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JP2000256775A - Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料 - Google Patents

Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料

Info

Publication number
JP2000256775A
JP2000256775A JP11055716A JP5571699A JP2000256775A JP 2000256775 A JP2000256775 A JP 2000256775A JP 11055716 A JP11055716 A JP 11055716A JP 5571699 A JP5571699 A JP 5571699A JP 2000256775 A JP2000256775 A JP 2000256775A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
friction material
powder
content
sintering
alloy
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP11055716A
Other languages
English (en)
Inventor
Masaki Sugiyama
昌揮 杉山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP11055716A priority Critical patent/JP2000256775A/ja
Publication of JP2000256775A publication Critical patent/JP2000256775A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】硫化腐食に対する改善を図り、かつ、1180
℃程度以上の高温下におけるFe系基材との同時焼結を
可能にしてFe系基材のより高強度化を図る。 【解決手段】噴霧粉よりなるとともにFe系粉末と同時
焼結されるCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料であって、
(a)Cu−Ni−Mn系焼結材料の全体を100重量
%としたとき、Niの含有量が45〜70重量%の範囲
内にあり、b)Mnの含有量は、Cu及びMnのat%
の合計に対するMnのat%の割合が30%以上であ
り、(c)Siの含有量は、Mn及びSiのat%の合
計に対するSiのat%の割合が2〜5%の範囲内にあ
り、(d)融点が1200℃以上であるという(a)〜
(d)の条件を全て満足するCu−Ni−Mn系焼結摩
擦材料である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はCu−Ni−Mn系
焼結摩擦材料に関し、詳しくは噴霧粉よりなるとともに
Fe系粉末と同時焼結されるCu−Ni−Mn系焼結摩
擦材料であって、主に硫化腐食に対する改善及び焼結可
能温度の高温化を図ったCu−Ni−Mn系焼結摩擦材
料に関する。本発明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料
は、例えば自動車用同期装置に用いられるシンクロナイ
ザリングや、使用条件の厳しい鉄道車両や航空機等のブ
レーキやクラッチに好適に利用することができる。
【0002】
【従来の技術】従来、鉄道車両や航空機等のブレーキや
クラッチに使用されるCu系摩擦材としては、Cu−S
n系又はCu−Al系等の青銅やCu−Zn系の高力黄
銅等のCu系合金粉末を焼結して得られたものが種々知
られている。また、自動車用同期装置を構成するシンク
ロナイザリングに、Cu−Zn系の高力黄銅(特開昭6
0−241527号公報参照。)やCu−Al系のアル
ミ青銅から鋳造又は鍛造により得られたCu系摩擦材を
適用する技術も従来知られている。なお、同期装置と
は、変速機のシフトポジション切換え時において、衝撃
的な噛み合いを避けるために、噛み合いクラッチの回転
速度差を小さくするような装置をいう。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記シンク
ロナイザリング等の摩擦材は、高面圧ですべりやころが
りが行われる極圧状況下で使用される。このため、摩擦
面におけるピッチング等の摩耗を防止する観点から、摩
擦面に供給する潤滑油中に、硫黄及びリン成分を含む極
圧剤を添加することが行われている。
【0004】しかしながら、Cu系合金よりなる摩擦材
において、硫黄分を含む極圧剤が添加された潤滑油を用
いると、Cu系摩擦材中に含まれる成分の種類や含有量
によっては、極圧剤中の硫黄(S)分と摩擦材中の銅
(Cu)等との反応により硫化物(CuS等)が生成さ
れ、硫化物の生成・剥離の繰り返しにより摩擦材表面が
硫化腐食し、摩擦材としての耐摩耗性が低下するという
問題がある。特に、Cu−Ni系合金又はCu−Sn系
合金よりなるCu系摩擦材においては、硫化腐食の問題
が顕著となる。
【0005】そこで、硫黄存在下で用いられ、かつ、硫
化腐食が問題となるCu−Ni系合金よりなるCu系材
料において、硫化腐食に対する改善を図ることが望まれ
る。一方、近年における自動車等の高出力、高トルク化
の傾向に伴い、上記シンクロナイザリングの強度の向上
が望まれ、金属系摩擦材において強度及び摩擦特性の機
能を分担させるために、強度的に優れたFe系基材と、
摩擦特性に優れたCu系合金よりなるCu系摩擦材とか
らなる複合摩擦材を焼結法により製造する手段が考えら
れている。
【0006】しかしながら、焼結法を用いてFe系基材
とCu系摩擦材とを製造しようとすると、Fe系粉末の
焼結温度が一般に1100℃程度以上であるのに対して
Cu系合金粉末の焼結温度は800℃程度と低く、Fe
系粉末の焼結温度ではCu系合金粉末が溶融してしまい
焼結できない。このため、まずFe系粉末を焼結してF
e系基材を製造し、その後Cu系合金粉末を800℃程
度で焼結してFe系基材と一体的に形成されたCu系摩
擦材を製造しなければならず、2回に分けて焼結する必
要があり手間がかかるという問題がある。
【0007】そこで、Fe系粉末の焼結温度よりも高い
融点を有し、Fe系粉末との同時焼結が可能となされた
Cu系焼結摩擦材料が望まれる。特に、自動車等の高出
力、高トルク化の傾向が顕著となった現在においては、
1180℃程度以上の高温下で焼結することによりFe
系基材のさらなる高強度化を図るべく、1180℃程度
以上の高温下でも焼結可能なCu系焼結摩擦材料が望ま
れる。
【0008】本発明は上記実情に鑑みてなされたもので
あり、硫化腐食に対する改善が図られ、かつ、1180
℃程度以上の高温下におけるFe系基材との同時焼結を
可能にしてFe系基材のさらなる高強度化を図ることの
できるCu系焼結摩擦材料を提供することを解決すべき
技術課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料は、噴霧粉よりな
るとともにFe系粉末と同時焼結されるCu−Ni−M
n系焼結材料であって、(a)上記Cu−Ni−Mn系
焼結材料の全体を100重量%としたとき、Niの含有
量が45〜70重量%以下であり、(b)Mnの含有量
は、Cu及びMnのat%の合計に対するMnのat%
の割合が30%以上であり、(c)Siの含有量は、M
n及びSiのat%の合計に対するSiのat%の割合
が2〜5%の範囲内にあり、(d)融点が1200℃以
上であるという上記(a)〜(d)の条件を全て満足す
ることを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明のCu−Ni−Mn系焼結
摩擦材料は、溶融金属を高圧の気体又は液体の流れによ
って飛散凝固させるアトマイズ法により得られた噴霧粉
(アトマイズ粉)よりなる。このCu−Ni−Mn系焼
結摩擦材料は、Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料の全体
を100重量%としたとき、Niの含有量が45〜70
重量%の範囲内とされている。Niの含有量が70重量
%を超えると、摩擦材として必要な摩擦特性(耐焼付き
性)を確保できなくなるおそれがある。一方、Cu系合
金においてはNiを合金化することによりCu合金の融
点を上昇させることができ、Ni含有量が多ければ多い
ほどCu系合金の融点が上昇する。このため、本発明の
Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料をFe系粉末と同時焼
結する際の焼結可能温度を高温化させるべく、Niの含
有量は45重量%以上とされている。Niの含有量が4
5重量%よりも少ないと、Mn含有量等との関係によ
り、融点を1200℃以上とすることができなくなる。
本発明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料の融点をより
高温にする観点からは、Niの含有量は50重量%以上
とすることが好ましく、55重量%以上とすることがよ
り好ましい。
【0011】本発明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料
において、Mnは酸素と化合して酸化物を生成する酸化
容易性元素として働く。すなわち、このCu−Ni−M
n系焼結摩擦材料から得られた摩擦材の使用中に、酸素
と摩擦材中のMnが化合して摩擦材表面に随時Mnの酸
化物が形成される。なお、この酸化物は摩擦材の表面か
ら4〜10nm程度の深さまでの表層部に形成される。
【0012】したがって、本発明のCu−Ni−Mn系
焼結摩擦材料から得られた摩擦材を、硫黄存在下、特に
硫黄を含む潤滑油(例えば、極圧状況下での摩擦面にお
けるピッチング等の摩耗を防止する観点から、硫黄及び
リン成分を含む極圧剤が添加されたギアオイル等の潤滑
油)存在下で用いた場合であっても、硫黄と摩擦材中の
銅等との反応をその表面に形成された酸化物により阻害
することができ、これにより硫化腐食を抑制することが
可能となる。
【0013】本発明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料
において、Mnの含有量は、Cu及びMnのat%の合
計に対するMnのat%の割合が30%以上とされてい
る。すなわち、 WCu(重量%):Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料に含
まれるCuの含有量 WMn(重量%):Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料に含
まれるMnの含有量 ACu(at%):WCu(重量%)をCuの原子量で割っ
た値 AMn(at%):WMn(重量%)をMnの原子量で割っ
た値 とすれば、Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料におけるM
nの含有量は、下記(1)式で表されるMn含有比率P
Mnが30%以上とされる。
【0014】 PMn(%)={AMn/(ACu+AMn)}×100 …(1) 上記Mn含有比率PMnの値が30%未満であると、Cu
−Ni−Mn系焼結摩擦材料中のCuに対するMnの含
有割合が少なすぎて、摩擦材表面に形成されるMnの酸
化物により硫化腐食を十分に抑制することが困難とな
る。一方、Mnの含有量の上限については、Cu−Ni
−Mn系焼結摩擦材料の融点を1200℃以上に確保す
べく、Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料の全体を100
重量%としたとき、25重量%とされる。そして、Cu
−Ni−Mn系焼結摩擦材料の融点をより高くする観点
からは、Mnの含有量は20重量%以下とすることが好
ましい。
【0015】また本発明のCu−Ni−Mn系摩擦材料
においては、主にアトマイズ法による粉末製造時におけ
る粉末の酸化防止の観点及び融点の低下防止の観点か
ら、Siの含有量は、Mn及びSiのat%の合計に対
するSiのat%の割合が2〜5%の範囲内とされてい
る。すなわち、 WMn(重量%):Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料に含
まれるMnの含有量 WSi(重量%):Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料に含
まれるSiの含有量 AMn(at%):WMn(重量%)をMnの原子量で割っ
た値 ASi(at%):WSi(重量%)をSiの原子量で割っ
た値 とすれば、Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料におけるS
iの含有量は、下記(2)式で表されるSi含有比率P
Siが2〜5%の範囲内とされる。
【0016】 PSi(%)={ASi/(AMn+ASi)}×100 …(2) ここに、アトマイズ法により得られた噴霧粉よりなる本
発明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料においては、粉
末製造時の酸化により粉末表面に酸化被膜が形成されて
いると、Fe系粉末と同時焼結する際の焼結性が低下
し、焼結体の強度や靭性の低下につながる。このため、
アトマイズ法による粉末製造時においては、粉末の酸化
を防止することが望ましい。本発明のCu−Ni−Mn
系焼結摩擦材料では、かかる観点から、上記Si含有比
率PSiが2%以上とされている。このSi含有比率PSi
の値が2%未満であると、アトマイズ法による粉末製造
時における粉末の酸化防止が不十分となり、焼結体の強
度や靭性が低下するおそれがある。また、Siは耐摩耗
性の向上にも寄与しうる。これは、Siの存在により焼
結体中にマンガンシリサイドが分散し、これが硬質粒子
として働くことに因るものである。したがって、耐摩耗
性を向上させる観点からは、上記Si含有比率PSiを3
%以上とすることが好ましい。
【0017】一方、上記Si含有比率PSiが5%を超え
ると、このCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料の融点を1
200℃以上に確保することができなくなる。すなわ
ち、上記Si含有比率PSiが5%を超えると、このCu
−Ni−Mn系焼結摩擦材料中でMnが偏析し、これに
より局部的にMnの濃度が高くなってこのMnの偏析部
位が局部的に溶融し、融点を1200℃以上に確保する
ことができなくなる。本発明のCu−Ni−Mn系焼結
摩擦材料の融点をより高温にする観点からは、Siの含
有量をできるだけ少なくすることが望ましく、したがっ
て上記Si含有比率PSiの上限は4%とすることが好ま
しい。また上記Si含有比率PSiが大きすぎると、上記
マンガンシリサイドの存在が過大となり、摩擦係数の増
大により相手材との摺動時に焼き付きが発生し易くなる
という不都合もある。
【0018】このように本発明のCu−Ni−Mn系焼
結摩擦材料は、Ni及びSi等の含有量が特定範囲とさ
れることにより、融点が1200℃以上とされている。
このため、1200℃以上の高温下においても、Fe粉
末と同時焼結することが可能となる。したがって、例え
ばFe系粉末と本発明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材
料とを1200℃以上の高温下で同時成形・同時焼結に
より複合化させることにより、Fe系基材とCu−Ni
−Mn系合金よりなるCu系摩擦材との複合摩擦材を得
ることができる。そして、このように1200℃以上の
高温下で焼結することにより、Fe系基材のより高強度
化を図ることが可能となる。
【0019】なお、上記のように同時成形・同時焼結に
より複合化されたFe系基材とCu系摩擦材との接合面
においては、Fe系粉末及びCu−Ni−Mn系合金粉
末同士が十分に絡み合い、Fe系基材とCu系摩擦材と
の接合強度が十分に向上する。したがって、本発明のC
u−Ni−Mn系焼結摩擦材料によれば、接合強度が向
上したFe系基材との複合摩擦材を提供することが可能
となる。またこのような複合摩擦材によれば、Fe系基
材として十分な強度を確保し、一方Cu系摩擦材により
摩擦材料として必要な摩擦特性を確保することができる
ので、強度及び摩擦特性の双方を十分に満足させること
が可能となる。
【0020】また、本発明のCu−Ni−Mn系焼結摩
擦材料中には、不可避的に存在する不純物の他、耐摩耗
性向上に寄与しうるセラミックス等の硬質粒子や潤滑性
向上に寄与しうるグラファイト等が適量含有されていて
もよい。
【0021】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。 (試験例1)この試験例はMnによる硫化腐食防止の効
果を確認するものである。水アトマイズ法により、表2
に示すCu−Ni−Mn系合金組成の噴霧粉(粒度75
μm以下)よりなるCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料を
それぞれ準備した。なお、表2中、PMnは前記(1)式
に従って求めたMn含有比率である(以下、表3におい
ても同様。)。また、各元素の原子量は表1に示すとお
りである。
【0022】ここに、この試験例では、水アトマイズ法
による粉末製造時における粉末の酸化を防止するための
Siを添加していない。得られた各噴霧粉を通常の成形
法により30mm×30mm×5mmの成形体とし、窒
素ガス雰囲気下、1120℃で30分間焼結を行い、試
験片を作製した。なお、試験片は焼結中に溶融すること
がないことを確認した。また、この試験片の表面は、焼
結後に試料研磨機にて鏡面に仕上げ、洗浄、乾燥してあ
る。
【0023】
【表1】 上記各試験片について、硫黄及びリン成分を含む極圧剤
が添加された手動変速機用ギアオイル(品質グレード
「API GL−5 SAE75W−90」、エッソ社
製)を用いて以下の条件で硫化腐食試験を行った。この
腐食試験は、ガラス容器に所定量のオイルを入れて所定
温度に加熱し、このオイル中に試験片を所定時間浸漬す
るものである。
【0024】オイル体積:1000cc オイル温度:135℃ 浸漬時間 :24時間 腐食試験後の試験片について、目視により表面を観察し
て変色状態を調べた。これは、硫化腐食が発生するとC
uSにより黒色に変色するため、目視により変色状態を
調べて硫化腐食の発生度合いを調べるものである。評価
結果は石油製品銅板腐食試験方法(JIS K 251
3)の銅板腐食基準に準拠して、変色度合を変色番号1
〜4で評価し(変色番号が大きいものほど濃く変色して
いることを示す。)、変色番号が1のものを○とし、変
色番号が2以上のものを×とした得られた結果を表2に
併せて示す。
【0025】
【表2】
【0026】表2から明らかなように、Cu−Ni−M
n系合金に所定のMn含有比率PMn(PMn≧30)でM
nを添加した試料No.3〜6では、硫化腐食を好適に
抑えることができた。一方、Mnの添加量の少ない(P
Mn<30)試料No.1、2では、硫化腐食を十分に抑
えることができなかった。また、Cu−Ni−Mn系合
金中のMn含有比率PMnが36.64%であるNo.3
の試料について、上記硫化腐食試験後、マイクロオージ
ェを用いて表面付近の元素濃度を深さ方向に測定するこ
とにより、硫化腐食の硫化物生成の判定を行った。その
結果を図1に示す。
【0027】図1から明らかなように、表面から6μm
程度の深さまでの部分において、酸素及びMnの元素濃
度が高く、この部分にMnの酸化物が形成されているこ
とがわかる。また、硫黄の存在は認められず、硫化物が
生成されていないことがわかる。したがって、試料表面
にMnの酸化物が形成されることにより、硫化腐食を効
果的に抑制できることがわかる。
【0028】(試験例2)この試験例は、Mn含有比率
Mnと硫化腐食抑制効果との関係を調べるものである。
表3に示すCu−Ni合金及びCu−Mn合金組成の噴
霧粉(粒度75μm以下)よりなる焼結摩擦材料を上記
試験例1と同様の水アトマイズ法によりそれぞれ準備
し、各噴霧粉から上記試験例1と同様に試験片を作製し
た。
【0029】上記各試験片について、上記試験例1と同
様に硫化腐食試験を行った。得られた結果を表3及び図
2に示す。
【0030】
【表3】
【0031】表3及び図2から明らかなように、at%
において、Cu−Ni−Mn系合金中のCuに対するM
n含有比率PMnを30%以上とすることにより、硫化腐
食を効果的に抑制できることがわかる。 (試験例3)この試験例は、Niの含有量とCu−Ni
系合金の融点及び耐焼付き性との関係を調べるものであ
る。
【0032】ここで、Cu−Ni系合金の状態図を図3
に示すように、Niの含有量が多いほどCu−Ni系合
金の融点が上昇することがわかる。そして、Cu−Ni
系合金においては、Niの含有量を40wt%以上とす
れば融点が1200℃以上になることがわかる。なお、
このCu−Ni系合金にはMn及びSiが含まれていな
い。
【0033】また、Niの含有量を種々変化させたCu
−Ni−Mn合金組成の噴霧粉(粒度75μm以下)よ
りなるCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料を上記試験例1
と同様の水アトマイズ法によりそれぞれ準備し、各噴霧
粉から上記試験例1と同様に試験片を作製した。なお、
各試験片におけるMnの含有量は、全体を100wt量
%としたとき15wt%と一定とした。得られた各試験
片についてリングオンディスク式摩擦摩耗試験機を用い
て以下の条件で焼き付き試験を行った。得られた結果を
図4に示す。
【0034】相手材:SCM20熱処理材 すべり速度:7.1m/sec 荷重:2分毎に1MPa加圧積算 潤滑油:SAE75W−90(商品名、エッソ社製) 図4から明らかなように、Niの含有量が多いほどCu
−Ni−Mn系合金の耐焼付き性が低下し、Niの含有
量が30wt%のとき焼き付き面圧が10MPaで、7
0wt%のとき焼き付き面圧が6MPaであることがわ
かる。ここで、例えばCu−Ni−Mn系合金をシンク
ロナイザリングの摺動部に適用する場合、耐焼付き性と
しては上記試験条件で6MPa以上必要であると想定さ
れる。このため、Cu−Ni−Mn系合金よりなるCu
系摩擦材をシンクロナイザリングの摺動部に適用する場
合、摩擦材として必要な耐焼付き性を確保する観点か
ら、Cu−Ni−Mn系合金におけるNi含有量の上限
は70重量%とされる。
【0035】(試験例4)この試験例は、Cu−Ni−
Mn系合金の組成と融点及び硫化腐食抑制効果との関係
を調べるものである。上記試験例1で用いた試料No.
2〜6及び上記試験例2で用いた試料No.7〜12に
ついて、上記試験例1に示した硫化腐食試験の結果とと
もに合金組成をプロットするとともに、Cu−Ni−M
n系合金の融点を示すことにより、融点が1200℃以
上となり、かつ、硫化腐食を効果的に抑制できるCu−
Ni−Mn系合金の組成範囲を図5に示す。
【0036】すなわち、図5において、Cu−Ni−M
n系合金の融点が1200℃となることを示す線を境界
として、この境界線の左上の範囲がCu−Ni−Mn系
合金の融点が1200℃以上となる組成範囲である。ま
た図5において、Cu及びMnの各頂点を結ぶCu−M
n底辺のCu−27Mnの点A(Mnの含有量が27.
034wt%となる点であって、前記Mn含有比率PMn
が30%となる点)とNiの頂点とを結ぶ点線を境界と
して、この境界線の右側の範囲がMnの所定量以上(前
記Mn含有比率が30%以上)の添加により硫化腐食を
効果的に抑制できる範囲となる。したがって、図5にお
いて、斜線で示す部分が、i)Cu−Ni−Mn系合金
の融点が1200℃となり、ii)Mnの所定量以上の
添加により硫化腐食を効果的に抑制でき、iii)Ni
の含有量が70wt%以下となる組成範囲を示すことと
なる。
【0037】また図5から、Cu−Ni−Mn系焼結摩
擦材料の全体を100重量%としたとき、Mnの含有量
を25重量%以下とすれば、Cu−Ni−Mn系焼結摩
擦材料の融点が1200℃以上になることがわかる。し
たがって、Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料の融点を1
200℃以上にするには、Mnの含有量を25重量%以
下とする必要があり、融点をより高くする観点からはM
nの含有量を20重量%以下とすることが好ましい。
【0038】(試験例5)この試験例は、Siの含有量
とCu−Ni−Mn系合金の融点との関係を調べるもの
である。水アトマイズ法により、表4に示すCu−Ni
−Mn系合金組成の噴霧粉(粒度75μm以下)よりな
るCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料をそれぞれ準備し
た。なお、表4中、PSiは前記(2)式に従って求めた
Si含有比率である(以下、表5においても同様。)。
また、各元素の原子量は表1に示すとおりである。
【0039】
【表4】
【0040】ここに、この試験例では、水アトマイズ法
による粉末製造時における粉末の酸化を防止するための
Siを種々の添加量で添加した。そして、各噴霧粉から
上記試験例1と同様に試験片を作製した。なお、各試験
片におけるNi、Mnの含有量は、全体を100wt量
%としたときそれぞれ55wt%、15wt%と一定と
した。得られた各試験片について融点を調べた。得られ
た結果を図6に示す。
【0041】図6から明らかなように、at%におい
て、Cu−Ni−Mn系合金中のMnに対するSi含有
比率PSiを5.0%以下とすることにより、融点が12
00℃以上になることがわかる。また、Si含有比率P
Siが4.8%である試料No.14及びSi含有比率P
Siが6.7%である試料No.15について、Fe系
(Fe−4Ni−1.5Mo−2Cu−0.5C)合金
粉末と同時成形及び同時焼結した。なお、焼結条件は、
窒素ガス雰囲気下、1130℃×30分とした。そし
て、得られた焼結体について、断面における金属組織を
顕微鏡写真(100倍)で調べた。その結果を図7に示
す。なお、図7(a)がSi含有比率PSiが4.8%で
ある試料No.14とFe系合金粉末との同時焼結体の
金属組織を示し、図7(b)がSi含有比率PSiが6.
7%である試料No.15とFe系合金粉末との同時焼
結体の金属組織を示す。また、図7(a)及び(b)に
おいて、上半分の白っぽく見える部分がCu−Ni−M
n系合金部分、下半分の黒っぽく見える部分がFe系合
金部分であり、Cu−Ni−Mn系合金部分に散点する
黒点は空孔である。
【0042】図7から明らかなように、(a)のSi含
有比率PSiが4.8%である試料No.14では、Cu
−Ni−Mn系合金部分で溶融の発生が認められなかっ
たのに対し、(b)のSi含有比率PSiが6.7%であ
る試料No.15ではCu−Ni−Mn系合金部分でF
e合金との境界付近に溶融の発生が認められた。この溶
融の発生により、図7(b)のCu−Ni−Mn系合金
部分において、Fe系合金との境界付近に大きな欠陥
(大きめの黒点やこれが境界線に沿って連なった部分)
の発生が認められた。
【0043】また、Si含有比率PSiが4.8%である
試料No.14及びSi含有比率P Siが6.7%である
試料No.15について、EPMA(Electron Probe M
icroAnalyzer )によりMn及びSiの分布状態を調べ
た。その結果を図8及び図9に示す。なお、図8は試料
No.14のEPMA写真であり、図8(a)はMnの
分布状態、図8(b)はSiの分布状態を示す。また、
図9はNo.15のEPMA写真であり、図9(a)は
Mnの分布状態、図9(b)はSiの分布状態を示す。
【0044】図8(a)から明らかなように、Si含有
比率PSiが4.8%である試料No.14ではMnの偏
析が認められなかったのに対し、図9(a)から明らか
なように、Si含有比率PSiが6.7%である試料N
o.15では、Mnの濃度が高くなる偏析部位(2〜5
mm程度の白い斑点)の存在が認められた。これによ
り、Si含有比率PSiを5.0%以下とすれば、Mnの
偏析が無くなり融点の向上を図れることがわかる。
【0045】また、図9の(a)と(b)とを見比べる
とわかるように、Mnの偏析部位とほぼ同じ箇所にSi
の偏析部位(図9(b)中、白い点の集まりからなる2
〜5mm程度の白い塊)の存在が認められ、したがって
この部位にマンガンシリサイドが存在していることがわ
かる。 (試験例6)この試験例は、Siの含有量と耐摩耗性と
の関係を調べるものである。
【0046】上記試験例5で得られた試料No.13〜
15について、リングオンディスク式摩擦摩耗試験機を
用いて、下記の条件で耐摩耗性を評価した。得られた結
果を図10に示す。 相手材:SCM420浸炭材 すべり速度:5.5m/sec 荷重:10MPa 潤滑油:MTF(GL−3)(商品名、エッソ社製) 評価時間:30分 図10から明らかなように、Si含有比率PSiの値が大
きくなれば耐摩耗性が向上する傾向にあり、耐摩耗性を
向上させる観点からはSi含有比率PSiを3.0%以上
とすることが好ましいことがわかる。
【0047】(試験例7)この試験例は、Siの含有量
とアトマイズ法による粉末製造時における粉末酸化の防
止効果との関係を調べるものである。すなわち、水アト
マイズ法による粉末製造時にSiを種々の添加量で添加
し、製造された各噴霧粉について、無機化学分析方法に
よりCu、Ni、Mn、Si及びOの含有量を調べた。
その結果を表5及び図11に示す。なお、噴霧粉中に含
まれるO成分は、粉末製造時の粉末酸化により粉末中に
含まれたものである。
【0048】
【表5】
【0049】表5及び図11から明らかなように、Mn
に対するSi含有比率PSiの値が大きいほど、O成分の
含有量が少なく、粉末酸化の防止効果が高いことがわか
る。そして、Si含有比率PSiが2.0%以上であれ
ば、噴霧粉中に含まれるO成分の含有量は1.00wt
%程度以下となることがわかる。そして、O成分の含有
量が1.00wt%程度以下であれば、粉末表面の酸化
被膜により焼結性が低下することを抑えて、焼結体の強
度や靭性を十分に確保することができると考えられる。
【0050】(試験例8)この試験例は、焼結温度とF
e系基材の強度との関係を調べるものである。Fe系
(Fe−4Ni−1.5Mo−2Cu−0.5C)合金
粉末を成形密度が7.1g/cm3 となるように所定形
状に成形し、この成形体を窒素ガス雰囲気下で種々の温
度で焼結した。なお、焼結時間はいずれも30分とし
た。得られた焼結体の引張強度をJIS Z 2241
金属材料引張試験方法により測定した結果を図12に
示す。
【0051】図12から明らかなように、焼結温度が1
200℃以上であればFe系焼結体の引張強度が100
0MPaを超え、Fe系焼結体の強度を十分に向上させ
うることがわかる。 (適用例)本発明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料を
シンクロナイザリングに適用する例について示す。
【0052】このシンクロナイザリングは、シンクロナ
イザリング本体をなすFe系基材と、Fe系基材と一体
的に形成され、摺動面を形成するCu系摩擦材とからな
り、Fe系合金粉末及びCu−Ni−Mn系合金粉末を
同時成形及び同時焼結することにより得られたものであ
る。上記Fe系基材はFe−Cu−C系よりなる。ま
た、上記Cu系摩擦材は、上記試験例で用いたSi含有
比率PSiが4.8%の試料No.14のCu−Ni−M
n系合金(Cu−55Ni−15Mn−0.39Si合
金)よりなる。
【0053】まず、粒径:150μmのFe−Cu−C
系粉末を準備する一方、粒径50μmのCu−Ni−M
n系合金粉末を準備した。そして、シンクロナイザリン
グ成形用の成形金型内に上記Cu−Ni−Mn系合金粉
末を供給下後、上記Fe−Cu−C系粉末を供給し、加
圧力:70MPa、加圧時間:5秒の条件で圧縮成形す
ることにより、Fe系粉末よりなる基材部とCu−Ni
−Mn系合金粉末よりなる摩擦材部とが一体的に形成さ
れた成形体を得た。
【0054】得られた成形体を焼結温度:1200℃、
焼結時間:30分、焼結雰囲気:窒素ガス雰囲気の条件
で同時焼結して、シンクロナイザリングとした。このよ
うに得られた焼結摩擦部材としてのシンクロナイザリン
グは、1200℃と高温下で焼結したものであるから、
Fe系基材の引張強度が1000MPaを超えるものと
なり、十分な強度向上が図られている。
【0055】また、このシンクロナイザリングはFe系
基材とCu系摩擦材とを同時成形及び同時焼結により得
たものであるから、Fe系基材とCu系摩擦材との接合
面においては、Fe系粉末及びCu−Ni−Mn系合金
粉末同士が十分に絡み合い、Fe系基材とCu系摩擦材
との接合強度が十分に向上していた。さらにこの適用例
によれば、一度の焼結工程により手間をかけることなく
製造することができ、製造工程の簡素化及び低コスト化
を図るのに有利となる。
【0056】
【発明の効果】以上詳述したように本発明のCu−Ni
−Mn系焼結摩擦材料を摩擦材に適用すれば、摩擦材の
使用中に摩擦材表面にMnの酸化物が形成されるので、
硫黄を含む潤滑油の存在下で使用しても、この酸化物に
より硫黄と摩擦材中の銅等との反応を阻害して硫化腐食
を抑制することができる。
【0057】また、本発明のCu−Ni−Mn系焼結摩
擦材料は、Ni及びSi等の含有量が特定範囲とされる
ことにより融点が1200℃以上とされていることか
ら、1200℃以上の高温下においても、Fe粉末と同
時焼結することが可能となる。したがって、例えばFe
系粉末と本発明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料とを
1200℃以上の高温下で同時成形・同時焼結により複
合化させることにより、Fe系基材とCu−Ni−Mn
系合金よりなるCu系摩擦材との複合摩擦材を得ること
ができる。そして、このように1200℃以上の高温下
で焼結することにより、Fe系基材のより高強度化を図
ることが可能となる。
【0058】よって、本発明の耐食性に優れたCu−N
i−Mn系摩擦材料を摩擦材に適用すれば、十分な強度
を確保するFe系基材と、十分な摩擦特性及び耐食性を
確保するCu系摩擦材とからなるシンクロナイザリング
等を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験例1に係り、硫化腐食試験後の表面付近に
おける元素濃度を示す線図である。
【図2】試験例2に係り、Cuに対するMn含有比率P
Mnと硫化腐食抑制効果との関係を示す線図である。
【図3】試験例3に係り、Ni含有量と融点との関係を
示すCu−Ni系合金の状態図である。
【図4】試験例3に係り、Ni含有量と耐焼付き性との
関係を示す線図である。
【図5】試験例4に係り、Cu−Ni−Mn系合金にお
いて、合金組成と融点及び硫化腐食抑制効果との関係を
示す図である。
【図6】試験例5に係り、Mnに対するSi含有比率P
Siと融点との関係を示す線図である。
【図7】試験例5に係り、焼結体の金属組織を示す顕微
鏡写真であり、(a)はSi含有比率PSiが6.7%の
もの、(b)はSi含有比率PSiが4.8%のものであ
る。
【図8】試験例5に係り、Si含有比率PSiが4.8%
であるCu−Ni−Mn系合金粉末の金属組織(元素の
分布状態)を示すEPMA写真であり、(a)はMnの
分布状態、(b)はSiの分布状態を示す。
【図9】試験例5に係り、Si含有比率PSiが6.7%
であるCu−Ni−Mn系合金粉末の金属組織(元素の
分布状態)を示すEPMA写真であり、(a)はMnの
分布状態、(b)はSiの分布状態を示す。
【図10】試験例6に係り、Si含有比率PSiと摩耗量
との関係を示す線図である。
【図11】試験例7に係り、Si含有比率PSiと酸素量
(粉末製造時における粉末酸化の防止効果)との関係を
示す線図である。
【図12】試験例8に係り、焼結温度とFe系焼結体の
引張強度との関係を示す線図である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 噴霧粉よりなるとともにFe系粉末と同
    時焼結されるCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料であっ
    て、(a)上記Cu−Ni−Mn系焼結材料の全体を1
    00重量%としたとき、Niの含有量が45〜70重量
    %の範囲内にあり、(b)Mnの含有量は、Cu及びM
    nのat%の合計に対するMnのat%の割合が30%
    以上であり、(c)Siの含有量は、Mn及びSiのa
    t%の合計に対するSiのat%の割合が2〜5%の範
    囲内にあり、(d)融点が1200℃以上であるという
    上記(a)〜(d)の条件を全て満足することを特徴と
    するCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109338202A (zh) * 2018-11-23 2019-02-15 中国科学院兰州化学物理研究所 一种高强韧耐磨高熵铜合金
WO2020196791A1 (ja) * 2019-03-28 2020-10-01 古河電気工業株式会社 銅合金条材およびその製造方法、それを用いた抵抗器用抵抗材料ならびに抵抗器
WO2023157806A1 (ja) * 2022-02-18 2023-08-24 古河電気工業株式会社 銅合金材、ならびに銅合金材を用いた抵抗器用抵抗材料および抵抗器

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