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38年ぶりに大学野球制した明治大学。
エース森下暢仁を変えた、あの敗北。
posted2019/06/18 17:30
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
Kyodo News
2019年6月17日、明治神宮野球場。
全日本大学野球選手権、佛教大学との決勝戦。
明治大学のエースであり、主将である森下暢仁(まさと)は、ときに冷静に、ときに熱く闘志を滾らせて、決勝の地・神宮球場のマウンドで吠え、躍動した。背中には主将の証である背番号10。ネット裏ではプロのスカウトたちが集結し、ストレートの球速が150キロを超えると、俄かに観客席がどよめいた。
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しかし、森下は球速には一切こだわらない。目の前の打者、ひとりひとりに集中していた――。
4月20日。必勝を期した今年の東京六大学春季リーグ開幕戦も、神宮球場だった。
主将として、エースとして初めて臨んだ公式戦だったが、立教大学・田中誠也との投手戦に、中盤持ちこたえることができず、0対4で敗戦。試合後のロッカールームで、森下は「3戦目、もう一度自分を投げさせてほしい」と、メンバー全員の前で頭を下げた。
「これでチームがまとまった」と、明治大学・善波達也監督。
この敗北から引き分けをひとつ挟んだ14連勝で、明治大学は38年ぶりの日本一となった。
佛教大キーマンを三振に仕留めたシーン。
決勝戦で圧巻だったのは、6回裏1死二塁で佛教大学の1番・八木風磨を迎えた場面である。
準決勝まで11打数8安打、この試合でも第2打席で森下の149キロの外角ストレートを、センター前へと弾き返した今大会好調の打者を相手に、熱くなり過ぎず、冷静に努め、自身のピッチングと向き合うことで、見事に仕留めた。
初球に選択したのは外のチェンジアップだ。思わぬ変化球に、八木は一瞬、面食らった表情を見せる。その後は、140キロ前後のカットボールを内角に続けて見せて、ファールでカウントを稼いでいく。打者のタイミングが合ってきたと見るや、一転、キャッチャーのサインに首を振り、緩いカーブを挟むと、最後はこの打席唯一のストレートを外角高めに投げ込んで、空振り三振を奪った。