5月25日（土）
場所：〇〇川の中流いき（※川の名前は個人情報保護のため掲載できません）
出来事：巨大ナマズ（70cmくらい）の二連続ジャンプを見る。

流れ込みの横で、70cmは余裕でありそうな巨大ナマズが水の底にへばりついていた。僕はナマズをさばいて食べてみたかったので、おばあちゃんに手伝ってもらって捕ろうとした。

網に気づいた瞬間、ナマズはクルッと後ろを向いて、横にあった、大きい斜めのブロックにヌルヌルのお腹をこすりつけ、その勢いでジャンプし、頭から水の中に落ちた。すごい水しぶきが上がった。

そして、また、手前にあるブロックにもう一回お腹をこすりつけてガツーンと飛び上がり、緑色の深い流れ込みへダイブした。

またまたずごい水しぶきが上がり、太って肉が横にボヨンと出た重たそうな体は、落ちてすぐに沈んでいった。それから尾びれも必死に動かして、すごいスピードでもぐっていってしまった。

考えたこと・感じたこと：
ナマズみたいな形の魚は、尾びれが長いので後ろを向くのが得意。そして、ナマズはきっとあの時、ああやって逃げるのが一番早いと判断した。浅い方へはいけないし、おばあちゃんが立っていた網側には大きい通り道があったけど、捕まるかもしれない。その向かい側には、狭い通り道しかなくて、でっぷりしたナマズだと体がつかえてしまう。ナマズはバックできないので、つかえたら終わり。体を横向きにすれば通れたかもしれないけど、時間がかかる。

ナマズのこんなに生命力にあふれた姿をこの目で見たのは初めてだったので、とても心に残った。ナマズも生きるために必死なんだと思った。

ナマズのイラスト

ナマズは川の生態系の頂点にいるけど、鳥という天敵がいる。テレビ番組「ダーヴィンが来た！」で、最近シロサギが増えてきていると言っていた。この川にもいつもたくさんの鳥がいて、特に多いのはシロサギだ。ナマズは普段からこんな風にたくましく生きているのだろう。ちなみに、シロサギが増えている理由は、そのエサとなる外来魚が増えているからだそう。

ケガをするのも恐れずに、全力で生き伸びようよするナマズの姿はすごかった。またナマズに出会いたい。

6月1日（土）
場所：川の中流いき
出来事：約60ｃｍのナマズを捕まえる。持って帰ってさばいて食べる。

ブロックとブロックとの間の狭い溝で、大きなナマズが寝ていた。前の週に見たナマズと比べると、少し小さいけど、60cmはあった。こんなチャンス、もう二度とこないかもしれないし、今度こそは絶対に捕まえて、食べてみたい。

おばあちゃんにナマズを後ろから押してもらって、僕が前から網ですくうことにした。追い込み作戦だ。僕は草がたまった金属のところに自分の網をセットして待ち構えた。

おばあちゃんが網の先でナマズをツンツンした。まだナマズは起きない。おばあちゃんが何度か網で押す度に、ナマズは少しずつ前へ行った。おばあちゃんがナマズをグイッと押した。すると、ナマズが覚せいした！　ナマズは僕の網に一旦入ったけど、ナマズの大きさに比べて網が小さかったので、尾びれが入りきらなかった。それで、網を持ち上げた瞬間に、ナマズがスルッと抜けてしまった。

ナマズは、ブロックの上をあちこち逃げ回った。お腹の白い部分が見えるほど、身をよじりながら跳ね回っていた。そして深いところに逃げようとした隙に、おばあちゃんと二人がかりで上から網をかぶせて捕った。

お腹がパンパンだったので、ウシガエルでも入っているのかなと思っていたけど、ナマズの胃袋の中は空っぽで、緑色の卵がぎっしりつまった卵巣が二つも入っていた。それで、メスの個体だとわかった。

考えてみれば、その時はちょうど産卵期だった。でっぷりして見えるナマズも、意外とお腹の身は分厚くなかった。それから僕は、ナマズの身をかば焼きにして食べた。ナマズの身はふっくらとしていて、ちょっと甘くておいしかった。

疑問：どうしてナマズはあんな溝の所にいたのだろう？
予想：四日前の警報級の大雨で流されていた。
考察：ナマズは産卵のために、あの溝まで遡上してきた。

そう思った理由①：
「ナマズは、大雨により増水した時期に、川から小さな水路や田んぼ、沼などに遡上して産卵する」と本に書いてあった。
→増水した状態の川なら、ナマズの泳ぐ力があれば、あの溝まで十分たどり着けるだろう。また、ナマズは25ｃｍくらいの落差なら軽く飛び越えられる（※何回もチャレンジすれば50ｃｍくらいの落差も飛び越えられる（「メダカはどのように危機を乗りこえるか」）と本に書いてあった。ナマズがジャンプするところをこの目で見た僕には、その様子が想像できる。

そう思った理由②：
胃袋が空っぽだった。
→あの溝に数日間ずっととどまっていて何も食べていなかったから？

そう思った理由③：
あの溝は、ナマズがいた部分だけいつもより深くなっていた。
→ナマズが尾びれで掘ったのかもしれない。

そう思った理由④：
泥抜きしなかったのに、身に泥臭さがなかった。
→あの溝に数日間とどまっていたおかげで自然と泥抜きされていたのでは？


まとめ：
川上の方から流されてきたという最初の考えとは、まるで逆の考えになったのでおもしろい。あのナマズとは、産卵期の大雨の後、まだオスと出会っていない状態だったから出会えた。いくつかの条件が重なったタイミングで、たまたまあの川へ行けたから、あんなチャンスに恵まれた。

画像参照

6月29日（土）
場所：川の中流域
出来事：ナマズを一匹目撃する
ナマズは最初は壁沿いにじっとしていたけど、僕たちがモタモタしている間にスイーッと遠くに逃げてしまった。「チャンスだ！」と思ったらすぐに動かないと逃げられてしまう。

7月3日（水）
場所：川の中流域
出来事：ケガをしたナマズを捕まえる。持って帰って治療を試みる。

この日は大雨の後で、水量がすごく、いつもはあまり行かない淀みで魚を探していた。大きな土のう袋の下をガサガサしたときは何もいなくて、一旦弟の方を見て、また土のう袋の下を見たら15cmくらいのナマズがいた！　捕ろうとして網を何回もかぶせたけど、身体を曲げてヌルンと出ていった。それから草の下に隠れたから、前に網を置いて、網をゆっくり近づけて捕った。喜んでいたのもつかの間、大きなケガをしていることが判明。急いでおばあちゃんの家へ連れて帰る。

何かにかじられたのか、傷はかなり大きい。細菌性の感染症にもなっているよう。かなり深刻な状況。なんとかして傷を治してやって、元気になったら自然に帰したい。とにかくエサを食べてくれるよう、人工飼料だけではなく、生き餌（近くの川で捕った小魚）も入れる。

7月4日（木）
場所：おばあちゃんの家
出来事：ケガをしたナマズに塩水浴を試してみる。

細菌を殺すために塩水浴を試すことにした。水族館では、「エルバージュ」という薬品で薬浴を行うことが多いらしい。それと似た「エルバージュエース」という薬は一般の人にも買えると、飼育員さんに教えてもらった。でも、薬に敏感なナマズは使わない方がいいらしい。１Ｌの水に30ｇの塩を入れて溶かし、３％の塩水を作った。その中にナマズを入れたら、二分くらいでひっくり返ってしまった。慌てて、元の水に戻したら、また普通に泳ぎ始めた。ホッとした。

今思うと、塩水が濃すぎたのかも。塩分濃度は、1.5～2％以上あれば良かったらしいので、もうちょっと薄くすればよかった。

昨日よりも、ナマズの傷が白っぽくなっている。ピンクから白に変わっている。人間の傷もうす皮がかぶれたら白っぽくなるので、このまま治ってくれたらいいと思う。カビじゃなかったらいいけど…。

7月6日（土）
出来事：ナマズが死んでしまう。

ナマズにあまり元気がないので、おばあちゃん家の近くの自然の小川につけてやることにした。するとそのまま動かなくなってしまった。

考えたこと・感じたこと：
できれば傷を治して生かしてあげたかったので、残念な気持ちでいっぱいだ。でも、僕は「傷ついたナマズを助けたい」とずっと願ってきたので、今回そのチャンスに恵まれてとても幸せだった。僕は、前から家の近くの用水路でもケガをしたナマズを目撃していて、何とかして助けてあげたかった。友達とも色々作戦を練っていた。名付けて、「ナマズレスキュープロジェクト」。でも深く大きな用水路からナマズを助け出すには、釣るしか方法がなく、なかなか実現できなかった。

今回僕の前に傷ついたナマズが現れたことは、何かの運命だと思う。僕たちが力不足でナマズの命を助けてあげることは出来なかったけど、たくさんのことを勉強できた。また、ケガをしていたとはいえ、ナマズを家で飼ってみたいという夢も叶って嬉しかった。

ナマズが死んでしまった日の夕方、ナマズと出会った川へ行った。ナマズと出会った場所でお祈りをして、川をグルッと一周し、カマツカ、ヨシノボリ、カワムツを捕って、寂しくなった水槽に入れた。ナマズとは遠目から一匹だけ出会えた。

毎日とても暑く、たいして雨も降っていなかったので、大雨で増水していた先週水曜日の状態とは川の様子が変わっていた。ナマズと出会った場所は、水はほとんどなく干上がっていた。普段の川であれば出会えなかったんだろうなと改めて分かった。

疑問：ナマズは何に噛まれたのだろう？
予想：シロサギか何かの鳥？
考察：オオサンショウウオ

そう思った理由①：
噛み傷の形が、オオサンショウウオの口と同じだから。背びれの近くにあった小さい傷は、指のあとではないか。オオサンショウウオの歯→上下の上あごのふちには2mmくらいの円すい形の歯が合わせて200本以上、列になって生えている。この歯は獲物を捕らえて離さない役目の歯で、ナイフのように鋭い。上あごの奥には、もう一つの歯列があり、高さが5mmほどもある。バッサリと切れた傷になるため、噛まれたら大けがだ。（「日本の生きもの　ビジュアルガイドはっけん！　オオサンショウウオ」より）

そう思った理由②：
この川には、オオサンショウウオが結構いるから。特に、このナマズを捕まえた場所のあたりは、オオサンショウウオの巣があり、たくさんのオオサンショウウオのがいるようだ。

そう思った理由③：
絵本「オオサンショウウオみつけたよ」の中の、オオサンショウウオが魚を捕らえている場面を見て、さらにイメージがわいたから。このナマズは15cmくらしかないので、オオサンショウウオが捕食しようとして嚙みついたのだと思う。

まとめ：
噛み傷の形的に、サギなどの水鳥にやられたのではないと思う。
オオサンショウウオの仕業だと思い始める前は、タヌキ、ハクビシン、イタチなどの手を使える獣の仕業ではないかと思っていた。でもナマズを見つけた辺りで、あまりにオオサンショウウオに出会うことが多かったので、「もしかして…。」とだんだん思い始めた。また、近くに獣の足跡も見当たらなかった。

ナマズは川の中の生態系の頂点にはいるけど、戦った時の水深によっては、オオサンショウウオにやられることもあると思う。また、十分大きな個体でなかったら負けることもあると思う。小さければ小さいほど、敵は多い。水鳥に、獣に、オオサンショウウオ…ナマズにはたくさんの天敵がいるんだなと分かった。


7月13日（土）
場所：川の中流域
出来事：約50ｃｍのナマズの死がいを見つける。持ち帰って観察し、魚拓をとる。

全長50cmほどのナマズの死がいは、川岸の草むらに隠れるようにあった。僕が見つけた時には完全に死んでいたけど、死がいが全然傷んでいなかったため、まだ死んでまもない感じがした。臭いもあまりなかった。このまま川に置いておくのはもったいないと思って、魚拓をとってみることにした。

Youtubeの素潜り漁師マサルさんが、ロウニンアジ（GT）の魚拓をとっていた場面を思い出しながらがんばった。ナマズの体に墨を塗るのも、紙を押し付けるのも全部自分でやった。4枚挑戦して、4枚目が一番上手くできてうれしかった。

考えたこと・感じたこと：
ナマズは生命力が強いので、この前のようにナマズが捕れたとしても、暴れて暴れて魚拓をとることは難しいと思う。それに、その後食べるつもりのナマズに墨をぬりたくないので、めったにないチャンスだったと思う。魚拓をとるのは初めてだったので、真っ黒いかたまりのような魚拓になる。魚拓はあえて横からではなく、上からとった。ナマズのかわいい表情が残せてよかった。

疑問：どうしてナマズは死んでしまったのか？
予想：カミツキガメに噛まれたから
→ナマズが死んでいる辺りで前にカミツキガメを見たことがあったので、一番大きな傷はカミツキガメのしわざだと思った。

考察：オオサンショウウオにひっかかれたところなどの傷が原因で、細菌性の感染症になって死んだ。

そう思った理由①：
一番大きな傷の形が、よく観察したらオオサンショウウオの手の形と同じだったから。この傷はふさがってはいたけど、膿んでいる。

そう思った理由②：
この川には、オオサンショウウオがけっこういるから。特に、このナマズを捕まえた場所のあたりは、オオサンショウウオの巣があり、たくさんのオオサンショウウオがいるようだ。繁殖期の八月になると、巣穴の「ヌシ」（ひときわ大きく、力のあるオス）は、もし産卵巣穴に入ろうとするものがいたら、即撃退するらしい。（「川の王さまオオサンショウウオ」より）
その時期には、頭に戦いによってできたすり傷やかみ傷の目立つオオサンショウウオも増えるという。（「大山椒魚より」）
オオサンショウウオの巣には、色んな生きものが出入りしていて、ナマズが入っていくところも見たことがある。

そう思った理由②：
体が傷だらけだったから。結構大きな傷跡もあった。尾ビレも一部かみちぎられていた。
→この間のナマズのような、致命傷はなかったけど、これだけ傷があれば、どこからか細菌が入って、病気になってもおかしくないし、徐々に弱ってしまうと思う。


7月20日（土）
場所：川の中流域
出来事：地域の生き物探しイベントで、ケガをしたナマズに出会う

僕が月に一度参加している活動の最中、ケガをしたナマズに出会う。半月型の噛み傷が三か所ほど背ビレの前後にあった。生き物に詳しい先生は、ナマズはテナガエビやジエビ、ヌマエビの多い浅場による傾向がある。同じくエビ類を狙ったアライグマに遭遇して被害にあったのではないか。この辺りの川には、イタチ、ヌートリア、ハクビシン、アナグマ、キツネ、タヌキなどがいるが、歯形サイズてきには、アライグマかイタチが近いと思う。

考えたこと・感じたこと：
この辺りにもアライグマがいることにびっくりした。アライグマは外来種。もともと日本にはいなかったけど、北アメリカから持ち込まれ、ほぼ日本全土に住み着いているらしい。アライグマなら、手先が器用だからナマズをとってもおかしくない。ちなみにヌートリア、ハクビシンも外来種。最近のナマズには天敵が本当にたくさんいるんだな。また、傷のサイズを測っておけば、何の生き物に噛まれたかを知るための手がかりになることも分かった。


7月30日（火）
場所：川の中流域
出来事：約60ｃｍのナマズを釣り上げる。他にも一匹ナマズを目撃。
ナマズの後ろの方に、ジグを落としたとたんに、すぐに食いついていきた。とても重くて、竿が今までで一番曲がっていて折れるんじゃないかと思った。傷もなく、砂泥底にいたためか、薄い色をしたとてもきれいなナマズだった。「今度はしっかり泥抜きをして、おじいちゃんに手伝ってもらって料理してみる？」とお母さんに聞かれたけど、ぼくはナマズを自然に帰すことにした。

この間ナマズを食べることができたので満足だったし、ナマズの命を大切にしたかったからだ。

おわりに：
八月もこの川を通ったけれど、ナマズには全然出会えなかった。繁殖期が終わったからだと思う。8月3日に草の生えている所をガサガサしたら、ギギの幼魚が捕れた。ギギはナマズ目の魚。すごくうれしかった。大切に育てていきたい。ナマズとたくさん出会えて、ナマズのことをたくさん勉強できたこの二か月間は、ぼくにとって宝物だ。来年もこの時期にたくさん川へ通って、大好きなナマズのことをもっと知りたい。

また僕は、ナマズについて調べている内に、今ナマズの仲間の数が減ってきていることを知った。川や湖の岸辺がコンクリート川岸となったために、岩とか石の隙間や、水草のしげる岸辺が少なくなり、魚たちが安心して暮らせる隠れ家がずいぶん減ってしまったからだそうだ。また、水路に高い段差のせきができ、産卵のために上っていくことができる田んぼが少なくなったことも理由だそうだ。

これから僕は、どうしたらナマズたちが川からいなくならないかを自分なりに考えて、行動にうつしていきたい。大人じゃないと難しいこともあるけど、僕たちにもできることはたくさんあると思う。

例えば、川のゴミ拾い、魚を捕りすぎないこと、魚が釣れても死ぬ前に逃がすこと、エサとなる小魚やエビを大切にすること、石などを組んで魚たちの住かを作ること、ケガをしたナマズを助けること、外来生物の駆除、水草をいっぱい植えることなど…。

ナマズたちが、これからもずっと日本の川にいてくれますように。