火山噴出物「シラス」をコンクリートに、鹿児島発“低炭素”工法の中身
鹿児島県で、シラス台地で知られる火山噴出物「シラス」を利用したコンクリートの普及や活用法を探る取り組みが活発になっている。アピールポイントは「低炭素」。大きな役割を担うのが鹿児島県工業技術センターだ。コンクリート製品の利用が始まり、2025年度は現場で流し込んで使う生コンクリートへの応用を計画する。(九州中央・片山亮輔)
鹿児島県霧島市にある同センターは、コンクリートの原料となるセメントを製造する際、混和材としてシラス由来の物質「火山ガラス微粉末(VGP)」を利用することを提案する。
シラスを振動や風を使って比重選別し、粉砕して得られるのがVGP。一般的なセメントでは、1450度C程度で焼成した石灰石が材料に使われる。石灰石の代わりにVGPを混和材として利用することで、焼成する石灰石の使用を減らせる。同センターの試算によるとVGP製造時の二酸化炭素(CO2)排出量は、一般的なセメントに比べて10分の1以下にできるという。
VGPは3月に生コンクリート混和材として日本産業規格(JIS)で認められており、普及の追い風になると期待される。9月には県や企業、大学で構成する研究会が発足。コンクリート製品の普及や、さらなる研究開発に向けた体制が充実する。
11月には、鹿児島市内でVGPを含むコンクリートブロックを使う道路工事が始まった。今回のブロックはセメントをVGPで55%置き換えている。また、コンクリートの材料となる砂利や砂などの利用量低減にもつなげることで、自然環境保護にも寄与する。さらに塩分の浸透を抑制する効果が期待でき、鉄筋を使用する場合の耐腐食性や耐久力の向上も見込めるという。
同センターは以前からシラスを使った陶器や屋根瓦などの製品開発を進めている。シラス関連の研究開発を手がける袖山研一研究主幹は「県内のシラス埋蔵量は750億立方メートルとも言われている」と話し、豊富な地元資源を使った地域産業の拡大や新産業創出を探求する。