JP2000160040A - 生分解性樹脂製成形物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 生分解性樹脂添加剤を増量することなく生分
解能力の促進された成形物にする。 【解決手段】 生分解性樹脂添加剤が添加された生分解
性樹脂に無機系抗菌剤を０．１〜３％添加した樹脂材料
で成形したことを特徴としている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、使用後に廃棄され
た合成樹脂製成形物を微生物環境下で自然分解させる生
分解性樹脂を用いて成形した成形物に関する。

【０００２】

【従来の技術】例えば、ボトル容器のように熱可塑性合
成樹脂で成形した成形物は、生産性がよく安価に大量に
生産され汎用されているが、廃棄後も分解されず、消却
処分をすると熱量が高く焼却炉を損傷するうえに有毒気
体を発生させ自然環境を損なうという社会的問題を有し
ている。

【０００３】このような問題を改善するために、天然成
分を用いて、廃棄後、微生物による分解により自然に還
元させる生分解樹脂が種々開発されている。

【０００４】この従来の生分解性樹脂は、その樹脂を１
００％使用して成形しなければならないうえに高価であ
るので、ボトル容器のように安価で大量消費する成形物
には経済的に使い切れず、あまり普及するに到っていな
い。

【０００５】そこで、従来のポリエチレン樹脂やポリプ
ロピレン樹脂に添加剤として２０％程度ブレンドして従
来の合成樹脂を分解可能とした生分解性樹脂「デグラ・
ノボン」（米国・ノボンインターナショナル社の登録商
標、米国特許ＮＯ．５３５２７１６）が開発され、高価
な生分解性樹脂の使用量が少なくて済み生分解性樹脂製
成形物のコストを抑えるようにしている。

【０００６】このデグラ・ノボンを混合した合成樹脂
は、ポリマー中の澱粉のバクテリアによる消化分解、デ
グラ・ノボンに含まれる自動酸化剤等の作用による酸化
劣化や光分解などによるポリマー分子量の減少と微粒子
への崩壊、ポリマー微粒子をバクテリアが消化し水と二
酸化炭素とバイオマスに分解、という相互に関連した生
分解メカニズムよって分解が誘発され加速し分解される
ものである。

【０００７】そして、ドイツでは自治体指定のゴミ袋に
採用され、収集した生ゴミを袋のまま堆肥化しており、
また、米国ディズニーランドワールドやリレハンメルオ
リンピックでは使い捨て容器に使用した実績がある。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この生
分解性樹脂添加剤を添加した生分解性樹脂による成形物
の生分解能を更に上げるには、生分解性樹脂添加剤の添
加量を増やす必要があり、この生分解性樹脂添加剤はポ
リエチレンやポリプロピレンに比較して高価であるの
で、成形物がコストアップしてまう。

【０００９】本発明は、上記の問題に鑑みてなされたも
ので、生分解性樹脂添加剤の添加使用量を増やすことな
く生分解能力を上げることにより、分解能力の促進され
た成形物を安価に提供することにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明は、生分解性樹脂
添加剤が添加された生分解性樹脂に無機系抗菌剤を０．
１〜３％添加した樹脂材料で成形したことを特徴として
おり、無機系抗菌剤を少量添加することにより、抗菌効
果を付加するとともに、分解機能が上がるという新たな
知見に基づき良好な分解機能を有する生分解性樹脂成形
物を安価に提供する手段とした。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施の形態
を貼付図面を参照しながら説明すると、図１は本発明の
生分解性樹脂成形物としての一例を示すボトル１であ
り、従来周知のＨＤＰＥ樹脂８０％と従来技術で既述し
た生分解性樹脂添加剤デグラ・ノボンを２０％とをブレ
ンドしてなる生分解性樹脂に、無機系抗菌剤の一種であ
る抗菌ガラス「イオンピュア」（石塚硝子株式会社の登
録商標）を１．５％ブレンドした材料を用いてブロー成
形方法で形成したものである。ボトル１の胴部２の肉厚
が約１ミリで容量約１８０−のボトル成形物である。

【００１２】このボトル１は、比較的短期日に消費され
ることを目的とする化粧品等日用品の保存容器として利
用されるものである。

【００１３】前記抗菌ガラス「イオンピュア」は、比較
的化学的耐久性の弱いガラス組成と抗菌・防カビ性能を
有するイオン化した銀・銅・亜鉛を組み合わせたもの
で、水、あるいは水分が存在すると、これらの金属イオ
ンが極少量ずつ徐放することにより抗菌・防カビ機能を
発揮するものであり、練り込み型のものは合成樹脂にブ
レンドされ、様々な日用品、家電製品、文房具、建材等
に利用されている。

【００１４】本願出願人は、前記抗菌剤「イオンピュ
ア」を添加したボトル１をＢ群とし、同様の形状の抗菌
剤を添加しない生分解性樹脂添加剤であるデグラ・ノボ
ンを２０％添加したＨＤＰＥ樹脂製のボトルをＡ群と
し、二種類のボトル片の分解性を比較テストした。

【００１５】このテストは、ＡＳＴＭ規格Ｄー３８２６
の試験方法（１−未満の分解性ＰＥ及びＰＰのフィルム
／シートの崩壊エンド．ポイントは試験体全数の７５％
に相当する数量の引っ張り伸度が５％以下に達した時点
＝脆くなったポイントを測定する方法）に基ずくもので
ある。実験方法は、８０℃温度促進テストによる伸びの
時系的変化を測定。温度促進テストの１日は２０℃の土
壌中で約２ヶ月、堆肥環境下（６０℃）における４〜５
日に相当する。

【００１６】テストは、ボトル１から得た所定の試験片
（長さ４インチ、幅１インチ、長さ方向両端各１インチ
を引張試験機グリップ部とする）を使用し、試験用オー
ブンで強制的にオーブン内の空気を循環させながら８０
℃の熱放射促進させ、２４時間毎に上記試験片にて引張
り試験を行いその時の伸び（％）を求め、堆肥環境下で
の経時変化を推測した。

【００１７】上記テストの結果、下記の表１、および、
表１のグラフである図２に示すデーター、および図３で
模式的に示す試験片からも明らかなように、抗菌剤「イ
オンピュア」を添加したボトル１のＢ群は、Ａ群よりも
劣化分解が促進されている意外な知見が得られた。ま
た、ボトルＢ群は、抗菌作用を有しているとともに、Ａ
群と比較して合成樹脂臭が少なく脱臭作用も認められ
た。

【００１８】

【表１】

【００１９】Ｂ群である本発明の成形物であるボトル１
は、テスト期間１１日で図２に示すように崩壊最終ポイ
ントＰに達し、視覚的な状態としては、強度が極端に低
下し且つ容易に崩壊する状態（バラバラになる）に変化
した。この結果、使用期限が約２年、分解期間に５年が
見込め、短期間に使い切るボトルとしては実用可能なラ
イフサイクルを有していることが判明した。

【００２０】抗菌剤「イオンピュア」を添加したボトル
１が添加されていないボトルよりも分解が促進される理
由は定かでないが、抗菌ガラスに含まれる銀イオンが紫
外線を吸収して水素と反応する、あるいは、酸化物の生
成に関与し、自動酸化反応を進行させる等で分子切断を
生じ、劣化を促進していることが考えられる。

【００２１】従って、一般に酸化劣化を防止するために
合成樹脂材料にブレンドされている酸化防止剤等の添加
量を考慮し、抑制されることが望ましい。

【００２２】本実施の形態のボトル１にあっては、ポリ
エチレンを使用したが、ポリプロピレン、あるいはオレ
フィン系以外の合成樹脂でも劣化分解促進化の期待がで
きる。

【００２３】尚、本実施の形態における成形物はブロー
成形によるボトル１としたが、成形方法は二軸延伸中空
成形あるいは射出成形でもよく、また、成形物もボトル
に限るものではなく、容器の蓋体をはじめ、他の所定期
間に自然分解が望まれる合成樹脂成型品一般に適用でき
ることはいうまでもない。

【００２４】

【発明の効果】以上のように、本発明によれば、生分解
性樹脂添加剤が添加された生分解性樹脂に安価な無機系
抗菌剤を少量添加した樹脂材料で成形することにより、
成形物の分解性能が促進されるので、高価な生分解性樹
脂添加剤を大量に使う必要がなく、分解性のよい成形物
を安価に提供することができる。

【００２５】また、抗菌剤を使用しているので抗菌効果
も有しているとともに、従来の生分解性樹脂添加剤を添
加しただけの生分解性樹脂形成物よりも合成樹脂臭が少
なく、安価で高機能な容器等の成形物とすることができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の生分解性樹脂製成形物の実施の形態を
ボトルとして一部分を破断して示す正面図。

【図２】本発明の生分解性樹脂製成形物（Ｂ）と従来の
生分解性樹脂製成形物（Ａ）との生分解比較テストを示
すグラフ。

【図３】生分解比較テストに使用した試験片の状態を模
式的に示すもので、（ａ）は従来の生分解性樹脂製成形
物（Ａ）の経日変化の状態を示し、（ｂ）は本発明の生
分解性樹脂製成形物（Ｂ）の経日変化の状態を示してい
る。

【符号の説明】

１ ボトル，２ 胴部，

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 生分解性樹脂添加剤が添加された生分解
   性樹脂に無機系抗菌剤を０．１〜３％添加した樹脂材料
   で成形したことを特徴とする生分解性樹脂製成形物。