【カレーおじさん\(^o^)/の今月のカレーとスパイス】2025年1月を振り返る

2025年最初の「今月のカレーとスパイス」。今月は裏テーマを「激戦区」としてさまざまなお店をご紹介しました。

1. この2年ほどで新カレー激戦区となってきた飯田橋にできた南インド料理店

2. ハイレベルな飲食店激戦区である奥浅草エリアにできたスパイスカレー店

3. ネパール料理激戦区新大久保にできた個性派ダルバートのお店

4. バーやビストロ激戦区である神楽坂にできたタイ料理バル

5. こちらも新カレー激戦区である学芸大学に独立移転した人気間借りカレー店

古くからのカレー激戦区である神保町、カレーフェスによってカレー文化が育ってきた下北沢に加え、ここ数年でカレーがカレーを呼ぶように新たなカレー激戦区が各地に生まれ育ってきているように感じます。それはカレーやスパイス料理へのニーズが高まっているからとも言えるでしょう。その証拠にカレーやスパイス料理が少なかった飲食激戦区にも新店舗としてカレーのお店ができ、人気が出はじめています。カレーが好きな方はもちろん、カレーは家で食べるものと決めている人にこそカレーの新時代と可能性を感じていただきたいです。

【第1週のカレーとスパイス】スパイス料理&カレーの新激戦区・飯田橋に、またもや注目の南インド料理店が誕生!「Ansh(アンシュ)」

昨年末にオープンしたばかりの「Ansh」

近年一気にカレー関係のお店が増えている新カレー激戦区飯田橋。昨年末にも続々と新店舗が誕生したのですが、今回ご紹介するのは2024年12月11日にオープンした「Ansh」。南インド料理のお店です。

ナチュラルでおしゃれな雰囲気の店内

インドネパール系のお店があった跡地に入ったのですが、以前とはかなり違うおしゃれな内装に変わっていました。

客席はカウンターとテーブル席も用意

メニューは「シーフードカリー」1,300円と「お肉のカリー」1,200円をメインに「本日のビリヤニ」1,300円、「マサラドーサ」1,400円、全部まとめたような「Anshスペシャルセット」1,900円がありました。

肉のカレーは何か聞いてみるとこの日はマトンとのこと。1つのカレーのみならずサンバルとラッサムが付くミールススタイルで、肉カレーには肉のアイテム、シーフードにはシーフードのアイテムが別途付くようです。カレーだけの追加は有料(300円)で可能だったのでシーフードカリーを追加。

「お肉のカリー」に「シーフードカリー」を追加

全体的にしっかりした味付けの南インド料理。ついてきたトマトチャトニにどこかネパールのゴルベラコアチャール(ネパールのトマトソース)っぽさを感じたことや、初心者にもわかりやすいおいしさが某名店を思わせるなと思ってそれを自分のSNSに書いたらお店の方からDMをいただきまして、まさにその名店出身シェフが独立して開いたお店がAnshなのだそうです。お店の意向もあり店名は伏せますが「食べログ アジア・エスニック TOKYO 百名店」に輝いたこともある都内の人気南インド料理店です。

お肉のカリー、シーフードカリーはサンバルとラッサムもついてきます

メインのカレー、マトンカレーは王道のテイスト。それとは別にドライなマトンもあってこれが実においしい。サンバルやラッサムと混ぜて食べるとよく合います。

冬にぴったりのシーフードカリー

シーフードは鱈と帆立のココナッツカレー。こちらも出身店を思わせる魚介使いの上手さを感じました。ご飯の上のエディブルフラワーもビジュアルのアクセントとなっていて視覚も楽しませてくれるのが良いです。

「季節のチャイ」

食後に「季節のチャイ」400円も。この日はホワイトチョコのチャイで、チャイ自体の甘みとホワイトチョコによるベクトルの違う甘さが加わって食後の満足度を高めてくれました。

「マサラドーサ」

後日再訪して「マサラドーサ」1,400円を注文。ドーサという米粉や豆粉を使用したクレープの中にスパイスで味つけされたじゃがいもが入る南インドの名物料理です。パリッとしたドーサとジューシーなマサラポテトの食感のコントラストが良く、サンバルとチャトニがつくのは定番なのですが、こちらにもシーフードカリーとライスがついてお腹いっぱい。どちらも安定感あるおいしさです。

ドーサの中にはマサラポテトがたっぷり

お店の方によると「南インド料理×日本の四季」をコンセプトに、インド料理では通常使わない日本人が好む食材も季節の旬を意識して積極的に使用し、日本人に親しみやすい南インド料理を目指しているそうです。

現状ランチメニューのみですが、今後ディナーはコース料理やインドのお酒、オリジナルのスパイスカクテルを充実させていくので、そちらも楽しみにしていただきたいとのこと。

今後にも期待が高まりますね。近隣にも既に人気のインド料理店が少なからずありますが、また少し違う立ち位置のお店となっていきそうです。南インド料理ファンは要チェックですよ!

【第2週のカレーとスパイス】ハイレベルな飲食店が集う“奥浅草”エリアに、実力派カレー店が移転オープン!「putiysani (プチシャニ)」

浅草と言えば浅草寺周辺が世界的な観光地として有名で人気の飲食店も多いのですが、その人気店の方々や地元の通の間では観音裏と呼ばれるエリアの方が、レベルが高い飲食店が多いと言われ、僕自身もその観音裏と、そこからもう少し範囲を広げた奥浅草エリアに数年前から注目しています。

2024年11月10日に田町から移転オープン

今回ご紹介する「putiysani(プチシャニ)」は、その奥浅草エリアで2024年11月10日に田町から移転オープンしたお店。

落ち着いた雰囲気の店内

観光地の喧騒を離れた住宅街のただなかにあり、落ち着いた雰囲気の店内は陽光も差し込んでほっこりとくつろげる空間。カレーのみならずタコスもあって気になり、まずは「タコス」450円を。具材は日替わりで黒板メニューから牛すねを選んでオーダーしました。

「タコス」

手のひらサイズのタコスはトルティーヤの上に牛すねとたっぷりの野菜。牛すね肉の重厚感と野菜の爽やかさが融合して、お酒のおつまみとしてもカレーの前菜としても機能するようなメニューです。

この日のカレーは2種類。バターチキンとポークビンダルーでした。あいがけも可能ということで「本日のカレー合いがけ」1,600円をご飯少なめでオーダー。

ご飯少なめでオーダーした「本日のカレー合いがけ」

まずバターチキンを食べてみるとインドネパール系やカフェなどの甘みあるバターチキンとは一線を画した仕上がり。甘さは抑えられ、バターのコクを程よく感じるグレイビーがジューシーなチキンに絡み、個性あるおいしさです。

バターチキン

続いてポークビンダルーを食べてみるとこれにさらなる個性を感じました。酸味が一般的なポークビンダルーと違い、ほのかな甘みと苦みも感じ、塩味とうまみも含めた五味を酸味がつないでいるような調和の取れ方。聞いてみると沖縄のもろみ酢を使い、隠し味に奄美の黒糖焼酎を使用しているそうで、だからこその個性あるおいしさなのかと納得しました。

ポークビンダルー

デザートに「キャロットケーキ」450円を「ジブラルタル」500円と合わせて。しっかりしたテクスチャの中にナッツも入り食感の楽しいシンプルなキャロットケーキ。

「キャロットケーキ」

ジブラルタルとはジブラルタルグラスを使用したミルクコーヒーなのですが、ミルクの甘みが活きる温度となっていてケーキもコーヒーもどちらも優しく自然な甘みだからこその一体感がありました。

「ジブラルタル」

何を食べても飲んでもおいしいお店ですがシェフは代々木のハンバーガー専門店で11年間働いていた中、マンネリ化したまかないの気分を変えようと近くのお店に食べに行くようになり「ライオンシェア」と「スパイスポスト」に出合ってカレーの魅力にハマり、そこから独学でカレー作りを始めて遂にはカレー屋で独立したとのこと。

自由な発想は、カレーではない飲食店出身だからこそであり、10年を超える経験があるからこそのレベルの高さ。そして何よりセンスが良いのでしょう。センスの良さは店名にも表れており、どこの国の言葉でもない造語なのですが、独立前にポップアップ出店をした際に流れていた曲名から連想し、感覚で名付けたというその名も他にない個性を感じます。

取材日のメニュー

メニューは日替わりですがカレーに関してはしばらくバターチキン、ポークビンダルー、キーマの中から2種、タコスはカルニタスと海老を中心に数種用意するつもりとのこと。

このお店を目掛けて行かないと気づかないような場所にありますが、わざわざ行く価値のあるお店です。特にスパイスカレーが広まり、ある意味でマンネリ化も感じる昨今のカレー業界において、確固たる個性を持ったプチシャニの料理にはこの状況を打破してくれる可能性も感じます。

飲食店レベルの高い奥浅草において、そのレベルをさらに高めていってくれそうな新店です。