約80年ぶり技術系出身者、住友化学新社長が示してきた実績
住友化学は3日、水戸信彰専務執行役員(64)が4月1日付で社長に昇格する人事を発表した。岩田圭一社長(67)は代表権のある会長に、十倉雅和会長(74)は取締役相談役にそれぞれ就く。社長交代は6年ぶり。同社は2025年3月期に構造改革や業績回復にめどをつけ、26年3月期から新中期経営計画を始動予定。成長ドライバーと位置付ける農薬関連部門を統括してきた水戸氏を中心とする新たな経営体制で復元力を示していく。
水戸氏は農薬関連の研究開発に長年携わり、知的財産部長や企画部長なども歴任した。社長就任に当たり「成長軌道に回帰させ、10年、20年後もグローバルで存在感のある会社にしていきたい。当社の強みが発揮できる“勝ち筋”にフォーカスしていく」と抱負を述べた。
岩田氏は社長交代の背景について「次期社長の要件をビジョンの構築・実行や組織統率など五つに設定し、水戸氏は農薬関連事業でその資質を発揮していた」と説明した。
十倉氏は6月の株主総会を経て取締役を退任する。5月に経団連会長を退くことも決まっている。
【略歴】水戸信彰氏 85年(昭60)名大院農学研究科博士課程前期修了、同年住友化学工業(現住友化学)入社。15年執行役員、18年常務執行役員、24年専務執行役員。広島県出身。
素顔/住友化学社長に就任する水戸信彰(みと・のぶあき)氏:明朗公平、若手育成に熱心
朗らかな人柄で社内の信頼を集めており、岩田圭一社長も「非常に公平でオープンマインド。若手の教育にも熱心」と太鼓判を押す。水戸氏自身は「皆の話をよく聞き、決める時は決めて組織を引っ張っていきたい」と意気込む。
技術系出身者の社長就任は約80年ぶり。農薬畑が長い経験者では、事務系を含め初めてとなる。統括する農薬関連事業では、海外での大胆な活動とともに国内の事業再構築といった“攻めと守り”ができる実積も示してきた。
水戸氏の技術への執念が結実した事例と言えるのが、新規除草剤「ラピディシル」。2000年に除草剤の研究プロジェクトに携わり、開発につながった。約四半世紀を経て24年にはアルゼンチンで農薬登録されるなど、大型製品化への期待がかかる。今後も「研究への情熱を大事にして当社の発展につなげたい」。
フルートの演奏やモータースポーツ観戦、城郭巡りなどを好む。(山岸渉)
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