米国マクラーレン リコールを受けてブレーキ性能の高さを証明する結果に
マクラーレンといえば、F1で活躍し、そのノウハウを市販モデルに落とし込んだ英国を代表するスーパーカーメーカー。そのマクラーレンの一部車種が、ブレーキの不具合でリコール対象になったのですが、今回の件は、ただのリコールではなく、少しばかり不思議なものだったようです。
なぜ2年間以上も気づかなかったのか
速いクルマに欠かせないのは、しっかりと効くブレーキなのはいうまでもあるまい。昨今は、速さの割にブレーキの効きが悪い、というクルマはそうそう見当たらないが、2000年頃までは制動力不足なクルマはチラホラ存在したものだ。そんなブレーキにまつわるちょっと面白い話を見つけた。
2021年6月、アメリカで届けられたマクラーレンのリコール情報が衝撃的なのだ。2019年7月8日から2020年3月15日の間にかけて生産された「570S」1台、「600LT」1台、「マクラーレンGT」7台、「720S」10台の合計19台のブレーキに問題がある可能性が指摘されたのである。
ブレーキホースとブレーキキャリパーを接続する「バンジョーボルト」と呼ばれる部品の内部に、ブレーキフルードが通る本来あるべき“穴”が存在しないものがサプライヤーから納品されていた、というものである。つまり、ブレーキペダルを操作をしてもブレーキホースからキャリパーに伝わる油圧は皆無で、ブレーキは一切効かないということを意味する。
問題が発覚したのは、2020年式のマクラーレンGTをアメリカから仕入れたクウェートのディーラーが、試乗中にブレーキング操作をしたところ、車両が真っすぐ止まらないことに気づいたからだった。
車両を点検したところ、バンジョーボルトの欠陥を発見。マクラーレン本社へ問い合わせたことで部品メーカー「グッドリッジ社(英国)」の調査、そしてリコールへとつながった。
穴がないバンジョーボルトがどのように検品工程をすり抜けたのかは、不明である。
●車両安定制御システムが優秀過ぎた!?
なお、アメリカのマクラーレン・オーナー19名からブレーキの不具合の報告は上がっていなかった。もっとも古いもので2019年7月8日生産、納車されたのが翌月と仮定すると、約2年も気づかなかったことになる。
考えられるのは、マクラーレンの車両安定制御システム(ESC)ぐらい。もしくは、納車後にガレージに飾られていて一切走行していないか。しかし、後者は常識的に考えにくい。
つまり、1輪の制動力不足を3輪のブレーキとトラクションコントロールが補ったとしか考えられない。よほどのハードブレーキング時以外は、3輪ブレーキでも挙動が乱れなかったのだろう。
裏を返せば、マクラーレンのESCがいかに優れているかということの証明になったわけだ。
なお、日本のリコール情報を確認してみたが、同様のリコールは届け出されていない。
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