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フリーランスを長く続けていくために一番大事だと思うこと

 以前、とある会社の方に誘われて飲みに行ってみると、そこには社員さんや契約社員さんが大勢いて質問大会のようになってしまったことがあります。あまり大上段から「こうすべきだー」なんてことを語るキャラクターではないので、ああかなーこうかなーという感じで四苦八苦して答えていたわけですが、その最後に出た質問がこれでした。

「フリーランスを長く続けていくために一番大事だと思うことはなんですか?」

 ああ、それなら何も悩むことはありません。
「計画を立てることです」
 即答でした。

 多分向こうが考えていた答えとは随分ちがうものだったんでしょう。「へ?」と拍子抜けした顔をされたのがすごく印象に残っています。だってそうですよね、これじゃあいつもいつも上司から計画を求められるサラリーマンと同じ。自由!才能で食う!ってイメージのフリーランスとは随分かけはなれているように思えます。
 でも昔から「一番大事なのは計画を立てること」と信じてやってきました。そして、そろそろフリーランスになって17年が経とうとする今も、その思いは変わっていません。

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計画は予測の精度を上げ、実践の質を向上させる

 ここでいう計画というのは何かというと、目標と検証をワンセットにした覚え書きです。たとえば「今年はいっぱい稼ぐぞ!」だとそれが達成できたか検証する術はありませんが、「今年は1千万稼ぐぞ!」だと実際に稼げたかどうかを検証することができます。

 目標を掲げたからには、次に、その1千万をどう稼ぎ出すのか考えないといけません。一点集中型で稼ぐのか、それとも毎月こつこつと稼ぐのか。
 毎月こつこつ稼ぐなら、月の売上は1千万÷12カ月なわけだから、約84万円は必要です。月の稼働日を20日間とすると、1日に売り上げなきゃいけない金額は4万2千円。じゃあそれを今請けている仕事の単価と本数で実現可能なのか。可能ならばそれで良し。可能じゃないなら、どうやって可能にするかを考えないといけません。

 そこではじめて、自分の仕事に対して受け身ではなく自分自身を起点として考えた具体的な工夫が生まれてきます。

 たとえば受注本数が少ないのであれば、それは新規の顧客が足りないのか、それともリピーターが足りないのかを考える。新規が足りないなら露出度の問題かもしれないし、自分の仕事の質が人目を惹けるレベルに達していないのかもしれない。リピーターが足りないのなら、納品した仕事の質に問題があるのかもしれない。
 じゃあこうしたらどうだろう。何か工夫を盛り込んで――それはちょっとしたタッチの変化かもしれないし、メールでのやり取りに対する姿勢を変えてみることかもしれない――それによる変化も、目標値を計画として定め、受注本数の変化を月単位&年単位で観察して検証する。良くなっていればその取り組みを継続し、そうでなければ別の方策を考える。

 大きな目標を細かい目標にばらしていって、そのそれぞれに実現計画を立てて、必ず検証を行い、予測精度の修正と次の計画立案につなげていく。この繰り返しが、ひとつひとつの仕事の質も高めることにつながります。
 もう書きながらすごく「会社っぽいなあ」って思うんですけど、これが本当に大事なことだと思うんです。

計画の確度を上げることが収入の底上げにつながる

 計画大事だよって語る上でもう一点欠かせないのが収入の話。年収です。収入って「働いた結果が収入になる」んじゃなくて、「そのように働いた結果が収入になる」なんですよね。そのように……が重要ポイント。

 年収300万の人は年収300万の働き方をしていますし、年収1千万の人は年収1千万になる働き方、年収3千万なら年収3千万の働き方をしています。見たことないけど、億の人ならやっぱり億の人なりの働き方をしてるんだと思う。

 これらはデジタルにビシッと区分けしているものじゃないので、年収300万の働き方のままひたすら休みなく頑張って年収1千万を超えていくことはできますが、その継続にはかなり身体的負荷を伴います。風邪のひとつもひけやしません。そして、その頑張りをいくら繰り返しても、多分1千5百万あたりで頭打ちして、3千万まで届かせることはまず無理でしょう。反面、気を抜いた途端に元の300万まで転がり落ちるのが怖いところ。
 この理屈は、1千万の人にしても同じことです。上限に幅はあるものの、その働き方で届く金額はある程度決まっていて、そこからさらに上へ抜けようとすると、根本の働き方から見直す必要が出てきます。ただ、転がり落ちる下限の位置も、その働き方に応じた位置へと押し上がっているため、1千万の働き方は300万の働き方よりも、ある種の保険がきいた状態になります。

 なんでそうなるかというと、そのように計画して頑張ってるから。計画通りに行かなかったとしても、その確度を上げようと試みたあれこれが、自分の下支えになっていってくれるんですよね。

 自分の求める収入があり、それを実現するための方策を考えて計画を立てて、はじめて「そのように働いた」結果に結びつく。
 どうしても世の中一発逆転というのは魅力的で、フリーランスの仕事にはそうした物語がかたわらに転がっていることも多くて期待しがちになりますけど、計画のない成功ってまぐれで終わりがちになりますから、「長く続けるには」と考えた時には、あまりアテにして良いものではありません。

意外とみんなやってなくて驚いたりする

 ただ、こうした「計画を立て、検証する取り組み」は、フリーランスの人と話していたら、意外とやってない人が多くて驚いたりします。

 たとえば集客イベントに参加する時、「会場の来場者○名だから、ブース前を通る人はだいたい○名。うち○%が足を止めてくれることを目標とし、そうすると配布するチラシや名刺は○枚。そこから受注につながるのが○%だと考えると目標受注件数は○件。参加費用が○万円だから、平均単価を○円で請けることができれば成功と言える」という話はまず聞いたことがありません。だいたい「けっこう人が来るから、名刺とかいっぱい配って、けっこう仕事も来ましたよ。ペイできてると思います」みたいな話になる。

 もし計画を立てて臨んでいたとしたら、その結果が思わしくなかった場合も、「どの数値が期待値以下だったのか」を検証することで、どこを改善すれば次はより良い結果を得られるかを考えることができます。足を止めてもらえる率が悪かったなら、ブースの飾り付けが悪かったのかもしれない。問い合わせに至る率が悪かったならチラシの質の問題かもしれない。平均単価が低いなら、訴求すべき客層を間違えていたのかもしれない。などなど。
 もし仮に、これら計画を抜きにして高単価の仕事がもらえて荒稼ぎできたとしても、そこには「やってみたらこうなった」以上の蓄積がありません。再現性が得られないので単なるラッキーで終わってしまって、生活の安定にはつながりません。

 フリーランスとして長く続けていくためには生活の安定は欠かせません。生活の安定は、安定した収入見込みによってもたらされます。そのために必要なのは、常にそれが再現できる仕組みをつくること。それがつまりは「計画を立てること」なわけです。

 ……と、いう意味を込めた即答が冒頭のやり取りだったんですけど、あれで伝わったのかなあ。あらためて書き出してみたらめちゃくちゃ長くなったので、今さらながらあの回答だけで良かったんだろうかと不安になったりするのでした。

 そんなわけで、自分にとって「フリーランスを長く続けていくために一番大事だと思うこと」は計画を立てること。あなたが心がけているものは何ですか?

コメント

  1. hellscare より:

    こんにちは。先生のエッセイに背中を押されてフリーランスになった者です。
    計画を立てて予実を測るのは事業運営そのものなんですが、なんとなく成り行きでやっていても案外フリーランスって出来てしまうんですよね。
    かく言う私はまだ2年目なので、とりあえず3年続いたらまた違う景色が見えてくるかなと思っているところですが、大切なもの、、「勝てそうな勝負しかしない」でしょうか?

    • きたみりゅうじ きたみりゅうじ より:

      勝てると判断を下すからこそ取りかかるって姿勢も大事ですよね。なるほど~。

  2. 匿名 より:

    中途半端な才能です。
    才能がなければ廃業だし、才能があれば成株するので。

  3. まりりん より:

    フリーランスというから勘違いするのでしょう。

    要は個人事業者なのですから、経営者としての事業計画を自分で立てる等、会社員であればそれぞれの部署で分業していたことをすべて自分で行わなければいけないということですよね。

    私の知り合いのSEさんでも、いったんフリーランスになったものの、「システム開発以外の雑事がこんなに多いのなら」という理由で、再度雇われ人となった人がいました。

    • きたみりゅうじ きたみりゅうじ より:

      そうなんですよね。フリーランス=経営者になるので、それは嫌だ本来の実務にのみ集中したいという人は、会社員を選ぶ方が堅実ですよね。

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