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『TASK COFFEE』が再定義するスペシャルティコーヒーの素晴らしさ〜ONIBUS OB 訪問 Vol.4~
9年に渡りONIBUS COFFEE / ABOUT LIFE COFFEE BREWERS(ALCB)でキャリアを重ねた田崎将司さん。2024年独立し、11月23日勤労感謝の日、世田谷区千歳船橋にTASK COFFEEをオープンしました。ONIBUSの経験を糧に田崎さんがTASK COFFEEで実現したいこととは?3坪のお店いっぱいに詰め込んだ想いを伺いました。
田崎将司
1990年東京都世田谷区生まれ。2015年ONIBUS入社。2024年に独立のため退社するまで、店舗マネージャーや、イベント出店、グッズ制作など幅広く活躍。音楽、自転車、さまざまなカルチャーに精通。
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スペシャルティコーヒー夜明け前
ONIBUS時代には、そのコーヒーへの愛情と知識でスタッフにも一目置かれる存在だった田崎さんですが、そもそもスペシャルティコーヒーと出会ったきっかけは?
「大学時代からバンドをやっていて、卒業してからもプロを目指して続けていました。その頃に”夜カフェ”でバイトをしていて、コーヒーとかアルコールとかドリンク全般を作るのが自分の仕事でした。でも結局バンドは解散することになって、何か手に職をつけなきゃいけなくなって、自分はお酒は全く飲めないので、それならコーヒーだと。バンドを解散した2012年は、ONIBUSとかFUGLENとかスペシャルティコーヒーをやってるお店が少しずつできてきた頃でした。今でも自分が神と崇めるノルウェーのコーヒーショップ『ティムウェンデルボー』は、当時FUGLENで扱っていたのを飲んだのが出会いです。豆も買って帰って、それまで常識だった土手を作るような注ぎ方でドリップコーヒーを淹れてみたら薄い!納得いかなくて調べたら、エアロプレスっていう器具があったから、それも買って試してみたんです。そうしたら同じ豆でも美味しくできたし、未知のコーヒーの世界があることがとても面白かったんです。そこからは時間もエネルギーも全部コーヒーに費やした感じです。」
田崎さんが”スペシャルティコーヒー夜明け前”と振り返る2010年代。業界ですでに活躍している同世代の存在に焦りも感じながらも、田崎さんはコーヒーへのブレない愛情をもって自身の活路を見出していきます。
「できたばかりのALCB(2014年5月オープン)にも客として通っていました。2種類あった1周年記念Tシャツはどちらも買いました。その他にも、どこかでパブリックカッピング(誰でも参加できるコーヒーのテイスティング会)があるとだいたい行ってました。そうするといつも会う人がいる。中には同年代も多くて、彼らはもうコーヒーショップでバリバリ働いてたり、自分のお店持ってる人もいて焦りましたね。自分はほとんど未経験。本気でコーヒーがやりたいと思っても、その頃は未経験で働ける店は今のように多くありませんでした。東京カフェマニアというウェブサイトを毎日チェックしてはお店に行き、採用情報が出ているところ全部面接を受けに行きました」
やっと受けられたONIBUSの面接では、極度の緊張からか実技トライアルで大きなミスを起こしてしまいます。絶対不採用になると思いきや、当時ALCBにいた神戸さん(現Sniiteオーナー)が『あいつ良いヤツだから』と拾ってくれたのが、ONIBUS/ALCBでのキャリアの始まりでした。Tシャツ買っておいてよかった!
ONIBUSに無事入社した田崎さんはその後、着実に経験を重ね、店舗マネージャー、ルワンダへコーヒー買付、新店舗の立ち上げなど多方面で活躍。後輩スタッフ向けのカッピング夜練を開催したり、ブリュワーズの大会に参加したり、ひたすら貪欲にコーヒーに向き合ってきました。日々インプットと達成感のあるONIBUSの仕事は楽しく、もともと独立は考えていなかったと言いますが・・・
「この数年でスペシャルティコーヒーはどんどん一般的に、広義になってきました。自分は価格も味わいも毎日楽しめるようなコーヒーが好きなんですが、今のスペシャルティコーヒーは、それとは離れた方向に進みはじめているのも感じています。高級なコーヒーとか、コンペティションに出すようなコーヒーは確かに特別だけど、自分はあえて日常的に飲めるスペシャルティコーヒーの素晴らしさを再定義したいと思ったんです。それを自分の地元でやってみたいと思ったときに、独立を決意しました」
地元でスペシャルティコーヒーの素晴らしさを再定義
そしてついに誕生したTASK COFFEE。生まれ育った世田谷に、自分が好きなスペシャルティコーヒーの素晴らしさを根付かせたいという願いを体現するように、さまざまな仕掛けが施されています。
「自分自身はタスク管理が苦手です(笑)。多くの人にとっても”タスク”という言葉は、”仕事”とか”やらなきゃいけないこと”とかネガティブなイメージがあるかもしれない。そんな言葉をあえて店名にして、遊び心を出していけば前向きになれるかなと思ってつけた名前です。なんとなく苗字の田崎(TASAKI)にも似ていて、分かりやすい短いフレーズというのも気に入りました。
物件は、地元・一人でできる小さなサイズ・駅近という条件で探していたところ、見つかったのがこの場所です。もともと自家焙煎のコーヒーショップだった場所で、焙煎用の煙突も最初から付いていたこともあり即決しました。
内装設計は大学の同級生に依頼し、施工も彼と自分の2人で行いました。自分が好きな北欧の雰囲気を取り入れたくて、照明はデンマークの『ルイスポールセン』を選び、塗装もデンマークのブランドのものを使っています。壁にはデンマークで見られる古いレンガの色、カウンターの側面には冬のコペンハーゲンをモチーフにした色を選び、DIYで塗りました。
TASK COFFEEでは、焙煎も自分でしています。自分が最初に淹れたティムのコーヒーは難易度が高かったので、『淹れやすい』コーヒーであることも気にかけています。焙煎は浅すぎず、深すぎず。とはいえ、自分はまだ焙煎の経験は浅いので、淹れやすいコーヒーがどういうものか検証するために、今はとにかく焙煎の数を積み重ねているところです。豆販売は100gは展開せずに200gだけ。これはエイジング(焙煎してからの時間経過による味の変化)を楽しんでほしいからそうしてます。お客さんに伝えるレシピも極力シンプルにしているので、ぜひ家でもトライしてほしいです。
お店でのおすすめは、機械でまとめて作るバッチブリュー。ハンドドリップより安くて、淹れたてが5秒で出せます。日常使いするなら、早くて美味しいのが一番良い。マグカップもシンプルで頑丈なものにしました。これでガブガブスペシャルティコーヒーを飲んでほしいです。」
オープンしてまもなく1ヶ月。常連さんもつき、登下校中の小学生と挨拶を自然に交わすなどすでに街の風景に溶け込んでいるようです。
「今のところ、朝7時から毎日お店を開けてます。やっぱり朝はコーヒーのゴールデンタイム。スペシャルティコーヒーを日常に取り入れてもらうには、毎朝やっている状態を作ろうと。朝の散歩や出勤途中に寄ってくれる人が少しずつ増えています。オープンするまでの準備期間が5ヶ月もかかってしまったので、今は大変というより働ける喜びの方が大きいです。
地域に根ざした存在になるには、その街に機能していることも大切。だから美味しいコーヒーが作れるとか、良いサービスができるとかは当然で、『その街を知っている』ということも良いバリスタの条件だと思っています。例えば『ガッツリ食べたいならここだよ』とか『ナチュラルワイン飲むならあそこがおすすめ』みたいな。地元の人も、外から来た人も、その街のことをもっと好きになれれば、再訪のきっかけにもなるし。もっとローカルコミュニティを大切にしていきたいと思っています。たとえば、お客さんたちとランニングやサイクリングをして、その後お店でバッチブリューをガブ飲みするとか。コーヒーとアクティビティが自然なかたちで融合すれば、”サスティナブル”とか”トレーサビリティ”にも実感が伴ってくるはず。そうなっていけたらいいなと思います。」
田崎さんは、ONIBUSの「コーヒーで、街と暮らしを豊かにする」というビジョンには今も共感しているといいます。そんな彼が作ったTASK COFFEEは、よりディープに街にコミットし、スペシャルティコーヒーを身近な存在にしていくでしょう。これからどんな場所になっていくのか楽しみです。
ここでは伝えきれなかった苦労話や、抽出哲学については、ぜひTASK COFFEEで!
Interview and photos by Mai Yamada
店舗情報
TASK COFFEE 〒156-0054 東京都世田谷区桜丘5−21−6
INSTAGRAM @taskcoffee_setagaya
WEB https://taskcoffee.my.canva.site/