こんにちは。ked-itです。
この記事では,私の専門分野である計算機ネットワーク運用に関する研究について,いろいろ考えたことを書きます。
計算機ネットワーク運用に関する研究は,通信に関するものからセキュリティに関するもの,アプリケーションに着目するものなど多岐に渡ります。私はそれらの中でもネットワークアーキテクチャ,特にプロトコルと密接に関わる研究を行っています。
ところで以前,とある場で ”計算機ネットワーク運用は研究にならない,とりわけ博士の学位を得る研究には” という趣旨の発言をされている先生をお見かけしました。私自身はまだ学士の学位すら得ていない若輩者ですが,このお話を聞き,「やっぱりそうなんだ」と感じました。
計算機ネットワーク運用に関する研究は,現代ではそのほとんどの大学や研究機関において,「工学」に分類されていると思います。工学の定義は,国立8大学工学部を中心とした「工学における教育プログラムに関する検討委員会」(1998年)によると,「工学とは数学と自然科学を基礎とし、ときには人文社会科学の知見を用いて、公共の安全、健康、福祉のために有用な事物や快適な環境を構築することを目的とする学問である。」です。
この工学の定義と,計算機ネットワーク運用に関する研究の特性を照らし合わせると,やはり難しい点が出てくるのかもしれないと感じました。特にプロトコルと密接に関わる研究では,そのプロトコル自体が人間によりつくられたものであり,自然科学が基礎ではないケースも多いからです。研究の成果として出来上がるものが人間の設計に依ってしまうという点で,工学的でないと判断されるケースがあるのかもしれません。(一方で,経路制御などでは数学的要素が含まれる場合があるため,一概に言うことはできないと考えます。)
計算機ネットワークの研究には間違いなく学術的価値があると考えますが,ではこのような研究はどのようにジャンル分けされるのかな?とも思います。言い換えてみれば,研究成果の学術的価値がどの分野に寄与できるのか,ということでしょう。他で行われる工学の研究と違った性格があるのはなんとなく感じられますが,もちろん理学でもないし,強いていうならやはり形式科学や情報学になるのでしょうか。あらゆる科学について考えるにはまだ知識が足りなすぎるのであまり分かりません......
今後さらに研究を続ける中で,また違った考えが浮かぶと思いますが,まだ大学院に入る前の私は,今のうちからビビっています。数年後の自分が無事に学位を得て,この記事を笑って見返せればいいのですが......