ドイツ製戦車は約7億4000万円…日本製は約15億円
自国防衛のための装備品を国内生産することが理想的であることは多くの専門家が語る。しかし、現実味は薄い。事実、2003年以降、コマツ、住友重機など100社以上が防衛産業から撤退している。
国内生産が成長しない理由はいくつもあるが、例えば日本の兵器はコストが高すぎるという。ヨーロッパで最も売れている高性能なドイツ製戦車『レオパルト2』は1両、約7億4000万円というが、これに対し日本の国産主力戦車『10(いちまる)式』は1両、約15億円だ。そもそも日本は殺傷兵器の輸出ができないため大量生産もできず、国際競争力も持ちようがない。因みに国を挙げて輸出に力を入れている韓国の戦車『K2』は5億円以下だ。
なぜこんなにコストが高いのか…防衛産業に詳しい元海上自衛隊幹部・早野禎祐氏は3つの点を指摘する。
(1) 防衛省の発注が計画的でないため、企業は計画を持って投資や生産ができずコストが上がってしまう
(2) 他国の商品と競争しないためいいものが作れない
(3) 防衛省は本当に戦うことを真剣に考えていなかった。装備品は演習で使えればいいと追っていた
自民党国防議連事務局長 佐藤正久元外務副大臣
「日本はいいものを作ろうとしている。しかし防衛装備品としての売り上げは三菱重工でも1割くらい。アメリカのボーイングは企業の売り上げの9割が防衛装備品になっている。そのため日本の場合は企業が投資しにくく細分化されている。10式戦車を作るのに1200社、護衛艦を作るのに8300社が関わっているんです。このようなサプライチェーンが複雑でどうしてもコストは下がらない」
共同通信 久江雅彦編集委員
「私の言葉でないのでお許し願いたいが…米軍では日本の自衛隊のことをエキシビジョンアーミーつまり展示軍と呼んでいる。使った経験がないのでいいよということもできない。売る売らないにしても使っていない。やはり輸出していかないとコストは下がらない」
兵器の能力は外交力と比例の関係?
岸田総理が出席したNATO首脳会議。日本が個別の国と二国間で首脳会議が行えたのが6か国。それに比べて韓国の尹大統領は13か国と日本の倍だ。それには兵器を輸出しているかどうかが関係しているという。
自民党国防議連事務局長 佐藤正久元外務副大臣
「ヨーロッパと韓国の兵器での結びつきは強い。ハイスペックではなくても韓国の兵器は、それぞれの現地工場で生産でき整備もできる。ヨーロッパでは防衛装備品は外交ツールとなっているんです」
しかし日本では防衛装備品の海外への移転、つまり輸出に関しての議論はすすんでいない。世論調査でも侵略されている国に支援をするべきという人は多いものの、殺傷兵器を提供するかとの問いになると極端にその割合は減る。
輸出しないためコストが高く、予算が必要になるため、日本国内の防衛装備品が足りない。共同開発をしても日本から他国に売れないし技術力もUPしない。防衛装備品の供給を通じた外国との結びつきもなくなり、外交力が低下していく…日本の国のカタチを決めかねない“兵器”について、正面から議論をする必要があるのではないだろうか。
杉山晋輔 前駐米大使
「私は殺傷兵器でも供与すべきだと思う。なぜそうはっきり言うかと言うと、日本は80数年前に愚かな侵略をしてたくさんの人を殺して、二度とそんなことはしないと平和国家として立ち上がると言ったわけです。つまりそれは日本は、侵略はしない、させない、許さないと思っているんだと。他の誰かが侵略されてその国から助けてくれと言われたら、この侵略は許さないと言うべきだと確信しています。どうやって助けるのか…その国が自分の国民を守るために戦うことを支援することが、我々の平和国家の理念に反するとは私には到底思えない」
(BS-TBS 『報道1930』 7月13日放送より)