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「プロレスを探す旅」に出発した、
飯伏幸太が見つけた最終目的地。
posted2019/06/28 12:00
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph by
Essei Hara
学術から文芸、ゴシップ、ジャーナルにカルチャーとあらゆる活字メディアを詰め込んだ、千代田区紀尾井町の文藝春秋の社屋、その8階に我らがNumber編集部はある。
出入り口から踏み入れると、そのすぐ横にホワイトボードがある。誰の目にもつくような大きなもので、そこには編集長以下、部員のネームプレートが貼ってあり、それぞれの名前の脇には「行き先」「帰社予定」が書ける欄が設けられている。
浜崎伝助、釣り、直帰。
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映画『釣りバカ日誌』のハマちゃんならば、さしずめそう書いているであろう、あのボードだ。
そして、当編集部のそれには、なぜか長らくプロレスラー「飯伏幸太」の名札があり、彼の行き先については「プロレスを探す旅」とだけ書かれてあった。
だからNumberに出入りする者はこの数年、意識するか、しないかに関わらず、視覚的、潜在的につねにこういう問いを刷り込まれることになった。
そういえば、彼はプロレスを見つけることができたのだろうか?
飯伏がNumberの編集部にやってきた。
飯伏が初めて編集部にやってきたのは2016年の初夏だった。
しばらく低迷していた日本のプロレスが今、すごいことになっているらしい。棚橋弘至、中邑真輔だけでなく、内藤哲也、オカダ・カズチカ、らを見るために、全国各地のホールが埋まり、熱を帯びているらしい。
そうした新時代の星たちの中に、飯伏幸太というレスラーがいるらしい。インディーズ団体とメジャー団体に同時所属し、空気だけのビニール人形を相手に手に汗を握る30分一本勝負を演じることができ、路上の自動販売機の上からでも、展示されている新車の上からでもフェニックス・スプラッシュを飛んでしまう、完全に所属やリングの枠からはみ出してしまっている男がいるらしい。
よし、それじゃあプロレス特集を編もうということになり、その撮影のため、彼は千代田区紀尾井町の8階にやってきたのだった。