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JC制覇、アーモンドアイは完璧な馬。
ルメール「サッチ・ア・ストロング」
posted2018/11/26 11:20
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Yuji Takahashi
可憐な美少女が衝撃の世界レコードを叩き出し、歴史的名馬への道を歩み出した。
第38回ジャパンカップ(11月25日、東京芝2400m、3歳以上GI)をクリストフ・ルメールが乗る1番人気のアーモンドアイ(牝3歳、父ロードカナロア、美浦・国枝栄厩舎)が、従来の記録を一気に1.5秒も短縮する2分20秒6のJRAレコードで優勝。これはサラブレッドがチャンピオンディスタンスで初めて2分20秒台に突入した世界レコードでもある。
3歳牝馬の勝利は2012年のジェンティルドンナ以来6年ぶり2頭目。ルメールは今年のJRA・GI勝利を「8」とし、自身の最多勝記録を更新した。これが今年199勝目。武豊しか到達していない年間200勝に王手をかけるなど、記録づくめの一戦となった。
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アーモンドアイは最内の1番枠。国枝栄調教師は「あまり好ましくない。1コーナーでもみくちゃにされなければいいが」と渋い表情で語り、ルメールも「スローになって囲まれたら、後ろから大外一気の競馬をするしかないから難しい」と懸念を抱いていた。
ところが、アーモンドアイは、自身の走りで「試練の1番枠」を「好材料の1番枠」に転じさせた。
キセキは「いい先導役」だった。
四肢をバタつかせたときにゲートが開いてヒヤリとさせたが、ジャンプするように飛び出し、ハナに立ちそうな勢いで先行した。
結局、8番枠から出た川田将雅のキセキがハナを切り、さらに外から上がってきたノーブルマーズが2番手。アーモンドアイは3、4番手の内で1コーナーに入った。
「1コーナーまでがポイントだと思っていました。一番心配していたのは折り合いがつくかどうかだったのですが、すぐにいいポジションをとって折り合った。コントロールが利いていたので安心しました」と国枝師。
囲まれることも、ぶつけられることもなく、内枠を生かした省エネコースを通って1、2コーナーを回り、向正面に入った。
昨年の菊花賞馬キセキが逃げる展開は、ルメールにとっては好都合だった。
「キセキは強い馬だから、いいペースで行ってくれる。アーモンドアイにとっては、いい先導役です」
アーモンドアイは、キセキから2馬身ほど後ろの3番手の内でリラックスし、いつもどおりのリズムで完歩を伸ばした。