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富士フイルムは初投入へ…カメラ各社が映像制作にピント、動画市場拡大で商機あり

富士フイルムは初投入へ…カメラ各社が映像制作にピント、動画市場拡大で商機あり

富士フイルムは来年の発売を目指す映像制作用カメラを映像機器展示会「インタービー2024」で披露した

動画関連市場の拡大に伴い、カメラ各社は映像制作用の製品・サービスに力を入れている。ニコンが業務用カメラなどを手がける米国メーカーを今春に買収したほか、富士フイルムは同社初となる映像制作向けカメラの市場投入を急ぐ。一方、動画コンテンツが増加するものの、深刻な人手不足は映像制作現場も例外ではない。キヤノンは少人数での撮影や編集作業を効率化できるシステムの開発を進めるなど、現場の課題解決を支える。(新庄悠)

高性能の専用機開発

総務省の2024年版情報通信白書によると、23年に1326億ドル(約20兆円)だった動画配信の世界市場規模は、27年には1779億ドル(約27兆円)に伸長すると予測している。ユーチューブやネットフリックスといった動画投稿サイト・動画配信サービスが普及し、コロナ禍で在宅時間が増えたことなども相まって、動画関連市場は急拡大。今後も企業のマーケティングツールなどで広がっていくと見られる。

こうした背景から、カメラ各社は映像制作向けにも力を注ぐ。ニコンは業務用シネマカメラなどを手がける米レッドドットコム(カリフォルニア州)を4月に買収し、同カメラの開発や販売に参入する。レッドは画像圧縮技術などに強みを持ち、同社製品はハリウッド映画の制作にも使われている。現在、レッドにニコン技術者を派遣し、共同開発が進行中だ。

徳成旨亮社長は「より平均単価を上げていくために魅力ある機能を増やすとなると、静止画ではなく動画だ」と強調する。市場縮小にコロナ禍の影響が加わり21年3月期に営業損益で363億円の赤字に落ち込んだ映像事業だが、22年3月期には黒字転換。その後もミラーレスカメラで利幅の大きい中高級機に焦点を当てるといった構造改革を進め、25年3月期の営業利益は470億円を見込む。ただ「少しでき過ぎている」と徳成社長は冷静に見ており、次の一手として拡大が見込まれる業務用動画市場の開拓を目指す。

富士フイルムも映像制作用カメラに参入する。開発中の「FUJIFILM GFX ETERNA」を25年中に発売する計画だ。これまで映像制作分野ではレンズを手がけているほか、ミラーレスデジタルカメラの動画機能を強化してきた。特に、ミラーレスデジタルカメラ「GFX100II」を発売して以降「動画専用機を作ってほしい」というユーザーの声が高まっていたという。

富士フイルムは来年の発売を目指す映像制作用カメラを映像機器展示会「インタービー2024」で披露した

色再現技術などで好評を得ているGFX100IIと同じラージフォーマットセンサーや高速画像処理エンジンをETERNAに搭載し、階調豊かで立体感のある映像表現を実現。イメージングソリューション事業部プロフェッショナルイメージンググループの五十嵐裕次郎統括マネージャーは「表現の幅が広がる中で、映像制作にも貢献できる」と意欲を燃やす。

撮影・編集現場を省人化

一方、キヤノンは制作現場の業務効率化をサポートするシステムの開発を進める。人工知能(AI)を活用した「マルチカメラオーケストレーション」は、カメラマンのカメラワークに連動して複数のリモートカメラを制御できる。

例えば、カメラマンが黄色の衣装の人物を捉えると、リモートカメラは自動的に青色や赤色の衣装の人物を撮影する。カメラマンがズームすると各カメラも自動で同じようにズームするといったことも可能だ。これまでカメラマンとアシスタントが呼吸を合わせて行っていた動きが、カメラマンの一人作業で実現できる。

ビーチバレーでマルチカメラオーケストレーションを用いて撮影した際には、映像の質が上がったという声もあったという。イメージング事業本部の吉川一勝IMG第二事業部長は「人員が限られる中で、そもそも撮影できなかったり、撮っていても品位が低い映像もあったりする」と指摘。マルチカメラオーケストレーションは、少人数でも映像表現の幅を広げられ「まだまだ動画の市場は広がる」と自信を見せる。国内で進めてきたPoC(概念実証)を、25年は欧米へも広げる。

また、複数のカメラを活用する際の作業の一つに色合わせがある。カメラの機種差によって撮影した映像の色味が異なり、そのままでは違和感が残ってしまう。このため、調整作業が必要となるが、時間と手間がかかるという課題を持つ。

キヤノンでは色味の基準となるメーンカメラとリモートカメラの色合わせを簡易化できる「カラーマッチングソフトウエア」も開発中だ。「顧客のニーズが多様化し、作品数・撮影量に応えるにはハードウエアだけでは限界がある」(吉川IMG第二事業部長)とし、ソフト開発にも注力する。

各社は開発中の製品・サービスで省人化などの需要を捉え、映像制作向けでさらに存在感を高めていく。


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日刊工業新聞 2024年12月26日

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