されるように、微小距離D1にわた
って実現された比捻れ角ψ1に続き、微小距離D2にわ
たって比捻れ角ψ2は実現されることができる。
【0063】こうして微小距離の送りと固定型12の回
転とが連続的に繰り返されると、段階的に増加する比捻
れ角ψで長尺材11には捻れ変形が実現される。例えば
軸心方向に長尺材11を連続的に送りながら滑らかに固
定型12の回転角を変化させれば、前述のように、徐々
に増加する捻れ角で捻られた長尺製品51は得られるこ
とができる。このとき、固定型12の回転角は、可動型
13の位置で特定される比捻れ角ψとアプローチ距離L
との乗算によって導き出されることができる。
【0064】続いて、前述のように均一な比捻れ角ψ1
で長尺材11が捻られた後に固定型12に加えられる拘
束力を解放し、中心軸22回りで固定型12の回転を許
容しつつ長尺材11が微小距離D1で送られる場面を想
定する。すると、図28に示されるように、微小距離D
1で送られる間に固定型12を通過する長尺材11で捻
れは生じない。捻れた長尺材11が可動型13を通過す
る結果、長尺材11には、固定型12の回転角θ1とは
反対向きに軸心回りの回転角θ3が生じる。固定型12
の回転角は(θ1−θ3)に減少する。図29に示され
るように、微小距離D1で送られる間に固定型12を通
過する長尺材11は比捻れ角ψ=0を維持する。
【0065】その後、固定型12に加えられる拘束力を
復帰させ中心軸22回りで固定型12を強制的に回転さ
せると、例えば図30に示されるように、予め捻れ変形
が施された領域では、加工硬化に起因して、比捻れ角ψ
1に達するまで捻れ変形は引き起こされない。このと
き、長尺材11では、前述と同様に、微小距離D1にわ
たって均一に捻れが生じる。その結果、微小距離D1で
は均一な比捻れ角ψ4が分布する。固定型12の回転角
は、図30から明らかなように、固定型12および可動
型13の間でアプローチ距離Lにわたって算出される比
捻れ角ψの積分値によって特定されることができる。
【0066】続いて微小距離D2で再び軸心方向に長尺
材11を送り出し、前述と同様に、固定型12を通過し
た長尺材11で比捻れ角ψ=0を維持させる。その後、
中心軸22回りで固定型12を強制的に回転させると、
例えば図31に示されるように、微小距離D1にわたっ
て実現された比捻れ角ψ4に続き、微小距離D2にわた
って比捻れ角ψ5は実現されることができる。ただし、
比捻れ角ψ5は、先行する比捻れ角ψ4よりも小さくな
ければならない。
【0067】こうして微小距離の送りと固定型12の回
転とが連続的に繰り返されると、段階的に減少する比捻
れ角ψで長尺材11には捻れ変形が実現される。例えば
軸心方向に長尺材11を連続的に送りながら滑らかに固
定型12の回転角を変化させれば、前述のように、徐々
に減少する捻れ角で捻られた長尺製品51は得られるこ
とができる。
【0068】以上のように各断面65a〜65gごとに
固定型12の姿勢および可動型13の位置や姿勢が特定
されると、例えば図32に示されるように、隣接する断
面65a、65bの間では中立軸91が描き出される。
こうした中立軸91を描き出すにあたって、NC加工プ
ログラム作成ソフトウェアは、各断面65a、65bに
沿って重心線59すなわち重心55から中立軸91まで
の乖離量ηを算出する。乖離量ηの算出工程の詳細は後
述される。NC加工プログラム作成ソフトウェアは、算
出された乖離量ηと重心線59とに基づき中立軸91を
描き出す。
【0069】重心線59を基準に中立軸91を描き出す
にあたって、NC加工プログラム作成ソフトウェアは、
各断面65a、65b上で重心線59の方向ベクトルを
特定する。こうした方向ベクトルは断面65a、65b
に沿って乖離量ηで平行移動させられる。その結果、隣
接する2枚の断面65a、65b同士の間では始点ベク
トルおよび終点ベクトルが特定される。こうして特定さ
れた始点ベクトルおよび終点ベクトルの間に重心線59
と同一次数のパラメトリック曲線が描き出される。パラ
メトリック曲線は始点ベクトルから終点ベクトルに向か
って等変化率で曲率を変化させることができる。こうし
たパラメトリック曲線によって中立軸91は表現され
る。こうした処理が全ての断面65a〜65gの間で実
現されると、長尺材11の全長にわたって中立軸91は
描き出されることができる。
【0070】隣接する断面65a、65b同士の間では
長尺材11の送り量は中立軸91の長さS1によって表
現されることができる。こうした中立軸91の長さS1
を基準に長尺材11の送り位置Wは決定される。言い換
えれば、重心線59の長さを基準に特定された各断面6
5a〜65gの位置、すなわち、重心線59に沿って特
定される各ノット62の位置は中立軸91の長さS1に
基づき補正される。ここでは、重心線59の長さS2に
中立軸91の長さS1が代入された後、各断面65a〜
65gの位置が特定されればよい。
【0071】一般に、押し通し曲げ加工機10では、例
えば図33に示されるように、固定型12から送り出さ
れる長尺材11に可動型13で曲げ加工が施されると、
送りの反力によって長尺材11には軸方向圧縮力Pcが
加えられてしまう。こうした軸方向圧縮力Pcは長尺材
11の長さに変動を引き起こす。こうした長さの変動は
曲げの曲率1/Rすなわち曲率半径Rの大きさに応じて
変化する。その一方で、長尺材11の曲がり具合すなわ
ち曲率1/Rの大きさに拘わらず中立軸91では軸方向
に歪みは生じない。したがって、加工前と加工後とで中
立軸91の長さS1は一定に維持される。こうした中立
軸91を基準に特定される各送り位置Wに可動型13の
x座標値やy座標値、y軸回り回転角B、x軸回り回転
角A、固定型12のz軸回り回転角Cが関連付けられる
と、精度の高い長尺製品51が得られることができる。
【0072】しかも、前述のように、可動型13の幾何
的位置は、押し通し曲げ加工機10の固定型12を基準
に特定される機械座標系xyzすなわち局部座標系に従
って決定される。局部座標系は、長尺製品51の長手方
向に規定される送り位置が変化するたびに規定し直され
る。したがって、固定型12と可動型13との間に形成
される長尺製品51の曲げ変形が必ず盛り込まれた上で
可動型13のx座標値やy座標値は特定される。
【0073】ここで、乖離量ηの算出方法を詳述する。
この乖離量ηは、以下に示されるとおり、各断面65a
〜65gごとに特定される長尺製品51の曲率1/Rに
基づき導き出されることができる。いま、例えば図33
に示されるように、可動型13で長尺材11に対して曲
げ加工が施されると、可動型13には曲げ変形の反力で
曲率半径方向に荷重Fが作用する。このとき、固定型1
2側貫通孔24の出口では長尺材11内で軸方向に軸方
向圧縮力Pcが特定されると、
【0074】
【数1】
【0075】が得られる。ここで、軸方向圧縮力Pc
は、固定型12側貫通孔24の出口で特定される長尺材
11の公称応力分布σ(h)の総和に等しい。したがっ
て、例えば固定型12側貫通孔24の出口で曲率1/R
が特定されると、図34から明らかなように、
【0076】
【数2】
【0077】は得られる。ただし、変数hは、曲率半径
方向に測定される中立軸91からの距離を示し、係数A
は、長尺製品51すなわち長尺材11の断面積を示す。
このとき、曲げモーメントMは、
【0078】
【数3】
【0079】によって表現されることから、式[数1]
に式[数2]および式[数3]が代入されると、
【0080】
【数4】
【0081】は得られる。この式[数4]が整理される
と、
【0082】
【数5】
【0083】は導き出される。
【0084】前述の曲げモーメントMを特定するにあた
って、NC加工プログラム作成ソフトウェアは、長尺製
品51すなわち加工中の長尺材11の断面に沿って特定
される公称応力分布σ(h)および公称歪み分布e
(h)を利用する。図34から明らかなように、公称歪
み分布e(h)は、長尺製品51すなわち長尺材11の
断面上で曲率半径方向に沿って直線的に変化する。した
がって、公称歪み分布e(h)は、断面上で特定される
重心55および中立軸91の位置に基づき幾何学的に導
き出されることができる。すなわち、曲率半径Rで重心
線59が描かれ、断面上で曲率半径方向に沿って重心5
5から中立軸91までに乖離量ηが特定されると、公称
歪み分布e(h)は、
【0085】
【数6】
【0086】によって表現されることができる。
【0087】その一方で、こうして特定された公称歪み
分布e(h)によれば、公称応力分布σ(h)は、
【0088】
【数7】
【0089】によって表現されることができる。式[数
7]中、係数C3、C2、C1、C0は、例えば図35
に示されるように、引っ張り試験で描き出される応力歪
み曲線(S−S曲線)93に基づき決定される。すなわ
ち、式[数7]の多項式によれば、応力歪み曲線93に
対する近似曲線94は導き出される。式[数7]に示さ
れる多項式は、例えば、引っ張り試験で得られた応力歪
み曲線93の最大強度点95や降伏点96、両者の中間
点97といった3点によって簡単に特定されることがで
きる。
【0090】NC加工プログラム作成ソフトウェアは、
式[数5]に従って数値積分を実施する。この数値積分
の実施にあたって、NC加工プログラム作成ソフトウェ
アは、前述の式[数5]に、式[数6]および式[数
7]で表現される曲率1/Rと乖離量ηとの関係を代入
する。こうして式[数6]および式[数7]が式[数
5]に代入された上で数値積分および収束計算が実施さ
れると、特定された断面上で重心55から中立軸91ま
での乖離量ηは算出されることができる。
【0091】その他、中立軸91を特定するにあたっ
て、NC加工プログラム作成ソフトウェアは、例えば図
36に示されるように、実測データに基づき乖離量ηを
導き出してもよい。この実測データによれば、
【0092】
【数8】
【0093】に従って乖離量ηは算出されることができ
る。ここで、係数αは、各断面で曲率半径方向に測定さ
れる長尺材11の高さH(=h2−h1)に対する乖離
量ηの比率すなわち移動率を表す。長尺材11の高さH
に移動率αが掛け合わせられると、中立軸91の乖離量
ηは算出される。移動率αを特定するにあたっては、実
測データに基づき算出される比例係数K1が用いられれ
ばよい。
【0094】比例係数K1を取得するにあたっては、様
々な断面形状や材質、大きさで特定される長尺材11が
実際に押し通し曲げ加工機10で加工されればよい。こ
のとき、加工中の可動型13の傾斜角φや変形後の長尺
材11の長さは実測される。こうして実測された可動型
13の傾斜角φに対して中立軸91の移動率αがプロッ
トされると、例えば図36に示される実測データは得ら
れることができる。ここでは、2種類のアルミニウム材
(JIS6063−T1およびJIS6063−T5)
に対して傾斜角φは実測された。実測にあたって、各ア
ルミニウム材ごとに断面形状や大きさは変更された。し
かも、固定型12および可動型13の間で4通りのアプ
ローチ距離L=50mm、60mm、70mm、90m
mが設定された。この実測データによれば、長尺材11
の断面形状や材料特性の違いに拘わらず、乖離量ηを算
出するにあたって同一の係数K1が用いられることがで
きることが明らかとされる。
【0095】さらに、NC加工プログラム作成ソフトウ
ェアは、様々な要因を考慮して前述の幾何的位置に修正
を加え、設計どおりに精度の高い長尺製品51を生み出
す可動型13の実加工位置を導き出す。こうした実加工
位置を導き出すにあたって、NC加工プログラム作成ソ
フトウェアは、例えば図37に示されるように、長尺材
11の弾性曲げ復元力すなわちスプリングバックに起因
する弾塑性曲げ変形量を特定する。
【0096】図37から明らかなように、こうした弾塑
性曲げ変形量を特定するにあたって、NC加工プログラ
ム作成ソフトウェアは、まず、形状データで特定される
加工後の長尺製品51の製品曲率1/Rbを取得する。
ここで、Rbは曲率半径を示す。この製品曲率1/Rb
は、前述のように機械座標系xyz上で特定された可動
型13の幾何的位置に基づき算出されればよい。すなわ
ち、図37で示される座標系は、機械座標系xyzの座
標原点と可動型13の幾何的位置とを含む1平面に沿っ
て規定される。ここでは、製品曲率1/Rbは、固定型
12側貫通孔24の出口と可動型13との間に測定され
る平均曲率によって代表される。
【0097】続いて、NC加工プログラム作成ソフトウ
ェアは、製品曲率1/Rbに基づき長尺材11に加えら
れる曲げモーメントを算出する。曲げモーメントには、
固定型12側貫通孔24の出口と可動型13との間で特
定される曲げモーメント分布が用いられればよい。ここ
では、こうした曲げモーメントに、固定型12側貫通孔
24の出口から可動型13までの平均曲げモーメントが
用いられる。こういった平均曲げモーメントには、例え
ば図37から明らかなように、固定型12側貫通孔24
の出口で算出される最大曲げモーメントMの2分の1の
値が用いられればよい。最大曲げモーメントMは前述の
式[数3]に基づき導き出されることができる。その
際、前述のように算出された乖離量ηや式[数6]およ
び式[数7]などが参照されればよい。
【0098】算出された最大曲げモーメントMに基づ
き、NC加工プログラム作成ソフトウェアは弾塑性曲げ
変形量を算出する。弾塑性曲げ変形量は、例えば次式に
従って算出されることができる。
【0099】
【数9】
【0100】この式[数9]によれば、弾塑性曲げ変形
量は、形状データで特定される加工後の長尺製品51の
製品曲率1/Rbを実現する際に必要とされる加工中の
実曲率1/Rcすなわち実曲率半径Rcによって表現さ
れる。ここで、係数Eは長尺材11のヤング率(縦弾性
係数)を示し、係数Iは長尺材11の断面二次モーメン
トを示す。
【0101】こういったヤング率Eや断面二次モーメン
トIは操作者の入力操作に基づき予めNC加工プログラ
ム作成ソフトウェアに取り込まれていればよい。このと
き、断面二次モーメントIは、前述のように長尺材11
の断面形状に重ね合わせられた機械座標系xyzを基準
に算出されてもよい。指定された機械座標系xyzに従
ってx軸回りの断面二次モーメントIxやy軸回りの断
面二次モーメントIy、断面相乗モーメントJxyが算
出されると、図15から明らかなように、次式に従っ
て、曲げ方向を規定する従法線ベクトルb回りで断面二
次モーメントIbは算出されることができる。
【0102】
【数10】
【0103】ただし、θb-x は、従法線ベクトルbと機
械座標系xyzのx座標軸との間で反時計回りに特定さ
れる角度を示す。ここで、断面二次モーメントIx、I
yおよび断面相乗モーメントJxyは、
【0104】
【数11】
【0105】によって算出されることができる。こうし
て算出される断面二次モーメントIbによれば、長尺材
11の各断面ごとに曲げ方向に応じて適切な断面二次モ
ーメントIは特定されることができる。
【0106】実曲率1/Rcが特定されると、NC加工
プログラム作成ソフトウェアは、実曲率1/Rcで描き
直される重心線101に基づき可動型13の実加工位置
102を特定する。この実加工位置102は、機械座標
系xyzに従ってx座標値やy座標値で表現されてもよ
く、重心線59に基づく幾何的位置103との差分値に
よって表現されてもよい。
【0107】一般に、アルミニウム材を始めとする長尺
材11は弾性変形を経て塑性変形に至る。こういった長
尺材11が用いられる場合には、可動型13から曲げ変
形が加えられても、長尺材11が可動型13から解放さ
れると同時に弾性復元力いわゆるスプリングバックに応
じて加工後の長尺製品51に形状誤差が生じてしまう。
前述のように導き出された弾塑性曲げ変形量に応じて可
動型13の実加工位置が特定されれば、そういった弾性
復元力いわゆるスプリングバックに起因する長尺製品5
1の形状誤差は十分に解消されることができる。特に、
そういった弾塑性曲げ変形量は曲げモーメントMに基づ
き幾何学的に算出されることから、実測データの収集と
いった手間をできる限り省くことが可能となる。
【0108】以上のような弾塑性曲げ変形量に加えて、
NC加工プログラム作成ソフトウェアは、例えば図38
に示されるように、固定型12側貫通孔24の出口で長
尺材11の出口回り折れ角量βを特定してもよい。こう
いった出口回り折れ角量βは、貫通孔24の出口で生じ
る弾性折れ変形や塑性折れ変形といった剪断変形や断面
変形すなわち窪み104によって引き起こされる。出口
回り折れ角量βが特定されると、NC加工プログラム作
成ソフトウェアは、機械座標系xyzに従って貫通孔2
4の出口回りで重心線59を回転させる。重心線59
は、機械座標系xyzの座標原点と可動型13の幾何的
位置とを含む1平面に沿って出口回り折れ角量βで回転
すればよい。NC加工プログラム作成ソフトウェアは、
回転した重心線59と移動平面HVとの交点に基づき可
動型13の実加工位置105を特定する。この実加工位
置105は、機械座標系xyzに従ってx座標値やy座
標値で表現されてもよく、重心線59に基づく幾何的位
置との差分値によって表現されてもよい。
【0109】特に、中空の長尺材11では、固定型12
および可動型13の間で曲げ変形が引き起こされる際
に、固定型12側貫通孔24の出口で長尺材11に大き
な剪断力が作用する。こういった剪断力は固定型12側
貫通孔24の出口で弾性折れ変形や塑性折れ変形といっ
た剪断変形を引き起こす。しかも、固定型12側貫通孔
24の出口では長尺材11に断面変形すなわち窪み10
4が生じてしまう。こうした窪み104によれば、固定
型12側貫通孔24の出口で折れ変形は引き起こされ
る。これら剪断変形や断面変形に起因する折れ変形が引
き起こされる結果、固定型12および可動型13の間で
は形状データに基づく幾何的な位置関係どおりに十分な
曲げ変形は引き起こされることはできない。長尺材11
が可動型13から解放されると同時に折れ変形に応じて
加工後の長尺製品51に形状誤差が生じてしまう。前述
のように導き出された出口回り折れ角量βに応じて可動
型13の実加工位置105が特定されれば、そういった
出口回りの折れ角に起因する長尺製品51の形状誤差は
十分に解消されることができる。
【0110】ここで、出口回り折れ角量βは、例えば図
39に示されるように、実測データに基づき特定されれ
ばよい。この実測データによれば、
【0111】
【数12】
【0112】に従って出口回り折れ角量β[゜]は算出
されることができる。ここで、係数K2は、実測データ
に基づき算出される比例係数を示す。
【0113】こうした実測データを取得するにあたって
は、様々な断面形状や材質、大きさで特定される長尺材
11が実際に押し通し曲げ加工機10で加工されればよ
い。このとき、固定型12および可動型13の間で長尺
材11の形状は実測される。こうした実測によって曲げ
変形の曲率は明らかとされる。例えば図38から明らか
なように、曲げ変形の曲率半径Rdを導き出すにあたっ
て、少なくとも3点の計測点106が選択されればよ
い。
【0114】こうして固定型12および可動型13の間
で長尺材11の曲げ変形を表現する曲線107が特定さ
れると、固定型12側貫通孔24の出口で曲線107に
対する接線108が描き出される。この接線108と機
械座標系xyzのz座標軸との角度によって出口回り折
れ角量βは特定されることができる。こうして実測され
た出口回り折れ角量βが係数M/EIに対してプロット
されると、図39に示される実測データは得られること
ができる。ここでは、3種類のアルミニウム材(JIS
6063−O、JIS6063−T1およびJIS60
63−T5)に対して出口回り折れ角量βが実測され
た。実測にあたって、固定型12および可動型13の間
で3通りのアプローチ距離L=60mm、90mm、1
33mmが設定された。この実測データによれば、長尺
材11の断面形状や材料特性の違いに拘わらず、出口回
り折れ角量βを算出するにあたって同一の係数K2が用
いられることができることが明らかとされる。
【0115】同様に、NC加工プログラム作成ソフトウ
ェアは、例えば図40に示されるように、固定型12側
貫通孔24の出口で長尺材11の断面変形すなわち窪み
104に起因する断面変形量d1を同時に特定してもよ
い。特定された断面変形量d1は、曲率半径方向すなわ
ち曲げ方向に沿って前述の幾何的位置に加えられればよ
い。こうして幾何的位置に断面変形量d1が加えられる
と、可動型13の実加工位置は特定されることができ
る。この実加工位置は、前述と同様に、機械座標系xy
zに従ってx座標値やy座標値で表現されてもよく、重
心線59に基づく幾何的位置との差分値によって表現さ
れてもよい。
【0116】特に、中空の長尺材11では、固定型12
および可動型13の間で曲げ変形が引き起こされる際
に、固定型12側貫通孔24の出口で断面変形が生じて
しまう。こうした断面変形には、前述の窪み104のほ
か、曲率半径方向に沿った断面の潰れなどが含まれる。
こうした断面変形が引き起こされている間に可動型13
が移動しても、長尺材11には十分な塑性曲げ変形は生
じることはない。したがって、固定型12および可動型
13の間では形状データに基づく幾何的な位置関係どお
りに十分な曲げ変形は引き起こされることはできず、加
工後の長尺製品51に形状誤差が生じてしまう。前述の
ように導き出された断面変形量d1に応じて可動型13
の実加工位置が特定されれば、そういった断面変形に起
因する長尺製品51の形状誤差は十分に解消されること
ができる。
【0117】ここで、断面変形量d1は、例えば図41
に示されるように、実測データに基づき特定されればよ
い。この実測データによれば、
【0118】
【数13】
【0119】に従って断面変形量d1[mm]は算出さ
れることができる。ここで、係数K3は、実測データに
基づき算出される比例係数を示す。
【0120】こうした実測データを取得するにあたって
は、様々な断面形状や材質、大きさで特定される長尺材
11が実際に押し通し曲げ加工機10で加工されればよ
い。このとき、固定型12側貫通孔24の出口で長尺材
11の断面形状は実測される。こうして実測された断面
変形量d1が荷重Fに対してプロットされると、図41
に示される実測データは得られることができる。ここで
は、2種類のアルミニウム材(JIS6063−T1お
よびJIS6063−T5)に対して断面変形量d1は
実測された。実測にあたって、固定型12および可動型
13の間で3通りのアプローチ距離L=60mm、90
mm、133mmが設定された。この実測データによれ
ば、長尺材11の断面形状や材料特性の違いに拘わら
ず、断面変形量d1を算出するにあたって同一の係数K
3が用いられることができることが明らかとされる。
【0121】さらに、NC加工プログラム作成ソフトウ
ェアは、例えば図42に示されるように、固定型12お
よび可動型13に対する長尺材11のクリアランス量d
2すなわちガタに起因するクリアランス量を特定しても
よい。特定されたクリアランス量d2は、曲率半径方向
すなわち曲げ方向に沿って前述の幾何的位置に加えられ
ればよい。こうして幾何的位置にクリアランス量d2が
加えられると、可動型13の実加工位置は特定されるこ
とができる。この実加工位置は、前述と同様に、機械座
標系xyzに従ってx座標値やy座標値で表現されても
よく、重心線59に基づく幾何的位置との差分値によっ
て表現されてもよい。
【0122】クリアランス量d2[mm]は実測値に基
づき特定されればよい。実測値を取得するにあたって
は、様々な断面形状や材質、大きさで特定される長尺材
11が実際に押し通し曲げ加工機10で加工されればよ
い。このとき、可動型13が移動し始めてから、長尺材
11が固定型12側貫通孔24に接触するまでに可動型
13の移動距離は測定される。こうして測定された移動
距離によってクリアランス量d2は特定されることがで
きる。例えばクリアランス量d2は長尺材11の寸法公
差の大きさに応じて分類されることが望ましい。すなわ
ち、クリアランス量d2の実測に先立って長尺材11の
外形寸法は実測される。実測された外形寸法ごとに長尺
材11のクリアランス量d2は実測される。
【0123】一般に、長尺材11の寸法精度には所定範
囲の公差すなわちばらつきが許容される。こういった公
差に拘わらず固定型12や可動型13の貫通孔24、2
8に対して長尺材11を確実に通過させるには、長尺材
11の設計寸法と貫通孔24、28の寸法との間にクリ
アランスすなわちガタを持たせる必要がある。たとえ公
差が存在しなくても、固定型12や可動型13の貫通孔
24、28に対して長尺材11をスムーズに通過させる
には、長尺材11の外形と貫通孔24、28の内面との
間にクリアランスすなわちガタを持たせる必要がある。
こうしたクリアランスが解消されて固定型12や可動型
13が完全に長尺材11に接触するまで、可動型13が
移動しても長尺材11には実質的に曲げ変形は生じるこ
とはない。したがって、固定型12および可動型13の
間では形状データに基づく幾何的な位置関係どおりに十
分な曲げ変形は引き起こされることはできず、加工後の
長尺製品51に形状誤差が生じてしまう。前述のように
導き出されたクリアランス量d2に応じて可動型13の
実加工位置が特定されれば、そういったクリアランスす
なわちガタに起因する長尺製品51の形状誤差は十分に
解消されることができる。ただし、実加工位置を特定す
るにあたって使用されるクリアランス量d2は、固定型
12および可動型13で生じる2つのクリアランス量の
総和を表現する必要がある。
【0124】さらにまた、NC加工プログラム作成ソフ
トウェアは、様々な要因を考慮して前述の軸心回り相対
回転角に修正を加え、設計どおりに精度よく捻られた長
尺製品51を生み出す固定型12の軸心回り実回転角を
導き出す。こうした軸心回り実回転角を導き出すにあた
って、NC加工プログラム作成ソフトウェアは、長尺材
11の弾性捻れ復元力すなわちスプリングバックに起因
する弾塑性捻れ変形量を特定する。
【0125】弾塑性捻れ変形量を特定するにあたって、
NC加工プログラム作成ソフトウェアは、まず、形状デ
ータで特定される加工後の長尺製品51の軸心回り捻れ
角△θを取得する。この軸心回り捻れ角△θには、前述
のように各機械座標系xyzごとに特定された固定型1
2の軸心回り相対回転角が用いられればよい。続いてN
C加工プログラム作成ソフトウェアは、軸心回り捻れ角
△θに基づき長尺材11に加えられる捻りモーメント
(捻りトルク)Tを算出する。捻りモーメントTの算出
方法の詳細は後述される。算出された捻りモーメントT
に基づき、NC加工プログラム作成ソフトウェアは、長
尺材11に引き起こされる弾塑性捻れ変形量△ψを算出
する。弾塑性捻れ変形量△ψは、例えば次式に従って算
出されることができる。
【0126】
【数14】
【0127】ここで、係数Gは長尺材11の剪断弾性係
数を示し、係数Ipは断面二次極モーメントを示す。こ
うして弾塑性捻れ変形量△ψが特定されると、NC加工
プログラム作成ソフトウェアは、前述の軸心回り相対回
転角に弾塑性捻れ変形量△ψを足し合わせる。その結
果、固定型12および可動型13の間で確立される軸心
回り実回転角すなわちz軸回り回転角Cは導き出され
る。
【0128】前述したように、アルミニウム材を始めと
する長尺材11は弾性変形を経て塑性変形に至る。こう
いった長尺材11が用いられる場合には、固定型12か
ら捻り変形が加えられても、長尺材11が固定型12の
拘束から解放されると同時に弾性復元力いわゆるスプリ
ングバックに応じて加工後の長尺製品51に形状誤差が
生じてしまう。前述のように導き出された弾塑性捻れ変
形量△ψに応じて固定型12および可動型13の間で軸
心回り実回転角が特定されれば、そういった弾性復元力
いわゆるスプリングバックに起因する長尺製品51の形
状誤差は十分に解消されることができる。特に、そうい
った弾塑性捻れ変形量△ψは捻りモーメントTに基づき
幾何学的に算出されることから、実測データの収集とい
った手間をできる限り省くことが可能となる。
【0129】前述の捻りモーメントTを算出するにあた
って、NC加工プログラム作成ソフトウェアは、例えば
長尺製品51すなわち加工中の長尺材11の断面に沿っ
て剪断歪み分布γ(ρ)を特定する。ここで、剪断歪み
分布γ(ρ)は、図43から明らかなように、長尺製品
51すなわち長尺材11の断面上で捻れ中心すなわち固
定型12の中心軸22からの距離に応じて直線的に変化
することから、断面上で特定される重心55からの距離
ρに基づき次式に従って幾何学的に導き出されることが
できる。
【0130】
【数15】
【0131】こうして剪断歪み分布γ(ρ)が算出され
ると、NC加工プログラム作成ソフトウェアは、
【0132】
【数16】
【0133】に従って剪断応力分布τ(ρ)を算出す
る。ここで、係数B3、B2、B1、B0は前述の応力
歪み曲線(式[数7])に基づき決定されればよい。す
なわち、周知のとおり、モール円に基づけば、歪みe
は、
【0134】
【数17】
【0135】によって表現されることができる。ここ
で、
【0136】
【数18】
【0137】といった置き換えを実施し、前述の式[数
7]に式[数17]が代入されると、式[数16]の係
数B3、B2、B1、B0は得られることができる。
【0138】こうして算出された剪断応力分布τ(ρ)
によれば、任意の断面の捻りモーメントTは、
【0139】
【数19】
【0140】によって表現されることができる。ただ
し、係数Aは長尺製品51すなわち長尺材11の断面積
を示す。離散化された式[数19]に基づき数値計算が
繰り返されると、捻りモーメントTは導き出されること
ができる。
【0141】前述の弾塑性捻れ変形量に加えて、NC加
工プログラム作成ソフトウェアは、例えば図44に示さ
れるように、固定型12側貫通孔24の出口や可動型1
3側貫通孔28の入り口で長尺材11に引き起こされる
断面変形に起因する凹み110の断面変形量d3を同時
に特定してもよい。特定された断面変形量d3に基づ
き、NC加工プログラム作成ソフトウェアは、そういっ
た断面変形に起因して引き起こされる長尺材11の捻れ
変化量△ωを特定する。この捻れ変化量△ωが特定され
ると、NC加工プログラム作成ソフトウェアは、前述の
軸心回り相対回転角に捻れ変化量△ωを足し合わせる。
その結果、固定型12および可動型13の間で確立され
る軸心回り実回転角すなわちz軸回り回転角Cは導き出
される。
【0142】特に、中空の長尺材11では、固定型12
および可動型13の間で捻れ変形が引き起こされる際
に、固定型12側貫通孔24の出口や可動型13側貫通
孔28の入り口では長尺材11の稜線で断面変形すなわ
ち凹み110が生じてしまう。こうした凹み110が引
き起こされている間に固定型12が中心軸22回りで回
転しても、長尺材11には十分な塑性捻れ変形は生じる
ことはない。したがって、固定型12および可動型13
の間では形状データに基づく幾何的な位置関係どおりに
十分な捻れ変形は引き起こされることはできず、加工後
の長尺製品51に形状誤差が生じてしまう。前述のよう
に導き出された捻れ変化量△ωに基づき固定型12およ
び可動型13の間で軸心回り実回転角が特定されれば、
そういった断面変形に起因する長尺製品51の形状誤差
は十分に解消されることができる。
【0143】ここで、捻れ変化量△ωは、例えば図45
に示されるように、実測データに基づき特定されればよ
い。この実測データによれば、
【0144】
【数20】
【0145】に従って捻れ変化量△ω[゜]は算出され
ることができる。ここで、係数Pは、断面に沿って長尺
材11の稜線に加わる荷重を示し、係数K4は、実測デ
ータに基づき算出される比例係数を示す。このとき、荷
重Pは、例えば、
【0146】
【数21】
【0147】に従って近似されればよい。ここで、係数
Nは、断面上で特定される稜線の本数を示す。
【0148】こうした実測データを取得するにあたって
は、様々な断面形状や材質、大きさで特定される長尺材
11に実際に押し通し曲げ加工機10で捻れ変形が加え
られればよい。このとき、固定型12側貫通孔24の出
口で長尺材11の凹み110は実測される。こうして実
測された凹み110の大きさすなわち断面変形量d3が
(荷重P/0.2%耐力σ0.2 )に対してプロットされ
ると、図45に示される実測データは得られることがで
きる。ここでは、3種類のアルミニウム材(JIS60
63−O、JIS6063−T1およびJIS6063
−T5)に対して断面変形量d3が実測された。この実
測データによれば、断面変形量d3と(荷重P/0.2
%耐力σ0.2 )との間に概ね比例関係が認められる。凹
み110といった断面変形に起因する微小な回転では、
こうした比例関係は捻れ変化量△ωと(荷重P/0.2
%耐力σ0.2 )との間に適用されても差し支えない。そ
の結果、前述のように係数K4を用いて捻れ変化量△ω
は算出されることができることとなる。しかも、長尺材
11の材質や材料特性の違いに拘わらず、捻れ変化量△
ωを算出するにあたって同一の係数K4が用いられるこ
とができることが明らかとされる。ただし、係数K4は
長尺材11の断面形状に応じて変化する。
【0149】さらに、NC加工プログラム作成ソフトウ
ェアは、例えば図46に示されるように、固定型12お
よび可動型13に対する長尺材11のクリアランス量d
4すなわちガタに起因するクリアランス量を同時に特定
してもよい。特定されたクリアランス量d4は前述の軸
心回り相対回転角に足し合わせられればよい。その結
果、固定型12および可動型13の間で確立される軸心
回り実回転角すなわちz軸回り回転角Cは導き出され
る。
【0150】前述のように、長尺材11の寸法精度には
所定範囲の公差すなわちばらつきが許容される。こうい
った公差に拘わらず固定型12や可動型13の貫通孔2
4、28に対して長尺材11を確実に通過させるには、
長尺材11の設計寸法と貫通孔24、28の寸法との間
にクリアランスすなわちガタを持たせる必要がある。た
とえ公差が存在しなくても、固定型12や可動型13の
貫通孔24、28に対して長尺材11をスムーズに通過
させるには、長尺材11の外形と貫通孔24、28の内
面との間にクリアランスすなわちガタを持たせる必要が
ある。こうしたクリアランスが解消されて固定型12や
可動型13が完全に長尺材11に接触するまで、固定型
12が中心軸22回りで回転しても長尺材11には実質
的に捻れ変形は生じることはない。したがって、固定型
12および可動型13の間では形状データに基づく幾何
的な位置関係どおりに十分な捻れ変形は引き起こされる
ことはできず、加工後の長尺製品51に形状誤差が生じ
てしまう。前述のように導き出されたクリアランス量d
4に基づき固定型12および可動型13の間で軸心回り
実回転角が特定されれば、そういったクリアランスすな
わちガタに起因する長尺製品51の形状誤差は十分に解
消されることができる。
【0151】ここで、クリアランス量d4は、例えば図
47に示されるように、実測データに基づき特定されれ
ばよい。この実測データを取得するにあたっては、長尺
材11に実際に押し通し曲げ加工機10で捻れ変形が加
えられればよい。このとき、z軸回り回転角Cは実測さ
れる。実測されたz軸回り回転角Cに対して捻りモーメ
ントTがプロットされると、図47に示される実測デー
タは得られることができる。得られた実測データに基づ
き捻りモーメントTの立ち上がりは描き出される。その
結果、捻りモーメントT=0で特定されるz軸回り回転
角Cによってガタすなわちクリアランス量d4は特定さ
れることができる。
【0152】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、熟練した
作業者の勘や経験則に頼らずに長尺材の軸心回りで相対
回転する1対の型を用いて設計どおりに精度よく長尺材
に捻り加工を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 押し通し曲げ加工機の全体構成を概略的に示
す側面図である。
【図2】 固定型の拡大正面図である。
【図3】 可動型の拡大正面図である。
【図4】 押し通し曲げ加工システムの全体構成を概略
的に示す模式図である。
【図5】 機械座標系の概念を示す固定型の斜視図であ
る。
【図6】 長尺製品の構造を概略的に示す斜視図であ
る。
【図7】 NC加工プログラムの一具体例を示す図であ
る。
【図8】 二次元データで表現される長尺製品の断面形
状を示す平面図である。
【図9】 三次元データで表現される長尺製品の稜線を
示す概念図である。
【図10】 2本のガイド線に基づき特定される重心線
すなわち軸心を示す概念図である。
【図11】 長尺製品の曲がり具合を表現する重心線す
なわち軸心を示す概念図である。
【図12】 重心線上で特定される制御点を示す概念図
である。
【図13】 長尺製品の各断面ごとに関連付けられる機
械座標系を示す透視図である。
【図14】 重心線に基づき特定される長尺製品の断面
を示す概念図である。
【図15】 断面に対する機械座標系の向きを設定する
にあたって用いられるGUI(グラフィカルユーザイン
ターフェース)を概略的に示す図である。
【図16】 重心線に基づき特定される可動型の位置を
示す概念図である。
【図17】 yz平面に投影された長尺製品からy座標
値を算出する工程を示す概念図である。
【図18】 xz平面に投影された長尺製品からx座標
値を算出する工程を示す概念図である。
【図19】 隣接する断面同士の間で長尺製品の捻れを
算出する原理を示す図である。
【図20】 長尺製品の軸心方向に沿って軸心回り比捻
れ角の変動を特定する分布曲線を示すグラフである。
【図21】 単純増加曲線および単純減少曲線で描き直
された分布曲線を示すグラフである。
【図22】 押し通し曲げ加工機の加工特性に応じて分
布曲線を描き直す原理を示すグラフである。
【図23】 描き出された分布曲線に基づき固定型のz
軸回り回転角を算出する原理を示すグラフである。
【図24】 固定型および可動型の間で捻られる長尺材
の捻れ角を示すグラフである。
【図25】 固定型および可動型の間で捻られる長尺材
の比捻れ角の分布を示すグラフである。
【図26】 軸心方向に微小距離D1で送られた後に長
尺材の比捻れ角の分布を示すグラフである。
【図27】 軸心方向に微小距離D2で再び送られた後
に長尺材の比捻れ角の分布を示すグラフである。
【図28】 固定型および可動型の間で捻られた後に軸
心方向に微小距離D1で送られた長尺材の捻れ角を示す
グラフである。
【図29】 固定型および可動型の間で捻られた後に軸
心方向に微小距離D1で送られた長尺材の比捻れ角の分
布を示すグラフである。
【図30】 微小距離D1で送られた後に固定型および
可動型の間で捻られた長尺材の比捻れ角の分布を示すグ
ラフである。
【図31】 再び微小距離D2で送られた後に固定型お
よび可動型の間で捻られた長尺材の比捻れ角の分布を示
すグラフである。
【図32】 隣接する断面の間で特定される重心軸およ
び中立軸を示す長尺製品の一部拡大側面図である。
【図33】 可動型に加えられる荷重と可動型の傾斜角
との関係を示す概念図である。
【図34】 長尺材の公称応力分布および公称歪み分布
を示す図である。
【図35】 応力歪み曲線の近似曲線を算出する工程を
示す概念図である。
【図36】 可動型の傾斜角と中立軸の移動率との関係
を示すグラフである。
【図37】 弾塑性曲げ変形量を算出する工程を示す概
念図である。
【図38】 剪断変形および断面変形に起因する出口回
り折れ角量の概念図である。
【図39】 出口回り折れ角量の実測データを示すグラ
フである。
【図40】 断面変形量の概念図である。
【図41】 断面変形量の実測データを示すグラフであ
る。
【図42】 クリアランスすなわちガタの概念図であ
る。
【図43】 長尺材の剪断応力分布および剪断歪み分布
を示す図である。
【図44】 断面変形に起因する捻れ変化量の概念図で
ある。
【図45】 断面変形量の実測データを示すグラフであ
る。
【図46】 クリアランスすなわちガタの概念図であ
る。
【図47】 クリアランス量の実測データを示すグラフ
である。
【符号の説明】
10 押し通し曲げ加工機、11 長尺材(形材)、1
2 第1型としての固定型、13 第2型としての可動
型、22 軸心としての中心軸、43 コンピュータ装
置、44 記録媒体としてのフロッピーディスク(F
D)、45 記録媒体としてのコンパクトディスク(C
D)、51 長尺製品、59 軸心としての重心線、d
3 断面変形量、d4 クリアランス量、△θ 軸心回
り捻れ角、△ψ 弾塑性捻れ変形量、△ω 捻れ変化
量。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G05B 19/4097 G05B 19/4097 Z (72)発明者 廻 秀夫 埼玉県狭山市新狭山1−10−1 ホンダエ ンジニアリング株式会社内 (72)発明者 影山 善浩 埼玉県狭山市新狭山1−10−1 ホンダエ ンジニアリング株式会社内 Fターム(参考) 4E063 AA08 BC15 FA05 JA10 LA20 MA30 5H269 AB01 BB03 EE25 NN16 RB11

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軸心回りで捻れる長尺製品の形状を表現
    する形状データに基づき、軸心回りで相対回転する第1
    および第2型の間で軸心回り相対回転角を算出する工程
    と、形状データで特定される長尺製品の軸心回り捻れ角
    に基づき、長尺材に加えられる捻りモーメントを算出す
    る工程と、算出された捻りモーメントに基づき、長尺材
    に引き起こされる弾塑性捻れ変形量を算出する工程と、
    算出された弾塑性捻れ変形量および軸心回り相対回転角
    に基づき、第1および第2型の間で軸心回り実回転角を
    算出する工程とを備えることを特徴とする捻り加工用制
    御データ作成方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の捻り加工用制御データ
    作成方法において、前記弾塑性捻れ変形量は、捻りモー
    メントT、剪断弾性係数Gおよび断面二次極モーメント
    Ipを用いて表現されることを特徴とする捻り加工用制
    御データ作成方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の捻り加工用制
    御データ作成方法において、前記捻りモーメントを算出
    するにあたって、前記長尺材の断面に沿って剪断歪み分
    布が特定されることを特徴とする捻り加工用制御データ
    作成方法。
  4. 【請求項4】 軸心回りで捻れる長尺製品の形状を表現
    する形状データに基づき、軸心回りで相対回転する第1
    および第2型の間で軸心回り相対回転角を算出する工程
    と、形状データで特定される長尺製品の軸心回り捻れ角
    に基づき、長尺材に加えられる捻りモーメントを算出す
    る工程と、算出された捻りモーメントに基づき、長尺材
    に引き起こされる弾塑性捻れ変形量を算出する工程と、
    算出された弾塑性捻れ変形量および軸心回り相対回転角
    に基づき、第1および第2型の間で軸心回り実回転角を
    算出する工程とをコンピュータに実現させるプログラム
    が記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
  5. 【請求項5】 軸心回りで捻れる長尺製品の形状を表現
    する形状データに基づき、軸心回りで相対回転する第1
    および第2型の間で軸心回り相対回転角を算出する工程
    と、少なくとも第1および第2型のいずれか一方の出口
    で長尺材の断面変形に基づき引き起こされる長尺材の捻
    れ変化量を取得する工程と、取得された捻れ変化量およ
    び軸心回り相対回転角に基づき、第1および第2型の間
    で軸心回り実回転角を算出する工程とを備えることを特
    徴とする捻り加工用制御データ作成方法。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の捻り加工用制御データ
    作成方法において、前記捻れ変化量は、前記長尺材の長
    手方向に延びる稜線の本数に基づき特定されることを特
    徴とする捻り加工用制御データ作成方法。
  7. 【請求項7】 軸心回りで捻れる長尺製品の形状を表現
    する形状データに基づき、軸心回りで相対回転する第1
    および第2型の間で軸心回り相対回転角を算出する工程
    と、少なくとも第1および第2型のいずれか一方の出口
    で長尺材の断面変形に基づき引き起こされる長尺材の捻
    れ変化量を取得する工程と、取得された捻れ変化量およ
    び軸心回り相対回転角に基づき、第1および第2型の間
    で軸心回り実回転角を算出する工程とをコンピュータに
    実現させるプログラムが記録されたコンピュータ読み取
    り可能な記録媒体。
  8. 【請求項8】 軸心回りで捻れる長尺製品の形状を表現
    する形状データに基づき、軸心回りで相対回転する第1
    および第2型の間で軸心回り相対回転角を算出する工程
    と、少なくとも第1および第2型のいずれか一方に対す
    る長尺材のクリアランス量を取得する工程と、取得され
    たクリアランス量および軸心回り相対回転角に基づき、
    第1および第2型の間で軸心回り実回転角を算出する工
    程とを備えることを特徴とする捻り加工用制御データ作
    成方法。
  9. 【請求項9】 軸心回りで捻れる長尺製品の形状を表現
    する形状データに基づき、軸心回りで相対回転する第1
    および第2型の間で軸心回り相対回転角を算出する工程
    と、少なくとも第1および第2型のいずれか一方に対す
    る長尺材のクリアランス量を取得する工程と、取得され
    たクリアランス量および軸心回り相対回転角に基づき、
    第1および第2型の間で軸心回り実回転角を算出する工
    程とをコンピュータに実現させるプログラムが記録され
    たコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006000921A (ja) * 2004-06-21 2006-01-05 Opton Co Ltd 曲げ加工装置
CN112711812A (zh) * 2020-12-29 2021-04-27 中国航空工业集团公司西安飞机设计研究所 一种矩形薄壁机身大开口结构扭转变形计算方法

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