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JP2000017389A - 靭性に優れたCr−Mo系低合金鋼継目無鋼管およびその継目無鋼管用Cr−Mo系低合金鋼 - Google Patents

靭性に優れたCr−Mo系低合金鋼継目無鋼管およびその継目無鋼管用Cr−Mo系低合金鋼

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Publication number
JP2000017389A
JP2000017389A JP10182172A JP18217298A JP2000017389A JP 2000017389 A JP2000017389 A JP 2000017389A JP 10182172 A JP10182172 A JP 10182172A JP 18217298 A JP18217298 A JP 18217298A JP 2000017389 A JP2000017389 A JP 2000017389A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
low alloy
toughness
steel pipe
content
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP10182172A
Other languages
English (en)
Inventor
Kunio Kondo
邦夫 近藤
Shigeru Nakamura
茂 中村
Takahiro Kushida
隆弘 櫛田
Takeshi Ichinose
威 一ノ瀬
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP10182172A priority Critical patent/JP2000017389A/ja
Publication of JP2000017389A publication Critical patent/JP2000017389A/ja
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】旧オーステナイト結晶粒度がJIS G 05
51に規定される粒度番号の7番以下の粗粒にもかかわ
らず、良好な靱性を有するCr−Mo系低合金鋼継目無
鋼管とそのためのCr−Mo系低合金鋼を提供する。 【解決手段】重量%で、Cr:0.05〜1.5%、M
o:0.05〜1.0%を含み、主な組織が焼戻しマル
テンサイトで、その粒界にM236 タイプを除く炭化物
で、主としてMC3 タイプの炭化物が析出しているCr
−Mo系低合金鋼継目無鋼管。合金成分のC、Si、M
n、P、S、soL、Al、Cr、Mo、Ti、N、B
の重量%は特定されており、下記の式で求められる有
効Bの量[B]が0〜0.0005%未満であり、かつ
CrとMoの関係が下記式を満たす合金 [B]=B+0.2259×Ti−0.7723×N・
・・ Mo×Cr≦0.55・・・

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、靭性に優れたCr
−Mo系低合金鋼継目無鋼管とこの継目無鋼管用のCr
−Mo系低合金鋼に関する。より詳しくは、熱間による
製管後、管をAr3変態点以下の温度に冷却せず、熱間加
工時の保有熱を有効に利用して焼入れ処理し、次いで焼
戻し処理する、いわゆるインライン熱処理プロセスによ
って製造されるCr−Mo系の低合金鋼からなる継目無
鋼管で、主な組織が焼戻しマルテンサイト、旧オーステ
ナイト結晶粒度がJIS G 0551に規定される粒
度番号の7番以下であるにもかかわらず、靱性が優れた
Cr−Mo系低合金鋼継目無鋼管とそのためのCr−M
o系低合金鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】継目無鋼管は、溶接管に比較して信頼性
が高いので、過酷な油井環境や高温環境で使用されるこ
とが多く、高強度化、靱性向上および耐サワー性の向上
が常に要求されている。これらの要求を満たすため、従
来は、1.5%までのCrと1.0%までのMoを含有
する例えば1Cr−0.5Mo鋼に代表される焼入れ性
の高いCr−Mo鋼を用い、オフラインの調質処理によ
って結晶粒の大きさがJIS G 0551に規定され
る粒度番号で8番以上の微細粒にして製造されてきた。
しかし、生産効率や省エネルギーの観点から考えると、
インラインの熱処理の方が有利である。
【0003】そこで、加工熱処理をうまく活用して結晶
粒の微細化を図ることによって靭性を確保し、オフライ
ンの熱処理を省略することが検討されてきた。例えば、
特開昭61−238917号公報には、インラインで冷
却、加熱を組み合わせて組織の微細化を図った後、直接
焼入れすることによって靭性の良好な鋼材を得る方法が
示されている。
【0004】しかし、適切な温度での加工と冷却、再加
熱を必要とするため、省エネルギー量はそれほど大きく
ない。また、装置の制約から、すべての製造サイズに適
用することが困難であるといった問題点があった。した
がって、インラインの熱処理で得られる比較的粗粒の結
晶粒径であっても靭性が確保できる手段が必要とされて
た。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、比較
的粗粒の結晶粒径、具体的には旧オーステナイト結晶粒
度がJIS G 0551に規定される粒度番号の7番
以下の粗粒にもかかわらず、良好な靱性を有するCr−
Mo系低合金鋼継目無鋼管とそのためのCr−Mo系低
合金鋼を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記
(1)の靭性に優れたCr−Mo系低合金鋼継目無鋼管
と、下記(2)および(3)の継目無鋼管用のCr−M
o系低合金鋼にある。
【0007】(1)重量%で、Cr:0.05〜1.5
%、Mo:0.05〜1.0%を含むCr−Mo系低合
金鋼継目無鋼管であって、主な組織が焼戻しマルテンサ
イトで、旧オーステナイト結晶粒度がJIS G 05
51に規定される粒度番号の7番以下であり、旧オース
テナイト粒界にM236 を除くタイプで、主としてM3
C タイプの炭化物が析出しているCr−Mo系低合金
鋼継目無鋼管。
【0008】(2)重量%で、C:0.15〜0.35
%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.1〜2.5
%、P:0.05%以下、S:0.004%以下、so
l.Al:0.001〜0.1%、Cr:0.05〜
1.5%、Mo:0.05〜1.0%、Nb:0〜0.
05%、Ti:0〜0.05%、V:0〜0.15%、
Ca:0〜0.0050%、Mg:0〜0.0050
%、REM:0〜0.0050%、N:0.01%以
下、B:0〜0.0030%、残部はFeおよび不可避
的不純物からなり、下記の式または式で求められる
有効Bの量〔B〕が0〜0.0005%未満であり、か
つCrとMoの関係が下記の式を満たす化学組成を有
する継目無鋼管用のCr−Mo系低合金鋼。
【0009】 Ti<3.419×Nの場合 〔B〕=B+0.2259×Ti−0.7723×N ・・・ Ti≧3.419×Nの場合 〔B〕=B ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Mo×Cr≦0.55 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ここで、各式中の元素記号は、鋼中のそれぞれの元素の
含有量(重量%)である。
【0010】(3)重量%で、C:0.15〜0.35
%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.1〜2.5
%、P:0.05%以下、S:0.004%以下、so
l.Al:0.001〜0.1%、Cr:0.05〜
1.5%、Mo:0.05〜1.0%、Nb:0〜0.
05%、Ti:0〜0.05%、V:0〜0.15%、
Ca:0〜0.0050%、Mg:0〜0.0050
%、REM:0〜0.0050%、N:0.01%以
下、B:0〜0.0030%、残部はFeおよび不可避
的不純物であり、下記の式または式で求められる有
効Bの量〔B〕が0.0005〜0.0015%であ
り、かつCrとMoの関係が下記の式を満たす化学組
成を有する継目無鋼管用のCr−Mo系低合金鋼。
【0011】 Ti<3.419×Nの場合 〔B〕=B+0.2259×Ti−0.7723×N ・・・ Ti≧3.419×Nの場合 〔B〕=B ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Mo×Cr≦0.16 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ここで、元素記号は、鋼中のそれぞれの含有量(重量
%)である。
【0012】上記の(2)と(3)に記載の本発明合金
鋼は、Pの含有量が0.015%以下であることが好ま
しい。
【0013】上記の本発明は、下記の知見に基づいて完
成された。すなわち、本発明者らは、生産効率や省エネ
ルギーの観点からインライン熱処理プロセスによって製
造された結晶粒径が粗大なCr−Mo系低合金鋼継目無
鋼管の靱性を向上させる方法について鋭意検討した結
果、次のことが判明した。
【0014】熱間での加工後、室温付近にまで一旦冷却
された鋼材をAC3変態点以上に再加熱して焼入れ焼戻し
処理を行う、いわゆるオフライン熱処理プロセスで製造
される鋼材では、旧オーステナイト粒界に析出するM23
6 タイプの炭化物が粗大になると靭性が低下する。そ
こで、焼入れ時に炭化物の粗大化を助長するB含有量を
適正化すれば、M236 タイプの炭化物が微細となり、
十分な靭性の確保が可能なことが知られている(鉄と
鋼、vol.72、No. 2、233頁(1986)参
照)。
【0015】オフライン熱処理プロセスで製造され、そ
の旧オーステナイト結晶粒度がJIS G 0551に
規定される粒度番号の8番以上である微細粒組織の鋼材
の場合には、確かに上記の方法で十分である。しかし、
インライン熱処理プロセスで製造され、その旧オーステ
ナイト結晶粒度がJIS G 0551に規定される粒
度番号の7番以下の粗粒組織の鋼材の場合、B含有量を
制御するだけでは、靱性は全く向上しない。
【0016】そこで、上記の課題を達成するために、旧
オーステナイト結晶粒度がJISG 0551に規定さ
れる粒度番号の7番以下の粗粒組織のCr−Mo系低合
金鋼材の靭性を支配する因子を見いだす調査を行った。
その結果、旧オーステナイト粒界に析出する炭化物をM
236 タイプからM3C タイプに変化させると、粗粒組
織であるにもかかわらず、靱性が飛躍的に向上する。ま
た、M3C タイプの炭化物は、B、CrおよびMoの含
有量を次のように制御すれば、M236 タイプの炭化物
に変わって確実に粒界に析出する。
【0017】先ず第1に、鋼に含まれるBの含有量を
0.0030%以下に制限する。そのうえで、焼入れ前
においてNと結合していないフリーなB(本明細書にお
いてはこれを有効Bという)であって、上記の式また
は式で求められる有効B量〔B〕を0〜0.0005
%未満にするとともに、CrとMoの含有量を前記の
式を満たす値にする。または、有効B量〔B〕を0.0
005〜0.0015%にするとともに、CrとMoの
含有量を前記の式を満たす値にする。
【0018】図1と図2は、CrとMoの含有量および
上記の有効B量〔B〕がM3C タイプの炭化物析出に及
ぼす影響と、靱性との関係を示す図の一例で、図1は有
効B量〔B〕が0〜0.0005%未満、図2は有効B
量〔B〕が0.0005〜0.0015%で、いずれも
TiとNの含有量がそれぞれ0〜0.03%、0.00
30〜0.0070%の場合である。
【0019】なお、図中の「○」印は、粒界にM236
タイプの炭化物が全く析出しておらず、M3C タイプの
炭化物のみで靱性が良好なことを示し、「●」印は、粒
界にM3C タイプの炭化物に加えてM236 タイプの炭
化物が析出していて靱性が良好でないことを示してい
る。
【0020】ここで、上記のM236 またはM3C にお
けるMは、Crが主で、そのほかFe、Mo、Mnなど
である。
【0021】上記の各条件のもとに、不純物中のPの含
有量を0.015%以下にすると、靭性が一段と向上す
る。
【0022】
【発明の実施の形態】最初に、本発明の靭性に優れたC
r−Mo系低合金鋼継目無鋼管を得るのに用いて最も好
適な本発明になるCr−Mo系低合金鋼について説明す
る。なお、以下において、「%」は「重量%」を意味す
る。
【0023】《鋼の化学組成について》 C:Cは、強度を確保する目的で添加する。しかし、そ
の含有量が0.15%未満であると、焼入性が不足し、
焼戻温度を低下させても必要とする強度を確保すること
が難しい。一方、0.35%を超えて含有させると、C
rとMoの含有量を後述するように抑制しても、M23
6 タイプの炭化物が粒界に析出するのを抑制できず、靭
性が低下する。また、焼き割れが発生しやすくなり、大
量生産が困難になる。このため、C含有量は0.15〜
0.35%とした。好ましい範囲は0.20〜0.28
%、より好ましい範囲は0.22〜0.25%である。
【0024】Si:Siは、通常、鋼の脱酸を目的に添
加され、焼戻し軟化抵抗を高めて強度上昇に寄与する元
素である。脱酸の効果は、0.1%以上の含有量で得ら
れる。しかし、1.5%を超えて含有させると、熱間加
工性が著しく乏しくなる。このため、Si含有量は0.
1〜1.5%とした。好ましい範囲は0.3〜0.8%
である。
【0025】Mn:Mnは、鋼の焼入性を増し、継目無
鋼管の強度を確保するのに有効な元素である。しかし、
その含有量が0.1%未満では、焼入性が不足し、強度
および靱性がともに低下する。一方、2.5%を超えて
含有させると偏析を増し、かえって靱性を低下させる。
このため、Mn含有量は0.1〜2.5%とした。
【0026】なお、Mnは、後述するCr、Moに比べ
ると小さいものの、M236 タイプの炭化物を析出させ
る作用を有している。したがって、その含有量は、高靭
性を確保する観点からはできるだけ少ない方が好まし
く、高くても0.8%程度まで、より好ましくは0.5
%までとするのが望ましい。
【0027】P:Pは、不純物として鋼中に不可避的に
存在する。その含有量が0.05%を超えると、粒界に
偏析して靱性を低下させるので0.05%以下とした。
なお、より一層の靭性向上を図る観点からはその含有量
を低減するのが好ましく、0.015%以下にすると良
好な靭性が得られ、さらに0.008%以下にすると靭
性がより一層良好になる。
【0028】S:Sは、上記のPと同様に、不純物とし
て鋼中に不可避的に存在する。その含有量が0.004
%を超えると、上記のMnまたは後述の添加する場合の
CaやREMと結合して介在物を形成し、靱性を低下さ
せるので、0.004%以下とした。なお、より一層の
靭性向上を図る観点からはその含有量を低減するのが好
ましく、0.0015%以下にすると良好な靭性が得ら
れ、さらに0.0008%以下にすると靭性がより一層
良好になる。
【0029】sol.Al:Alは、鋼の脱酸のために
必要な元素である。しかし、その含有量がsol.Al
で0.001%未満であると脱酸不足によって鋼質が劣
化し、靱性が低下する。一方、sol.Alで0.1%
を超えて含有させると、かえって靱性の低下を招くため
好ましくない。このため、sol.Al含有量は0.0
01%〜0.1%とした。好ましい範囲は0.01〜
0.04%である。
【0030】Cr、Mo:Crは、焼入性を高めるのに
有用な元素である。しかし、その含有量が0.05%未
満であると焼入性に劣るので、必要な強度が得られな
い。一方、1.5%を超えて含有させると、靱性の低下
が大きい。このため、Cr含有量は0.05〜1.5%
とした。
【0031】Moは、焼入性および焼戻軟化抵抗を高め
るために添加する。また、耐サワー性能を向上させる効
果もある。しかし、その含有量が0.05%未満では上
記の効果が得られない。一方、1.0%を超えて含有さ
せると、靱性が悪化する。このため、Mo含有量は0.
05〜1.0%とした。
【0032】ただし、CrとMoの含有量は、両者のバ
ランスが重要で、M236 タイプの炭化物が粒界に析出
するのを抑制し、M3C タイプの他に靱性に悪影響を及
ぼさないMCタイプやM6CタイプさらにはM73タイ
プなどの炭化物が若干含まれることもあるが、主として
3C タイプの炭化物を粒界に析出させるためには、後
に詳述する有効B量〔B〕に応じて下記の式または
式を満たす量でなければならない。すなわち、有効B量
〔B〕が0〜0.0005%未満の場合には式を満た
す量、有効B量〔B〕が0.0005〜0.0015%
の場合には式を満たす量とする必要がある。
【0033】Mo×Cr≦0.55 ・・・ Mo×Cr≦0.16 ・・・ ここで、元素記号は、鋼中のそれぞれの元素の含有量
(重量%)である。
【0034】Nb:Nbは、インライン熱処理プロセス
で製造された継目無鋼管の強度バラツキを大きくする作
用を有するので、強度バラツキを抑制する観点からは添
加しない方がよい。しかし、Nbは、二次析出によって
鋼を大幅に強化し、強度の向上に大きく寄与する元素で
ある。したがって、その効果を得たい場合には、Nbを
添加することができる。しかし、0.005%未満の含
有量では上記の効果が得られない。一方、0.05%を
超えて含有させると、強度バラツキおよび靭性低下が大
きくなる。このため、添加する場合のNb含有量は0.
005〜0.05%とするのが望ましく、より好ましく
は0.005〜0.02%とするのが望ましい。
【0035】Ti:Tiは、添加しなくてもよい。添加
すれば、Nとの結合力が強いので、高温から安定なTi
Nを形成してNを固定し、焼入れ時に鋼中のBがBNに
なるのを阻止して焼入性に有効なフリーなBにする作用
がある。また、二次析出効果によって鋼を強化し、強度
を向上させる作用もある。したがって、その効果を得た
い場合には、Tiを添加することができる。しかし、
0.005%未満の含有量では上記の効果が得られな
い。一方、0.05%を超えて含有させると、TiNや
TiCが多量に析出して靭性が低下する。このため、添
加する場合のTi含有量は0.005〜0.05%とす
るのが望ましく、より好ましくは0.005〜0.03
%とするのが望ましい。
【0036】V:Vは、添加しなくてもよい。添加すれ
ば、上記のNbやTiと同様に、二次析出効果によって
鋼を強化し、強度を向上させる作用がある。また、V
は、熱間加工時のVCの溶解度が大きいため、インライ
ンでの焼入時に全て固溶しており、強度バラツキの原因
にはならない。したがって、その効果を得たい場合に
は、Vを添加することができる。しかし、0.01%未
満の含有量では上記の効果が得られない。一方、0.3
0%を超えて含有させると靱性が大きく劣化する。この
ため、添加する場合のV含有量は0.01〜0.30%
とするのが望ましく、より好ましくは0.05〜0.2
5%とするのが望ましい。
【0037】Ca、Mg、REM これらの元素は、添加しなくてもよい。添加すれば、こ
れらの元素は鋼中のSと反応して溶鋼中で硫酸化物を生
成する。この硫酸化物は、圧延加工後も球状であり、圧
延方向に伸びることがない。このため、圧延直角方向の
衝撃性質を向上させ、さらには水素誘起割れを抑制する
作用もある。したがって、その効果を得たい場合には、
Ca、MgおよびREM(Ce、La、Yなど)のうち
から選ばれた1種または2種以上を添加することができ
る。
【0038】しかし、いずれの元素も、その含有量が
0.0005%未満では、上記の効果が得られない。一
方、いずれの元素も、0.0050%を超えて含有させ
ると鋼中の介在物量が増え、清浄度が低下し、種々の性
能が低下する。このため、添加する場合のこれらの元素
の含有量は、いずれの元素も、0.0005〜0.00
50%とするのが望ましく、より好ましくは0.000
05〜0.0025%とするのが望ましい。
【0039】N:Nは、上記のS、Pと同様に、不純物
として鋼中に不可避的に存在し、Al、TiおよびNb
と結合して窒化物を形成する。特に、その含有量が0.
01%を超えると、AlNやTiNが多量に析出し、靱
性、耐SSC性および耐HIC性に悪影響を及ぼす。こ
のため、N含有量は0.01%以下とした。好ましい上
限は、0.007%である。
【0040】B:Bは添加しなくてもよい。添加すれば
焼入れ性が向上し、特に厚肉の鋼管を製造する場合に有
効である。したがって、この効果を得たい場合には、B
を添加することができる。ただし、焼入れ性の向上に寄
与するBは、Nと結合していないフリーなB(有効B)
である。しかし、その有効B量〔B〕は、Nと添加する
場合のTiの影響を大きく受け、両者の関係が「Ti<
3.419×N」の場合には下記の式、「Ti≧3.
419×N」の場合には下記の式で求められる値にな
る。
【0041】 〔B〕=B+0.2259×Ti−0.7723×N ・・・ 〔B〕=B ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ すなわち、Nと添加する場合のTiの関係が「Ti<
3.419×N」の場合には、添加したTiによってす
べてのNがTiNとして固定されず、過剰のNがBと結
合してBNを生成する。このため、有効B量〔B〕は添
加B量よりも減少し、上記の式で求められる値にな
る。なお、式で求められる値が「負」になる場合に
は、添加B量のすべてがNと結合し、BNとして固定さ
れることを意味するので、有効B量〔B〕は0となる。
【0042】これに対し、Nと添加する場合のTiの関
係が「Ti≧3.419×N」の場合には、添加したT
iによってすべてのNがTiNとして固定され、BNは
生成しない。このため、この場合の有効B量〔B〕は添
加B量と等しので、式で表される値になる。
【0043】焼入れ性向上効果は、有効B量〔B〕が
0.0001%以上で得られる。しかし、過剰な有効B
は、靱性を低下させるM236 タイプの炭化物の粒界析
出を助長し、旧オーステナイト結晶粒度がJIS G
0551に規定される粒度番号の7番以下の粗粒組織の
Cr−Mo系低合金鋼材の靱性を低下させる。
【0044】ところが、上記の有効Bを全く存在させな
いか、存在させてもその有効B量〔B〕を0.0005
%未満にするとともに、CrとMoの含有量を前述した
式を満たすように調整すれば、M236 タイプの炭化
物に代わって主としてM3Cタイプの炭化物が粒界に析
出し、靱性が飛躍的に向上する。
【0045】また、有効B量〔B〕が0.0005%以
上の領域では、その上限を0.0015%に制限したう
えで、CrとMoの含有量を前述したの関係を満たす
ように調整すれば、上記の場合と同様に、M236 タイ
プの炭化物に代わって主としてM3C タイプの炭化物が
粒界に析出し、靱性が飛躍的に向上する。
【0046】すなわち、CrとMoの関係が前述した
式を満たす鋼では、有効B量〔B〕が0.0005%以
上であると、粒界にM236 タイプの炭化物が析出し、
靱性が著しく低下する。また、CrとMoの関係が前述
した式を満たす鋼では、有効B量〔B〕が0.001
5%を超えると、粒界にM236 タイプの炭化物が析出
し、靱性が著しく低下する。
【0047】このため、本発明においては、前述した
式または式で求められる有効B量〔B〕を、CrとM
oの関係が前述した式を満たす鋼については0〜0.
0005%未満、式を満たす鋼については0.000
5〜0.0015%と定めた。
【0048】なお、鋼中のB含有量が0.0030%を
超えると、炭硼化物の析出が多くなって耐硫化物応力割
れ性が低下する。また、冷却速度によってはかえって焼
入れ性が低下することもある。このため、B含有量の上
限は0.0030%とした。
【0049】《本発明のCr−Mo系低合金鋼継目無鋼
管について》本発明のCr−Mo系低合金鋼継目無鋼管
は、重量%で、Cr:0.05〜1.5%、Mo:0.
05〜1.0%を含むCr−Mo系低合金鋼継目無鋼管
であって、主な組織が焼戻しマルテンサイトで、旧オー
ステナイト結晶粒度がJISG 0551に規定される
粒度番号の7番以下であり、旧オーステナイト粒界にM
236 を除くタイプで、主としてM3C タイプの炭化物
が析出している継目無鋼管である。この継目無鋼管は、
上記の化学組成を有するCr−Mo系低合金鋼のビレッ
トを素材とし、常法、例えばマンネスマン−マンドレル
ミル製管法によって熱間仕上げ成形された鋼管を、Ar3
変態点以上の温度に維持した状態で、仕上げ圧延機の後
段に設けられた熱処理設備に供給して焼入れ処理し、そ
の後例えば600〜750℃で焼戻し処理することによ
って製造される。
【0050】
【実施例】表1と表2に示す化学組成を有する26種類
の鋼を準備した。なお、表中のNo. 1〜20は本発明
鋼、No. 21〜25は比較例鋼である。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】上記の各鋼からなる外径276mmのビレ
ットを作製し、1250℃に加熱した後、マンネスマン
−マンドレルミル製管法に供して外径244.5mm、
肉厚13.8mmの継目無鋼管に成形した。成形後の継
目無鋼管は、その温度がAr3変態点以上である間に、仕
上げ圧延機の後段に設けられた熱処理設備を構成する炉
内温度が950℃の補加熱炉に装入して5分間在炉させ
て均一に補加熱した後に水焼入れした。次いで、水焼入
れ後の継目無鋼管は、上記の熱処理設備を構成する焼戻
し炉に装入し、表3に示す各条件で焼戻し処理するイン
ライン熱処理プロセスで製品管に仕上げた。
【0054】得られた各製品管の長手方向から、API
(アメリカ石油協会)規格の5CTに規定される弧状引
張り試験片とJIS Z 2202に規定されるフルサ
イズの4号試験片とを採取して引張試験とシャルピー衝
撃試に供し、降伏強度(MPa)と破面遷移温度(℃)
を調べた。また、同様に、粒度測定試験片とミクロ観察
試験片を採取し、旧オーステナイトの結晶粒度の大きさ
(JIS G 0551に規定される粒度番号)と旧オ
ーステナイト粒界に析出した炭化物のタイプを抽出レプ
リカ法を用いて調べた。これらの調査結果を、表3に併
せて示した。
【0055】
【表3】
【0056】表3に示す結果から明らかなように、本発
明鋼のうち、有効B量〔B〕(表1と表2中の「※2」
欄に示す)が0〜0.0005%未満で、かつ式「Mo
×Cr≦0.55」を満たすNo. 1〜10の本発明鋼で
製造された継目無鋼管(No.1〜10)は、すべて結晶
粒度番号が7番以下で、その粒界にはM236 タイプの
炭化物は析出しておらず、主としてM3C タイプの炭化
物が析出していた。そのため、降伏強度が821MPa
以上と高強度にもかかわらず、破面遷移温度が−21℃
以下で良好な靭性を有していた。なかでも、Pの含有量
を低減したNo.6〜10の本発明鋼で製造された継目無
鋼管(No. 6〜10)の靱性は、破面遷移温度が−44
℃以下で一段と良好であった。
【0057】また、Bの含有量が0.0005〜0.0
030%で、かつ式「Mo×Cr≦0.16」を満たす
No. 11〜20の本発明鋼で製造された継目無鋼管(N
o. 11〜20)も、すべて結晶粒度番号が7番以下
で、その粒界にはM236 タイプの炭化物は析出してお
らず、主としてM3C タイプの炭化物が析出していた。
そのため、降伏強度が823MPa以上と高強度にもか
かわらず、破面遷移温度が−20℃以下で良好な靭性を
有していた。なかでも、Pの含有量を低減したNo.16
〜20の本発明鋼で製造された継目無鋼管(No. 16〜
20)の靱性は、破面遷移温度が−45℃以下で一段と
良好であった。
【0058】これに対し、比較鋼のうち、各元素の含有
量は本発明で規定する範囲内ではあるが、CrとMoの
関係が本発明で規定する上記の式「Mo×Cr≦0.5
5」または「Mo×Cr≦0.16」を満たさないNo.
21〜24の比較鋼で製造された継目無鋼管(No. 21
〜24)は、すべて結晶粒度番号が7番以下で、しかも
その粒界にはM236 タイプの炭化物のみが析出してい
た。そのため、降伏強度は828MPa以上と高強度で
はあるが、破面遷移温度が20℃以上で靭性が劣ってい
た。
【0059】また、各元素の含有量は本発明で規定する
範囲内で、かつCrとMoの関係も本発明で規定する上
記の式「Mo×Cr≦0.16」を満たすものの、有効
B量〔B〕が本発明で規定する値を満たさないNo. 25
の比較鋼で製造された継目無鋼管(No. 25)は、結晶
粒度番号が5.5番で、しかもその粒界にはM236
イプの炭化物のみが析出していた。そのため、降伏強度
は828MPaと高強度ではあるが、破面遷移温度が4
1℃で靭性が著しく劣っていた。
【0060】さらに、CrとMoの関係、N、TiとB
の関係は本発明で規定する条件を満たすものの、Pの含
有量が0.061%と高いNo. 26の比較鋼で製造され
た継目無鋼管(No. 26)は、結晶粒度番号が7番以下
で、その粒界にはM236 タイプの炭化物は析出してお
らず、主としてM3C タイプの炭化物が析出していた。
しかし、Pの含有量が高すぎるために、降伏強度は83
1MPaと高強度ではあるが、破面遷移温度が19℃で
靭性が劣っていた。
【0061】
【発明の効果】本発明のCr−Mo系低合金鋼継目無鋼
管は、旧オーステナイト結晶粒度がJIS G 055
1に規定される粒度番号で7番以下の粗粒であるにもか
かわらず、破面遷移温度が−20℃以下という優れた靱
性を有している。このため、過酷な油井環境や高温環境
で使用する場合の信頼性が高い。
【0062】また、本発明の継目無鋼管用Cr−Mo系
低合金鋼は、熱間加工時の保有熱を有効に利用して焼入
れ処理した後焼戻し処理する、いわゆるインライン熱処
理プロセスによって製造すると、結晶粒度が7番以下の
粒界にM236 タイプを除く炭化物で、主としてM3
タイプの炭化物が析出する。このため、上記本発明の靱
性に優れたCr−Mo系低合金鋼継目無鋼管を安価に製
造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】CrおよびMoの含有量と有効B量〔B〕がM
3C タイプの炭化物析出に及ぼす影響と、靱性との関係
を示す図の一例で、有効B量〔B〕が0〜0.0005
%未満の場合の図である。
【図2】CrおよびMoの含有量と有効B量〔B〕がM
3C タイプの炭化物析出に及ぼす影響と、靱性との関係
を示す図の一例で、有効B量〔B〕が0.0005〜
0.0015%の場合の図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 櫛田 隆弘 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号住 友金属工業株式会社内 (72)発明者 一ノ瀬 威 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号住 友金属工業株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、Cr:0.05〜1.5%、M
    o:0.05〜1.0%を含むCr−Mo系低合金鋼継
    目無鋼管であって、主な組織が焼戻しマルテンサイト
    で、旧オーステナイト結晶粒度がJIS G 0551
    に規定される粒度番号の7番以下であり、旧オーステナ
    イト粒界にM236 を除くタイプで、主としてM3C タ
    イプの炭化物が析出していることを特徴とする靭性に優
    れたCr−Mo系低合金鋼継目無鋼管。
  2. 【請求項2】重量%で、C:0.15〜0.35%、S
    i:0.1〜1.5%、Mn:0.1〜2.5%、P:
    0.05%以下、S:0.004%以下、sol.A
    l:0.001〜0.1%、Cr:0.05〜1.5
    %、Mo:0.05〜1.0%、Nb:0〜0.05
    %、Ti:0〜0.05%、V:0〜0.15%、C
    a:0〜0.0050%、Mg:0〜0.0050%、
    REM:0〜0.0050%、N:0.01%以下、
    B:0〜0.0030%、残部はFeおよび不可避的不
    純物からなり、下記の式または式で求められる有効
    Bの量〔B〕が0〜0.0005%未満であり、かつC
    rとMoの関係が下記の式を満たす化学組成を有する
    ことを特徴とする継目無鋼管用のCr−Mo系低合金
    鋼。 Ti<3.419×Nの場合 〔B〕=B+0.2259×Ti−0.7723×N ・・・ Ti≧3.419×Nの場合 〔B〕=B ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Mo×Cr≦0.55 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ここで、各式中の元素記号は、鋼中のそれぞれの元素の
    含有量(重量%)である。
  3. 【請求項3】重量%で、C:0.15〜0.35%、S
    i:0.1〜1.5%、Mn:0.1〜2.5%、P:
    0.05%以下、S:0.004%以下、sol.A
    l:0.001〜0.1%、Cr:0.05〜1.5
    %、Mo:0.05〜1.0%、Nb:0〜0.05
    %、Ti:0〜0.05%、V:0〜0.15%、C
    a:0〜0.0050%、Mg:0〜0.0050%、
    REM:0〜0.0050%、N:0.01%以下、
    B:0〜0.0030%、残部はFeおよび不可避的不
    純物からなり、下記の式または式で求められる有効
    Bの量〔B〕が0.0005〜0.0015%であり、
    かつCrとMoの関係が下記の式を満たす化学組成を
    有することを特徴とする継目無鋼管用のCr−Mo系低
    合金鋼。 Ti<3.419×Nの場合 〔B〕=B+0.2259×Ti−0.7723×N ・・・ Ti≧3.419×Nの場合 〔B〕=B ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Mo×Cr≦0.16 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ここで、各式中の元素記号は、鋼中のそれぞれの元素の
    含有量(重量%)である。
  4. 【請求項4】Pの含有量が0.015重量%以下である
    ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の継目
    無鋼管用のCr−Mo系低合金鋼。
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