JP2000271788A - 簡易片面サブマージアーク溶接用開先充填材およびそれを用いた溶接方法。 - Google Patents
簡易片面サブマージアーク溶接用開先充填材およびそれを用いた溶接方法。Info
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Abstract
おいて、溶接作業性、耐割れ性が良好で、かつ低温靭性
が良好な溶接部を得る開先充填材及びそれを用いた溶接
方法を提案する。 【解決手段】 簡易片面サブマージアーク溶接用開先充
填材であって、重量%で、C:0.07%以下、Si:
0.05%以下、Mn:0.6〜1.5%、P:0.0
15%以下、S:0.01%以下、Ni:2.4〜3.
4%、Al:0.03超〜0.4%、N:0.005%
以下を含有し、かつかさ比重が4〜6であることを特徴
とする簡易片面サブマージアーク溶接用開先充填材及び
その開先充填材と所定成分のボンドフラックスを開先内
に充填し所定成分の溶接ワイヤで溶接する簡易片面サブ
マージアーク溶接法。
Description
られるいわゆる簡易片面サブマージアーク溶接に関す
る。簡易片面サブマージアーク溶接は固形耐火性酸化物
を主成分とする裏当て材を使用する片面溶接であって、
本発明はこれに使用する開先充填材およびそれを用いた
溶接方法に係わる。さらに詳しくはLPG船のアッパー
デッキ等に用いられる低温用鋼を対象とする片面1層溶
接時に、強度および低温靭性に優れた溶接金属が得られ
る簡易片面サブマージアーク溶接に使用する開先充填材
およびそれを用いた低温用鋼の溶接方法に関するもので
ある。ここでいう低温用鋼とは造船に用いられるJIS
G3126で「低温圧力容器用炭素鋼鋼板」として規
定されるSLA325、SLA360鋼等やこれらと同
等の強度を持ち、シャルピー試験温度で−40〜−60
℃における靭性を満足する鋼材を総称したものである。
効率の優れた片面サブマージアーク溶接法が一般に用い
られているが、入熱量が大きいため溶接部の靭性が劣化
する傾向があった。従って、特に低温靭性の要求が厳し
いLPG船等の低温用鋼の溶接では、溶接部の低温靭性
を満足させるために、溶接入熱を9kJ/mm程度以下
規制しなければならず、また適用できる板厚は約16m
m以下であった。
記LPG船等で低温用厚鋼板を片面サブマージアーク溶
接する際の母材熱影響部の靭性向上がなされ、板厚25
mmまでの低温用厚鋼板を溶接することが可能となっ
た。これらの片面サブマージアーク溶接用低温用鋼とし
ては、例えばTMCP(Thermo Mechani
cal Control Process)技術によ
り、炭素当量の低減と共にTi脱酸又はAlとTiの複
合脱酸を利用した酸化物制御により母材熱影響部の低温
靭性を向上させたものが実用化されている。
継ぎ溶接に用いられる片面サブマージアーク溶接法とし
ては、フラックス銅バッキング片面サブマージアーク溶
接法と簡易片面サブマージアーク溶接法が用いられてい
る。前者は専用の装置を使用し、これの裏当て銅板上に
粒状裏フラックスを散布し、その上に被溶接鋼板を配置
した状態で、開先のルートに表フラックスを充填して溶
接用ワイヤを用いて溶接する方法である。また、後者
は、固形耐火性酸化物を主成分とした裏当材上にSiO
2が主成分のガラステープを4〜8枚程度配して、それ
を被溶接鋼板の開先裏面に当接した状態で、表フラック
スと開先のルートギャップが大きい場合には鋼粒の開先
充填材を充填して溶接用ワイヤを用いて溶接する方法で
ある。
用いられている開先充填材としては、例えば実公昭43
−332号公報及び特開昭60−46895号公報等で
提案されている。しかしながら、実公昭43−332号
公報の開先充填材は、軟鋼およびHT490には適用で
きても、−60℃の低温靭性が要求されるLPG船など
の低温用鋼の溶接には適用できないものである。また、
特開昭60−46895号公報には、ガラステープ系裏
当て材を用いた場合の裏ビードのスラグ剥離の向上を目
的としてPbやBiをを含有する低温用鋼の片面潜弧溶
接用開先充填剤が提案されている。しかしながら、裏当
材からの冷却が早い片面サブマージアーク溶接法では、
高温割れの発生にとってこれら低融点成分の含有は好ま
しくない。
881号公報にて、低温用鋼を片面サブマージアーク溶
接する際の開先充填材として、C、Si、Mn、Ni、
Al、N、Oを規定すると共に、粒子径を45μmから
180μmにした開先鋼充填材を提案した。しかしなが
ら、その後、検討を重ねた結果、片面サブマージアーク
溶接法の中で、フラックス銅バッキング片面サブマージ
アーク溶接法には適用できるが、これの方法に比べて裏
当材の保持力が低く、冷却速度が遅い簡易片面サブマー
ジアーク溶接法では、開先裏面の裏ビード形状の制御や
低温靭性の確保が困難であることが判った。
された装置を用いるフラックス銅バッキング片面サブマ
ージアーク溶接法に比べて、造船等の組み立て現場で容
易に実施が可能なため、この簡易片面サブマージアーク
溶接法を用いた低温用鋼の溶接法の開発が望まれてい
る。
技術の課題に鑑みて、低温用鋼の簡易片面サブマージア
ーク溶接において、低温靭性に優れた溶接金属と共に良
好な溶接作業性が得られる開先充填材とそれを用いた溶
接方法を提供することを目的とするものである。
を達成するため種々検討し、良好な裏ビード形状と低温
じん性が得られる開先充填材とその開先充填材を用いて
特定成分の溶接ワイヤおよびボンドフラックスを用いた
溶接方法を見出し、本発明を完成した。その発明の要旨
とするところは以下の通りである。
先充填材において、重量%で、C:0.07%以下、S
i:0.05%以下、Mn:0.6〜1.5%、Ni:
2.4〜3.4%、Al:0.002〜0.4%を含有
し、P:0.015%以下、S:0.01%以下、N:
0.005%以下とした鋼粒であって、かさ比重が4〜
6であることを特徴とする簡易片面サブマージアーク溶
接用開先充填材。 (2)鋼粒のAl含有量が0.03超〜0.4%である
ことを特徴とする(1)記載の簡易片面サブマージアー
ク溶接用開先充填材 (3)粒径が0.5〜2mmであることを特徴とする
(1)または(2)に記載の簡易片面サブマージアーク
溶接用開先充填材。
化物を主成分とする裏当て材を当接させて、1層溶接す
る簡易片面サブマージアーク溶接方法において、前記開
先内に(1)ないし(3)のいずれかに記載の開先充填
材を充填し、重量%で、SiO 2:10〜20%、Mg
O:20〜33%、Al2O3:13〜25%、TiO
2:5〜15%、CaF2:6〜12%、CaCO3:
5〜8%、B2O3:0.2〜0.5%を含有し、かつ
下式で定義されるBnが0.8〜1.5であるボンドフ
ラックスと、重量%で、C:0.01〜0.1%、S
i:0.05%以下、Mn:0.6〜1.6%、Ni:
2.4〜3.4%、Al:0.002〜0.5%を含有
し、P:0.015%以下、S:0.010%以下、
N:0.005%以下とし、かつワイヤ径が4.4〜
6.6mmである鋼製溶接ワイヤとを用いて、前記開先
のルートギャップが6mm以下の状態で溶接することを
特徴とする低温用鋼の簡易片面サブマージアーク溶接方
法。 Bn=(0.108[CaO]+0.068[MnO]
+0.10[MgO])/(0.105[SiO2]+
0.002[Al2O3])
3881号公報にて提案した低温用鋼の片面サブマージ
アーク溶接用開先充填材を基に簡易片面サブマージアー
ク溶接時の裏ビード形状と溶接金属の機械的特性をさら
詳細に調査検討した。その結果、簡易片面サブマージア
ーク溶接法とフラックス銅バッキング片面サブマージア
ーク溶接法とでは、裏当て方式の違いによって裏ビード
形成能および溶接金属の成分設計に大きな差が生じるこ
とが判った。
耐火性酸化物を含有する粉末を水ガラスで板状にしたも
のを用い、その上にSiO2が主成分のガラステープを
4〜8枚程度配し、それらを被溶接鋼板の開先裏面に当
接して溶接する。これに対し、フラックス銅バッキング
片面サブマージアーク溶接法では、裏当て銅板が固定さ
れた装置として配置され、その上に散布された粒状裏フ
ラックスを介して被溶接鋼板の溶接を行う。このため、
フラックス銅バッキング片面サブマージアーク溶接法で
は、比較的大きな電流で溶接しても、開先裏面が裏当て
銅板で保持されているため、裏フラックスの中で生成す
る裏ビードの高さは、銅板で規制される。これに対し
て、簡易片面サブマージアーク溶接は、前記の銅板に比
べて耐火性が低いガラステープと主に耐火性酸化物から
なる裏当材で開先裏面を保持するため、裏ビードは、ガ
ラステープと裏当材の中で生成し、裏ビードの保持力は
非常に小さく、溶接不良を防止するための裏ビードの高
さ制御が困難である。
用いられる主に耐火性酸化物からなる裏当材は、フラッ
クス銅バッキング片面サブマージアーク溶接法で用いら
れる裏当て銅板に比べ、溶接金属の冷却効果が小さいた
め溶接金属の強度や靭性の劣化が大きい。以上の発明者
らの実験結果から、簡易片面サブマージアーク溶接を用
いて低温用鋼を溶接する場合は、フラックス銅バッキン
グ片面サブマージアーク溶接法を用いた溶接に比べて、
より厳密な溶接条件の管理が必要であることが判った。
ジアーク溶接を用いて低温用鋼を溶接する際の溶接条件
を詳細に調査検討した。その結果、フラックス銅バッキ
ング片面サブマージアーク溶接法に比べ、裏ビードの高
さ制御が難しく、かつ溶接金属の冷却能が小さい簡易片
面サブマージアーク溶接においては、下記の対策をとる
必要があることがわかった。すなわち開先充填材中の成
分においてNiのマトリックスの固溶による靭性を確保
した上で、Alを増加することにより溶接金属中の酸化
物制御及び酸素量調整を行うことでフェライト生成およ
び組織の微細化を図り、強度を過度に上昇させずに低温
靭性の向上を図ると共に、開先充填材のかさ比重を規定
することにより溶接不良の問題がない良好な裏ビード形
状が得られることが判った。本発明は、上記の充填材と
所定成分のボンドフラックスを開先内に充填し、所定成
分の溶接ワイヤによって低温用鋼を溶接することによ
り、−40〜−60℃において良好な靭性が確保できる
溶接金属が得られ、かつ裏ビード形状などの溶接作業性
の優れた簡易片面サブマージアーク溶接が可能である。
発明の開先充填材は、その基本成分として、低C系で、
NiとAlを所定量含有し、さらにSi、Mn、Nを規
定するものであり、これにより低温で良好な靭性を得る
ことができる。また、Niが高いので耐高温割れ性の点
からP、Sを制限した。さらに、開先内に充填して溶接
したときに良好な裏ビードが得られように開先充填材の
かさ比重を特定した。また、本発明では、前記開先充填
材を用いて、低温用鋼を簡易片面サブマージアーク溶接
する際に、溶接金属の良好な低温靭性と良好な溶接作業
性を得るために、前記開先充填材の他に、同様な理由で
ワイヤの成分組成を規制すると共に、ボンドフラックス
の塩基度:Bnを規定するものである。
いてその限定理由を説明する。Cは0.07%以下であ
ることが必要である。Cは良好な靭性を得るためには低
く設定する必要がある。溶接金属で良好な低温靭性を得
るためには溶接金属のC量は0.1%以下程度に低くす
る必要があり、鋼板は0.12%以下であるため母材希
釈を考慮して、開先充填材のC量は、0.07%以下と
した。
ある。Siは脱酸元素として有用であるが、0.05%
を越えると溶接金属の靭性が劣化するするため、その上
限を0.05%とした。
である。Mnは溶接金属の焼き入れ性を確保し、粒内フ
ェライトの変態核を生成する上で必要である。このよう
なMnの効果は、0.6%以上で得られるが、1.5%
を越えると溶接金属の焼き入れ性が過大となり靭性が劣
化する。
である。Niは溶接金属のマトリックスに固溶してフェ
ライトそのものを高靭性化する。このようなNiの効果
は、本溶接金属では2.4%以上で得られる。一方、
3.4%を越えるとPおよびSが粒界に析出しやすく、
高温割れが生じやすくなるため、その上限を3.4%と
した。
必要である。Alは溶接金属の酸素量を低くして変態温
度を低下させるとともに、その酸化物は、靭性を改善す
るアシキュラフェライトの変態核として作用する。この
ようなAlの効果は、0.002%以上で得られるが、
0.4%を越えるとベイナイトが生成し溶接金属の強度
が過大となり靭性が劣化する。上記の効果をより高める
ためには、Alの添加量の下限を0.03%超とするこ
とが好ましい。
であることが必要である。本発明では、溶接金属の靭性
向上のためにNiを多量に含有するために、PおよびS
は粒界に析出して靭性が劣化しやすいので、それぞれ
0.015%以下、0.01%以下に制限する。
ある。Nは靭性を劣化させる元素であり、溶接金属の靭
性が劣化するので上限を0.005%とした。
定理由を説明する。上記のように成分組成を限定して
も、良好な溶接ビードと必要溶着金属量を得るためには
かさ比重は4〜6に規定することが必要である。図1に
は、本発明の開先充填材のかさ比重と裏ビード高さの関
係を示す。図に示すようにかさ比重が小さいと裏ビード
が出易く、大きくなるに従って出方が少なくなる傾向に
あり、開先への充填厚が表面からの深さ4mm以下の範
囲では、かさ比重が4未満で裏ビードが過大となり、そ
のため溶着金属量が不足するが、かさ比重が6を超える
と裏ビードが出難く過小となり、溶着金属量が過多とな
り、裏ビード形状不良及び溶接不良の問題が生ずる。
めにかさ比重を上記範囲に規制することを要件とする
が、充填材の粒径が小さいと溶接時に溶接金属で発生す
るガスの抜けが悪化し、大きすぎると溶け込み難くなる
ため、さらに、充填材の粒径を0.5〜2mmに規定す
ることが好ましい。
法の限定理由について説明する。本発明が対象とする低
温用鋼は、主に造船分野でLPG船用等に用いられるも
のであって、JIS G3126で規定されるもの、ま
たはこれに準ずるものであり、その組成としては重量%
でC:0.05〜0.12%、Si:0.05〜0.3
%、Al:0.002〜0.045%、Ti:0.00
5〜0.02%、N:0.005%以下を含有し、残部
が鉄及び不可避不純物からなる鋼である。本発明では、
上記の成分組成の鋼板をその開先裏面に耐火性酸化物系
裏当て材を当接させて1層溶接する、いわゆる簡易片面
サブマージアーク溶接方法を用いることを前提とする。
ク溶接方法において、上記開先充填材を用い、さらに溶
接ワイヤおよびフラックスを規定することを要件とする
ものであり、その限定理由を以下に説明する。まず、溶
接ワイヤの成分組成の限定理由について説明する。
である。Cは良好な靭性を得るためには低く設定する必
要がある。溶接金属で良好な低温靭性を得るためには溶
接金属のC量は0.1%以下に低くする必要があり、
0.1%以下とした。しかしながら、0.01%未満で
は脱酸不足となり、靭性が劣化する。
ある。Siは脱酸元素として有用であるが、本溶接金属
では0.05%を越えると靭性が劣化するため、その上
限を0.05%とした。
である。Mnは溶接金属の焼き入れ性を確保し、粒内フ
ェライトの変態核を生成する上で必要である。このよう
なMnの効果は、0.6%以上で得られるが、1.6%
を越えると溶接金属の焼き入れ性が過大となり靭性が劣
化する。
である。Niは溶接金属のマトリックスに固溶してフェ
ライトそのものを高靭性化する。このようなNiの効果
は、本溶接金属では2.4%以上で得られる。一方、
3.4%を越えるとPおよびSが粒界に析出しやすく、
高温割れが生じやすくなる。
必要である。Alは溶接金属の酸素量を低くするととも
に、その酸化物は、靭性を改善するアシキュラフェライ
トの変態核として作用する。このようなAlの効果は、
本溶接金属では0.002%以上で得られるが、0.5
%を越えるとベイナイトが生成し強度が過大となりじん
性が劣化する。
であることが必要である。本発明では、溶接金属の靭性
向上のためにNiを多量に含有するために、PおよびS
は粒界に析出して靭性が劣化しやすいので、それぞれ
0.015%以下、0.010以下に制限する。
である。Nは靭性を劣化させる元素であり、他の靭性対
策を施してもじん性が劣化するので上限を0.0050
%とした。
であることが必要である。被溶接鋼板の板厚が小さい場
合は、入熱が小さいため、用いる溶接ワイヤ径は小さい
方が有利であり、板厚が大きい場合は、太径ワイヤの方
が有利であり、それぞれ被溶接鋼板の板厚によって使い
分けるが、溶接ワイヤ径が4.4mm未満であると裏ビ
ードが過大で溶着量が不足し、6.6mmを越えると裏
ビードが出にくくなり、電流を上げると溶着量が過多と
なるため、その範囲を4.4〜6.6mmに規定する。
素制御による靭性向上のため、フラックスとしてはボン
ドフラックスを用いる。サブマージアーク溶接用として
一般的に用いられる溶融フラックスは酸化物を主成分と
するため、溶接金属の脱酸は溶接ワイヤにより行う必要
があるが、本発明の溶接ワイヤは、靭性向上のためにC
量を低く制限するため脱酸不足となり、低温での靭性向
上は望めない。これに対して、ボンドフラックスはフラ
ックス中にCO2を含有し、フラックスによって溶融金
属にCが供給されるので脱酸が良好になる。
し、さらに溶接金属の酸素制御の点から、フラックスの
下記(1)式で定義される塩基度Bnを0.8〜1.5
にする。すなわち、Bnが0.8未満では溶接金属中の
酸素量が高くなり良好な靭性が得られない。一方、Bn
が1.5を越えると酸素が低くなり過ぎかえって靭性が
劣化する。 Bn=(0.108[CaO]+0.068[MnO]+0.10[MgO]) /(0.105[SiO2]+0.002[Al2O3]) ・・・・・・(1)
説明する。SiO2 は10〜20%であることが必要
である。SiO2は大入熱溶接において良好な溶接ビー
ドを形成するためにもっとも重要な成分であるが、過多
になると靭性を劣化させる。すなわち、10%未満では
表ビードの揃いが悪く不良となり、20%を越えると良
好な靭性が得られない。
ある。MgOは大入熱溶接における作業性確保のために
有用な成分である。20%未満では表ビードの表面が乱
れ不良となる。一方、33%を越えると、表ビード表面
に断続的に突起状ビードが生じる。
要である。Al2O3表ビードのスラグ剥離性を確保す
るために有用な成分である。13%未満では表ビードの
剥離性が劣化し、25%を越えると凸ビードとなる。
ある。TiO2は表ビードの表面の平滑性を得るのに有
用な成分である。しかも、靭性向上にも効果がある。こ
のような効果は5%以上の添加で得られるが、15%を
越えると表ビード趾端部の立ち上がり角度が大きくな
る。
ある。CaF2は靭性改善に効果があるが、融点が低い
ため大入熱溶接では、表ビード表面の平滑性が損なわれ
る。すなわち6%未満では靭性改善に効果がなく。一方
12%を越えると表ビードが不良となる。
ある。CaCO3は溶接金属中の拡散性水素量を下げる
ことに効果がある。このような効果は6%以上で得られ
るが、12%を越えるとポックマークが発生し易くな
り、表ビードが不良となる。なおこのCaCO3および
前記CaF2は先に述べた塩基度Bnの計算においてC
aOに換算される。
必要である。B2O3は靭性向上に効果がある。このよ
うな効果は0.2%以上で得られるが、一方0.5%を
越えると溶接金属が硬化しかえって靭性が劣化する。
溶接法において必要とする限定条件であり、その他の条
件は特に規定する必要はないが、さらに以下の条件で溶
接することがより好ましい。本発明の簡易片面サブマー
ジアーク溶接で対象とする被溶接鋼板の板厚は、対象と
なる低温用鋼の熱影響部特性と溶接効率の観点から10
〜25mmの鋼板とすることが好ましい。
ギャップは、特に規定する必要がないが、被溶接鋼板の
開先角度は40〜60°で、ルートギャップは、6mm
以下にすることがより好ましい。ルートギャップについ
ては、1.5〜6mmで開先充填材による裏ビード形状
の制御効果が得られる。また、開先充填材の開先への散
布厚は鋼板表面より深さが4mmを超えると裏ビードが
過大となり、溶着金属量が不足するので4mm以下が好
ましい。
体的に示す。表1に示すA1〜A8の8種類の開先充填
材を作製した。このうちA1〜A4は本発明例の開先充
填材、A4〜A8は本発明の効果を明確にするための比
較例の開先充填材である。同様に、表2に示すW1〜W
5の5種類の組成のワイヤを作製した。このうちW1〜
W3は本発明例のワイヤ、W4、W5は本発明の効果を
明確にするための比較例のワイヤである。ワイヤ径は全
てのワイヤにおいて6.4mmを作成した。W1におい
てはさらに4.0、4.8、7.2mmを作成した。
1種類の組成のボンドフラックスを作製した。このうち
F1〜F3は本発明例のフラックス、F4〜F13は本
発明の効果を明確にするための比較例のフラックスであ
る。フラックスは水ガラスで造粒し、500℃で1時間
焼成し、12×100メッシュに整粒して供試した。
し、表5に示す開先条件を用いて表1の開先充填鉄合金
を開先内に散布し、表2のワイヤと表3のフラックスを
用いて表5の条件で溶接した。鋼板はSLA325で低
温用鋼である。なお図2において1は固形耐火性酸化物
を主成分とする裏当材、2はガラステープである。
評価した。その後、機械試験とマクロ試験を実施した。
板表面7mm下の溶接部よりJIS A1号引張試験片
およびJIS4号Vノッチシャルピー試験片をそれぞれ
採取して供試した。また、断面マクロ組織から溶接割れ
の有無を観察した。それらの結果を表6および表7に示
す。
発明の実施例、記号B10〜B24は本発明の効果を明
確にするための比較例である。これらの結果、本発明の
実施例B1〜B9は溶接作業性も良好であり、かつ割れ
の発生もなく、引張強度、−55℃のシャルピー吸収エ
ネルギー値とも良好な値を示した。
びMnが過多で引張強度が過大となり、かつNiとAl
が不足して靭性が劣化した。比較例のうちB11は開先
充材のかさ比重が過小なため裏ビードが過大となり、か
つNiとPが過多のため高温割れが発生した。比較例の
うちB12は開先充填材のMnおよびNが過多で引張強
度が過大となり、さらにじん性が劣化した。
さ比重が過大で裏ビードが出にくく過小となった。比較
例のうちB14はワイヤ径が過大で裏ビードが出にくく
過小となった。比較例のうちB15はワイヤ径が過小で
裏ビードが過大となった。
し、またNが過大でじん性が劣化した。比較例のうちB
17はワイヤのNiおよびPが過多で高温割れが発生し
た。比較例のうちB18はフラックスのBnが過大で引
張強度が過大となり、さらにSiO2が過少で表ビード
が不揃いとなり、さらにAl2O3が過多で表ビードが
凸となった。
2が過多で、Bnが過小のためじん性が劣化し、またM
gOが過少で表ビード表面が乱れた。比較例のうちB2
0はフラックスのMgOが過多で表ビード表面に断続的
に突起が発生し、TiO2が過小のため表ビードの平滑
性が劣った。比較例のうちB21はフラックスのCaF
2が過少およびBnが過少のためじん性劣化した。
2が過多で表ビードの趾端部が不揃いで、かつCaF2
が過多で表ビードの平滑性が劣った。比較例のうちB2
3はフラックスのB2O3が過多で溶接金属が硬化し、
引張強度が過大となった。比較例のうちB24はフラッ
クスのB2O3が過少でじん性が劣化した。
実施例にも示した通り低温用鋼の簡易片面サブマージア
ーク溶接方法において溶接作業性及び裏ビード形状が良
好で溶接割れもなく低温靭性性も良好な溶接部が得ら
れ、大型構造物の溶接に貢献するところが大である。
関係を示すグラフである。
断面図である。
Claims (4)
- 【請求項1】 簡易片面サブマージアーク溶接用開先充
填材において、重量%で、C:0.07%以下、Si:
0.05%以下、Mn:0.6〜1.5%、Ni:2.
4〜3.4%、Al:0.002〜0.4%を含有し、
P:0.015%以下、S:0.01%以下、N:0.
005%以下とした鋼粒であって、かさ比重が4〜6で
あることを特徴とする簡易片面サブマージアーク溶接用
開先充填材。 - 【請求項2】 鋼粒のAl含有量が0.03超〜0.4
%であることを特徴とする請求項1記載の簡易片面サブ
マージアーク溶接用開先充填材。 - 【請求項3】 粒径が0.5〜2mmであることを特徴
とする請求項1または2に記載の簡易片面サブマージア
ーク溶接用開先充填材。 - 【請求項4】 低温用鋼鋼板の開先裏面に耐火性酸化物
を主成分とする裏当て材を当接させて、1層溶接する簡
易片面サブマージアーク溶接方法において、前記開先内
に請求項1ないし3のいずれかに記載の開先充填材を充
填し、重量%で、SiO2:10〜20%、MgO:2
0〜33%、Al2O3:13〜25%、TiO2:5
〜15%、CaF2:6〜12%、CaCO3:5〜8
%、B 2O3:0.2〜0.5%を含有し、かつ下式で
定義されるBnが0.8〜1.5であるボンドフラック
スと、重量%で、C:0.01〜0.1%、Si:0.
05%以下、Mn:0.6〜1.6%、Ni:2.4〜
3.4%、Al:0.002〜0.5%を含有し、P:
0.015%以下、S:0.010%以下、N:0.0
05%以下とし、かつワイヤ径が4.4〜6.6mmで
ある鋼製溶接ワイヤとを用いて、前記開先のルートギャ
ップが6mm以下の状態で溶接することを特徴とする低
温用鋼の簡易片面サブマージアーク溶接方法。 Bn=(0.108[CaO]+0.068[MnO]
+0.10[MgO])/(0.105[SiO2]+
0.002[Al2O3])
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