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レビュー

「実力も価格も高い、それが問題だ」ソニー「BRAVIA 9」「BRAVIA 7」レビュー

「BRAVIA 9(「XR90」シリーズ)」の65V型モデル「K-65XR90」(写真)と、「BRAVIA 7(「XR70」シリーズ)」の55V型「K-55XR70」を借用。画質・音質をチェックしていく

「BRAVIA 9(「XR90」シリーズ)」の65V型モデル「K-65XR90」(写真)と、「BRAVIA 7(「XR70」シリーズ)」の55V型「K-55XR70」を借用。画質・音質をチェックしていく

ソニーの高級テレビ「BRAVIA 9」こと「XR90」シリーズ、「BRAVIA 7」こと「XR70」シリーズをレビューする。

有機ELテレビと液晶テレビの位置づけは各社で異なるが、有機ELを最上位とするメーカー、どちらも最上位とする2トップ戦略などがあるなかで、2024年のソニーはmini LEDバックライト+量子ドット技術を備えた液晶テレビを最上位と位置づけた。

これは、mini LED技術の熟成などを含めた判断だろう。液晶か有機ELかという選択はユーザーの間でも意見が分かれると思うが、少なくとも画質では有機ELという意見は根強い。それでも液晶テレビを最上位としたソニーの自信がうかがえるものでもあった。

「BRAVIA 9(「XR90」シリーズ)」のラインアップ
●65V型「K-65XR90」 解像度:4K(3,840×2,160)
●75V型「K-75XR90」 解像度:4K(3,840×2,160)
●85V型「K-85XR90」 解像度:4K(3,840×2,160)

「BRAVIA 7(「XR70」シリーズ)」のラインアップ
●55V型「K-55XR70」 解像度:4K(3,840×2,160)
●65V型「K-65XR70」 解像度:4K(3,840×2,160)
●75V型「K-75XR70」 解像度:4K(3,840×2,160)
●85V型「K-85XR70」 解像度:4K(3,840×2,160)

「BRAVIA 9」「BRAVIA 7」はどんなテレビか?

●mini LEDバックライト搭載の高級テレビ
●「BRAVIA 9」は広視野角技術「エックス ワイド アングル」を採用
●画面と音声の親和性を高めるスピーカーシステムを搭載

最初に確認しておくべき重要事項として、「BRAVIA 9」と「BRAVIA 7」の価格は高い。「BRAVIA 9」65V型モデル「K-65XR90」の価格.com最安価格は486,800円(税込、2024年12月19日時点)。他社の65V型液晶テレビを見ると、高級モデルでも20万円台前半。他社製有機ELテレビの高級モデルと同等かそれ以上の価格と言える。

「BRAVIA 7」の場合は、55V型「K-55XR70」の価格.com最安価格は219,233円(税込、2024年12月19日時点)となるが、やはり他社製液晶テレビと比較すると高めだ。さすがに同サイズの高級有機ELテレビよりは安価ではあるが。

画質や音質はどうなのか? 興味を持っている人は多いと思うが、この価格の高さをどう考えるかも重要になるだろう。

「XR」がmini LEDバックライトを緻密に制御する

「BRAVIA 9」「BRAVIA 7」ともにmini LEDバックライトを搭載。どちらも同クラスのソニー従来製品よりもより明るい映像を表示できるという

「BRAVIA 9」「BRAVIA 7」ともにmini LEDバックライトを搭載。どちらも同クラスのソニー従来製品よりもより明るい映像を表示できるという

まず、画質面でのトピックとして注目したいのは、mini LEDバックライトのエリア駆動や制御を行う「XR バックライト マスタードライブ」だろう。これは、ソニーが「認知特性プロセッサー」と呼ぶ映像処理エンジン「XR」を使ったmini LED制御の独自アルゴリズムのこと。

「BRAVIA 9」ではピーク輝度を最大1.5倍、「BRAVIA 7」では最大1.3倍、LEDバックライトの分割数では「BRAVIA 9」が最大3倍、「BRAVIA 7」が最大79倍となっていて(それぞれ同クラスの2023年モデル比)、より明るく、より緻密に明暗を制御できるようになっている。明るい部分に電流を集中させる「XR コントラスト ブースター」などの技術も合わせて、よりハイコントラストな映像を目指したのだ。

一口に「mini LED」と言ってもその内容はさまざま。ソニーでは独自の制御技術で高コントラスト映像を目指している

一口に「mini LED」と言ってもその内容はさまざま。ソニーでは独自の制御技術で高コントラスト映像を目指している

さらに、映像をフレームごとに分析し、放送波や低解像度コンテンツのノイズ低減などを行う「XRクリアイメージ」、高精細な4K映像を再現する「XR 4Kアップスケーリング」、自然な色を再現する「XRトリルミナス プロ」といった技術を投入。「BRAVIA 9」では、大画面で気になる視野角を改善する「エックス ワイド アングル」、照明などの映り込みを低減する「エックス アンチ リフレクション」も搭載している。

一般的にVA方式の液晶テレビは視野角によって色が変わりやすいと言われるが、「エックス ワイド アングル」技術を使うことで、そうしたデメリットを低減している

一般的にVA方式の液晶テレビは視野角によって色が変わりやすいと言われるが、「エックス ワイド アングル」技術を使うことで、そうしたデメリットを低減している

音質面でも力が入っており、「BRAVIA 9」は「アコースティック マルチ オーディオ プラス」を搭載。画面下部のメインスピーカーに加えて、画面の両サイドのフレーム部分から音が出る「フレームトゥイーター」、さらに「ビームトゥイーター」を搭載し、壁と天井の反射を利用して音の広がりや音の定位を向上させる。

「BRAVIA 7」の「アコースティック マルチ オーディオ」では、画面下部のメインスピーカーとは別に、画面の上部に「サウンドポジショニング トゥイーター」を搭載。計4つのスピーカーで音の広がりや定位感を高めている。

また、詳細は後述するが、どちらの機種もDisney+でDTS:X音声を再生可能(「IMAX Enhanced」対応コンテンツ再生時)だ。これもひとつのポイントだろう。

「BRAVIA 9」の「アコースティック マルチ オーディオ プラス 」イメージ。画面の上方には天井や壁からの反射を利用するツイーターが設置されており、サラウンド再生をサポートする

「BRAVIA 9」の「アコースティック マルチ オーディオ プラス 」イメージ。画面の上方には天井や壁からの反射を利用するツイーターが設置されており、サラウンド再生をサポートする

そして、今やテレビの機能としては外せない動画配信サービスについては、Google TV搭載により多彩な動画サービスに対応。ソニー独自の動画配信サービスである「SONY PICTURES CORE(ソニー・ピクチャーズ・コア)」も楽しめる。

独自の動画配信サービス「SONY PICTURES CORE」に対応。作品によっては100Mbpsに迫る高いビットレートで配信されるため、高画質を期待できる。これはUltra HDブルーレイ並みと言える数値だ

独自の動画配信サービス「SONY PICTURES CORE」に対応。作品によっては100Mbpsに迫る高いビットレートで配信されるため、高画質を期待できる。これはUltra HDブルーレイ並みと言える数値だ

もちろん、音声操作やスマホ連携機能なども充実。家庭用ゲーム機「PS5」との画質連携をはじめ、サウンドバーなどのソニー製品との連携も可能。主要な機能をテレビ側のリモコンで操作できるなど、快適な操作性も実現している。

このほか外付けカメラ「ブラビアカム」を利用可能で、ジェスチャーによる操作、視聴者の位置を判別して画質・音質を最適化するなど、先進的な機能にも対応している。

地デジ放送やネット動画などは穏当に再現する

まずは照明を付けた明るい環境で、「スタンダード」モードの画質をチェック。自動画質調整機能も併用している

まずは照明を付けた明るい環境で、「スタンダード」モードの画質をチェック。自動画質調整機能も併用している

自宅の視聴室にテレビを設置し、さっそく画質をレビューしていこう。テレビ放送は主に地デジ放送のニュースやドラマ、バラエティー番組を見た。部屋の照明をつけた状態で、画質モードは「スタンダード」。室内の明るさを検知して最適な画面の明るさに調整するなどの自動画質調整機能はオン。

映像モードを「スタンダード」としたうえで、「環境光による自動調整」機能をオン。周囲の明るさに応じて画質を最適化する機能だ

映像モードを「スタンダード」としたうえで、「環境光による自動調整」機能をオン。周囲の明るさに応じて画質を最適化する機能だ

「BRAVIA 9」では「ブラビアカム」による画質・音質の自動最適化も併用している。すぐに気づくのは画面が明るく見栄えのする映像であること。そして特筆したいのは、有機ELテレビを常用している筆者が見ても、液晶特有の黒が締まらない画質だとはまったく感じなかったこと。これは「BRAVIA 9」はもちろん「BRAVIA 7」でも感じたことだ。

解像度が低く(1,440×1,080)、ノイズが多めになる地デジ放送は、ひと言で表せば穏当な画質。ノイズ低減と精細感のバランスがよく、見ていて自然だと感じる再現性だ。ことさらにディテールを掘り起こそうとするのではなく、アナウンサーの表情のアップでは目元や眉をくっきりとさせながらも、不自然な輪郭強調はしない。肌の質感についても少しソフトな再現にはなるが、顔のしわが変に目立ってしまうようなことはない。各種ノイズによる悪さをきちんと抑えながら、ある程度の精細さを再現するうまいまとめ方だ。

画面が明るいので色の鮮やかさも印象的だが、ここでも不自然に色がギラつくような人工的な色にはしない。肌の健康的な色合いを含めてあくまで自然。ニュースやドラマ、アニメといろいろと見ていっても、苦手とするジャンルはなさそうで、それぞれをバランスよく再現していた。アニメで気になりやすいカラーバンディング(等高線状のノイズ)への対応も十分だ。

YouTubeを見てもカラーバンディングが気になるようなことはないし、低解像度コンテンツはあまり無理にディテールを掘り起こさず、地デジ放送と同様に穏当な画質で再現してくれた。いっぽうで解像度の高いコンテンツでは、元の映像の美しさをダイレクトに感じさせる精細感と鮮やかな色を楽しめる。このあたりはさすがに見事な出来栄えだ。

「BRAVIA 9」と「BRAVIA 7」の差として大きいのは視野角

「BRAVIA 7」を正面から見たイメージ

「BRAVIA 7」を正面から見たイメージ

「BRAVIA 7」で同じ映像を斜めから見ると、全体に色が浅くシフトしてしまった

「BRAVIA 7」で同じ映像を斜めから見ると、全体に色が浅くシフトしてしまった

ここまでは両機に共通して感じた特徴だが、「BRAVIA 9」(「K-65XR90」)と「BRAVIA 7」(「K-55XR70」)との違いはどこにあるか。

地デジ放送だと、明るさやコントラスト感に思ったほどの違いはない。どちらもバランスよくくっきりとした映像で見せる“BRAVIA画質”だ。

そんななかではっきりと差を感じたのは、視野角の影響。総じてコントラスト感の高い画質なので、画面の中央で見ていてもどうしても映像の両端にコントラストの低下を感じることは少なくなかったのだ。そうした周辺でのコントラストの低下を感じたのは、画面サイズが小さく(画面の中央付近で見ているならば)視野角の影響が少ないはずの55V型の「BRAVIA 7」のほう。この影響は65V型の「BRAVIA 7」で比べればより大きくなるだろう。

これは視野角の影響を改善する「エックス ワイド アングル」の有無による差と考えられる。基本的には画面サイズが大きくなるほど視野角の影響も大きくなるので、大画面を選ぶならば「BRAVIA 9」の視野角の広さが有利に働く。

実用上(正面から見ている限り)はあまり差が出ないかもしれないが、広いリビングで使う場合など、さまざまな場所からテレビを見るという人は覚えておくとよいだろう。

高画質を実感できるのはUltra HDブルーレイなどの高品位ソフト

映像モードは「シネマ」のほか、対応ソフトは「ドルビービジョン ダーク」を選択。どちらも暗い部屋で視聴するためのモードだ

映像モードは「シネマ」のほか、対応ソフトは「ドルビービジョン ダーク」を選択。どちらも暗い部屋で視聴するためのモードだ

Ultra HDブルーレイの視聴では、部屋の照明を落とした全暗に近い環境で、画質モードは「シネマ」。Dolby Vision収録のソフトでは「ドルビービジョン ダーク」モードを選んでいる。プレーヤーはパナソニックの「DP-UB9000」。

まずは「BRAVIA 9」で、「ゴジラ×コング 新たなる帝国」から自然にあふれた地下のシーンを再生すると、密林が続く広い空間を見晴らしよく描くし、CGとは思えないコングの表情の豊かさや毛艶などのディテールの再現も見事。明るい日差しは力強いし、川辺や滝の水しぶきの輝き感も際立つハイコントラストな映像だ。

ゴジラとの激しいバトルが展開するシーンでも、豪快に破壊されるピラミッドや台風のような勢いで舞い上がる砂塵などがきめ細かく、ゴジラの放射熱線も鮮やかに輝く。コントラスト感はもちろんのこと、ディテールや遠近感などの再現も非常に良好。

こうした特徴は「BRAVIA 7」でも基本的に共通していて、両者の差はわずかだと感じた。「BRAVIA 9」の画面サイズが大きいからではなく、映像の迫力が増していると感じるし、放射熱線などの輝きがより鋭くなる。

続いて、「BRAVIA 9」で「クワイエット・プレイス:DAY1」を再生。音を出した者を容赦なく殺す怪物が現れ、逃げ惑う人々が建物や地下へ隠れる場面をチェックした。当然暗いシーンだが、暗部をしっかりと見えるように再現するので、見通しがよい。映画の雰囲気からすると、明るくしすぎていると感じることも少なくなかったのだが、それでも黒が浮いているとか、暗部が締まりのない映像とは感じない絶妙な再現に感心した。

こうした暗部の見通しのよさはやはり「BRAVIA 9」のすぐれたポイント。「BRAVIA 7」ではこの見通しのよさはないが、映画的な雰囲気としてはマッチしていると感じる。暗室で見るならば輝度ピークなどでは劣る「BRAVIA 7」のほうが映画ライクな映像と言える部分があるし、好みにも合うと感じた。

「BRAVIA 9」が暗いシーンを明るめに見せてしまう点は気になったものの、コントラストはすぐれるしディテールも緻密なので映像としての見応えはある。どちらを選ぶかと聞かれれば「BRAVIA 9」なのだが、もし自宅で常用するならば、「シネマ」モードや「ドルビービジョン ダーク」など、暗室で使う映像モードの明るさや暗部の再現をもう少し暗めに微調整するとは思う。

テレビ内蔵スピーカーとしてかなり優秀なサラウンド感を味わえる

実はいちばん感心したのが音質だ。上述のとおり、「BRAVIA 9」「BRAVIA 7」は画面下のメインスピーカーに加えて、画面両端の上部にツイーターを配置している。映像と音の一体感を高めるための仕組みだ。これらが思った以上によくできていた。

どちらも初期設定でリモコンのマイクを使った自動音場補正を行った。特に「BRAVIA 9」では「ビームトゥイーター」の調整を行うため、ユーザーは必ず実施すべきだろう

どちらも初期設定でリモコンのマイクを使った自動音場補正を行った。特に「BRAVIA 9」では「ビームトゥイーター」の調整を行うため、ユーザーは必ず実施すべきだろう

「ビームトゥイーター」の音量など、詳細は後から微調整もできる

「ビームトゥイーター」の音量など、詳細は後から微調整もできる

まずは「BRAVIA 9」で地デジ放送のドラマなどを見ていると物足りなさは感じない。2チャンネル音声でも適度の音が広がるので聴きやすいのだ。人工的な広がり感が気になる場合は、調整することも可能。低音もテレビの内蔵スピーカーとしては十分で、音楽番組などもしっかり楽しめる音質だと言える。

「BRAVIA 7」も、後述する映画のサラウンド感にやや差があるものの、画面と音の一体感や充実した中低音で聴き応えに不満はない。地デジ放送主体の使い方ならば、サウンドバーなどの追加も必要ないくらいの優秀な音だ。 映画音響の再生となると、「BRAVIA 9」でも重低音の力感はやや不足する。ゴジラとコングの大迫力のバトルなどはサブウーハーが欲しくなるのだ。映画再生時の音質を気にするならば、両機ともにサウンドバーなどの追加を検討したほうがよいかもしれない。

ただし「BRAVIA 9」のサラウンド感はなかなか良好だ。画面の中央に座っている視聴者の真横くらいまでは音が明瞭に定位するし、移動感もある。後方からも“包まれる感じ”があるため、ひとりで画面のど真ん中で見ているならばサラウンド感に不足なしと感じるほど。

「BRAVIA 7」も音の広がりは十分で、高さ方向の再現性もそれなりにある。自分の真横に来るような音の定位や移動感となると少し希薄な感じになってしまうが、テレビ内蔵スピーカーとしてはかなり優秀なレベルにある。画面から聴こえてほしいセリフは十分に力強く、発音も明瞭なので不足はない。

さらにすぐれた音響を求めるならば、筆者としてはサウンドバーではなくAVアンプとスピーカーによる本格的なサラウンド再生を検討してほしい。それはさすがに難しいというならば、せめてサブウーハー付属のサウンドバーかサブウーハーやワイヤレスリアスピーカーを追加できるモデルを選びたい。

ソニーのサウンドバー「HT-A9000」「HT-A8000」にワイヤレスリアスピーカーを足したサラウンドシステムの再生イメージ。すべてのスピーカーを使って、リスナーを取り囲むような音場を創出する

ソニーのサウンドバー「HT-A9000」「HT-A8000」にワイヤレスリアスピーカーを足したサラウンドシステムの再生イメージ。すべてのスピーカーを使って、リスナーを取り囲むような音場を創出する

ソニー製のサウンドバーはワイヤレスサブウーハーやワイヤレスリアスピーカーの追加ができるモデルがあるほか、センターチャンネルの音声をテレビ内蔵スピーカーで再生する連携機能も備えている場合もあるので、ソニー同士の組み合わせが理想的。価格は高くなってしまうが、そのくらいでないとサウンドバーを足したのに、あまり音のよさを実感できないなんてことになりかねない。

「IMAX Enhanced」のDTS:X音声を再生できる!

さて、編集部の協力も得て今回のテストを我が家で行ったのは「IMAX Enhanced」でDTS:X音声を再生するためでもある。「BRAVIA 9」「BRAVIA 7」ともにDisney+で配信される「IMAX Enhanced」コンテンツをDTS:X音声で再生できるのだ。この音声をARC(HDMIケーブル)経由でAVアンプへ送り、自宅の8.2.4chスピーカーシステムで再生してみようという趣旨だ。

使用したAVアンプはマランツの「AV10」。目下の最新モデルだが、もう少し前のモデルでもDTS:  Xのデコードには対応していることが多い

使用したAVアンプはマランツの「AV10」。目下の最新モデルだが、もう少し前のモデルでもDTS:Xのデコードには対応していることが多い

なお、この機能に対応しているのは、国内主要メーカーではソニーの最新テレビだけ。機能詳細は以下関連記事をご覧いただきたい。

結論から言えば、これを理由に「BRAVIA 9」「BRAVIA 7」および「BRAVIA 8(「XR80」シリーズ)」を選ぶ選択肢は十分にある

ソニーのテレビ独自の動画配信サービス「SONY PICTURES CORE」でも「IMAX Enhanced」対応コンテンツは配信されているが、2024年12月20日時点では、音声がDTS:Xではない。この点のアップデートにも期待したい。

さっそくDisney+を調べてみると、すぐにマーベル作品でいくつか「IMAX Enhanced」対応のタイトルを見つけられた。視聴した「アベンジャーズ/エンドゲーム」でDTS:X音声を再生してみると、AVアンプに「IMAX DTS:X」と表示された。

Disney+で「IMAX Enhanced」対応コンテンツを見ると、しっかりバッジが表示されている

Disney+で「IMAX Enhanced」対応コンテンツを見ると、しっかりバッジが表示されている

「IMAX Enhanced」対応コンテンツでは、通常版(主にシネスコ)と「IMAX Enhanced」版を選択できる。これは「IMAX Enhanced」対応テレビでなくとも選択可能だ。「IMAX Enhanced」版では、縦方向の映像表示面積が大きくなるなど、アスペクトに違いがある

「IMAX Enhanced」対応コンテンツでは、通常版(主にシネスコ)と「IMAX Enhanced」版を選択できる。これは「IMAX Enhanced」対応テレビでなくとも選択可能だ。「IMAX Enhanced」版では、縦方向の映像表示面積が大きくなるなど、アスペクトに違いがある

DTS:X音声を再生するには、対応コンテンツを再生し、ポップアップ表示された「音声オプション」から「DTS:X対応IMAX Enhancedサラウンド」を「オン」にする

DTS:X音声を再生するには、対応コンテンツを再生し、ポップアップ表示された「音声オプション」から「DTS:X対応IMAX Enhancedサラウンド」を「オン」にする

実際に「IMAX Enhanced」対応コンテンツのDTS:X音声のクオリティはどうか。比較対象は同時配信されているDolby Atmos音声(中身は非可逆圧縮のDolby Digital Plusと思われる)。簡単に印象を言えば、DTS:Xでは確かにIMAXシアター(映画館)のような音になる

低音はわずかながらパワフルに感じられるし、全体にメリハリのきいた迫力のある音だ。だからアクション映画はより迫力があってスケールも大きい、楽しいものになる。Dolby Atmos音声に切り替えて聴いてみると、特に低音不足とも感じないが、少しおとなしくなったように感じられた。

このあたりの感じ方は人によると思うが、筆者自身は聴き慣れているせいもあってDolby Atmosのほうがスタンダードであまり色づけをしない方向の音だと感じた。いっぽうのDTS:Xは、より映画館的なスケールや迫力が感じられた。

言わばDolby Cinema的な音とIMAXシアター的な音の違い。AVファン的にはどちらがよいというよりも、どちらも楽しめることがうれしいわけで、新しい楽しみが増えたと思う。せっかくの楽しみなのだから、ソニー以外の主要テレビメーカーもぜひ対応をお願いしたい。ついでに、常用している「Apple TV 4K」も(そもそもDTS音声への対応を含めて)対応を期待したい。

【まとめ】(価格はともかく)画質のよいmini LEDテレビとして一見の価値あり

視聴した結論としては、特に「BRAVIA 9」の仕上がりがすばらしかった。画質的に有機ELとの差はごくわずかだし、「IMAX Enhanced」のDTS:X音声の対応などを考えると「次に買い替えるならソニーかな」と感じてしまうほどの高画質だった。

要検討となるのはやはり価格だ。視野角や応答速度(素早い動画でのぼやけ感)など、有機ELテレビのほうが原理的にすぐれている点もまだまだあるし、有機ELテレビの高輝度表示はmini LEDバックライト搭載液晶テレビと比べて劣っているわけではない。

「BRAVIA 9」は有機ELも含めた現在のテレビとして、一、二を争うほどの優秀な画質・音質のモデルであるのは間違いない。しかし、競合相手との価格差を無視できるほど飛び抜けて優秀というわけではないのだ。

実質上のコストパフォーマンスとしては「BRAVIA 7」が際立つ

そこで選択肢として浮上するのが「BRAVIA 7」だ。画面の明るさ、トータルでの精細感やコントラスト感に「BRAVIA 9」との差があるものの、実用上の大きな差にはならないのではないか、というのが今回の視聴で得た実感。特に部屋を暗くして映画を見るタイプの人だとその差はかなり小さくなる。音声も十分立派な音だし、「IMAX Enhanced」対応を含む機能性は同等。「BRAVIA 7」も決して安価ではないが、コストパフォーマンスはなかなか優秀だと思う。

ただし、「BRAVIA 7」を選ぶとなると特に65V型以上の大画面モデルで視野角の影響が目立ち始めると思われることに注意が必要だ。65V型以上の大画面を志向するならば「BRAVIA 9」を選ぶと、長く愛用する点でも有利になると思う(「BRAVIA 9」のラインアップは65V型のほか、75V型、85V型の3モデル)。

つまり「サイズは55V型でいい。しかも自分ひとりで映画などを見ることが多いので視野角を気にする必要もない」というなら、「BRAVIA 7」で決まりだが、そういう独身貴族的な方も決して多くはないだろう。ではやはり「BRAVIA 9」がよいか……。このあたりで堂々巡りになってしまう。個人的な選択としてもかなり悩ましい問題である。

筆者は薄型テレビを買い替えるとき、いちばん画質がすぐれたモデルを選ぶ。映像フォーマットや音声フォーマットへの対応もいちばんすぐれたモデルを選ぶ。なぜなら、そうすればいちばん長く使えるからだ。長く使えるならば価格の問題もある程度解決(許容)できる。絶対的な価格は高くても、よい物を選んで長く使うのが正解であるのは間違いないはず。画質にこだわってテレビを選ぶ皆さんは、筆者と一緒に悩んでみてほしい。

鳥居一豊
Writer
鳥居一豊
オーディオ専門誌の編集スタッフを経て独立。マンガ、アニメ、ゲームをこよなく愛し、視聴取材などでも数多くの名作を取り上げる。ホームシアターのために家を新築して早10年。現在は8.2.4ch構成のDolby Atmos対応サラウンドシステムと120インチスクリーン+プロジェクターによる視聴設備を整えている。ホームシアターは現在でもまだ進化する予定。
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柿沼良輔(編集部)
Editor
柿沼良輔(編集部)
AV専門誌「HiVi」の編集長を経て、カカクコムに入社。近年のAVで重要なのは高度な映像と音によるイマーシブ感(没入感)だと考えて、「4.1.6」スピーカーの自宅サラウンドシステムで日々音楽と映画に没頭している。フロントスピーカーだけはマルチアンプ派。
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