サムスンは、フラッグシップ機のパフォーマンスと手ごろな価格を両立したと謳う「Galaxy S24 FE」を12月12日に発表、同月26日に販売を開始します。昨今、20万円超えのスマホが珍しくないなかで、本製品はSamsungオンラインショップの直販価格で79,800円(税込。以下同)というミドルレンジクラスの価格を実現しています。
しかし、本当にフラッグシップ機と同等の品質、性能を備えているのでしょうか? そこで今回は、同社のフラッグシップ機「Galaxy S24」とスペック、カメラ画質、AI性能を含む処理性能を徹底比較してみましょう。
左が「Galaxy S24 FE」、右が「Galaxy S24」
下記には「Galaxy S24 FE」(以下「S24 FE」)と「Galaxy S24」(以下「S24」)のスペックをまとめてみました。まずは大きく異なる部分をリストアップしてみましょう。
・SoC
S24 FE:Samsung Exynos 2400e
S24:Snapdragon 8 Gen 3 for Galaxy
・ストレージ
S24 FE:128GB
S24:256GB/512GB
・画面サイズ
S24 FE:6.7インチ
S24:6.2インチ
・ピーク輝度
S24 FE:1900nits
S24:2600nits
・リフレッシュレート
S24 FE:120Hz
S24:1〜120Hz
・カメラ
S24 FE:5000万画素広角+1200万画素超広角+800万画素望遠+1000万画素フロント
S24:5000万画素広角+1200万画素超広角+1000万画素望遠+1200万画素フロント
・バッテリー容量
S24 FE:4700mAh
S24:4000mAh
・バッテリー駆動時間
S24 FE:ネット接続(LTE):最大21時間、ネット接続(Wi-Fi):最大21時間、ビデオ再生(ワイヤレス):最大28時間、音楽再生(ワイヤレス):最大81時間
S24:ネット接続(LTE):最大25時間、ネット接続(Wi-Fi):最大25時間、ビデオ再生(ワイヤレス):最大28時間、音楽再生(ワイヤレス):最大72時間
・サイズ/重量(幅/高さ/奥行き)
S24 FE:約77×162×8mm/約213g
S24:約70.6×147×7.6mm/約167g
・材質
S24 FE:Corning Gorilla Glass Victus+、アルミニウムフレーム
S24:Corning Gorilla Glass Victus 2、アーマーアルミニウムフレーム
ほかにも細かい点で差異がもうけられていますが、見比べてみると「S24 FE」が絶妙にコストダウンを図っていることがわかります。ディスプレイはピーク輝度とリフレッシュレートがやや抑えめなものの、高解像度な有機ELパネルを採用。カメラの数は同じで、画素数も大きく違いません。大きく異なるのはプロセッサー。「S24 FE」がサムスン製「Samsung Exynos 2400e」、「S24」がクアルコム製「Snapdragon 8 Gen 3 for Galaxy」を採用しています。両者にどのくらいの差があるのかは、のちほどベンチマークで検証してみましょう。
いずれにしても、「S24 FE」のスペックを単体で見れば、フラッグシップ機のものだと思えるほどハイスペックだというのが率直な感想です。
ピーク輝度とリフレッシュレートは「S24」(左)のほうが上回ります
「S24 FE」はCorning Gorilla Glass Victus+、アルミニウムフレーム、「S24」はCorning Gorilla Glass Victus 2、アーマーアルミニウムフレームを採用。ボディ強度は「S24」のほうが上です
実測重量は「S24 FE」が213.2g、「S24」が166.4g。サイズが大きい分、重量は「S24 FE」が圧倒的に上です
次にカメラの画質を見てみましょう。今回「S24 FE」と「S24」を同じ条件で撮影してみましたが、正直Exif情報をチェックしない限り、どちらで撮った写真なのかわからないレベルです。「50MPモード」「ナイトモード」で撮影した写真については、露出とホワイトバランスに違いはありますが、どちらがいいと判断できるほどの差ではありません。
もっと多くの厳しい状況で撮影すれば、違いが出る可能性はありますが、「S24 FE」のカメラ画質は「S24」に見劣りすることはないと言えるでしょう。
上が「S24 FE」、下が「S24」。約5000万画素広角カメラのイメージセンサーさえも、「S24 FE」が1/1.57インチ、「S24」が1/1.56インチとわずかな差しかありません
上は「S24 FE」、下は「S24」(0.6倍)
上は「S24 FE」、下は「S24」(1倍)
上は「S24 FE」、下は「S24」(3倍)
上は「S24 FE」、下は「S24」(30倍)
上は「S24 FE」、下は「S24」(「50MPモード」)
左は「S24 FE」、右は「S24」(「50MPモード」で撮影した写真を拡大表示)
上は「S24 FE」、下は「S24」(近接撮影)
上は「S24 FE」、下は「S24」(「ナイトモード」)
前述のとおり、「S24 FE」は「Samsung Exynos 2400e」、「S24」は「Snapdragon 8 Gen 3 for Galaxy」を採用。今回定番ベンチマークを実行したところ、「S24 FE」は「S24」に対して、「AnTuTu Benchmark V10」の総合スコアで90%相当、「Geekbench 6」のマルチコアで95%相当、シングルコアで86%相当、「3DMark」のWild Life Extremeで79%相当、「Geekbench AI」のSingle Precision Scoreで72%相当相当という結果となりました。
一部のテストを除き、「Snapdragon 8 Gen 3 for Galaxy」を搭載する「S24」のほうが高いスコアを記録。特に3Dグラフィックス性能を計測する「3DMark」のWild Life Extremeでは差が大きいですね。3Dゲームを高品質設定でプレイするとフレームレートなどに違いが出る可能性はあります。
「AnTuTu Benchmark V10」(左が「S24 FE」、右が「S24」)
「Geekbench 6」(左が「S24 FE」、右が「S24」)
「3DMark」(左が「S24 FE」、右が「S24」)
「Geekbench AI」(左が「S24 FE」、右が「S24」)
2024年発売のGalaxyシリーズ最大の売りが、独自AI機能「Galaxy AI」を搭載したこと。そしていい意味で驚かされましたが、「S24 FE」でもすべての「Galaxy AI」の機能群を利用可能です。というわけで最後に、「S24 FE」と「S24」が端末内で「Galaxy AI」の機能を実行した際の所要時間を比較してみました。
結果は下記のとおり。「S24 FE」は「S24」に対して、PDF翻訳(3063文字の英文)で1.08倍、音声文字起こし(3分43秒/1455文字の日本語ナレーション)で1.09倍の所要時間となりました。
ベンチマークだけでなく実際のAIアプリでも「Samsung Exynos 2400e」より、「Snapdragon 8 Gen 3 for Galaxy」のほうが処理能力は高いことが証明されました。しかし、使い勝手が大きく変わるほどの差ではありませんね。
「S24 FE」と「S24」は異なるユーザー層に向けて設計されたスマートフォンです。ただその差別化は絶妙。確かに「S24」は、全体的により高性能ですが、ユーザー体験には大きな違いはありません。「S24 FE」はコストパフォーマンスを重視するユーザー、「S24」は最高の性能と品質を求めるユーザーにおすすめです。画面サイズ、ボディサイズと合わせて、最適な1台を選んでみてください。