イタリア・プーリアの赤ワイン「ネプリカ・プリミティーヴォ(NEPRICA PRIMITIVO)2022」
1385年からというイタリア最古のワイン生産者アンティノリがプーリアで立ち上げたワイナリー、トルマレスカの赤ワイン。
プーリアはイタリア南部の州で、イタリアをブーツの形に例えるならかかとの部分にあたる。
ネプリカとは、ネグロアマーロ、プリミティーヴォ、カベルネ・ソーヴィニヨンの頭文字をとって名づけられたもので、トルマレスカではこの3種類のワインシリーズを発売。
きのう飲んだのはプーリアの土着品種プリミティーヴォ100%、フルーティーで飲みやすいワイン。
ワインの友で観たのは、民放のCSで放送していたアメリカ映画「告発」。
1994年の作品。
原題「MURDER IN THE FIRST」
監督マーク・ロッコ、出演クリスチャン・スレイター、ケヴィン・ベーコン、ゲイリー・オールドマン、エンベス・ディヴィッツほか。
悪名高きアルカトラズ刑務所を閉鎖に追い込んだ実際の事件にもとづいてつくられた新米弁護士と囚人の友情&法廷サスペンス劇。
1941年、25年の刑でアルカトラズ刑務所に服役中のヘンリー・ヤング(ケヴィン・ベーコン)は脱獄しようとして失敗し、裏切った仲間を所内で殺害する。ロースクールを出て間もない新米弁護士ジェームズ・スタンフィル(クリスチャン・スレイター)は第一級殺人罪に問われたヘンリーの弁護を担当するが、ヘンリーは心を閉ざし、事件のことしゃべろうとしない。
しかし、彼の発するわずかな言葉の端々から刑務所内の実態が明らかにされていく。ヘンリーは、劣悪な環境や副刑務所長ミルトン・グレン(ゲイリー・オールドマン)の残忍な拷問に耐えきれずに脱獄を企てたもので、脱獄失敗後、「懲らしめ」と称して1000日ものの間、光の届かない地下牢に入れられ虐待されていたのだった。
真相を知って激しい憤りを感じたジェームズは、彼を救うために勝つ望みのない裁判を戦う決意をする・・・。
アルカトラズ刑務所は、アメリカ西海岸のサンフランシスコ湾内にあるアルカトラズ島という小島につくられた連邦刑務所。もともとは南北戦争のころに軍事施設とてしてつくられたが、マフィアなどの組織犯罪が横行した大恐慌や禁酒法の時代、連邦政府の管理下に置かれ、凶悪犯を収容する刑務所となった。ギャングのボスのアル・カポネもここに収容されていたというが、孤島であるため運営にはカネがかかり、凶悪犯だけでなくほかの刑務所からも囚人が移送されてくるようになる。
その一人が25年の刑の受刑者、ヘンリーだった。
彼はどんな罪を犯したのか?
彼は両親に死に別れ、幼い妹と極貧の生活を送っていた。17歳のとき、村の売店に仕事をもらいにいくが、断られる。彼は思わず店にあった5ドルを盗んでしまう。この店はたまたま連邦政府の末端である郵便局を兼ねていたため、たった5ドルの窃盗でも連邦犯罪となり、25年の刑をいい渡されてアルカトラズ刑務所に送られたのだった。
厳しい規律どころか、非人道的な虐待が平気で行われる監獄島のつらさに、彼は耐えられずに逃げ出そうとする。それが脱獄であり、失敗して捕まった彼はさらにひどい虐待を受けることになったのだ。
以上は映画で描かれるヘンリーで、実話にもとづく映画とのうたい文句だが、ヘンリーの人物造形についてはかなり脚色が入っているようで、映画のモデルとなった実在の人物は、銀行強盗を繰り返したりしていて、殺人罪にも問われたりした男だっという。
それでも、アルカトラズ刑務所での拷問などの行為は実際にあったことなのだろう。脱走を試みて捕まり、裏切った仲間を殺して以降の話はかなり史実にもとづいているようだ。
そのあたりが、真実とフィクションをない交ぜにした映画のおもしろさであり、フィクションを描くことで真実をより際立たせ、「ヤングを拷問し、彼を殺人に追いやったアルカトラズ刑務所を告発します!」との弁護士のジェームズの訴えが心に響く。
見せ場はクライマックスの法廷シーン。
クリスチャン・スレイター演じる弁護士のジェームズは、ケヴィン・ベーコン演じる被告人ヤングを証人として喚問し、白熱のやりとりで一挙に事件の真相に迫っていく。
刑務所の副所長役のゲイリー・オールドマンの悪役ぶりも見事。彼は「レオン」で麻薬中毒の狂気じみた麻薬捜査官を演じてハマリ役だったが、本作でも残忍なイメージ全開で存在感を見せていた。
アルカトラズ刑務所は1963年3月、閉鎖され、現在は歴史の遺産として公開され観光地になっているという。
ついでにその前に観た映画。
民放のCSで放送していたアメリカ映画「フラッシュ・ゴードン」。
1980年製作。
監督マイク・ホッジス、出演サム・ジョーンズ、メロディ・アンダーソン、マックス・フォン・シドー、トポル、オルネラ・ムーティ、ティモシー・ダルトンほか。
ジョージ・ルーカスの「スター・ウォーズ」にも影響を与えたといわれるアメリカンコミックを映画化したアクション・ヒーロー&SFアドベンチャー。
ナゾのエネルギー光線によって月が軌道から引き離され、地球に急接近する。その原因が地球外生命体にあると確信した科学者ザーコフ(トポル)は、あと10日で月と地球が衝突すると予言。ザーコフは大惨事を阻止するべく、偶然出くわした人気アメフト選手フラッシュ・ゴードン(サム・ジョーンズ)、一人旅をしていた女性デイル(メロディ・アンダーソン)とともに自作のロケット船で皇帝ミン(マックス・フォン・シドー)が支配する惑星モンゴへ向かう。
ところが、ミンは極悪非道な独裁者であり、デイルを見そめたミンは、邪魔なゴードンを処刑し、ザーコフを洗脳するよう命じる・・・。
ばかばかしくて、あり得ない話のオンパレード。
たとえば、ザーコフを洗脳しようと、皇帝ミンはレーザービームみたいなのを脳に照射して過去の記憶を消そうするのだが、ザーコフは機械にかけられている間、昔のどうでもいいようなことを必死に思い出して対抗する。シェイクスピアやユダヤの律法、アインシュタインの方程式、さらにとビートルズの歌の数々・・・。結局、彼の記憶は守られて、「どうだ、人間の頭脳には勝てないんだ」と息巻くザーコフ。
何ともばかばかしい展開だが、それだからこそ漫画チックな空想がふくらみ、思わず吹き出しながらも楽しい冒険映画になっている。
ロックバンド「クイーン」が音楽を担当し、主題歌「フラッシュのテーマ」を歌っている。
原作は1934年1月から全米の新聞で連載が始まったアレックス・レイモンドの同名の漫画。
漫画の連載が評判を呼んですぐさまラジオ・ドラマ化され、1936年から1940年にかけては連続活劇映画として映画館で上映された。
連続活劇映画は1話20分ぐらいずつ、12~15話ほどで完結するシリーズもの。これを1話ずつニュース映画や大作映画などと併せて上映するが、1話を1週間上映して翌週はその続きを上映するという仕組みで、毎回、悪者と対決するヒーロー・ヒロインがあわや、というところで終わってしまうので、その続きが見たくて子どもや若者に人気があったという。
連続活劇映画「フラッシュ・ゴードン」シリーズは全12話だったが、子どものころから見て大ファンだったのがジョージ・ルーカスだった。
彼はデビュー作であるSF短編映画「THX1138」(1971年)、自身の高校生活をベースにした青春映画「アメリカン・グラフィティ」(1973年)に続いて「フラッシュ・ゴードン」の再映画化を試みようとしたという。しかし、映画化権が取れずに断念。代わりにつくったのが「スター・ウォーズ」(1977年)といわれ、たしかにこの2作品は雰囲気がとてもよく似ている。
ジョージ・ルーカスを押し退けて映画化権をとったのが、イタリア出身の映画プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスだった。
彼は当初、彼がプロデュースした「道」(1954年)の監督フェデリコ・フェリーニに演出をまかそうとした。フェリーニは「心が奪われた」とその気になったらしいが結局、実現しなかったという。ニコラス・ローグに依頼するもソリが合わず、セルジオ・レオーネからは脚本にダメ出しされて断られ、最終的にマイク・ホッジスが監督となった。
もしルーカスやフェリーニ、あるいはレオーネが監督だったらどんな映画になっただろうと想像がふくらむ。
民放のBSで放送していた香港映画「ヤングマスター 師弟出馬」。
1980年製作。
原題「師弟出馬」、英題「THE YOUNG MASTER」
監督・主演ジャッキー・チェン、出演シー・キエン、ウェイ・ペイ、ファン・インシク、リリー・リー、ユン・.ョウほか。
当時26歳のジャッキー・チェンが初演出で監督・脚本・武術指導・主演をつとめたカンフー映画。
孤児のドラゴン(ジャッキー・チェン)とタイガー(ウェイ・ペイ)は名門の武術道場「金龍道場」に拾われて育った若者。正月、町の道場間で競われる舞獅(獅子舞)合戦の当日、ドラゴンの兄弟子でワザも道場一のタイガーが敵方に寝返ったため道場は敗北。破門されたタイガーは悪党キム(ウォン・インシク)の一味に加わる。
師範はドラゴンに免許皆伝の証である大扇子を持たせてタイガーを連れ戻すよう指示するが、強盗団の一味に加わって逃走中のタイガーも大扇子を持っていたため、同じように大扇子を持っていたドラゴンは間違われて捕縛されてしまう・・・。
何しろジャッキー・チェン26歳。身体能力は抜群だし、ワザはキレキレで、彼の専売特許の“香港スピン”と呼ばれるキリモミ状に体をクルクルッと回転させながら吹っ飛ぶアクションなんか、あきれるほど見事(“香港スピン”はこの映画が初登場だとか)。
ただし、英語のタイトルが「ヤングマスター」(若旦那とか、おぼっちゃんの意味)とある通り、ジャッキーは修行中の若者という役どころ。まだ達人の域までいってないのでやられるシーンも多く、おかげで明るいコメディタッチの映画になっている。
中国語のタイトル「師弟出馬」の意味も、「師弟」とは同じ師のもとで修行する兄弟弟子の弟弟子のことであり、「出馬」は文字通り出陣すること。弟弟子(師弟)のジャッキー(ドラゴン)が兄弟子(師兄)のタイガーを探す旅に出るというわけで、始めは弱かった若者が修行を積み重ねるうちに強くなっていく。いかにも26歳の監督作品らしい“青春カンフー映画”といえよう。
ジャッキーはこの映画で初監督をつとめるまで、無名時代を含めて数多くのカンフー映画に出演している(映画デビューは京劇や中国武術を学んでいた8歳のとき)。それまで先輩監督のもとでひたすら勉強し、アイデアを蓄え、トップスターとなって自分が監督するというので、やってみたかったことを一挙に噴出させたのがこの映画だろう。
扇子やイス、キセル、スカートなど身近にある日常用品を使った格闘シーンが実によくできていて、スカートみたいな布を体に巻き、足を隠し蹴りを出すワザは美しくもある。
投げた扇子を受け取りながらのカンフーシーンは120テイク以上を費やして撮影されたとか。
エンエン20分近くに及ぶ悪者のボス・キムとのラストバトルは、これまで寸止めが常識だった香港映画で初めて実際に相手に攻撃を当てていて、この格闘シーンだけでも1カ月以上かけて撮影されたという。
この死闘のシーンでもジャッキーは悪ボスにやられる一方。ものすごいのが悪ボスの左足の蹴りで、ジャッキーはメッタメタにされる。
悪ボス役のファン・インシクは韓国出身のアクション俳優だが、ハプキドーと呼ばれる韓国合気道の十段位を持つ師範であり、本物の武道家でもあるから強いはず。
このシーンはラウンド制のボクシングみたいになっていて、セコンドよろしくインターバルの水をジャッキーに飲ませては悪ボスに立ち向かわせる。その水もなくなってグロッキー状態になったジャッキーが飲んだのが、たまたま置いてあった水たばこの水。ニコチン効果でたちまち目がランラン、覚醒状態になったジャッキー、爆発的な力を発揮して逆転勝利、という結末だった。