【パCSファイナルS展望】首位独走で4年ぶりV奪回のソフトバンク、日本ハムは新庄マジックで「球界の主役」になれるか
パ・リーグの「2024 パーソル クライマックスシリーズ パ」ファイナルステージが10月16日から行われ、1位・ソフトバンクがファーストステージを突破した2位・日本ハムをみずほPayPayで迎え撃つ。
2020年にパ・リーグ史上初の4年連続日本一を飾ったソフトバンクだが、21年以降はリーグ3連覇を飾ったオリックスの後塵を拝する形に。小久保裕紀監督が就任し、4年ぶりのV奪回を目指した今季は、貯金42で首位を独走。一過性の勢いでなく地に足をつけた戦いぶりで、本物の強さを証明した。
3、4月に18勝6敗2分とスタートダッシュに成功したが、指揮官は守備や走塁でのミスに厳しい姿勢を示した。油断のないチームはその後も勝ち続ける。柳田悠岐が6月に「右半腱様筋損傷」で長期離脱し、西武からFA移籍して開幕から本塁打を量産していた山川穂高も6月は打率.182、0本塁打とスランプだったにもかかわらず、月間17勝5敗1分と大きく勝ち越し。柳田が抜けた外野陣は柳町達、正木智也、川村友斗が活躍し、ハイレベルな定位置争いを繰り広げた。山川を四番で起用し続けられたのは、五番で走者をかえすポイントゲッターとして稼働した近藤健介の存在が大きい。7月以降に復調した山川は34本塁打、99打点で2冠王に。近藤も打率.314で首位打者に輝いた。栗原陵矢、周東佑京、今宮健太と経験豊富な選手がそろい、柳田もファイナルステージに間に合う。万全の布陣で臨めそうだ。
昨年、規定投球回数に到達した投手がいなかった先発陣は、有原航平がリーグトップの182回2/3を投げ、14勝7敗、防御率2.36で最多勝に。救援から先発転向したモイネロも11勝5敗、防御率1.88の好成績で最優秀防御率のタイトルを獲得した。三番手以降もスチュワート・ジュニア、大関友久、大津亮介、石川柊太が安定した投球を続けて強固な先発ローテーションを形成。救援陣は守護神・オスナが防御率3.76と安定感を欠いたが、ヘルナンデス、杉山一樹、津森宥紀と奪三振能力の高い投手がそろっている。チーム防御率2.53はリーグトップだ。
ファイナルステージは1勝のアドバンテージがあり、1戦目から有原、モイネロ、スチュワート・ジュニア、石川が先発予定。ソフトバンクは4年連続日本一を経験した選手たちが多く残っており、大きなプラスアルファだ。目標は4年ぶりの日本一。日本ハムの勢いを削ぐために1、2戦が重要になる。有原は今季日本ハム戦で0勝2敗、防御率4.11と相性が良くないが、エースのプライドがある。古巣相手に本来の投球を見せられるか。
2年連続最下位から2位に躍進した日本ハムは、3位のロッテと対戦したCSファーストステージで崖っぷちからひっくり返した。初戦に佐々木朗希を攻略できず0対2で敗れると、2戦目もリードを許す苦しい展開だったが、9回に万波中正が左中間に同点ソロを放ち追いつくと、延長10回に淺間大基の右前適時打でサヨナラ勝ち。3戦目もロッテに2点を先制されたが、3回に清宮幸太郎の2点右前適時打で同点に追いつくと、7回に水野達稀の2点適時三塁打で勝ち越し。8回も万波の左前適時打で突き放して逃げ切った。3試合すべてで先制されたが、勝ち抜いたのは地力がついた証しだ。
ペナントではリーグ優勝を飾ったソフトバンクに13.5ゲームの大差をつけられたが、直接対決では12勝12敗1分と互角の戦いを繰り広げている。しかも、8月下旬以降の対戦では7勝2敗。敵地・みずほPayPayは今季10試合戦って5勝5敗と苦手意識はない。レイエスが打率.303、7本塁打、17打点とソフトバンク戦を得意にしており、キーマンになりそうだ。
新庄剛志監督はシーズン終盤にCSを見据えた戦術を試みていた。選手の起用法にも覚悟が見える。負けたら終わりのリスクを覚悟の上で、エースの伊藤大海をファーストステージで登板させずに温存した。自己最多の14勝で最多勝に輝いた右腕は、今季ソフトバンク戦で4勝1敗、防御率2.63。先発予定のファイナルステージ初戦で白星をつかめば、1勝1敗のタイに戻すだけでなく、2戦目以降の戦いで精神的に有利に立てる。
日本ハムの今年のスローガンは「大航海」。自信をつかんだ選手たちは幾度も劣勢をはね返し、白星をつかむことでチームの結束力が高まった。16年以来8年ぶりの日本シリーズ進出へ。新庄監督が奇襲を仕掛けてくる可能性が考えられる。難敵のソフトバンクを倒し、「球界の主役」になる旅を続けられるか。
【文責:週刊ベースボール】