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第十話 ムラムラしてます

ちょい短め

 

 食料品は明日以降に買うことにして、その日は宿に引き上げた。旅の疲れがまだ残っていたし、今日中にしなければならないわけでもない。日が暮れる前に宿で休むことにした。


 ーーーーというのは、半分建前である。


 宿での晩飯を終え、取り留めもない会話を終えたその日の深夜。


「…………よし、行くか」


 俺は盛大な決意を胸に、一人夜の町に繰り出した。


 身も心も充填完了である。これでいかなる苦難に直面しても対処できる。


 さて、なぜ俺がレアルに何も告げずに一人で外出しているかと言えば、話は昼食の後の解散まで遡る。


 装備品を見繕い、明日の予定を含んだ雑談を交わしながら町中を歩いていた、その時に、見つけてしまったのだ。


 いわゆる、色街と言う場所を。


 ーーーー何のかんのと前振りをしたところで、結局行き着くのが性欲でした。


 だってさ、しつこく言うけど、俺ってば健康優良な思春期な男子高校生ですよ。レアルさんが時折見せてくる色気が、思春期男子の心を刺激してくるんですって。それがたとえ無意識だとしても。冗談抜きに、あの巨乳は凶器だ。ふとした瞬間に見える深い谷間はやばい。ついでに、麓の村にまだ居るであろう精霊様の谷間も思い出してこれ又やばい。


 お恥ずかしいながら、こんな状況で自家発電が出来る機会があるとでも? もし見つかったら俺は悶死する。悶死しなくともその後がやばい。


 そんな悶々とした奥底の衝動が、エッチな格好をして呼び子してるお姉さん方を見た瞬間、噴き出してしまいました。


 この世界の風俗事情は、麓村に滞在していた時に、歴戦の男性諸君に教わってきた。何でも、男としての貫禄を身につけるために、コツコツと貯めた軍資金を元に、ワザワザ色街のある町まで遠出をしたとか。割と失敗談が多かったが、数少ない成功例を元に、外れのない店選びのコツを伝授してもらった。


 エロに対する男の団結力に感謝し。


「いざッ」


 出陣である。



 念のため、レアルが寝ている隣の部屋の扉に耳を当てる。一枚の戸を隔てた先から、心地よさそうな規則正しい寝息が聞こえる。よし、熟睡しているな。


 俺は抜き足差し足で部屋から離れ、一人そっと宿屋から外にでた。


 昼間は活気に満ちていた街路は、日も沈み星が輝いている夜天の元では静けさが広がっていた。思っていたよりも明るいのは星明かりだけではなく、道の所々に一定間隔で経っている街灯の光だ。昼間の間に取り込んだ光を、夜中に放出する魔導具だ。お陰で道に迷う事はなさそうだ。


 ただし俺の場合、魔導具の明かりだけが原因ではない。


 人の気配、雑音、明かりがなくなった事により、俺は己の身に起こっている『異変』を改めて自覚した。


 もしかしたら、と思い始めたのはあの腹黒姫との謁見からすぐだ。より明確に感じられたのは、あの霊山でゴーレムに襲われた時だ。


 五感がーー気配を感じる能力が、上がっているのだ。


 不思議なもので、視界のみならず、視界外の光景を何となくではあるが感じることが出来る。今なら、目を閉じたまま誰とも何ともぶつからずに街を一周できてしまうかもしれない。


 立ち並ぶ家屋の一つに目を向け、眉を細めて意識を研ぎ澄ます。


 壁を隔てた先、家の中に複数の気配を感じる。もしかしなくとも、これは住んでいる人間の気配だ。それ以上はプライバシーの侵害なので、意識を家から反らした。


 元々勘は鋭い方だったかも知れないが、ここまでくると野生動物の本能レベルに近い。


「婆さんが言うには、俺の魔力が無いかららしいが…………」


 氷の精霊様曰く、この世界の万物は『いくつかの例外』を除いて魔力が宿っているらしい。人間は元より、無生物でも何でも『存在している』という時点で多少なりともの魔力を持っている。


 だが、俺はその多少なりともの魔力すら宿っていない、完全なる『零』らしい。


 理屈を言えば、俺は魔力零であるために、他の宿す魔力を気配ととらえ、明確に感じられるのだ。


 ではなぜ、幻想世界に来てからこの気配を察する能力ーー以後は魔力探知とよぼうーーが伸びたかというと、だ。


 ここからは俺の推測だが、おそらく俺の住んでいた現実世界では、魔力を豊富に宿した存在が極端に少なかったのだろう。幻想世界の一般市民が宿している魔力の平均を二十と仮定して、現実世界の人間は一とか二とかその位。つまり、俺が『魔力』と確信して察知できる程の魔力量が現実世界には無かったのだ。


 だが、幻想世界に来て『魔力』と呼べる気配を躯が明確に覚えた結果、その存在をより細かく、正確に判別できるようになったのだ。


 ーーーー長々と思考している間にそろそろ色街の入り口が見えてきた。


「…………何だろうねぇ、このもやっとした気分」


 エロを発散するために向かう途中で至極まじめな事を考えていたせいか、今の自分の行動が非常に情けなく思えた。


 かといって大人の世界を目の前に怖じけが出てきたのかと言えば、答えは心の底から断言できる。


 否であると!


 多分、今の俺の顔は凄まじく鼻の下伸びまくりの、鼻息荒い変質者に見えるかも知れない。だがあえて言わせてもらう。


 男の子だもん!


 女の子の躯に興味津々の男の子だもん!


 ちょっと年上でクールでオッパイ大きなお姉さんとか大好きな男の子だなんだよぉぉぉぉぉぉッッッ!


「はッ!?」


 思わず天に向けて両手を突き上げた俺は我に返る。


 ここで衝動を発散させてどうするよ。


 発散させるのは女の子の中にするべきだ。


 むぅ、何を考えても下ネタがひたすら出てくるな。急がねばよけいなところで暴発してしまう。


 俺はフンスと気合い?を入れ直し、大人の世界への一歩を踏み出そうとして。


 財布を忘れていたことに今更ながらに気が付いた。

カンナはおっぱい星人です。

作者も何方かと言えばたゆんたゆんが好きです。某蒼の格ゲーの褐色さんやチャイナさんの揺れをガン見して先制攻撃を受けたりします。

・・・・・・この先、クール系ロリ巨乳を出すか否かで迷い中。

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