世代分けって楽しいですよね。
無意味に「第3世代の特徴はこうだ!」などとレッテルを貼ったり、「第1世代の素晴らしさと比べて最近の世代は」「第7世代の面白さを理解できない老害は消えろ」なんてワイキャイと言い争いたいものです。
というわけでライトノベル作品の世代分けを考えてみましょう。
第1世代 ソノラマ・コバルト世代
1977年 高千穂遙『クラッシャージョウ』
1979年 栗本薫『グイン・サーガ』
1980年 新井素子『星へ行く船』
1982年 田中芳樹『銀河英雄伝説』
1983年 菊地秀行『吸血鬼ハンターD』
1984年 氷室冴子『なんて素敵にジャパネスク』
ラノベ史のスタンスは「ソノラマ・コバルトから始める」か「スニーカー・ファンタジアから始める」かで大きく分かれる気がしますが、ここではとりあえず「スニーカー・ファンタジア以前」をひと括りに「第1世代」として位置づけようと思います。
第2世代 スレイヤーズ世代
1988年 水野良『ロードス島戦記』
1989年 深沢美潮『フォーチュン・クエスト』
1990年 神坂一『スレイヤーズ』
1991年 中村うさぎ『ゴクドーくん漫遊記』
1992年 小野不由美『十二国記』
1994年 秋田禎信『魔術士オーフェン』
「スニーカー・ファンタジアの創刊」から「電撃文庫の台頭」くらいまでの世代です。ファンタジーやスペオペが多かったでしょうか。
アニメ化によって多くの新しい読者を獲得した時代でもあり、『スレイヤーズ』や「あかほりアニメ」などが90年代後半の夕方アニメを彩りました。
ちなみに「ライトノベル」という呼称が誕生したのもこの頃でしたね(一般に広まるのはもっと後ですが)。
スニーカー文庫と富士見ファンタジア文庫の創刊は共に1988年、電撃文庫の創刊は1993年です。
第3世代 ブギポ世代
1998年 上遠野浩平『ブギーポップは笑わない』
1998年 今野緒雪『マリア様がみてる』
1998年 賀東招二『フルメタル・パニック!』
2000年 時雨沢恵一『キノの旅』
2000年 喬林知『まるマ』シリーズ
2001年 秋山瑞人『イリヤの空、UFOの夏』
「電撃文庫の台頭」から「深夜アニメの増加」くらいまでの世代です。
大雑把には「ファンタジーから学園ものへ流行が移った」と語られ、その象徴として『ブギーポップは笑わない』が挙げられることが多いです。
アニメ化時期は主に2000年代前半ですが、ちょうど夕方アニメから深夜アニメへの移行期で、衛星放送のWOWOWでの放送が多かったこともあり、第2世代や第4世代ほど「アニメ化されて大ヒット!」という印象は無い気がします。
この頃に創刊されたレーベルはファミ通文庫(1998年)・富士見ミステリー文庫(2000年)・角川ビーンズ文庫(2001年)といったあたりです。
第4世代 ハルヒ世代
2002年 高橋弥七郎『灼眼のシャナ』
2002年 西尾維新『戯言』シリーズ
2003年 雪乃紗衣『彩雲国物語』
2003年 谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』
2004年 ヤマグチノボル『ゼロの使い魔』
2004年 鎌池和馬『とある魔術の禁書目録』
「深夜アニメの増加」から「アニメ『ハルヒ』のヒット」くらいまでの世代です。ただし『禁書目録』はアニメ化の時期的に4.5世代くらいのイメージですかね。
深夜アニメの増加によってラノベ原作アニメも増加し、さらに2006年にアニメ『ハルヒ』が大ヒットしたことで、ラノベ業界を取り巻く環境が大きく変化しました。
人気ジャンルとしては異能バトルが存在感を見せていましたが、2002年に創刊されたMF文庫Jが次第にラブコメに注力しはじめ、その勢力を拡大しつつありました。
第5世代 俺妹世代
2006年 竹宮ゆゆこ『とらドラ!』
2006年 有川浩『図書館戦争』
2007年 井上堅二『バカとテストと召喚獣』
2008年 葵せきな『生徒会の一存』
2008年 伏見つかさ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』
2009年 弓弦イズル『IS 〈インフィニット・ストラトス〉』
2009年 平坂読『僕は友達が少ない』
「アニメ『ハルヒ』のヒット」から「Web小説の書籍化ブーム」くらいまでの世代です。
勢いのあったジャンルはラブコメですが、単一の流行だけでは語りきれないほどラノベ業界は大きくなりました。
ハルヒブームとなろうブームの谷間の世代、という印象も無いではないですが、積極的なプロモーションで話題性を高めた『俺妹』、「萌え四コマ」的な作風を取り入れた『生存』『はがない』、異能学園もの(いわゆる「石鹸枠」)の先駆けとも言える『IS』など、後続への影響が地味に大きい作品が揃っているのではないでしょうか。
第4世代による躍進を受けてGA文庫(2006年)・HJ文庫(2006年)・ビーズログ文庫(2006年)・ガガガ文庫(2007年)といったあたりが創刊されました。また電撃のハードカバー路線を代表する『図書館戦争』のヒットから、2009年のメディアワークス文庫創刊、そして「ライト文芸」へと繋がっていく流れも無視できませんね。
第6世代 SAO世代
2009年 川原礫『ソードアート・オンライン』
2010年 橙乃ままれ『まおゆう魔王勇者』
2011年 佐島勤『魔法科高校の劣等生』
2011年 三上延『ビブリア古書堂の事件手帖』
2011年 渡航『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』
2012年 丸戸史明『冴えない彼女の育てかた』
2012年 長月達平『Re:ゼロから始める異世界生活』
2012年 丸山くがね『オーバーロード』
2013年 大森藤ノ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』
2013年 暁なつめ『この素晴らしい世界に祝福を!』
単純に発売年で見ると『SAO』は第5世代なんですけど、やはりWeb小説世代を代表させたいところです。
この段階では、個人サイト(SAO)、2ch(まおゆう)、Twitter(忍殺)、Arcadia(AW・ダンまち・オバロ・幼女戦記)など、なろう以外から書籍化されてヒットした作品が多かった印象です。ヒーロー文庫(2012年)・MFブックス(2013年)などのWeb小説専門レーベルが創刊され、「なろう」からの書籍化が急増しつつも、まだ「なろう一強」になる前段階とみなせるのではないかと思います。
第7世代 なろう世代
2014年 理不尽な孫の手『無職転生』
2014年 伏瀬『転生したらスライムだった件』
2014年 住野よる『君の膵臓をたべたい』
2014年 日向夏『薬屋のひとりごと』
2015年 衣笠彰梧『ようこそ実力至上主義の教室へ』
2015年 白鳥士郎『りゅうおうのおしごと!』
2016年 屋久ユウキ『弱キャラ友崎くん』
2017年 安里アサト『86 -エイティシックス-』
2014年に、GCノベルズ・モンスター文庫・HJノベルス・アース・スターノベルといった、Web小説系のレーベルが創刊ラッシュを迎えました。
2016年にアニメ『このすば』『Reゼロ』がヒット、2017年にヒーロー文庫の2作品がアニメ化(以降、既存ラノベレーベルではなくWeb小説系レーベルからのアニメ化が増加する)したあたりがトピックスで、ここから現在までが「なろう」ブームの全盛期ということになると思います。
とりあえず「お笑い第7世代」になぞらえてここで終わりにしておきますが、もし第8世代を考えるとすれば2018年あたりからのラブコメブームで区切ることになるかもしれません(まだ評価が定まっていないので語りづらい)。