ジャガイモ(馬鈴薯)栽培で収量アップ!土作りのポイントとpH管理のコツ
ジャガイモ(馬鈴薯)栽培における土作りは、収量や品質を左右する重要な工程です。適切なpH調整や堆肥の施用、石礫の除去など、具体的な手順を解説します。これらのポイントを押さえて、健全な生育環境を整えましょう。
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目次
ジャガイモ(馬鈴薯)の品質を上げる「よい土壌」の条件
ヨシヒロ / PIXTA(ピクスタ)
ジャガイモ(馬鈴薯)の品質・収量アップにつながる理想的な土壌とは、「物理性」「化学性」「生物性」のバランスが取れた状態のものです。各要素の具体的な条件は、以下のとおりです。
- 物理性:
- 空気の通りがよく排水性が高いこと。膨軟(ふかふか柔らかい状態)で適度な保水性を持つこと。湿った土を握ると跡が残るのが目安。
- 化学性:
- ちょうどよい肥料養分を含み、成分のバランスがとれていること。土壌が酸性かアルカリ性かを示すpHの値がジャガイモ(馬鈴薯)に適切な範囲に調整されていること。
- 生物性:
- 微生物が適度に繁殖していること。有機物が豊富に含まれていること。
好適pHは「5.0〜6.0」が目安
ジャガイモ(馬鈴薯)は弱酸性の土壌を好み、生育に適したpH(ピーエイチ)値は5.0〜6.0です。pHとは、土壌の酸性度・アルカリ性度を示す尺度で、0〜14の数値で表されます。
ジャガイモ(馬鈴薯)は、土壌のpH値が低すぎると萌芽不良につながる一方、高すぎるとそうか病のリスクが発生します。ほ場ごとに土壌pHを調べて、適正範囲であるかを確かめまることが重要です。
pHが低い場合の対処については、後述の<石灰資材を施用する>で解説しています。
ジャガイモ(馬鈴薯)の土作りを行う時期
トラクターでの深耕作業
Oleksandr / PIXTA(ピクスタ)
ジャガイモ(馬鈴薯)の土作りは、種イモを定植する2週間〜1ヵ月前を目安に行います。生育に適した土作りには多くの工程が伴うため、計画的な準備が必要です。作業の一例は以下のとおりです。
- プラウによる深耕・心土破砕
- バーチカルでの整地・鎮圧
- マニアスプレッダーを使った堆肥散布
- ロータリーでの耕うん
また、基肥は定植する2週間前、もしくは種イモ定植時に散布します。
土作りは天候にも左右されるため、余裕を持った計画が重要です。
【手順解説】 ジャガイモ(馬鈴薯)栽培に適した土作りの流れ
toshiharu_arakawa / PIXTA(ピクスタ)
ジャガイモ(馬鈴薯)の生育に適した土作りの具体的な作業は、次のとおりです。
1. 耕うん・畝立てを行う
ほ場の耕うんは、プラウやプラソイラを使用して天地返し(下層土を上層へ出す作業)を行います。作土層からトラクターにより踏み固められた耕盤層まで破砕し、土中に新鮮な空気を送り込みます。
適度に空気を含む膨軟な土壌は、ジャガイモ(馬鈴薯)の根が伸びやすい環境になります。
畝立ては、水はけをよくするために高畝にします。畝幅は80〜100cm、株間は25〜30cmを目安とします。
水はけが悪く多湿な土壌だと、軟腐病が起こりやすくなるので注意が必要です。畝幅を広く取ることで、ジャガイモ(馬鈴薯)の緑化や腐敗を防ぎ、培土時の作業性も向上します。
2. 肥料(堆肥・基肥)を散布する
マニアスプレッダ―による堆肥散布作業
ttn3 / PIXTA(ピクスタ)
堆肥・基肥の施用量は、土壌分析を行い、その土の肥沃度などを分析したうえで決定するのが理想的ですが、難しい場合には標準量を目安にします。
堆肥の散布量は1平方m当たり2kgを目安に散布し、その後はロータリーで深耕します。
基肥を定植前に散布する場合、ライムソワーやグランドソワーなどの肥料散布機を使用します。
10a当たりの標準的な施肥量の目安は、以下のとおりです。
- 窒素8~9kg
- リン酸18~20kg
- カリウム13~16kg
定植時の散布では、立てた畝の中央部に溝を掘り種イモを植えます。そして定植した種イモと種イモの間に基肥を20gを目安に施します。
ジャガイモ(馬鈴薯)は、初期の段階で十分な養分を与えて株を栽培することが重要です。開花以降に肥料切れの状態になるのが理想です。
3. 石灰資材を施用する
先述のとおり、ジャガイモ(馬鈴薯)を栽培するほ場は、土壌pHを測定して好適値(5.0〜6.0)になっているか確かめます。pH値が低い場合は、苦土石灰を施用します。
苦土石灰を施用する量は、1ha当たり500〜1,000kgの散布が推奨されます。一方、pH値が6.0以上だとそうか病を起こすリスクが高まるため、石灰を施用する必要はありません。
また、土壌pHの測定は手軽に行える「土壌pH(KCl)簡易測定法」があります。土壌pH(KCl)簡易測定法とは、正しいpH値を市販の器具と試薬だけで簡単に測れる手段です。ほ場にて即時pH値を確認できるため、費用と時間の節約になります。
【土作りのコツ】高品質なジャガイモ(馬鈴薯)を生産する3つのポイント
川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)
高品質なジャガイモ(馬鈴薯)を生産するには、次の土作りの3つのポイントを押さえることが重要です。
- ほ場の石や土塊は取り除く
- 土壌消毒の実施も検討する
- 施肥量はシステムも活用して決める
農薬や展着剤を使用する前にラベルの記載内容をよく確認し、使用方法を守って正しく散布してください。
なお、ここに記載する農薬は、2024年11月1日現在登録があるものです。実際の使用に当たってはラベルをよく読み、用法・用量を守りましょう。
また、地域によっては農薬使用の決まりが設けられている場合もあるため、事前に確認しておいてください。農薬の登録は、農薬登録情報提供システムで検索できます。
ほ場の石や土塊は取り除く
土壌中の石や土塊は、ジャガイモ(馬鈴薯)の品質を低下させる要因になります。石や土塊があると、“ワレいも”や“くの字いも”などと呼ばれる変形の品質障害が起こりやすくなるので対策が必要です。
ワレいも
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
コブいもとくの字いも
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
土壌中の石や土塊が多いほ場は、「ストーンピッカー(石礫除去機)」を使用して除去するのも1つの手です。
近年のストーンピッカーは、作業幅が広く高速作業できるコンベア方式の製品が販売されています。また購入費の捻出が困難なら、業者へ依頼するのもよいでしょう。
土壌消毒の実施も検討する
土壌消毒もジャガイモ(馬鈴薯)の品質向上には有効です。次のようなほ場であれば、土壌消毒の検討をおすすめします。
- 農地が限られておりやむを得ず連作するほ場
- そうか病やシストセンチュウなどの病害虫による被害が発生したほ場
土壌消毒に使われる農薬は「ガスタード微粒剤」や「D-D剤」が挙げられます。
また、秋作ジャガイモ(馬鈴薯)では、梅雨明け後の太陽熱を利用した土壌消毒が可能になり、そうか病の抑制に期待できます。
▼ジャガイモ(馬鈴薯)の連作障害については、以下の記事をご覧ください。
施肥量はシステムも活用して決める
ジャガイモ(馬鈴薯)栽培の土作りでは、特に施肥設計の際に栽培管理システムが役に立ちます。
xarvio®(ザルビオ)フィールドマネージャーは、ほ場の状況に応じた可変施肥を実現します。
ザルビオでは、衛星画像と人工知能(AI)を活用して、生育マップと地力マップを作成されます。これらのマップをもとに、可変施肥マップが自動生成されるため、特別な知識がなくても可変施肥マップをもとに最適な施肥量を決めることができます。
▼ザルビオの活用事例は、以下からご覧ください。
大森様
栃木県 個人経営
水稲3ha / 野菜物10ha
▷食味スコアの向上によって差別化を図りたい
▷適切なタイミングで刈り取り・防除して、無駄なく収穫したい
▷食味のスコアを上げるために施肥を機能に実施したいが、手で撒いてもブロードキャスターを用いてもばらつきが出てしまう
▷地力マップを活用した手撒きの可変施肥を行うことで、食味スコアが6点向上した
▷ザルビオの生育予測機能を使うことで、刈り取りや防除の適切なタイミング判断目処が立った
▷最適な防除時期タイミングアラートで、カメムシの被害を最小限に抑えられた
ジャガイモ(馬鈴薯)は土の中で深く生長するからこそ、土作りは重要な作業です。膨軟で、適切な肥料が十分に行きわたった、最適なpHバランスの土壌を目指しましょう。石礫除去機や簡易的なpH測定の導入でより土壌の調整がしやすくなります。
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酒井恭子
テレビ番組制作会社、タウン情報誌出版社での取材・編集・ライティング業務などを経て、2018年からライターとして活動。農業、グルメ、教育、ビジネス、子育て情報など、幅広いジャンルの記事を執筆している。特に、食べることに興味があり、グルメ情報を自身のメディアでも発信中。美味しい料理の素材となる野菜や果物についても関心を持ち、農家とつながる飲食店で取材するなど、日々知識を深めている。「自分の文章で感動を多くの人と共有したい」が信条。