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レビュー

“ひとつ上”の没入感! ハイセンスの大きめテレビ「65U8N」が人気な理由

価格.comで人気のmini LEDテレビ「65U8N」をレビュー

価格.comで人気のmini LEDテレビ「65U8N」をレビュー

大画面テレビにはひと味違う臨場感がある。これは筆者が得た偽らざる実感だが、大きなテレビはどうしても高額になりやすいというデメリットがある。そこで注目したいのが65V型のテレビだ。なかでも画質や値ごろ感のバランスのよさで人気を博しているのがハイセンスの「65U8N」。価格.comの「液晶テレビ・有機ELテレビ」カテゴリーの人気売れ筋ランキングでは5位(2024年12月25日時点)。同サイズのテレビで最も人気の機種ということだ。

なぜ「65U8N」が選ばれるのか、ここではその理由と使いこなしの方法を改めて探っていく。

65V型はバランスのよい大画面なのだが……

雑誌と動画コンテンツの取材を兼ねて、半年ほど前から我が家のリビングに100V型(インチ)の液晶テレビを設置している。運び込まれて数日間は、その大きさに圧倒され、正直、このサイズに慣れるのかどうか不安だったが、それはまったくの杞憂だった。

自宅に設置したTVS REGZAの100V型テレビ「100Z970M」

自宅に設置したTVS REGZAの100V型テレビ「100Z970M」

2日、3日と、生活の中で100V型映像と向き合っていくうちに、特別な感覚は徐々に薄らぎ、1週間も経つころには無理なくなじんで、大きさに対する不安など、どこ吹く風。それどころか映画の没入感、コンサートの臨場感、サッカー、ラグビー中継の迫力と、超大画面に魅せられ、生活の一部としてすっかり溶け込んでしまった。

とはいえ、万人に100V型テレビをすすめられるかと言えば、そう簡単ではない。まず設置スペース、そして一定の視聴距離を確保しなければならないし、搬入経路の心配もある。そして何より購入のための費用も、家庭用テレビとしてまだまだお手ごろとは言えない。

取り扱いのしやすさ、納まり(設置性)、そして値ごろ感と、いろいろと考えを巡らせていった結果、行き着いたのが65V型(約144cm×81cm)の液晶テレビだ。大画面スタンダードとして定着しつつある55V型(約122×69cm)との差はたった10インチ。

「たいした違いではないのでは」と思われるかもしれないが、ワイド方向に約22cm、高さも約12cm大きくなると、実際の見え方がだいぶ違う。その恩恵を痛感するのが、テレビ放送で多用されるバストショット(頭から胸の下あたりを撮影したショット)の絵柄だ。

一般的な55V型テレビから……

一般的な55V型テレビから……

65V型に入れ替えると、このようなイメージ。数字からイメージするよりも、画面が大きくなったように感じられないだろうか

65V型に入れ替えると、このようなイメージ。数字からイメージするよりも、画面が大きくなったように感じられないだろうか

アナウンサー、ニュースキャスター、バラエティ番組の司会者と、我々が日常的に見ている放送では人物の表情が把握しやすく、見た目にも安定感のあるバストショットが多用される。これを我が家の別の55V型テレビで見ると実物よりもやや小さくなるためか、ミニチュア空間に通じる違和感を覚えることが少なくない。

これが65V型まで画面サイズが拡大されると、人物が等身大のスケール感に近づき、画面の奥に現実の世界が実在しているかのようなリアリティーが得られる。本物のサイズとの違いからくる違和感が払拭されることで、その場に居合わせているかのような没入感が体験できるのである。

実際の55V型と65V型のテレビの価格差が気になるところだが、有機ELテレビと比べると、液晶テレビの価格差は総じて小さめ。製品によっては55V型に3万円前後加えれば、65V型が購入できるケースがある。つまりちょっと頑張れば、多彩なコンテンツがよりリアルなスケールで楽しめるというわけだ。

価格.comで65V型有機ELテレビを検索すると、最安製品でも15万円以上(2024年12月25日時点)。しかも少し前の製品であることに注意

価格.comで65V型有機ELテレビを検索すると、最安製品でも15万円以上(2024年12月25日時点)。しかも少し前の製品であることに注意

ここで注意したいのが、リアルスケールならではの臨場感を享受するには、一定レベル以上の画質が必要不可欠だということ。一口に4K液晶テレビと言っても、その表現力は千差万別。名のしれた大手メーカー品でも、画質は二の次という安価な製品は多く、大きさだけを売りにした大画面モデルも珍しくない。

同じく価格.comで65V型液晶テレビを検索。安い順にソートすると、10万円以下の製品が並ぶ。ただし、やはり少し前の製品が多く、この価格帯では当然mini LEDバックライトは非搭載かつ等速パネルが基本だ

同じく価格.comで65V型液晶テレビを検索。安い順にソートすると、10万円以下の製品が並ぶ。ただし、やはり少し前の製品が多く、この価格帯では当然mini LEDバックライトは非搭載かつ等速パネルが基本だ

実際にその画質を確認してみると、黒が締まらず、動画ボケが目立ち、斜めから見ると画質(特に色調とコントラスト)が変わってしまうようなモデルが何と多いことか。特に(1)エッジ配置の(直下型ではない)LEDバックライトパネル、(2)等速駆動(60Hz駆動)パネル、(3)安価なVAパネル(視野角補正の光学シートなし)といった仕様の4K液晶テレビには要注意だ。

今選ぶならばmini LED!

65V型という画面サイズにふさわしい画質を備えた液晶テレビを探していくなかで、「これだ!」という機種を見つけた。「一定レベル以上」の画質ためにmini LEDバックライトを搭載したハイセンスの「65U8N」だ。ハイセンスにも4Kテレビのエントリーモデルはあるが、「U8N」シリーズは名実ともに“ひとつ上”のグレードのテレビだと言ってよいだろう。

画質も確保された65V型液晶テレビは……と探して行き着いたのが「65U8N」。mini LEDバックライトを搭載した倍速パネルのモデル。しかも55V型の「55U8N」との価格差も大きくなかった

画質も確保された65V型液晶テレビは……と探して行き着いたのが「65U8N」。mini LEDバックライトを搭載した倍速パネルのモデル。しかも55V型の「55U8N」との価格差も大きくなかった

非常に小さなLEDを透明度の高いガラス基板に数千個を並べたmini LEDバックライトシステムによるパネル(倍速駆動)を搭載した4K液晶テレビで、光の波長変換によってより効率的に高純度のRGBの発色を確保するQuantum Dot(量子ドット/QLED)技術も搭載済み。

mini LEDバックライトの強みは、高輝度、色の鮮やかさを両立しつつ、絵柄に応じて部分的に光量を制御するローカルディミング(部分駆動)により、高コントラスト化が図れること。特に後者についてはきめ細かな部分駆動により、ハイライトを気持ちよく伸ばしつつ、黒を締めるというメリハリのある絵作りが可能になる。

再生する映像に応じて、細かなエリアに区切られたmini LEDバックライトを部分ごとに駆動する。これをLEDバックライトのローカルディミング(部分駆動)と言う

再生する映像に応じて、細かなエリアに区切られたmini LEDバックライトを部分ごとに駆動する。これをLEDバックライトのローカルディミング(部分駆動)と言う

映像エンジンはTVS REGZAとの共同開発による「HI-VIEWエンジンII」。これは最新のAI技術を駆使した画像処理技術で、解像度、ノイズ、あるいは動きの速さなど、映像信号の詳細を把握して、最適な超解像処理を行うというもの。

HDRコンテンツについてはHLG、HDR10に加えてHDR10+やHDR10+ Adaptive、Dolby Vision IQに対応。動画配信サービスについてもメディア名を表記したダイレクトボタンをリモコンに装備しており、操作時の反応が素早い。さまざまなコンテンツへの対応力は万全だ。

主要ネット動画の再生など、最新テレビならではの機能が満載。「U8N」シリーズは55V型も人気だが、こちらは144Hz駆動に非対応。その点でも、少しだけ“頑張って”65V型の「65U8N」を選ぶ意味がある

主要ネット動画の再生など、最新テレビならではの機能が満載。「U8N」シリーズは55V型も人気だが、こちらは144Hz駆動に非対応。その点でも、少しだけ“頑張って”65V型の「65U8N」を選ぶ意味がある

しっかりメリハリのある映像を「自動」で楽しめる

まずは明るい部屋で、画質を自動的に最適化してくれる「AI自動」モードを試す。基本はこのモードの常用が想定されるが、せっかくの大画面で映画を見るならば、部屋を暗くしたうえで「映画」モードに切り替えたいところ

まずは明るい部屋で、画質を自動的に最適化してくれる「AI自動」モードを試す。基本はこのモードの常用が想定されるが、せっかくの大画面で映画を見るならば、部屋を暗くしたうえで「映画」モードに切り替えたいところ

ではさっそく、地デジ/BS放送を中心に、ニュース、ワイドショー、ドラマ、通販番組などを確認してみよう。視聴環境は一般的なリビングを想定した明るさで、映像モードは「AI自動」を選択している。

「65U8N」は正面コントラストよりも広い視野角を重視したADS液晶パネルを搭載しているが、ネイティブコントラスト(液晶パネルとしてのコントラスト比)は意外に良好。そこに細かなLEDバックライトのローカルディミング(部分駆動)処理が加わることで、黒が締まり、メリハリのある色濃い映像が描き出される

持ち前の明るさを生かしつつ、色再現はどちらかと言えば鮮やかに見せるタイプ。やや赤みが強い傾向にも感じられるが、人肌はほんのりとピンク色で、健康的だ。「AI自動」モードではあらかじめ適用されている「美肌リアリティーPro」機能もきいているようで、あえて本機能をオフにすると、わずかに黄味がのることが確認できた。

NR調整の一手間でより自然な映像を得られる

ひとつ気になったのが、シャープネス、NR(ノイズリダクション)が強めにかかるためか、輪郭が太く、肌の質感がツルンとして、ディテールが見えにくいこと。顔のしわ、髪の毛、衣装の生地の風合いなど、もっときめ細かく、繊細に描き出してほしいと感じてしまった。

そこで映像調整メニューを開き、「精細感・ノイズ調整」から「バンディングノイズ制御」「ダイナミックNR」「モスキートNR」といった各項目をオート設定から最小限の効果に抑えてみた。するとどうだろう、人工的な輪郭の強調感が抑えられ、肌、髪の毛のディテールも浮き上がり、自然な質感が得られるではないか。

「バンディングノイズ制御」「ダイナミックNR」「モスキートNR」をそれぞれ「弱」「1」「1」に設定。デフォルト値はすべて「オート」だった

「バンディングノイズ制御」「ダイナミックNR」「モスキートNR」をそれぞれ「弱」「1」「1」に設定。デフォルト値はすべて「オート」だった

シャープネスのきいた高解像感映像とは違うが、細部を無理にクッキリとさせることなく、穏やかなテイストで再現する繊細な映像が好ましい。十分な照明でスタジオを照らしている通販番組でも、必要以上に力まず、生地のディテール・質感を素直に再現していた。日本の放送画質のレベルからすると、デフォルト値では各種ノイズ処理をきかせすぎている印象だった。

物足りない場合は、超解像処理の設定である「レゾリューションプラス」の効果を少し強めにかけてもよいだろう。「ゲイン調整」を「+2」程度に上げても不自然にならない

物足りない場合は、超解像処理の設定である「レゾリューションプラス」の効果を少し強めにかけてもよいだろう。「ゲイン調整」を「+2」程度に上げても不自然にならない

鮮やかな色再現で人目を引きつける。特に肌の質感の描写が生々しく、モデルの細かなしわが浮き上がり、やや厚めに塗られたファンデーションの様子まで確認できる。

このままでも特に問題はないと思うが、明るすぎると感じた場合は、バックライトの輝度を抑えたい。「画面の明るさ」の調整メニューから「詳細設定」を呼び出して、まぶしく感じない程度に調整してみるとよいだろう。グラフのラインが明(右側)から暗(左側)にかけて滑らかに下がっていくように調整するのがコツだ。

「AI自動」モードでは、周囲の環境(明るさ・色温度)に応じて、映像の明るさを自動調整する「おまかセンサーPro」機能が動作する。初期値ではかなり明るめの映像になるが、必要に応じて調整も可能だ

「AI自動」モードでは、周囲の環境(明るさ・色温度)に応じて、映像の明るさを自動調整する「おまかセンサーPro」機能が動作する。初期値ではかなり明るめの映像になるが、必要に応じて調整も可能だ

「画面の明るさ」から「詳細設定」を呼び出すと、右のグラフが表示される。部屋の明るさが横軸で、映像(画面)の明るさが縦軸。部屋がどのくらいの明るさのときに映像をどのくらいの明るさにするか、設定しておけるのだ

「画面の明るさ」から「詳細設定」を呼び出すと、右のグラフが表示される。部屋の明るさが横軸で、映像(画面)の明るさが縦軸。部屋がどのくらいの明るさのときに映像をどのくらいの明るさにするか、設定しておけるのだ

4K映像ではしっかりと色をのせつつ風合いは自然に再現する

次に部屋の照明を落とした全暗室の環境で映画「ジョーカー」のUltra HDブルーレイ(4Kソース)を再生。Dolby Vision収録作品のため、映像モードは「Dolby Vision Dark」を選んだが、全体に明るく、色をしっかりとのせた高コントラスト調の絵作りを「AI自動」モードからそのまま受け継いでいる。ピエロに扮した主人公アーサーの白塗りの様子や、よれよれの衣装生地の風合いなど、質感の描写も悪くない。

Ultra HDブルーレイ「ジョーカー」を「Dolby Vision Dark」モードで視聴。初期値は明るさなどを自動調整する「Dolby Vision IQ」だが、こちらは映像補間が入ることに注意

Ultra HDブルーレイ「ジョーカー」を「Dolby Vision Dark」モードで視聴。初期値は明るさなどを自動調整する「Dolby Vision IQ」だが、こちらは映像補間が入ることに注意

一般的なテレビの視聴環境として、全暗室は考えにくいという発想があってのチューニングなのかもしれない。少し灯りを残した環境であれば、不満を感じることはなさそうだ。全暗であっても十分鑑賞に堪えられる再現性だが、もう少し黒を引き込んで(沈めて)メリハリをつけたい人もいるだろう。

この視聴環境で「もっと黒を」と求めるのは、あらゆる液晶テレビにとって酷な話だと思うが、実は視聴環境によっては調整の余地はある。

「LEDエリアコントロール」の設定を「オート」から「+10」(最高値)に変更することだ。こうすることでハイライトの伸び、明るさを変えずに、黒がクッと引き込まれることがある。部分駆動の恩恵か、特に細かな部分(小面積)の黒が締めるため、コントラスト感に余裕が生まれ、見た目のフォーカス感もキリッと引き締まる印象だ。

音質については、このクラスの65V型液晶テレビとして標準的な仕上がりだ。特にワイドレンジということもないが、人の声、セリフは比較的聴きやすく、音量を上げても歪みっぽさは気にならない。ただこの大画面とのバランスを考えると、サウンドバーやARC対応のHDMI端子を備えたアクティブスピーカーなどを追加して、音質面を強化してもよいだろう。これも“その場に居合わせているかのような没入感”を味わうためのひと工夫だ。

【まとめ】自然なローカルディミングと基礎体力の高さが人気の秘密

いまや高画質志向の液晶テレビにとって必須の技術となったmini LEDだが、さまざまなモデルを個別に視聴していくと、そのすべてがデバイス特有の持ち味を生かしているとは言い難い状況だ。LEDバックライトのローカルディミング部分駆動の副作用で、明るさが不安定になったり、発色が不自然に鮮やかすぎたり、持てる資源を使いこなせずにいる機種が少なくないのだ。

そんななかにあって、この「65U8N」の画質は持ち前のコントラスト感を生かした堂々とした絵作りで、65V型という画面サイズの優位性を明確に感じさせてくれるレベルに達していた。価格.comでの人気も納得の仕上がりだ。

特にダイナミックレンジ、輪郭の品位、階調性と、テレビとしての基礎体力がすぐれているため、簡単な画質調整で薄化粧のハイファイ調の映像にも追い込めるのがよい。リアルなスケールと生成りの画質の共演で得られる本物感は格別だ。

藤原陽祐
Writer
藤原陽祐
雑誌編集者を経てオーディオビジュアル評論家へ転身。近年は山中湖畔に「7.1.8」スピーカー+プロジェクターのホームシアターを構築。この“ラボ”で「自宅で再生する映画と音楽」のクオリティを追究している。
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柿沼良輔(編集部)
Editor
柿沼良輔(編集部)
AV専門誌「HiVi」の編集長を経て、カカクコムに入社。近年のAVで重要なのは高度な映像と音によるイマーシブ感(没入感)だと考えて、「4.1.6」スピーカーの自宅サラウンドシステムで日々音楽と映画に没頭している。フロントスピーカーだけはマルチアンプ派。
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