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あれこれ通信

【独占インタビュー】フィリップモリスのCEO、「紙巻きタバコやめる」ってよ

2019年4月、ついに米国の食品医薬品局(FDA)は、フィリップモリスインターナショナル(以下、PMI)社製の加熱式タバコ製品「IQOS(アイコス)」の米国における販売の許可を出した。これは、公衆衛生の保護の観点から、米国内でのIQOSの販売が妥当であるとの判断が下ったことを意味する。この決定により、PMIの悲願であった米国におけるアイコスの販売・流通が現実味を帯びてきたことになる。

「加熱式タバコ」とは?

加熱式タバコとは、ペースト状のタバコ葉や液体を電気的な熱で加熱し、発生した蒸気を吸引するタバコ製品のこと。これまでの紙巻きタバコや葉巻と違い、タバコ葉などの材料を燃焼させない(燃やさない)ため、ニオイや有害物質の発生が少ないとされている。日本で販売するには、ニコチンを含むれっきとしたタバコ製品として、財務省の認可が必要となっている。また、タバコ葉を加熱するためのデバイス(機器)が別途必要になるのも特徴のひとつだ。

アイコスの最新機種である「アイコス 3」(左)と「アイコス 3 マルチ」(右)

アイコスの最新機種である「アイコス 3」(左)と「アイコス 3 マルチ」(右)

加熱式タバコをめぐるグローバルの動向

加熱式タバコのグローバル市場は、アイコスがおもに日本市場で大きく発展。またたく間にトップシェアを獲得し、現在、アイコスユーザーは世界47か国で1,000万人を超えるとされている。日本においては、2018年3月時点で約700万人以上の加熱式タバコユーザーのうち、約540万人がアイコスユーザーという強大なシェアを誇っているのが、アイコスの現状だ。

ライバル製品はいずれも後発になるが、日本タバコ(JT)が販売する「Ploom(プルーム)」シリーズと、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)が販売する「glo(グロー)」シリーズがある。

アイコスがトップシェアを獲得できた大きな理由のひとつに、喫煙の満足感があげられる。燃焼による煙が出ず、ニオイが少ないいっぽうで煙やニオイが少ないにも関わらず、既存の紙巻きタバコにとって変わるほどの満足感が得られるという喫煙者の支持を得て、紙巻きタバコからアイコスに完全移行する人が続出。一時期は、デバイスが入手困難になるほど人気が過熱した。

世界最大のタバコメーカーが紙巻きタバコ事業からの撤退を明言

PMIは、米国のニューヨークに本社を置く世界最大のタバコメーカーだが、2019年5月現在、アイコスは中国と米国以外で販売を行っており、研究・開発の主要拠点はスイスに構えている。事実、アイコスもスイスにある研究施設によって開発された経緯がある。PMIのおもな販売ブランドは、「ラーク」や「マルボロ」などが日本でもおなじみだろう。

スイス西部の街ヌーシャテル郊外にある、PMIのアイコス本体及びヒートスティックの工場

スイス西部の街ヌーシャテル郊外にある、PMIのアイコス本体及びヒートスティックの工場

そんな世界的なタバコメーカーが、「近い将来、紙巻きタバコ事業からの完全撤退」を明言しているのだ。筆者的には「トヨタが車を作るのをやめる」と言っているのに近いものを感じ、PMIのアンドレ・カランザポラス最高経営責任者(CEO)に、直接話を聞くことにした。

PMI 最高経営責任者 アンドレ・カランザポラス氏

PMI 最高経営責任者 アンドレ・カランザポラス氏

---なぜPMIは中核事業である紙巻きタバコをやめるのか?

「ある企業が作っている製品が消費者に重大な疾病や健康被害をもたらすと解った時点で、その企業は技術と手段を開発し、代替製品を作り出す努力をするのが使命だと思っている。そのうえで、紙巻きタバコが人体に与える健康被害を考えると、今後、消えゆく運命にあると考える。つまり、紙巻きタバコ事業からの撤退はタバコメーカーとしても、ごく自然な流れだ」

---アイコスがヒットした要因は何と考える?

「タバコ葉や液体を燃焼させると、有害物質が発生することが判明しているが、燃焼さえさせなければ、有害な部分を大幅に削減できる。しかし、消費者の満足感も考慮しなくてはならない。我々のスモークフリー(煙の出ない)製品にかける意欲的な研究開発の結果、それら(リスク低減の可能性と満足感)を両立させて、消費者の支持を得ることができた」

---PMIのトップとして紙巻きタバコをやめても経営が成り立つ自信があるのか?

「もちろん、自信はある!」

---その自信は、日本でのアイコスの成功があったから?

「アイコスを含めたスモークフリー製品の開発に着手した当初から、自信があったわけではない。数年かけて開発や検証を重ねてデータを積み上げた結果、製品に自信が持てるようになり、消費者もそれに応えてくれた」

---ズバリ、2020年の東京オリンピック開催時にアイコスの立場はどうなっていると考える?

「禁煙ムードはより一層高まるだろう。その反動で、他社も含めてスモークフリー製品のカテゴリも盛り上がるはず。東京オリンピック開催時には、加熱式タバコのシェアは30〜40%を超えていることになっているかもしれない」

---つまり、その「禁煙ムード」はアイコスにとって逆風にはならない?

「むしろ追い風だ。紙巻きタバコのシェアがそのままアイコスに切り替わるからだ。また、この日本でのビッグイベントとスモークフリー製品へのムーブメントを起点に、紙巻きタバコと加熱式タバコが別の製品として認識され規制されるように政府や当局に働きかけていくし、そう願っている」

---日本の非喫煙者に向けてひと言

「アイコスは代替品なので、紙巻きタバコとは違うことを理解してほしい。紙巻きタバコに比べるとリスクが低いことを、我々は日々検証しているし、さまざまな臨床試験結果も公表している。ただし、完全なリスクフリー製品ではないことは確かだ。健康を考えるなら、アイコスと言えど吸わないのがベストだろう」

「もちろんさ! ありがたいことだよ」

米国4,000万人の喫煙者を対象とした巨大マーケットの行方

冒頭のFDA(米国食品医薬品局)の決定により、PMIは近日中にも、米国でアイコスを発売することになる。PMIとって、アイコスが米国に上陸することは、かねてからの悲願であり、4,000万人とも言われる米国の喫煙事情を一変させることが予想される。もし、アイコスが米国で大成功を収めるようなことがあれば、日本市場など比べものにならないほど巨大な加熱式タバコのマーケットの誕生を意味することになる。

米国での発売時は、デバイスが欲しくても品薄で買えない「アイコス難民」が続出しないよう、製品の十分な供給量の確保をお願いしておいた

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ナックル末吉
Writer
ナックル末吉
スマホ、パソコン、家電などのガジェット系記事を執筆するモノ系ライター。それ以外にもハイレゾオーディオや文房具、バイク、食レポなどについても執筆するため「節操がないのが持ち味」と豪語する。
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