仙台市経済局産業振興課は、2023年度(令和5年度)から本格稼働する東北大学(東北大)の次世代放射光施設でイノベーション創出を目指す国内の中小事業者向けに「仙台市既存放射光施設活用事例創出事業」(通称は仙台市トライアルユース)の事業参加者(受託者)の公募を開始した。
この事業に応募できるのは、日本国内に法人格を持つ中小企業事業者(一般的な定義で、製造業だと資本金3億円以下、従業員300人以下)という。
現在、東北大青葉山新キャンパス(仙台市青葉区)では、2023年度に稼働開始する予定で次世代放射光施設の設計・開発・設置が進められている。 この放射光施設を整備・管理する光科学イノベーションセンター(PhoSIC、仙台市)は「放射光施設は、イノベーションを起こす“巨大な顕微鏡”だ」と説明している。
次世代放射光施設は、全体設計・開発の計画を、文部科学省が2018年7月に承認し、その実施体制が固まり、2023年度の稼動に向けて機器設計や機器開発が進んでいる。
東北大青葉山キャンパス(仙台市青葉区荒巻字青葉)の西側に整備中の約1万平方メートルの敷地をもつ新青葉山キャンパス内で、2023年度の稼動を目指して設計・開発・設置が進められており、加速器(ライナックと蓄積リング)といった中核設備をもつ大型放射光施設である。
次世代放射光施設では、X線の中でも比較的波長の長いX線である「軟X線」と呼ばれる200eV~5keV域でのX線を光源に使う。この軟X線域では、先行する既存のSpring8(国立研究開発法人理化学研究所と公益財団法人高輝度光科学研究センターが運営)に比べて、約100倍の高輝度性を発揮し、コヒーレンスも100倍高い性能を発揮する見込みと説明されている。
同施設は「従来の日本にあった軟X線向け観察施設に比べて100倍強い高輝度を持っている」などの優れた性能を持っているという。このため、次世代放射光施設で観察できる様々な現象から“イノベーションを起こす”現象を解明できれば、新しい事業化を起こせると考えているという。
現在でも東北大などのさまざまな大学・公的研究機関は、大手企業と共同で既存の放射光施設を利用して、様々な解析・実験を始めている。そこで得られた解析の知見を基に、2023年度に稼働開始する次世代放射光施設で、さらに進んだ実験をすぐに始めることを目指している。
今回の公募は、次世代放射光施設で実験を始める前に、既存の放射光施設を利用する解析・実験を、仙台市が中小企業を支援し、2023年度に稼働開始する次世代放射光施設での本格的な解析・実験につなげることを目指すものだとしている。
なお、この公募の締め切りは2021年8月20日で申込書などは仙台市経済局産業振興課のホームページよりダウンロードが可能だ。