JP2000256775A - Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料 - Google Patents
Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料Info
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Abstract
(57)【要約】
【課題】硫化腐食に対する改善を図り、かつ、1180
℃程度以上の高温下におけるFe系基材との同時焼結を
可能にしてFe系基材のより高強度化を図る。 【解決手段】噴霧粉よりなるとともにFe系粉末と同時
焼結されるCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料であって、
(a)Cu−Ni−Mn系焼結材料の全体を100重量
%としたとき、Niの含有量が45〜70重量%の範囲
内にあり、b)Mnの含有量は、Cu及びMnのat%
の合計に対するMnのat%の割合が30%以上であ
り、(c)Siの含有量は、Mn及びSiのat%の合
計に対するSiのat%の割合が2〜5%の範囲内にあ
り、(d)融点が1200℃以上であるという(a)〜
(d)の条件を全て満足するCu−Ni−Mn系焼結摩
擦材料である。
℃程度以上の高温下におけるFe系基材との同時焼結を
可能にしてFe系基材のより高強度化を図る。 【解決手段】噴霧粉よりなるとともにFe系粉末と同時
焼結されるCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料であって、
(a)Cu−Ni−Mn系焼結材料の全体を100重量
%としたとき、Niの含有量が45〜70重量%の範囲
内にあり、b)Mnの含有量は、Cu及びMnのat%
の合計に対するMnのat%の割合が30%以上であ
り、(c)Siの含有量は、Mn及びSiのat%の合
計に対するSiのat%の割合が2〜5%の範囲内にあ
り、(d)融点が1200℃以上であるという(a)〜
(d)の条件を全て満足するCu−Ni−Mn系焼結摩
擦材料である。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はCu−Ni−Mn系
焼結摩擦材料に関し、詳しくは噴霧粉よりなるとともに
Fe系粉末と同時焼結されるCu−Ni−Mn系焼結摩
擦材料であって、主に硫化腐食に対する改善及び焼結可
能温度の高温化を図ったCu−Ni−Mn系焼結摩擦材
料に関する。本発明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料
は、例えば自動車用同期装置に用いられるシンクロナイ
ザリングや、使用条件の厳しい鉄道車両や航空機等のブ
レーキやクラッチに好適に利用することができる。
焼結摩擦材料に関し、詳しくは噴霧粉よりなるとともに
Fe系粉末と同時焼結されるCu−Ni−Mn系焼結摩
擦材料であって、主に硫化腐食に対する改善及び焼結可
能温度の高温化を図ったCu−Ni−Mn系焼結摩擦材
料に関する。本発明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料
は、例えば自動車用同期装置に用いられるシンクロナイ
ザリングや、使用条件の厳しい鉄道車両や航空機等のブ
レーキやクラッチに好適に利用することができる。
【0002】
【従来の技術】従来、鉄道車両や航空機等のブレーキや
クラッチに使用されるCu系摩擦材としては、Cu−S
n系又はCu−Al系等の青銅やCu−Zn系の高力黄
銅等のCu系合金粉末を焼結して得られたものが種々知
られている。また、自動車用同期装置を構成するシンク
ロナイザリングに、Cu−Zn系の高力黄銅(特開昭6
0−241527号公報参照。)やCu−Al系のアル
ミ青銅から鋳造又は鍛造により得られたCu系摩擦材を
適用する技術も従来知られている。なお、同期装置と
は、変速機のシフトポジション切換え時において、衝撃
的な噛み合いを避けるために、噛み合いクラッチの回転
速度差を小さくするような装置をいう。
クラッチに使用されるCu系摩擦材としては、Cu−S
n系又はCu−Al系等の青銅やCu−Zn系の高力黄
銅等のCu系合金粉末を焼結して得られたものが種々知
られている。また、自動車用同期装置を構成するシンク
ロナイザリングに、Cu−Zn系の高力黄銅(特開昭6
0−241527号公報参照。)やCu−Al系のアル
ミ青銅から鋳造又は鍛造により得られたCu系摩擦材を
適用する技術も従来知られている。なお、同期装置と
は、変速機のシフトポジション切換え時において、衝撃
的な噛み合いを避けるために、噛み合いクラッチの回転
速度差を小さくするような装置をいう。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記シンク
ロナイザリング等の摩擦材は、高面圧ですべりやころが
りが行われる極圧状況下で使用される。このため、摩擦
面におけるピッチング等の摩耗を防止する観点から、摩
擦面に供給する潤滑油中に、硫黄及びリン成分を含む極
圧剤を添加することが行われている。
ロナイザリング等の摩擦材は、高面圧ですべりやころが
りが行われる極圧状況下で使用される。このため、摩擦
面におけるピッチング等の摩耗を防止する観点から、摩
擦面に供給する潤滑油中に、硫黄及びリン成分を含む極
圧剤を添加することが行われている。
【0004】しかしながら、Cu系合金よりなる摩擦材
において、硫黄分を含む極圧剤が添加された潤滑油を用
いると、Cu系摩擦材中に含まれる成分の種類や含有量
によっては、極圧剤中の硫黄(S)分と摩擦材中の銅
(Cu)等との反応により硫化物(CuS等)が生成さ
れ、硫化物の生成・剥離の繰り返しにより摩擦材表面が
硫化腐食し、摩擦材としての耐摩耗性が低下するという
問題がある。特に、Cu−Ni系合金又はCu−Sn系
合金よりなるCu系摩擦材においては、硫化腐食の問題
が顕著となる。
において、硫黄分を含む極圧剤が添加された潤滑油を用
いると、Cu系摩擦材中に含まれる成分の種類や含有量
によっては、極圧剤中の硫黄(S)分と摩擦材中の銅
(Cu)等との反応により硫化物(CuS等)が生成さ
れ、硫化物の生成・剥離の繰り返しにより摩擦材表面が
硫化腐食し、摩擦材としての耐摩耗性が低下するという
問題がある。特に、Cu−Ni系合金又はCu−Sn系
合金よりなるCu系摩擦材においては、硫化腐食の問題
が顕著となる。
【0005】そこで、硫黄存在下で用いられ、かつ、硫
化腐食が問題となるCu−Ni系合金よりなるCu系材
料において、硫化腐食に対する改善を図ることが望まれ
る。一方、近年における自動車等の高出力、高トルク化
の傾向に伴い、上記シンクロナイザリングの強度の向上
が望まれ、金属系摩擦材において強度及び摩擦特性の機
能を分担させるために、強度的に優れたFe系基材と、
摩擦特性に優れたCu系合金よりなるCu系摩擦材とか
らなる複合摩擦材を焼結法により製造する手段が考えら
れている。
化腐食が問題となるCu−Ni系合金よりなるCu系材
料において、硫化腐食に対する改善を図ることが望まれ
る。一方、近年における自動車等の高出力、高トルク化
の傾向に伴い、上記シンクロナイザリングの強度の向上
が望まれ、金属系摩擦材において強度及び摩擦特性の機
能を分担させるために、強度的に優れたFe系基材と、
摩擦特性に優れたCu系合金よりなるCu系摩擦材とか
らなる複合摩擦材を焼結法により製造する手段が考えら
れている。
【0006】しかしながら、焼結法を用いてFe系基材
とCu系摩擦材とを製造しようとすると、Fe系粉末の
焼結温度が一般に1100℃程度以上であるのに対して
Cu系合金粉末の焼結温度は800℃程度と低く、Fe
系粉末の焼結温度ではCu系合金粉末が溶融してしまい
焼結できない。このため、まずFe系粉末を焼結してF
e系基材を製造し、その後Cu系合金粉末を800℃程
度で焼結してFe系基材と一体的に形成されたCu系摩
擦材を製造しなければならず、2回に分けて焼結する必
要があり手間がかかるという問題がある。
とCu系摩擦材とを製造しようとすると、Fe系粉末の
焼結温度が一般に1100℃程度以上であるのに対して
Cu系合金粉末の焼結温度は800℃程度と低く、Fe
系粉末の焼結温度ではCu系合金粉末が溶融してしまい
焼結できない。このため、まずFe系粉末を焼結してF
e系基材を製造し、その後Cu系合金粉末を800℃程
度で焼結してFe系基材と一体的に形成されたCu系摩
擦材を製造しなければならず、2回に分けて焼結する必
要があり手間がかかるという問題がある。
【0007】そこで、Fe系粉末の焼結温度よりも高い
融点を有し、Fe系粉末との同時焼結が可能となされた
Cu系焼結摩擦材料が望まれる。特に、自動車等の高出
力、高トルク化の傾向が顕著となった現在においては、
1180℃程度以上の高温下で焼結することによりFe
系基材のさらなる高強度化を図るべく、1180℃程度
以上の高温下でも焼結可能なCu系焼結摩擦材料が望ま
れる。
融点を有し、Fe系粉末との同時焼結が可能となされた
Cu系焼結摩擦材料が望まれる。特に、自動車等の高出
力、高トルク化の傾向が顕著となった現在においては、
1180℃程度以上の高温下で焼結することによりFe
系基材のさらなる高強度化を図るべく、1180℃程度
以上の高温下でも焼結可能なCu系焼結摩擦材料が望ま
れる。
【0008】本発明は上記実情に鑑みてなされたもので
あり、硫化腐食に対する改善が図られ、かつ、1180
℃程度以上の高温下におけるFe系基材との同時焼結を
可能にしてFe系基材のさらなる高強度化を図ることの
できるCu系焼結摩擦材料を提供することを解決すべき
技術課題とするものである。
あり、硫化腐食に対する改善が図られ、かつ、1180
℃程度以上の高温下におけるFe系基材との同時焼結を
可能にしてFe系基材のさらなる高強度化を図ることの
できるCu系焼結摩擦材料を提供することを解決すべき
技術課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料は、噴霧粉よりな
るとともにFe系粉末と同時焼結されるCu−Ni−M
n系焼結材料であって、(a)上記Cu−Ni−Mn系
焼結材料の全体を100重量%としたとき、Niの含有
量が45〜70重量%以下であり、(b)Mnの含有量
は、Cu及びMnのat%の合計に対するMnのat%
の割合が30%以上であり、(c)Siの含有量は、M
n及びSiのat%の合計に対するSiのat%の割合
が2〜5%の範囲内にあり、(d)融点が1200℃以
上であるという上記(a)〜(d)の条件を全て満足す
ることを特徴とするものである。
明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料は、噴霧粉よりな
るとともにFe系粉末と同時焼結されるCu−Ni−M
n系焼結材料であって、(a)上記Cu−Ni−Mn系
焼結材料の全体を100重量%としたとき、Niの含有
量が45〜70重量%以下であり、(b)Mnの含有量
は、Cu及びMnのat%の合計に対するMnのat%
の割合が30%以上であり、(c)Siの含有量は、M
n及びSiのat%の合計に対するSiのat%の割合
が2〜5%の範囲内にあり、(d)融点が1200℃以
上であるという上記(a)〜(d)の条件を全て満足す
ることを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明のCu−Ni−Mn系焼結
摩擦材料は、溶融金属を高圧の気体又は液体の流れによ
って飛散凝固させるアトマイズ法により得られた噴霧粉
(アトマイズ粉)よりなる。このCu−Ni−Mn系焼
結摩擦材料は、Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料の全体
を100重量%としたとき、Niの含有量が45〜70
重量%の範囲内とされている。Niの含有量が70重量
%を超えると、摩擦材として必要な摩擦特性(耐焼付き
性)を確保できなくなるおそれがある。一方、Cu系合
金においてはNiを合金化することによりCu合金の融
点を上昇させることができ、Ni含有量が多ければ多い
ほどCu系合金の融点が上昇する。このため、本発明の
Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料をFe系粉末と同時焼
結する際の焼結可能温度を高温化させるべく、Niの含
有量は45重量%以上とされている。Niの含有量が4
5重量%よりも少ないと、Mn含有量等との関係によ
り、融点を1200℃以上とすることができなくなる。
本発明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料の融点をより
高温にする観点からは、Niの含有量は50重量%以上
とすることが好ましく、55重量%以上とすることがよ
り好ましい。
摩擦材料は、溶融金属を高圧の気体又は液体の流れによ
って飛散凝固させるアトマイズ法により得られた噴霧粉
(アトマイズ粉)よりなる。このCu−Ni−Mn系焼
結摩擦材料は、Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料の全体
を100重量%としたとき、Niの含有量が45〜70
重量%の範囲内とされている。Niの含有量が70重量
%を超えると、摩擦材として必要な摩擦特性(耐焼付き
性)を確保できなくなるおそれがある。一方、Cu系合
金においてはNiを合金化することによりCu合金の融
点を上昇させることができ、Ni含有量が多ければ多い
ほどCu系合金の融点が上昇する。このため、本発明の
Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料をFe系粉末と同時焼
結する際の焼結可能温度を高温化させるべく、Niの含
有量は45重量%以上とされている。Niの含有量が4
5重量%よりも少ないと、Mn含有量等との関係によ
り、融点を1200℃以上とすることができなくなる。
本発明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料の融点をより
高温にする観点からは、Niの含有量は50重量%以上
とすることが好ましく、55重量%以上とすることがよ
り好ましい。
【0011】本発明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料
において、Mnは酸素と化合して酸化物を生成する酸化
容易性元素として働く。すなわち、このCu−Ni−M
n系焼結摩擦材料から得られた摩擦材の使用中に、酸素
と摩擦材中のMnが化合して摩擦材表面に随時Mnの酸
化物が形成される。なお、この酸化物は摩擦材の表面か
ら4〜10nm程度の深さまでの表層部に形成される。
において、Mnは酸素と化合して酸化物を生成する酸化
容易性元素として働く。すなわち、このCu−Ni−M
n系焼結摩擦材料から得られた摩擦材の使用中に、酸素
と摩擦材中のMnが化合して摩擦材表面に随時Mnの酸
化物が形成される。なお、この酸化物は摩擦材の表面か
ら4〜10nm程度の深さまでの表層部に形成される。
【0012】したがって、本発明のCu−Ni−Mn系
焼結摩擦材料から得られた摩擦材を、硫黄存在下、特に
硫黄を含む潤滑油(例えば、極圧状況下での摩擦面にお
けるピッチング等の摩耗を防止する観点から、硫黄及び
リン成分を含む極圧剤が添加されたギアオイル等の潤滑
油)存在下で用いた場合であっても、硫黄と摩擦材中の
銅等との反応をその表面に形成された酸化物により阻害
することができ、これにより硫化腐食を抑制することが
可能となる。
焼結摩擦材料から得られた摩擦材を、硫黄存在下、特に
硫黄を含む潤滑油(例えば、極圧状況下での摩擦面にお
けるピッチング等の摩耗を防止する観点から、硫黄及び
リン成分を含む極圧剤が添加されたギアオイル等の潤滑
油)存在下で用いた場合であっても、硫黄と摩擦材中の
銅等との反応をその表面に形成された酸化物により阻害
することができ、これにより硫化腐食を抑制することが
可能となる。
【0013】本発明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料
において、Mnの含有量は、Cu及びMnのat%の合
計に対するMnのat%の割合が30%以上とされてい
る。すなわち、 WCu(重量%):Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料に含
まれるCuの含有量 WMn(重量%):Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料に含
まれるMnの含有量 ACu(at%):WCu(重量%)をCuの原子量で割っ
た値 AMn(at%):WMn(重量%)をMnの原子量で割っ
た値 とすれば、Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料におけるM
nの含有量は、下記(1)式で表されるMn含有比率P
Mnが30%以上とされる。
において、Mnの含有量は、Cu及びMnのat%の合
計に対するMnのat%の割合が30%以上とされてい
る。すなわち、 WCu(重量%):Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料に含
まれるCuの含有量 WMn(重量%):Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料に含
まれるMnの含有量 ACu(at%):WCu(重量%)をCuの原子量で割っ
た値 AMn(at%):WMn(重量%)をMnの原子量で割っ
た値 とすれば、Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料におけるM
nの含有量は、下記(1)式で表されるMn含有比率P
Mnが30%以上とされる。
【0014】 PMn(%)={AMn/(ACu+AMn)}×100 …(1) 上記Mn含有比率PMnの値が30%未満であると、Cu
−Ni−Mn系焼結摩擦材料中のCuに対するMnの含
有割合が少なすぎて、摩擦材表面に形成されるMnの酸
化物により硫化腐食を十分に抑制することが困難とな
る。一方、Mnの含有量の上限については、Cu−Ni
−Mn系焼結摩擦材料の融点を1200℃以上に確保す
べく、Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料の全体を100
重量%としたとき、25重量%とされる。そして、Cu
−Ni−Mn系焼結摩擦材料の融点をより高くする観点
からは、Mnの含有量は20重量%以下とすることが好
ましい。
−Ni−Mn系焼結摩擦材料中のCuに対するMnの含
有割合が少なすぎて、摩擦材表面に形成されるMnの酸
化物により硫化腐食を十分に抑制することが困難とな
る。一方、Mnの含有量の上限については、Cu−Ni
−Mn系焼結摩擦材料の融点を1200℃以上に確保す
べく、Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料の全体を100
重量%としたとき、25重量%とされる。そして、Cu
−Ni−Mn系焼結摩擦材料の融点をより高くする観点
からは、Mnの含有量は20重量%以下とすることが好
ましい。
【0015】また本発明のCu−Ni−Mn系摩擦材料
においては、主にアトマイズ法による粉末製造時におけ
る粉末の酸化防止の観点及び融点の低下防止の観点か
ら、Siの含有量は、Mn及びSiのat%の合計に対
するSiのat%の割合が2〜5%の範囲内とされてい
る。すなわち、 WMn(重量%):Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料に含
まれるMnの含有量 WSi(重量%):Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料に含
まれるSiの含有量 AMn(at%):WMn(重量%)をMnの原子量で割っ
た値 ASi(at%):WSi(重量%)をSiの原子量で割っ
た値 とすれば、Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料におけるS
iの含有量は、下記(2)式で表されるSi含有比率P
Siが2〜5%の範囲内とされる。
においては、主にアトマイズ法による粉末製造時におけ
る粉末の酸化防止の観点及び融点の低下防止の観点か
ら、Siの含有量は、Mn及びSiのat%の合計に対
するSiのat%の割合が2〜5%の範囲内とされてい
る。すなわち、 WMn(重量%):Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料に含
まれるMnの含有量 WSi(重量%):Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料に含
まれるSiの含有量 AMn(at%):WMn(重量%)をMnの原子量で割っ
た値 ASi(at%):WSi(重量%)をSiの原子量で割っ
た値 とすれば、Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料におけるS
iの含有量は、下記(2)式で表されるSi含有比率P
Siが2〜5%の範囲内とされる。
【0016】 PSi(%)={ASi/(AMn+ASi)}×100 …(2) ここに、アトマイズ法により得られた噴霧粉よりなる本
発明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料においては、粉
末製造時の酸化により粉末表面に酸化被膜が形成されて
いると、Fe系粉末と同時焼結する際の焼結性が低下
し、焼結体の強度や靭性の低下につながる。このため、
アトマイズ法による粉末製造時においては、粉末の酸化
を防止することが望ましい。本発明のCu−Ni−Mn
系焼結摩擦材料では、かかる観点から、上記Si含有比
率PSiが2%以上とされている。このSi含有比率PSi
の値が2%未満であると、アトマイズ法による粉末製造
時における粉末の酸化防止が不十分となり、焼結体の強
度や靭性が低下するおそれがある。また、Siは耐摩耗
性の向上にも寄与しうる。これは、Siの存在により焼
結体中にマンガンシリサイドが分散し、これが硬質粒子
として働くことに因るものである。したがって、耐摩耗
性を向上させる観点からは、上記Si含有比率PSiを3
%以上とすることが好ましい。
発明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料においては、粉
末製造時の酸化により粉末表面に酸化被膜が形成されて
いると、Fe系粉末と同時焼結する際の焼結性が低下
し、焼結体の強度や靭性の低下につながる。このため、
アトマイズ法による粉末製造時においては、粉末の酸化
を防止することが望ましい。本発明のCu−Ni−Mn
系焼結摩擦材料では、かかる観点から、上記Si含有比
率PSiが2%以上とされている。このSi含有比率PSi
の値が2%未満であると、アトマイズ法による粉末製造
時における粉末の酸化防止が不十分となり、焼結体の強
度や靭性が低下するおそれがある。また、Siは耐摩耗
性の向上にも寄与しうる。これは、Siの存在により焼
結体中にマンガンシリサイドが分散し、これが硬質粒子
として働くことに因るものである。したがって、耐摩耗
性を向上させる観点からは、上記Si含有比率PSiを3
%以上とすることが好ましい。
【0017】一方、上記Si含有比率PSiが5%を超え
ると、このCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料の融点を1
200℃以上に確保することができなくなる。すなわ
ち、上記Si含有比率PSiが5%を超えると、このCu
−Ni−Mn系焼結摩擦材料中でMnが偏析し、これに
より局部的にMnの濃度が高くなってこのMnの偏析部
位が局部的に溶融し、融点を1200℃以上に確保する
ことができなくなる。本発明のCu−Ni−Mn系焼結
摩擦材料の融点をより高温にする観点からは、Siの含
有量をできるだけ少なくすることが望ましく、したがっ
て上記Si含有比率PSiの上限は4%とすることが好ま
しい。また上記Si含有比率PSiが大きすぎると、上記
マンガンシリサイドの存在が過大となり、摩擦係数の増
大により相手材との摺動時に焼き付きが発生し易くなる
という不都合もある。
ると、このCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料の融点を1
200℃以上に確保することができなくなる。すなわ
ち、上記Si含有比率PSiが5%を超えると、このCu
−Ni−Mn系焼結摩擦材料中でMnが偏析し、これに
より局部的にMnの濃度が高くなってこのMnの偏析部
位が局部的に溶融し、融点を1200℃以上に確保する
ことができなくなる。本発明のCu−Ni−Mn系焼結
摩擦材料の融点をより高温にする観点からは、Siの含
有量をできるだけ少なくすることが望ましく、したがっ
て上記Si含有比率PSiの上限は4%とすることが好ま
しい。また上記Si含有比率PSiが大きすぎると、上記
マンガンシリサイドの存在が過大となり、摩擦係数の増
大により相手材との摺動時に焼き付きが発生し易くなる
という不都合もある。
【0018】このように本発明のCu−Ni−Mn系焼
結摩擦材料は、Ni及びSi等の含有量が特定範囲とさ
れることにより、融点が1200℃以上とされている。
このため、1200℃以上の高温下においても、Fe粉
末と同時焼結することが可能となる。したがって、例え
ばFe系粉末と本発明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材
料とを1200℃以上の高温下で同時成形・同時焼結に
より複合化させることにより、Fe系基材とCu−Ni
−Mn系合金よりなるCu系摩擦材との複合摩擦材を得
ることができる。そして、このように1200℃以上の
高温下で焼結することにより、Fe系基材のより高強度
化を図ることが可能となる。
結摩擦材料は、Ni及びSi等の含有量が特定範囲とさ
れることにより、融点が1200℃以上とされている。
このため、1200℃以上の高温下においても、Fe粉
末と同時焼結することが可能となる。したがって、例え
ばFe系粉末と本発明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材
料とを1200℃以上の高温下で同時成形・同時焼結に
より複合化させることにより、Fe系基材とCu−Ni
−Mn系合金よりなるCu系摩擦材との複合摩擦材を得
ることができる。そして、このように1200℃以上の
高温下で焼結することにより、Fe系基材のより高強度
化を図ることが可能となる。
【0019】なお、上記のように同時成形・同時焼結に
より複合化されたFe系基材とCu系摩擦材との接合面
においては、Fe系粉末及びCu−Ni−Mn系合金粉
末同士が十分に絡み合い、Fe系基材とCu系摩擦材と
の接合強度が十分に向上する。したがって、本発明のC
u−Ni−Mn系焼結摩擦材料によれば、接合強度が向
上したFe系基材との複合摩擦材を提供することが可能
となる。またこのような複合摩擦材によれば、Fe系基
材として十分な強度を確保し、一方Cu系摩擦材により
摩擦材料として必要な摩擦特性を確保することができる
ので、強度及び摩擦特性の双方を十分に満足させること
が可能となる。
より複合化されたFe系基材とCu系摩擦材との接合面
においては、Fe系粉末及びCu−Ni−Mn系合金粉
末同士が十分に絡み合い、Fe系基材とCu系摩擦材と
の接合強度が十分に向上する。したがって、本発明のC
u−Ni−Mn系焼結摩擦材料によれば、接合強度が向
上したFe系基材との複合摩擦材を提供することが可能
となる。またこのような複合摩擦材によれば、Fe系基
材として十分な強度を確保し、一方Cu系摩擦材により
摩擦材料として必要な摩擦特性を確保することができる
ので、強度及び摩擦特性の双方を十分に満足させること
が可能となる。
【0020】また、本発明のCu−Ni−Mn系焼結摩
擦材料中には、不可避的に存在する不純物の他、耐摩耗
性向上に寄与しうるセラミックス等の硬質粒子や潤滑性
向上に寄与しうるグラファイト等が適量含有されていて
もよい。
擦材料中には、不可避的に存在する不純物の他、耐摩耗
性向上に寄与しうるセラミックス等の硬質粒子や潤滑性
向上に寄与しうるグラファイト等が適量含有されていて
もよい。
【0021】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。 (試験例1)この試験例はMnによる硫化腐食防止の効
果を確認するものである。水アトマイズ法により、表2
に示すCu−Ni−Mn系合金組成の噴霧粉(粒度75
μm以下)よりなるCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料を
それぞれ準備した。なお、表2中、PMnは前記(1)式
に従って求めたMn含有比率である(以下、表3におい
ても同様。)。また、各元素の原子量は表1に示すとお
りである。
る。 (試験例1)この試験例はMnによる硫化腐食防止の効
果を確認するものである。水アトマイズ法により、表2
に示すCu−Ni−Mn系合金組成の噴霧粉(粒度75
μm以下)よりなるCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料を
それぞれ準備した。なお、表2中、PMnは前記(1)式
に従って求めたMn含有比率である(以下、表3におい
ても同様。)。また、各元素の原子量は表1に示すとお
りである。
【0022】ここに、この試験例では、水アトマイズ法
による粉末製造時における粉末の酸化を防止するための
Siを添加していない。得られた各噴霧粉を通常の成形
法により30mm×30mm×5mmの成形体とし、窒
素ガス雰囲気下、1120℃で30分間焼結を行い、試
験片を作製した。なお、試験片は焼結中に溶融すること
がないことを確認した。また、この試験片の表面は、焼
結後に試料研磨機にて鏡面に仕上げ、洗浄、乾燥してあ
る。
による粉末製造時における粉末の酸化を防止するための
Siを添加していない。得られた各噴霧粉を通常の成形
法により30mm×30mm×5mmの成形体とし、窒
素ガス雰囲気下、1120℃で30分間焼結を行い、試
験片を作製した。なお、試験片は焼結中に溶融すること
がないことを確認した。また、この試験片の表面は、焼
結後に試料研磨機にて鏡面に仕上げ、洗浄、乾燥してあ
る。
【0023】
【表1】 上記各試験片について、硫黄及びリン成分を含む極圧剤
が添加された手動変速機用ギアオイル(品質グレード
「API GL−5 SAE75W−90」、エッソ社
製)を用いて以下の条件で硫化腐食試験を行った。この
腐食試験は、ガラス容器に所定量のオイルを入れて所定
温度に加熱し、このオイル中に試験片を所定時間浸漬す
るものである。
が添加された手動変速機用ギアオイル(品質グレード
「API GL−5 SAE75W−90」、エッソ社
製)を用いて以下の条件で硫化腐食試験を行った。この
腐食試験は、ガラス容器に所定量のオイルを入れて所定
温度に加熱し、このオイル中に試験片を所定時間浸漬す
るものである。
【0024】オイル体積:1000cc オイル温度:135℃ 浸漬時間 :24時間 腐食試験後の試験片について、目視により表面を観察し
て変色状態を調べた。これは、硫化腐食が発生するとC
uSにより黒色に変色するため、目視により変色状態を
調べて硫化腐食の発生度合いを調べるものである。評価
結果は石油製品銅板腐食試験方法(JIS K 251
3)の銅板腐食基準に準拠して、変色度合を変色番号1
〜4で評価し(変色番号が大きいものほど濃く変色して
いることを示す。)、変色番号が1のものを○とし、変
色番号が2以上のものを×とした得られた結果を表2に
併せて示す。
て変色状態を調べた。これは、硫化腐食が発生するとC
uSにより黒色に変色するため、目視により変色状態を
調べて硫化腐食の発生度合いを調べるものである。評価
結果は石油製品銅板腐食試験方法(JIS K 251
3)の銅板腐食基準に準拠して、変色度合を変色番号1
〜4で評価し(変色番号が大きいものほど濃く変色して
いることを示す。)、変色番号が1のものを○とし、変
色番号が2以上のものを×とした得られた結果を表2に
併せて示す。
【0025】
【表2】
【0026】表2から明らかなように、Cu−Ni−M
n系合金に所定のMn含有比率PMn(PMn≧30)でM
nを添加した試料No.3〜6では、硫化腐食を好適に
抑えることができた。一方、Mnの添加量の少ない(P
Mn<30)試料No.1、2では、硫化腐食を十分に抑
えることができなかった。また、Cu−Ni−Mn系合
金中のMn含有比率PMnが36.64%であるNo.3
の試料について、上記硫化腐食試験後、マイクロオージ
ェを用いて表面付近の元素濃度を深さ方向に測定するこ
とにより、硫化腐食の硫化物生成の判定を行った。その
結果を図1に示す。
n系合金に所定のMn含有比率PMn(PMn≧30)でM
nを添加した試料No.3〜6では、硫化腐食を好適に
抑えることができた。一方、Mnの添加量の少ない(P
Mn<30)試料No.1、2では、硫化腐食を十分に抑
えることができなかった。また、Cu−Ni−Mn系合
金中のMn含有比率PMnが36.64%であるNo.3
の試料について、上記硫化腐食試験後、マイクロオージ
ェを用いて表面付近の元素濃度を深さ方向に測定するこ
とにより、硫化腐食の硫化物生成の判定を行った。その
結果を図1に示す。
【0027】図1から明らかなように、表面から6μm
程度の深さまでの部分において、酸素及びMnの元素濃
度が高く、この部分にMnの酸化物が形成されているこ
とがわかる。また、硫黄の存在は認められず、硫化物が
生成されていないことがわかる。したがって、試料表面
にMnの酸化物が形成されることにより、硫化腐食を効
果的に抑制できることがわかる。
程度の深さまでの部分において、酸素及びMnの元素濃
度が高く、この部分にMnの酸化物が形成されているこ
とがわかる。また、硫黄の存在は認められず、硫化物が
生成されていないことがわかる。したがって、試料表面
にMnの酸化物が形成されることにより、硫化腐食を効
果的に抑制できることがわかる。
【0028】(試験例2)この試験例は、Mn含有比率
PMnと硫化腐食抑制効果との関係を調べるものである。
表3に示すCu−Ni合金及びCu−Mn合金組成の噴
霧粉(粒度75μm以下)よりなる焼結摩擦材料を上記
試験例1と同様の水アトマイズ法によりそれぞれ準備
し、各噴霧粉から上記試験例1と同様に試験片を作製し
た。
PMnと硫化腐食抑制効果との関係を調べるものである。
表3に示すCu−Ni合金及びCu−Mn合金組成の噴
霧粉(粒度75μm以下)よりなる焼結摩擦材料を上記
試験例1と同様の水アトマイズ法によりそれぞれ準備
し、各噴霧粉から上記試験例1と同様に試験片を作製し
た。
【0029】上記各試験片について、上記試験例1と同
様に硫化腐食試験を行った。得られた結果を表3及び図
2に示す。
様に硫化腐食試験を行った。得られた結果を表3及び図
2に示す。
【0030】
【表3】
【0031】表3及び図2から明らかなように、at%
において、Cu−Ni−Mn系合金中のCuに対するM
n含有比率PMnを30%以上とすることにより、硫化腐
食を効果的に抑制できることがわかる。 (試験例3)この試験例は、Niの含有量とCu−Ni
系合金の融点及び耐焼付き性との関係を調べるものであ
る。
において、Cu−Ni−Mn系合金中のCuに対するM
n含有比率PMnを30%以上とすることにより、硫化腐
食を効果的に抑制できることがわかる。 (試験例3)この試験例は、Niの含有量とCu−Ni
系合金の融点及び耐焼付き性との関係を調べるものであ
る。
【0032】ここで、Cu−Ni系合金の状態図を図3
に示すように、Niの含有量が多いほどCu−Ni系合
金の融点が上昇することがわかる。そして、Cu−Ni
系合金においては、Niの含有量を40wt%以上とす
れば融点が1200℃以上になることがわかる。なお、
このCu−Ni系合金にはMn及びSiが含まれていな
い。
に示すように、Niの含有量が多いほどCu−Ni系合
金の融点が上昇することがわかる。そして、Cu−Ni
系合金においては、Niの含有量を40wt%以上とす
れば融点が1200℃以上になることがわかる。なお、
このCu−Ni系合金にはMn及びSiが含まれていな
い。
【0033】また、Niの含有量を種々変化させたCu
−Ni−Mn合金組成の噴霧粉(粒度75μm以下)よ
りなるCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料を上記試験例1
と同様の水アトマイズ法によりそれぞれ準備し、各噴霧
粉から上記試験例1と同様に試験片を作製した。なお、
各試験片におけるMnの含有量は、全体を100wt量
%としたとき15wt%と一定とした。得られた各試験
片についてリングオンディスク式摩擦摩耗試験機を用い
て以下の条件で焼き付き試験を行った。得られた結果を
図4に示す。
−Ni−Mn合金組成の噴霧粉(粒度75μm以下)よ
りなるCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料を上記試験例1
と同様の水アトマイズ法によりそれぞれ準備し、各噴霧
粉から上記試験例1と同様に試験片を作製した。なお、
各試験片におけるMnの含有量は、全体を100wt量
%としたとき15wt%と一定とした。得られた各試験
片についてリングオンディスク式摩擦摩耗試験機を用い
て以下の条件で焼き付き試験を行った。得られた結果を
図4に示す。
【0034】相手材:SCM20熱処理材 すべり速度:7.1m/sec 荷重:2分毎に1MPa加圧積算 潤滑油:SAE75W−90(商品名、エッソ社製) 図4から明らかなように、Niの含有量が多いほどCu
−Ni−Mn系合金の耐焼付き性が低下し、Niの含有
量が30wt%のとき焼き付き面圧が10MPaで、7
0wt%のとき焼き付き面圧が6MPaであることがわ
かる。ここで、例えばCu−Ni−Mn系合金をシンク
ロナイザリングの摺動部に適用する場合、耐焼付き性と
しては上記試験条件で6MPa以上必要であると想定さ
れる。このため、Cu−Ni−Mn系合金よりなるCu
系摩擦材をシンクロナイザリングの摺動部に適用する場
合、摩擦材として必要な耐焼付き性を確保する観点か
ら、Cu−Ni−Mn系合金におけるNi含有量の上限
は70重量%とされる。
−Ni−Mn系合金の耐焼付き性が低下し、Niの含有
量が30wt%のとき焼き付き面圧が10MPaで、7
0wt%のとき焼き付き面圧が6MPaであることがわ
かる。ここで、例えばCu−Ni−Mn系合金をシンク
ロナイザリングの摺動部に適用する場合、耐焼付き性と
しては上記試験条件で6MPa以上必要であると想定さ
れる。このため、Cu−Ni−Mn系合金よりなるCu
系摩擦材をシンクロナイザリングの摺動部に適用する場
合、摩擦材として必要な耐焼付き性を確保する観点か
ら、Cu−Ni−Mn系合金におけるNi含有量の上限
は70重量%とされる。
【0035】(試験例4)この試験例は、Cu−Ni−
Mn系合金の組成と融点及び硫化腐食抑制効果との関係
を調べるものである。上記試験例1で用いた試料No.
2〜6及び上記試験例2で用いた試料No.7〜12に
ついて、上記試験例1に示した硫化腐食試験の結果とと
もに合金組成をプロットするとともに、Cu−Ni−M
n系合金の融点を示すことにより、融点が1200℃以
上となり、かつ、硫化腐食を効果的に抑制できるCu−
Ni−Mn系合金の組成範囲を図5に示す。
Mn系合金の組成と融点及び硫化腐食抑制効果との関係
を調べるものである。上記試験例1で用いた試料No.
2〜6及び上記試験例2で用いた試料No.7〜12に
ついて、上記試験例1に示した硫化腐食試験の結果とと
もに合金組成をプロットするとともに、Cu−Ni−M
n系合金の融点を示すことにより、融点が1200℃以
上となり、かつ、硫化腐食を効果的に抑制できるCu−
Ni−Mn系合金の組成範囲を図5に示す。
【0036】すなわち、図5において、Cu−Ni−M
n系合金の融点が1200℃となることを示す線を境界
として、この境界線の左上の範囲がCu−Ni−Mn系
合金の融点が1200℃以上となる組成範囲である。ま
た図5において、Cu及びMnの各頂点を結ぶCu−M
n底辺のCu−27Mnの点A(Mnの含有量が27.
034wt%となる点であって、前記Mn含有比率PMn
が30%となる点)とNiの頂点とを結ぶ点線を境界と
して、この境界線の右側の範囲がMnの所定量以上(前
記Mn含有比率が30%以上)の添加により硫化腐食を
効果的に抑制できる範囲となる。したがって、図5にお
いて、斜線で示す部分が、i)Cu−Ni−Mn系合金
の融点が1200℃となり、ii)Mnの所定量以上の
添加により硫化腐食を効果的に抑制でき、iii)Ni
の含有量が70wt%以下となる組成範囲を示すことと
なる。
n系合金の融点が1200℃となることを示す線を境界
として、この境界線の左上の範囲がCu−Ni−Mn系
合金の融点が1200℃以上となる組成範囲である。ま
た図5において、Cu及びMnの各頂点を結ぶCu−M
n底辺のCu−27Mnの点A(Mnの含有量が27.
034wt%となる点であって、前記Mn含有比率PMn
が30%となる点)とNiの頂点とを結ぶ点線を境界と
して、この境界線の右側の範囲がMnの所定量以上(前
記Mn含有比率が30%以上)の添加により硫化腐食を
効果的に抑制できる範囲となる。したがって、図5にお
いて、斜線で示す部分が、i)Cu−Ni−Mn系合金
の融点が1200℃となり、ii)Mnの所定量以上の
添加により硫化腐食を効果的に抑制でき、iii)Ni
の含有量が70wt%以下となる組成範囲を示すことと
なる。
【0037】また図5から、Cu−Ni−Mn系焼結摩
擦材料の全体を100重量%としたとき、Mnの含有量
を25重量%以下とすれば、Cu−Ni−Mn系焼結摩
擦材料の融点が1200℃以上になることがわかる。し
たがって、Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料の融点を1
200℃以上にするには、Mnの含有量を25重量%以
下とする必要があり、融点をより高くする観点からはM
nの含有量を20重量%以下とすることが好ましい。
擦材料の全体を100重量%としたとき、Mnの含有量
を25重量%以下とすれば、Cu−Ni−Mn系焼結摩
擦材料の融点が1200℃以上になることがわかる。し
たがって、Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料の融点を1
200℃以上にするには、Mnの含有量を25重量%以
下とする必要があり、融点をより高くする観点からはM
nの含有量を20重量%以下とすることが好ましい。
【0038】(試験例5)この試験例は、Siの含有量
とCu−Ni−Mn系合金の融点との関係を調べるもの
である。水アトマイズ法により、表4に示すCu−Ni
−Mn系合金組成の噴霧粉(粒度75μm以下)よりな
るCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料をそれぞれ準備し
た。なお、表4中、PSiは前記(2)式に従って求めた
Si含有比率である(以下、表5においても同様。)。
また、各元素の原子量は表1に示すとおりである。
とCu−Ni−Mn系合金の融点との関係を調べるもの
である。水アトマイズ法により、表4に示すCu−Ni
−Mn系合金組成の噴霧粉(粒度75μm以下)よりな
るCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料をそれぞれ準備し
た。なお、表4中、PSiは前記(2)式に従って求めた
Si含有比率である(以下、表5においても同様。)。
また、各元素の原子量は表1に示すとおりである。
【0039】
【表4】
【0040】ここに、この試験例では、水アトマイズ法
による粉末製造時における粉末の酸化を防止するための
Siを種々の添加量で添加した。そして、各噴霧粉から
上記試験例1と同様に試験片を作製した。なお、各試験
片におけるNi、Mnの含有量は、全体を100wt量
%としたときそれぞれ55wt%、15wt%と一定と
した。得られた各試験片について融点を調べた。得られ
た結果を図6に示す。
による粉末製造時における粉末の酸化を防止するための
Siを種々の添加量で添加した。そして、各噴霧粉から
上記試験例1と同様に試験片を作製した。なお、各試験
片におけるNi、Mnの含有量は、全体を100wt量
%としたときそれぞれ55wt%、15wt%と一定と
した。得られた各試験片について融点を調べた。得られ
た結果を図6に示す。
【0041】図6から明らかなように、at%におい
て、Cu−Ni−Mn系合金中のMnに対するSi含有
比率PSiを5.0%以下とすることにより、融点が12
00℃以上になることがわかる。また、Si含有比率P
Siが4.8%である試料No.14及びSi含有比率P
Siが6.7%である試料No.15について、Fe系
(Fe−4Ni−1.5Mo−2Cu−0.5C)合金
粉末と同時成形及び同時焼結した。なお、焼結条件は、
窒素ガス雰囲気下、1130℃×30分とした。そし
て、得られた焼結体について、断面における金属組織を
顕微鏡写真(100倍)で調べた。その結果を図7に示
す。なお、図7(a)がSi含有比率PSiが4.8%で
ある試料No.14とFe系合金粉末との同時焼結体の
金属組織を示し、図7(b)がSi含有比率PSiが6.
7%である試料No.15とFe系合金粉末との同時焼
結体の金属組織を示す。また、図7(a)及び(b)に
おいて、上半分の白っぽく見える部分がCu−Ni−M
n系合金部分、下半分の黒っぽく見える部分がFe系合
金部分であり、Cu−Ni−Mn系合金部分に散点する
黒点は空孔である。
て、Cu−Ni−Mn系合金中のMnに対するSi含有
比率PSiを5.0%以下とすることにより、融点が12
00℃以上になることがわかる。また、Si含有比率P
Siが4.8%である試料No.14及びSi含有比率P
Siが6.7%である試料No.15について、Fe系
(Fe−4Ni−1.5Mo−2Cu−0.5C)合金
粉末と同時成形及び同時焼結した。なお、焼結条件は、
窒素ガス雰囲気下、1130℃×30分とした。そし
て、得られた焼結体について、断面における金属組織を
顕微鏡写真(100倍)で調べた。その結果を図7に示
す。なお、図7(a)がSi含有比率PSiが4.8%で
ある試料No.14とFe系合金粉末との同時焼結体の
金属組織を示し、図7(b)がSi含有比率PSiが6.
7%である試料No.15とFe系合金粉末との同時焼
結体の金属組織を示す。また、図7(a)及び(b)に
おいて、上半分の白っぽく見える部分がCu−Ni−M
n系合金部分、下半分の黒っぽく見える部分がFe系合
金部分であり、Cu−Ni−Mn系合金部分に散点する
黒点は空孔である。
【0042】図7から明らかなように、(a)のSi含
有比率PSiが4.8%である試料No.14では、Cu
−Ni−Mn系合金部分で溶融の発生が認められなかっ
たのに対し、(b)のSi含有比率PSiが6.7%であ
る試料No.15ではCu−Ni−Mn系合金部分でF
e合金との境界付近に溶融の発生が認められた。この溶
融の発生により、図7(b)のCu−Ni−Mn系合金
部分において、Fe系合金との境界付近に大きな欠陥
(大きめの黒点やこれが境界線に沿って連なった部分)
の発生が認められた。
有比率PSiが4.8%である試料No.14では、Cu
−Ni−Mn系合金部分で溶融の発生が認められなかっ
たのに対し、(b)のSi含有比率PSiが6.7%であ
る試料No.15ではCu−Ni−Mn系合金部分でF
e合金との境界付近に溶融の発生が認められた。この溶
融の発生により、図7(b)のCu−Ni−Mn系合金
部分において、Fe系合金との境界付近に大きな欠陥
(大きめの黒点やこれが境界線に沿って連なった部分)
の発生が認められた。
【0043】また、Si含有比率PSiが4.8%である
試料No.14及びSi含有比率P Siが6.7%である
試料No.15について、EPMA(Electron Probe M
icroAnalyzer )によりMn及びSiの分布状態を調べ
た。その結果を図8及び図9に示す。なお、図8は試料
No.14のEPMA写真であり、図8(a)はMnの
分布状態、図8(b)はSiの分布状態を示す。また、
図9はNo.15のEPMA写真であり、図9(a)は
Mnの分布状態、図9(b)はSiの分布状態を示す。
試料No.14及びSi含有比率P Siが6.7%である
試料No.15について、EPMA(Electron Probe M
icroAnalyzer )によりMn及びSiの分布状態を調べ
た。その結果を図8及び図9に示す。なお、図8は試料
No.14のEPMA写真であり、図8(a)はMnの
分布状態、図8(b)はSiの分布状態を示す。また、
図9はNo.15のEPMA写真であり、図9(a)は
Mnの分布状態、図9(b)はSiの分布状態を示す。
【0044】図8(a)から明らかなように、Si含有
比率PSiが4.8%である試料No.14ではMnの偏
析が認められなかったのに対し、図9(a)から明らか
なように、Si含有比率PSiが6.7%である試料N
o.15では、Mnの濃度が高くなる偏析部位(2〜5
mm程度の白い斑点)の存在が認められた。これによ
り、Si含有比率PSiを5.0%以下とすれば、Mnの
偏析が無くなり融点の向上を図れることがわかる。
比率PSiが4.8%である試料No.14ではMnの偏
析が認められなかったのに対し、図9(a)から明らか
なように、Si含有比率PSiが6.7%である試料N
o.15では、Mnの濃度が高くなる偏析部位(2〜5
mm程度の白い斑点)の存在が認められた。これによ
り、Si含有比率PSiを5.0%以下とすれば、Mnの
偏析が無くなり融点の向上を図れることがわかる。
【0045】また、図9の(a)と(b)とを見比べる
とわかるように、Mnの偏析部位とほぼ同じ箇所にSi
の偏析部位(図9(b)中、白い点の集まりからなる2
〜5mm程度の白い塊)の存在が認められ、したがって
この部位にマンガンシリサイドが存在していることがわ
かる。 (試験例6)この試験例は、Siの含有量と耐摩耗性と
の関係を調べるものである。
とわかるように、Mnの偏析部位とほぼ同じ箇所にSi
の偏析部位(図9(b)中、白い点の集まりからなる2
〜5mm程度の白い塊)の存在が認められ、したがって
この部位にマンガンシリサイドが存在していることがわ
かる。 (試験例6)この試験例は、Siの含有量と耐摩耗性と
の関係を調べるものである。
【0046】上記試験例5で得られた試料No.13〜
15について、リングオンディスク式摩擦摩耗試験機を
用いて、下記の条件で耐摩耗性を評価した。得られた結
果を図10に示す。 相手材:SCM420浸炭材 すべり速度:5.5m/sec 荷重:10MPa 潤滑油:MTF(GL−3)(商品名、エッソ社製) 評価時間:30分 図10から明らかなように、Si含有比率PSiの値が大
きくなれば耐摩耗性が向上する傾向にあり、耐摩耗性を
向上させる観点からはSi含有比率PSiを3.0%以上
とすることが好ましいことがわかる。
15について、リングオンディスク式摩擦摩耗試験機を
用いて、下記の条件で耐摩耗性を評価した。得られた結
果を図10に示す。 相手材:SCM420浸炭材 すべり速度:5.5m/sec 荷重:10MPa 潤滑油:MTF(GL−3)(商品名、エッソ社製) 評価時間:30分 図10から明らかなように、Si含有比率PSiの値が大
きくなれば耐摩耗性が向上する傾向にあり、耐摩耗性を
向上させる観点からはSi含有比率PSiを3.0%以上
とすることが好ましいことがわかる。
【0047】(試験例7)この試験例は、Siの含有量
とアトマイズ法による粉末製造時における粉末酸化の防
止効果との関係を調べるものである。すなわち、水アト
マイズ法による粉末製造時にSiを種々の添加量で添加
し、製造された各噴霧粉について、無機化学分析方法に
よりCu、Ni、Mn、Si及びOの含有量を調べた。
その結果を表5及び図11に示す。なお、噴霧粉中に含
まれるO成分は、粉末製造時の粉末酸化により粉末中に
含まれたものである。
とアトマイズ法による粉末製造時における粉末酸化の防
止効果との関係を調べるものである。すなわち、水アト
マイズ法による粉末製造時にSiを種々の添加量で添加
し、製造された各噴霧粉について、無機化学分析方法に
よりCu、Ni、Mn、Si及びOの含有量を調べた。
その結果を表5及び図11に示す。なお、噴霧粉中に含
まれるO成分は、粉末製造時の粉末酸化により粉末中に
含まれたものである。
【0048】
【表5】
【0049】表5及び図11から明らかなように、Mn
に対するSi含有比率PSiの値が大きいほど、O成分の
含有量が少なく、粉末酸化の防止効果が高いことがわか
る。そして、Si含有比率PSiが2.0%以上であれ
ば、噴霧粉中に含まれるO成分の含有量は1.00wt
%程度以下となることがわかる。そして、O成分の含有
量が1.00wt%程度以下であれば、粉末表面の酸化
被膜により焼結性が低下することを抑えて、焼結体の強
度や靭性を十分に確保することができると考えられる。
に対するSi含有比率PSiの値が大きいほど、O成分の
含有量が少なく、粉末酸化の防止効果が高いことがわか
る。そして、Si含有比率PSiが2.0%以上であれ
ば、噴霧粉中に含まれるO成分の含有量は1.00wt
%程度以下となることがわかる。そして、O成分の含有
量が1.00wt%程度以下であれば、粉末表面の酸化
被膜により焼結性が低下することを抑えて、焼結体の強
度や靭性を十分に確保することができると考えられる。
【0050】(試験例8)この試験例は、焼結温度とF
e系基材の強度との関係を調べるものである。Fe系
(Fe−4Ni−1.5Mo−2Cu−0.5C)合金
粉末を成形密度が7.1g/cm3 となるように所定形
状に成形し、この成形体を窒素ガス雰囲気下で種々の温
度で焼結した。なお、焼結時間はいずれも30分とし
た。得られた焼結体の引張強度をJIS Z 2241
金属材料引張試験方法により測定した結果を図12に
示す。
e系基材の強度との関係を調べるものである。Fe系
(Fe−4Ni−1.5Mo−2Cu−0.5C)合金
粉末を成形密度が7.1g/cm3 となるように所定形
状に成形し、この成形体を窒素ガス雰囲気下で種々の温
度で焼結した。なお、焼結時間はいずれも30分とし
た。得られた焼結体の引張強度をJIS Z 2241
金属材料引張試験方法により測定した結果を図12に
示す。
【0051】図12から明らかなように、焼結温度が1
200℃以上であればFe系焼結体の引張強度が100
0MPaを超え、Fe系焼結体の強度を十分に向上させ
うることがわかる。 (適用例)本発明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料を
シンクロナイザリングに適用する例について示す。
200℃以上であればFe系焼結体の引張強度が100
0MPaを超え、Fe系焼結体の強度を十分に向上させ
うることがわかる。 (適用例)本発明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料を
シンクロナイザリングに適用する例について示す。
【0052】このシンクロナイザリングは、シンクロナ
イザリング本体をなすFe系基材と、Fe系基材と一体
的に形成され、摺動面を形成するCu系摩擦材とからな
り、Fe系合金粉末及びCu−Ni−Mn系合金粉末を
同時成形及び同時焼結することにより得られたものであ
る。上記Fe系基材はFe−Cu−C系よりなる。ま
た、上記Cu系摩擦材は、上記試験例で用いたSi含有
比率PSiが4.8%の試料No.14のCu−Ni−M
n系合金(Cu−55Ni−15Mn−0.39Si合
金)よりなる。
イザリング本体をなすFe系基材と、Fe系基材と一体
的に形成され、摺動面を形成するCu系摩擦材とからな
り、Fe系合金粉末及びCu−Ni−Mn系合金粉末を
同時成形及び同時焼結することにより得られたものであ
る。上記Fe系基材はFe−Cu−C系よりなる。ま
た、上記Cu系摩擦材は、上記試験例で用いたSi含有
比率PSiが4.8%の試料No.14のCu−Ni−M
n系合金(Cu−55Ni−15Mn−0.39Si合
金)よりなる。
【0053】まず、粒径:150μmのFe−Cu−C
系粉末を準備する一方、粒径50μmのCu−Ni−M
n系合金粉末を準備した。そして、シンクロナイザリン
グ成形用の成形金型内に上記Cu−Ni−Mn系合金粉
末を供給下後、上記Fe−Cu−C系粉末を供給し、加
圧力:70MPa、加圧時間:5秒の条件で圧縮成形す
ることにより、Fe系粉末よりなる基材部とCu−Ni
−Mn系合金粉末よりなる摩擦材部とが一体的に形成さ
れた成形体を得た。
系粉末を準備する一方、粒径50μmのCu−Ni−M
n系合金粉末を準備した。そして、シンクロナイザリン
グ成形用の成形金型内に上記Cu−Ni−Mn系合金粉
末を供給下後、上記Fe−Cu−C系粉末を供給し、加
圧力:70MPa、加圧時間:5秒の条件で圧縮成形す
ることにより、Fe系粉末よりなる基材部とCu−Ni
−Mn系合金粉末よりなる摩擦材部とが一体的に形成さ
れた成形体を得た。
【0054】得られた成形体を焼結温度:1200℃、
焼結時間:30分、焼結雰囲気:窒素ガス雰囲気の条件
で同時焼結して、シンクロナイザリングとした。このよ
うに得られた焼結摩擦部材としてのシンクロナイザリン
グは、1200℃と高温下で焼結したものであるから、
Fe系基材の引張強度が1000MPaを超えるものと
なり、十分な強度向上が図られている。
焼結時間:30分、焼結雰囲気:窒素ガス雰囲気の条件
で同時焼結して、シンクロナイザリングとした。このよ
うに得られた焼結摩擦部材としてのシンクロナイザリン
グは、1200℃と高温下で焼結したものであるから、
Fe系基材の引張強度が1000MPaを超えるものと
なり、十分な強度向上が図られている。
【0055】また、このシンクロナイザリングはFe系
基材とCu系摩擦材とを同時成形及び同時焼結により得
たものであるから、Fe系基材とCu系摩擦材との接合
面においては、Fe系粉末及びCu−Ni−Mn系合金
粉末同士が十分に絡み合い、Fe系基材とCu系摩擦材
との接合強度が十分に向上していた。さらにこの適用例
によれば、一度の焼結工程により手間をかけることなく
製造することができ、製造工程の簡素化及び低コスト化
を図るのに有利となる。
基材とCu系摩擦材とを同時成形及び同時焼結により得
たものであるから、Fe系基材とCu系摩擦材との接合
面においては、Fe系粉末及びCu−Ni−Mn系合金
粉末同士が十分に絡み合い、Fe系基材とCu系摩擦材
との接合強度が十分に向上していた。さらにこの適用例
によれば、一度の焼結工程により手間をかけることなく
製造することができ、製造工程の簡素化及び低コスト化
を図るのに有利となる。
【0056】
【発明の効果】以上詳述したように本発明のCu−Ni
−Mn系焼結摩擦材料を摩擦材に適用すれば、摩擦材の
使用中に摩擦材表面にMnの酸化物が形成されるので、
硫黄を含む潤滑油の存在下で使用しても、この酸化物に
より硫黄と摩擦材中の銅等との反応を阻害して硫化腐食
を抑制することができる。
−Mn系焼結摩擦材料を摩擦材に適用すれば、摩擦材の
使用中に摩擦材表面にMnの酸化物が形成されるので、
硫黄を含む潤滑油の存在下で使用しても、この酸化物に
より硫黄と摩擦材中の銅等との反応を阻害して硫化腐食
を抑制することができる。
【0057】また、本発明のCu−Ni−Mn系焼結摩
擦材料は、Ni及びSi等の含有量が特定範囲とされる
ことにより融点が1200℃以上とされていることか
ら、1200℃以上の高温下においても、Fe粉末と同
時焼結することが可能となる。したがって、例えばFe
系粉末と本発明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料とを
1200℃以上の高温下で同時成形・同時焼結により複
合化させることにより、Fe系基材とCu−Ni−Mn
系合金よりなるCu系摩擦材との複合摩擦材を得ること
ができる。そして、このように1200℃以上の高温下
で焼結することにより、Fe系基材のより高強度化を図
ることが可能となる。
擦材料は、Ni及びSi等の含有量が特定範囲とされる
ことにより融点が1200℃以上とされていることか
ら、1200℃以上の高温下においても、Fe粉末と同
時焼結することが可能となる。したがって、例えばFe
系粉末と本発明のCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料とを
1200℃以上の高温下で同時成形・同時焼結により複
合化させることにより、Fe系基材とCu−Ni−Mn
系合金よりなるCu系摩擦材との複合摩擦材を得ること
ができる。そして、このように1200℃以上の高温下
で焼結することにより、Fe系基材のより高強度化を図
ることが可能となる。
【0058】よって、本発明の耐食性に優れたCu−N
i−Mn系摩擦材料を摩擦材に適用すれば、十分な強度
を確保するFe系基材と、十分な摩擦特性及び耐食性を
確保するCu系摩擦材とからなるシンクロナイザリング
等を提供することが可能となる。
i−Mn系摩擦材料を摩擦材に適用すれば、十分な強度
を確保するFe系基材と、十分な摩擦特性及び耐食性を
確保するCu系摩擦材とからなるシンクロナイザリング
等を提供することが可能となる。
【図1】試験例1に係り、硫化腐食試験後の表面付近に
おける元素濃度を示す線図である。
おける元素濃度を示す線図である。
【図2】試験例2に係り、Cuに対するMn含有比率P
Mnと硫化腐食抑制効果との関係を示す線図である。
Mnと硫化腐食抑制効果との関係を示す線図である。
【図3】試験例3に係り、Ni含有量と融点との関係を
示すCu−Ni系合金の状態図である。
示すCu−Ni系合金の状態図である。
【図4】試験例3に係り、Ni含有量と耐焼付き性との
関係を示す線図である。
関係を示す線図である。
【図5】試験例4に係り、Cu−Ni−Mn系合金にお
いて、合金組成と融点及び硫化腐食抑制効果との関係を
示す図である。
いて、合金組成と融点及び硫化腐食抑制効果との関係を
示す図である。
【図6】試験例5に係り、Mnに対するSi含有比率P
Siと融点との関係を示す線図である。
Siと融点との関係を示す線図である。
【図7】試験例5に係り、焼結体の金属組織を示す顕微
鏡写真であり、(a)はSi含有比率PSiが6.7%の
もの、(b)はSi含有比率PSiが4.8%のものであ
る。
鏡写真であり、(a)はSi含有比率PSiが6.7%の
もの、(b)はSi含有比率PSiが4.8%のものであ
る。
【図8】試験例5に係り、Si含有比率PSiが4.8%
であるCu−Ni−Mn系合金粉末の金属組織(元素の
分布状態)を示すEPMA写真であり、(a)はMnの
分布状態、(b)はSiの分布状態を示す。
であるCu−Ni−Mn系合金粉末の金属組織(元素の
分布状態)を示すEPMA写真であり、(a)はMnの
分布状態、(b)はSiの分布状態を示す。
【図9】試験例5に係り、Si含有比率PSiが6.7%
であるCu−Ni−Mn系合金粉末の金属組織(元素の
分布状態)を示すEPMA写真であり、(a)はMnの
分布状態、(b)はSiの分布状態を示す。
であるCu−Ni−Mn系合金粉末の金属組織(元素の
分布状態)を示すEPMA写真であり、(a)はMnの
分布状態、(b)はSiの分布状態を示す。
【図10】試験例6に係り、Si含有比率PSiと摩耗量
との関係を示す線図である。
との関係を示す線図である。
【図11】試験例7に係り、Si含有比率PSiと酸素量
(粉末製造時における粉末酸化の防止効果)との関係を
示す線図である。
(粉末製造時における粉末酸化の防止効果)との関係を
示す線図である。
【図12】試験例8に係り、焼結温度とFe系焼結体の
引張強度との関係を示す線図である。
引張強度との関係を示す線図である。
Claims (1)
- 【請求項1】 噴霧粉よりなるとともにFe系粉末と同
時焼結されるCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料であっ
て、(a)上記Cu−Ni−Mn系焼結材料の全体を1
00重量%としたとき、Niの含有量が45〜70重量
%の範囲内にあり、(b)Mnの含有量は、Cu及びM
nのat%の合計に対するMnのat%の割合が30%
以上であり、(c)Siの含有量は、Mn及びSiのa
t%の合計に対するSiのat%の割合が2〜5%の範
囲内にあり、(d)融点が1200℃以上であるという
上記(a)〜(d)の条件を全て満足することを特徴と
するCu−Ni−Mn系焼結摩擦材料。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP11055716A JP2000256775A (ja) | 1999-03-03 | 1999-03-03 | Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP11055716A JP2000256775A (ja) | 1999-03-03 | 1999-03-03 | Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2000256775A true JP2000256775A (ja) | 2000-09-19 |
Family
ID=13006610
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP11055716A Pending JP2000256775A (ja) | 1999-03-03 | 1999-03-03 | Cu−Ni−Mn系焼結摩擦材料 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2000256775A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109338202A (zh) * | 2018-11-23 | 2019-02-15 | 中国科学院兰州化学物理研究所 | 一种高强韧耐磨高熵铜合金 |
WO2020196791A1 (ja) * | 2019-03-28 | 2020-10-01 | 古河電気工業株式会社 | 銅合金条材およびその製造方法、それを用いた抵抗器用抵抗材料ならびに抵抗器 |
WO2023157806A1 (ja) * | 2022-02-18 | 2023-08-24 | 古河電気工業株式会社 | 銅合金材、ならびに銅合金材を用いた抵抗器用抵抗材料および抵抗器 |
-
1999
- 1999-03-03 JP JP11055716A patent/JP2000256775A/ja active Pending
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109338202A (zh) * | 2018-11-23 | 2019-02-15 | 中国科学院兰州化学物理研究所 | 一种高强韧耐磨高熵铜合金 |
WO2020196791A1 (ja) * | 2019-03-28 | 2020-10-01 | 古河電気工業株式会社 | 銅合金条材およびその製造方法、それを用いた抵抗器用抵抗材料ならびに抵抗器 |
JP6800387B1 (ja) * | 2019-03-28 | 2020-12-16 | 古河電気工業株式会社 | 銅合金条材およびその製造方法、それを用いた抵抗器用抵抗材料ならびに抵抗器 |
WO2023157806A1 (ja) * | 2022-02-18 | 2023-08-24 | 古河電気工業株式会社 | 銅合金材、ならびに銅合金材を用いた抵抗器用抵抗材料および抵抗器 |
JP7354481B1 (ja) * | 2022-02-18 | 2023-10-02 | 古河電気工業株式会社 | 銅合金材、ならびに銅合金材を用いた抵抗器用抵抗材料および抵抗器 |
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