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化学メーカーの業績左右する塩ビ市況、インドに注視の理由

化学メーカーの業績左右する塩ビ市況、インドに注視の理由

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各国から輸出された塩化ビニール樹脂(塩ビ)がインド市場に集まっている。中国の不動産市場の低迷などで塩ビ需要が減少し、高水準で経済成長が続くインドに買われている。インドは前年比倍増ペースで塩ビを輸入し、足元では同国が取引価格を下支えしている。塩ビ市況は国内化学メーカーの業績を左右する要因の一つ。中国で不動産不況の長期化が懸念される中、各社はインド市場の動向を注視している。

塩ビは建築資材や上下水道などのインフラ材、農業資材など幅広い産業に使用される汎用樹脂。各国の化学メーカーは塩ビの内需に応えるとともに、アジア諸国に輸出している。塩ビの消費国である中国は高グレード品などを多く輸入する一方、近年は国内で塩ビ生産設備の新増設が進み、輸出が増加している。各国の貿易統計によると、1―6月に大手化学メーカーが生産拠点を置く日本、韓国、台湾、中国から輸出された塩ビの約半数がインド向けだった。

アジア市況は2022年下期以降、コロナ後の中国需要の戻りが鈍いことや、金利上昇などによる各国の不動産市況低迷で“低空飛行”が続いていた。一方、インドは22年夏にモンスーン(雨期)長期化の影響を受けたものの、23年に入り塩ビ調達を拡大。アジア諸国に加え、北米などからも輸入を増やした。1―5月の総輸入数量は145万3000トンと、前年同期比2・0倍のペースで塩ビを輸入している。

インドは22年4月から23年3月までの実質GDP成長率が前年度比7・2%を記録し、足元で旺盛なインフラ投資が進む。ある化学メーカー幹部は「インド向けの需要がなければ、もっと厳しい状況になっていた」と漏らす。日本にとってインドは最大の塩ビ輸出相手で、1―6月は輸出数量の7割超が同国向け。売り先を確保しているが、「中国産品などが安値で流入し、取引価格を押し下げている」(同幹部)。利ざや(スプレッド)の確保が困難な環境にある。

市況悪化は化学メーカーの収益を圧迫する。東ソーは4―6月期にクロル・アルカリ事業で36億円の営業赤字(前年同期は97億円の黒字)を計上。桑田守社長(塩ビ工業・環境協会会長)は「中国不動産不況の影響は大きい。人の動きは増えたが、投資につながっておらず内需が弱い」と指摘する。タイ、インドネシアなどに製造設備を持つAGCも塩ビ市況の悪化が減益要因となった。ただ足元では改善の兆しも出てきた。信越化学工業は「アジア地域向けは中国の内需の弱さに引きずられがちだが、直近で値上げを通している」(斉藤恭彦社長)と説明する。

また、参考値の一つである国内大手の塩ビ輸出価格(大口向け)はインド向けの8月積み価格が前月比50ドル高のトン当たり880ドル程度と5カ月ぶりに反発。中国向けも価格が上昇した。

中国の7月の住宅着工床面積は前月比24・5%減と振るわず、不動産開発大手の中国恒大(こうだい)集団の経営危機も現地市場を揺さぶる。中国需要家の在庫リスクへの警戒感が強まることが予想される。

当面、インドがアジア地域の塩ビ需要を支える展開が続きそうだ。


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日刊工業新聞 2023年08月24日

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