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ベルばら雑感ネタばれ満載

個人的な備忘録のつもりですが、長いです。

韓国ミュージカルのベルばら

ダイジェストon YouTube

今年の7月から10月まで、ベルばらが韓国でミュージカルとして上演された。YouTubeで、50分余りのダイジェスト動画が流れているので、視聴してみた。

始めはオスカル誕生、たぶん赤ん坊は人形で、泣き声は録音。続いて、たぶんオスカルの近衛隊長就任の場面。初めからアンドレが解説者のような立ち位置で前列に立ち続け、オスカルと交互に歌っていた。

その後は、場面がパリに変わって、ベルナールが新聞を配りながら何かに怒っているが、憲兵に追われて逃げる。逃げる途中、失職して呆然と歩いていたところに男達に絡まれていたロザリーに出会う。ベルナールはとりあえず絡んでいた男たちを短刀で脅して追い払うが、憲兵が追いついて来たので、ロザリーに名刺を渡してふたたび逃げる。そしてその後がド・ゲメネ公爵の幼児殺害事件。殺害された幼児の母が泣き崩れているところに登場したロザリーが、悲しげだが澄み渡ったきれいな声で独唱し、通りかかった馬車を止める。姿は見えないが、中からオスカルとアンドレの声が聞こえ、窓からオスカルが手だけ出してお金を施す。たぶんこれが売春未遂事件。

場面は宮廷。オスカルとド・ゲメネ公爵が、たぶん幼児殺害事件の事で言い争っている。互いに剣を抜いて決闘が始まり、オスカルの勝ち!となる直前にポリニャック伯夫人が現れる。オスカルは剣を収め、とりあえずひざまずくが、ポリニャック伯夫人が偉そうに話し始めると立ち上がって反論しようとする。が、アンドレに止められて2人で退場する。韓国のポリニャック伯夫人は、権力が原作よりかなり水増しされているようだ。その後ド・ゲメネ公爵に大袈裟に称賛されたポリニャック伯夫人の独唱が始まる。演じる女優は特に太っているわけではないのだが、土俵入りでも始めそうなド迫力だった。もちろん歌唱も振り付けも表情も完璧!

その後に軍服姿のオスカルの独唱が入る。韓国語がわからないので如何なる歌なのか全くわからない。ただ、近衛隊員姿のバックダンサーが大勢踊っていたので、近衛隊長である自分を鼓舞する歌なのか、または近衛隊長としての自分に疑問を持ち始めた歌なのか。

次の場面は、たぶんセーヌ川の辺りを1人で歩くベルナールの歌唱で始まる。「オモニ(母)」という言葉が何度か入るので、おそらく貴族の愛人だった母が捨てられて自分を抱き抱えたままセーヌ川に飛び込んだ事を歌ったものだろう。 豊かな声量で朗々と歌い上げる力強い歌唱なのだが、途中でさらに力強くなり、民衆姿のバックダンサーが多数登場して、重くるしいパフォーマンスを添える。民衆が虐げられる社会を変えるぞ!という決意を歌っていたのだと思うが、化粧のせいか、ベルナールの目力が凄い。

その後はドレス姿のオスカルが登場し、しんみりと歌っているところに本物の黒い騎士(ベルナール)と偽黒い騎士(アンドレ)が登場して、2人の黒い騎士が剣を交え始める。やがて憲兵がホイッスルを鳴らして登場した時にアンドレが負傷するが、そのまま憲兵と一緒に黒い騎士を追って退場する。残ったオスカルは、怒っているような表情と声で歌唱を再開し、途中でドレスを脱ぎ捨て、中に着ていた男性の軽装姿になる。黒い騎士をおびきだすためにドレスを着ていたのだろうが、歌の意味は分からず。

次は、ビラ配り中のベルナール。民衆姿の多数のエキストラをバックに従えて力強い歌唱。革命を決起しているところだろうか。まもなく彼らは一旦散らばり、場面がいきなり変わり、たぶん夜の宮廷の庭。そこではアントワネットとフェルゼンの逢瀬を衛兵が見つけて、たぶん誤魔化すのに四苦八苦するオスカルがいた。が、またすぐにベルナールと民衆の集会の場面に戻り、気合いの入ったベルナールの歌唱に負けてない民衆のバックコーラスが入る。歌唱も力が入りまくりだが、誰もが険しい表情で拳を振り上げ、気ぜわしく動き回る振り付けもなかなかだった。

次の場面はたぶんジャルジェ家。オスカルとアンドレが何やら言い争っている雰囲気で、アンドレはすぐに退場する。そして残されたオスカルの歌唱が始まるが、しんみりした歌で、表情は悲しげ。「アンドレ、ごめん!」と言ってるのだろうか。それともアンドレとの気持ちのすれ違いを嘆いているのだろうか。この時のオスカルは青い軍服姿なのだが、雰囲気が女性らしく、逆光でシルエットになるとマントがドレスに見えて、完全に女性の姿だった。

続いて、白い軽装姿のオスカルがうつむき加減でゆっくり歩いており、黒いコート姿のアンドレが背後から登場して歌唱に入る。オスカルは早々に退場するが、ペガサスがどうのオリンポスがどうのと歌っているので、たぶんオスカルを讃美する歌なのだろう。比較的明るい感じの歌で、歌っているアンドレの表情も華やいでいた。ちなみに、「君なら」という日本語訳のタイトルがついているが、詳しい内容は不明。

そのアンドレの歌唱の途中で、場面が変わって舞踏会場になり、今度は赤い軍服姿のオスカルが登場。遅れて黄色いドレス姿のロザリーが登場し、貴婦人達に自己紹介をして冷やかされた後、オスカルに何か言われて退場する。オモニ(母)がどうのこうの言っていたので、たぶん「養母の仇を探しておいで」くらいの事だったのだろうか。直後にアンドレも退場すると、今度はポリニャック伯夫人が威圧感たっぷりに登場し、続いて現れたアントワネットとオスカルがダンスを一通り踊る。が、オスカルに何か耳打ちされたアントワネットは、機嫌を損った感じで退場する。直後にアンドレが再登場し、オスカルに何か耳打ちし、2人はただならぬ雰囲気で走り出す。

一方ロザリーは、たぶん結婚話を嫌がって泣きじゃくっているシャルロットと出会い、話し相手をして慰めていると、怒りモードで毒親感満載のポリニャック伯夫人が割り込んで来る。ロザリーは、夫人が養母の仇と気づいてピストルを構えるが、そこへオスカルとアンドレが到着。アンドレの口から「マルティーヌ・ガブリエル(ロザリーの実母)」と言う名前が語られ、ロザリーとポリニャック伯夫人が 、自分達が実の母娘である事を認識して動揺する。そのうちに周囲が騒がしくなり、シャルロットが死体になって登場する。ポリニャック伯夫人は、シャルロットの周りを歩き、周囲の人に絡みながら、狂気の歌唱を始めるが、傲慢さは相変わらず。だが、やがてシャルロットの遺体を抱き抱えると泣き叫びだし、たまらず歩み寄ったロザリーに、シャルロットの遺体から外したペンダントを差し出すが、ロザリーは受け取らずに二言三言叫んでオスカルとアンドレに伴われて退場。その後もしばらくポリニャック伯夫人の歌唱が続く。歌の内容はまったくわからないが、薄ら笑いを浮かべつつ、ふてぶてしく力強く、最後は両腕を掲げた勝利のポーズ(?)で締めていた。

そして、たぶんジャルジェ家。男性の正装姿のオスカルとジェローデルが挨拶を交わしている。それを遠巻きに見るアンドレが、悲しそうに独唱を始め、ワイングラスに毒を入れて飲もうとする。原作では心中未遂だが、韓国のアンドレは1人で服毒しようとしたようだ。ところが、飲む前にオスカルが現れて、何か言って去る。その後アンドレが毒入りワインを床に捨てるので、たぶん「(ジェローデルと)結婚はしないよ」と言われたのだろう。その後もアンドレの独唱がしばらく続くのだが、言葉がわからなくてもアンドレの慟哭と悲哀がひしひしと伝わって来る素晴らしい歌唱だ。

動画はここで終わり。アンドレとオスカルの死の場面などは、まだYouTubeで公開出来ないのだろう。

キャスト

オスカル、アンドレ、ベルナール、ポリニャック伯夫人は3人交代。ロザリー、ジェローデル、乳母が2人交代。ジャルジェ将軍、ド・ゲメネ公爵が1人。何通りの組み合わせが・・なんていう小学生の算数は置いといて、YouTubeで韓国版ベルばらを見始めた当時の私は、アンドレとベルナールの区別がつかないほど混乱していた。韓流ドラマは、昔「冬のソナタ」に熱中して以来ずっとご無沙汰で、韓国の俳優など知るわけがない。が、視聴するうちに、アンドレの毒ワイン事件の歌唱(日本語訳では「毒杯」というタイトル)が気になり始め、YouTubeGoogleを検索し、オスカル役とアンドレ役の人たちのことを調べてみた。

オスカル役の1人オク・ジュヒョンは、韓国ミュージカル界の大スターとの事。声を張り上げて心の叫びを表現する時も、うつむいて悲しげに歌う時も、言葉のわからない外国人の私にも十二分に響いてくる演技力、歌唱力だ。そして年齢は44歳だというから驚きだ。確かに体型が少し気にはなってはいたのだが、たぶん他作品で女性の衣装を着れば全然OKなのだろう。「エリザベート」など他の出演作も是非見てみたくなった。もう1人がキム・ジウ。掘りの深い顔立ちの人で、着ていたドレスを脱ぎ捨てて歌う場面では、歌唱も表情も気合い入りまくりで、オスカルの怒りを全身で表現していた。そしてチョン・ユジは1人だけ若く33歳との事。元アイドルだったそうで、かわいい。ダイジェストでは、序盤の初々しいオスカルを演じる場面が収録されている。

アンドレ役のうち、イ・ヘジュンは、「毒杯」での悲しそうな表情とマッチした歌唱が圧巻だ。私が韓国ミュージカルに興味を持ってしまったのはこれが原因なのだ。「君なら」は、ダイジェストにはキム・ソンシクの歌唱が収録されている。伸びやかで綺麗な歌声が、優しげなビジュアルとマッチしていて心地よい。で、残り1人のコ・ウンソンはダイジェストに登場しない。彼が歌う「このまま朝まで」という劇中歌(酔い潰れたオスカルをアンドレが連れて帰る場面の歌?ダイジェストには入っていない)の動画が単発でYouTubeに流れているが、今一つインパクトに欠け 、若手のチャレンジ枠採用で谷間扱いなのだろうと最近まで思っていた。ところが、他作品関連の彼の歌唱映像を視聴して、絶対それはないなと思った。歌唱力が半端ない。音域が広く、どの高さの声も綺麗。是非、彼が演じるアンドレも見てみたいものだ。

第2主役はベルナール?アンドレ

ところでアントワネットとフェルゼンはほとんど登場しない。2時間やそこらで原作の全てが盛り込めるわけではないので、登場人物を思い切って絞り込んだのだろう。それに対してベルナールの扱いが大変重く、ダイジェストを見る限り、彼にスポットライトが当たっている時間がかなり長い。また、原作ではNo.1ロベスピエールNo.2ベルナールだった革命側のトップが、韓国ミュージカルではベルナールに1本化されており、彼は革命のリーダー、そして象徴ともいえる存在なのだ。キャストボードには、オスカル、アンドレと並んで同じ大きさでベルナールが載っており、主役グループの扱いになっている。日本では考えられない序列だ。制作側にベルナールへの相当強い思い入れがあったと思われる。要は制作側、いや多くの韓国人は「革命」が好きなのだろう。だから、オスカルに次ぐ第2主役として「革命家ベルナール」にスポットライトを当てていたのではないだろうか。しかし、ダイジェスト内の最終場面「毒杯」ではアンドレが完全に舞台を支配しており、第2主役は俺だ!と言わんばかりに魅せてくれた。その後はパリ出動からアンドレとオスカルの相次ぐ戦死という流れになるはずだが、残念ながらダイジェストには収録されていない。近いうちにぜひフル視聴したいものだ。日本での劇場版公開に合わせてDVDを発売していただけないものだろうか。