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3万人が「時間」を取引するアメリカ時間銀行の仕組み!シェアリングエコノミーの未来とは

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「価値」とは「金銭」だけではない。
アメリカでは、TimeBank(時間銀行)というボランティア活動などのプラットフォームのようなシステムが古くから存在し、3万人以上が日々それぞれの「時間」を取引しているという。

コミュニティでの活動や、近所関係の中での互助など、金銭的な評価がしにくい労働に対して、「時間」を用いて正当な評価を与えようという試みだ。

いわば近頃話題のシェアリングエコノミーの先駆的な例といったところで、最近ではこうした「時間」を取引するというアイディアを活かしたスタートアップ企業も現れている。
実は日本でも、一部のNPOや企業がこの仕組みを採用している例がある。

今回は、アメリカのTimeBanking団体に注目しながら、地域コミュニティの再建や、地域おこしに時間銀行が活用されている事例を取り上げ行く。
これからの日本の地域社会を考える際の参考になるかもしれない「時間銀行」というアイディアを紐解く。




シェアリングエコノミーの先駆け!「時間」をシェアする時間銀行

世の中には、子育て、家族の維持、近所の活性化、環境の保全など、金銭的な評価を与えることが難しいが、きわめて重要な「仕事」が多数存在する。

これらの仕事に費やされる人々の時間を、お金以外の方法で評価するシステムが存在するべきだ、というのがアメリカで広がっているTimeBanking活動の基本的な問題意識だ。
ドルという通貨以外に、市場における交換が成り立ちうる通貨として、人々の「時間」があるというのだ。

TimeBanks USA(registered 501c3団体、日本でいうNPO法人)の創始者であるコロンビア特別区大学ロースクールの教授Edgar Cahnは、アメリカの非営利雑誌”YES!”の記事の中で、時間銀行の概要について次のように語っている。

アメリカにおける時間銀行(TimeBanking)活動の基本的な仕組み

  • 他のメンバーに対して行った1時間の仕事に、1クレジットが報酬として与えられる。
  • その1クレジットは、他のメンバーに1時間の仕事を依頼する際に使える。

自分の1時間を誰かのために使用(貯金)し、将来必要になった時に1時間分のサービスを受ける(引き出す)という、時間銀行という言葉通りのシステムだ。

この交換対象としての「時間」は、最初は”service credits”と呼ばれていたものだが、後に”Time Dollars”として知られるようになった。

現在では、アメリカ全土にこの時間の取引が広がり、”TimeBanks(タイムバンクス=時間銀行)”として知られている。

アメリカ時間銀行の広がり!オープンソースの時間取引ソフトも存在

アメリカには、全土に300もの時間銀行が存在する。
それぞれの時間銀行は、15人程度のメンバーで成り立っているものから、3000人のメンバーを抱える「メガバンク」まで存在し、それぞれの銀行に所属するメンバー間で「時間」の交換が行われている。

アメリカの時間銀行全てのメンバーを合わせると30,000人に及ぶという。
同様に、イギリスでも時間銀行が盛んなようで、アメリカと同じくおよそ30,000人ほどが日々「時間」の交換を行っているそうだ。

最近では、個人が貯めた時間を記録・追跡・共有することを、より効率的にするオープンソースのソフトも開発されている。
これにより、時間銀行を設立するのにかかるコストが大幅に削減できる他、貯蓄された「時間」を銀行間で移動することも可能になる。

アメリカではTimeBanks USAがCommunity Weaverというソフトを提供、イギリスでもTimebanking UKといういわば”時間銀行協会”的な団体がTime-ON-Lineという無料の管理ソフトを提供している。

TimeBanks USAが提供するソフトの重要な点は、自分が今がんばって「時間」を貯めても、将来そのクレジットを使用したくなった時に、その時間銀行がなくなっていてクレジットを使えない、というリスクを軽減できる点にある。

時間銀行が地域コミュニティを活性化する事例

アメリカ各地で展開される時間銀行は、シェアリングエコノミーによるコミュニティ再生の事例として参考になるものも多い。
ここで、実際に運営されている時間銀行を一つ紹介しよう。

Screenshot

Arroyo S.E.C.O. NETWORK OF TIME BANKS

アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルス郡アロヨ・セコの時間銀行団体。アロヨ・セコの住民が年会費20ドルを納めることで運営されている。

これはロサンゼルス郡に位置するアロヨ・セコというワインの産地でも知られる地域で活動している時間銀行で、そのメンバーは現在約600人。
この時間銀行も、まさに上記で紹介したCommunity WeaverというTimeBanks USAから提供を受けたソフトによって運営されている。
記事執筆時点では、これまで44,606時間もの交換が行われたそうだ。

興味深いのは、タイムバンクのプラットフォームと合わせて、地域の人々の繋がりや、個々人が持っているスキルを活かしたプロジェクトが様々進行していることだ。

Arroyo S.E.C.O. NETWORK OF TIME BANKSが展開しているプロジェクトの一つである「REPAIR CAFE」は、洋服、家具、電化製品、バイクなどが故障した場合に、スキルを持った人が”Time Dollars”と引き換えに修理をしてくれるという試みだ。

日頃からちょっとした地域での人助けや、ボランティア活動を行うことで「時間」を貯金しておけば、様々なものを無料で修理してもらえるわけだ。
さらに、修理のスキルを持つ人にとっては、地域コミュニティとつながるきっかけを得ることができる良い機会になる。

Arroyo S.E.C.O. NETWORK OF TIME BANKSは、いわばタイムバンキングシステムを基礎とする地域の互助団体ともいうべき機能を果たしているのである。

日本で時間銀行を採用しているNPO

調べていくと、実は日本でも福祉の現場で時間銀行のシステムを導入しているNPOがあることが分かった。

あるNPO法人は、高齢者介護の世界にアメリカ風の時間銀行を導入している。
仕組みとしては、ケアサービスを受けた会員は利用料を支払うが、サービスを提供した協力会員はその「時間を貯金」するだけで、金銭的な報酬は受け取らない。
「時間を貯金」した協力会員は、いざ自分や家族がケアサービスが必要になった時に、全国各地のセンターで貯めた時間の分だけケアサービスを受けることができるというのだ。

少子高齢化によって、介護施設不足、介護の担い手の不在、高齢者の孤立等といった問題が深刻化しているが、時間銀行はまさにそうした課題を解決する「仕事」を評価するのに役立つシステムなのかもしれない。

アメリカでは、例えば犬の散歩、楽器の指導、料理の指導といった日常生活にまで時間銀行のシステムが普及している事を考えると、日本の時間銀行にもまだ発展の余地が多く残されていると言える。

「時間」の取引を金銭化した日本のスタートアップ企業

日本でも、シェアリングエコノミーといった言葉や、クラウドソーシングといった言葉が流行するにつれて、時間を取引するサービスを企業が提供するケースも登場し始めている。

Screenshot

タイムチケット

「わたしの30分、売りはじめます。」というキャッチフレーズの、30分単位で個人の時間を売買するクラウドソーシングサイトのような仕組み。

最近テレビ番組などでも紹介されるようになった「タイムチケット」というサービスは、例えばあるビジネスマンが自分のスキル(経験を話す、ネーミングを考えるなど)を30分間提供するとして時間を売り出し、それを購入したいと思った人が料金を支払うシステムだ。

アメリカの時間銀行は、対価も時間によって支払われていたので、少し構造は違うが、時間銀行をソーシャルサービスからよりマーケットに近い形にカスタマイズしたビジネスだと言えよう。

プロフェッショナルの時間を購入できるサービスとして、非常に面白く魅力的だ。

どんな人の時間にも、交換可能な「価値」がある

タイムチケットの事例は、高い専門性を持つ人が、お金で売れるほどの価値を自らの時間によって提供するサービスであった。

一方アメリカでは、先に紹介したように、犬の散歩までも時間銀行のプラットフォーム上で取引されている。
アメリカにおける時間銀行のコンセプトは、「みんなが何かしらの専門家」ということに立脚している。

ギターが得意な人もいれば、掃除が好きな人、犬の散歩が好きな人、お年寄りと話すのが好きな人など、世の中には様々な得意分野を持った人がいるので、共通のプラットフォームによって時間の取引を容易にすれば、ちょっとしたスキルでも取引が成立するようになるはずだ。
アメリカでは、昔から時間銀行が存在することによって、そのシステムが出来上がって機能しているのだろう。

日本でも、今後時間銀行のようなプラットフォームが普及すれば、みんながみんなのスキルを取引する時代が到来するかもしれない。
民泊やカーシェアなど、ビジネス的な観点から語られることの多いシェアリングエコノミーだが、まだまだソーシャルな可能性もありそうだ。

Photo credit: sk8geek via VisualHunt.com / CC BY-SA

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