ファミリー向けではなくシングルライフに役立つ家電情報をヲタク目線でお届けする連載「ヲタ家電!」。今回のテーマは「ポータブルCDプレーヤー」です。ってそれ家電じゃなくて普通にオーディオでしょ!
ですが現在販売されている製品を見渡せばその現状は「生活家電以上オーディオ未満」という雰囲気。CD黄金時代過ぎ去りし現在のその姿は、かつての華々しい製品たちとはもう違ってきているのです。CDもCDプレーヤーも、もうオーディオの主役ではない……
でもたま〜にありませんか?「このCDいますぐ再生したい!」という瞬間。普段はどこにでもしまっておけて必要なときにはさっと取り出して再生開始。ポータブルCDプレーヤーにはまだ活躍の場がある!
今回はそんな観点からポータブルCDプレーヤーの現状とその製品選びのポイントを紹介していきます。
ある日ふと気がつくと、CDを普通にそのまま再生できる機器が手元にひとつもなくなっていた……
そんな方も少なくないのでは? いや物心ついたときにはもうダウンロード販売あるいはサブスクの時代だった世代にとっては、「なくなっていた」ではなくそもそも最初から「なかった」のかもしれません。
ですがそんな現在においても、CDをいますぐサクッと再生したくなる場面は、いわゆる「まれによくある」ものではあります。「引越しの準備をしていたら学生のときライブに通っていたバンドの会場限定販売盤が出てきた」とか、「サブスク配信されてないレア盤をネットでやっとゲットできたのがいま届いた!」とかみたいな。
今回紹介するアイテム「ポータブルCDプレーヤー」は、そんな瞬間に備えて用意しておくのに“ちょうどよい”CD再生環境なのです。
東芝エルイートレーディング「TY-P50」。2022年12月発売の最新製品で、「現在の」ポータブルCDプレーヤーらしい機能をおおよそ網羅しています
CD再生環境の中でも特に“ポータブル”CDプレーヤーを推す理由はシンプル。「リッピングとか不要ですぐに再生できる」「使ってないときにじゃまにならない」「お値段お手ごろ」です。
今回想定しているのはたまにかつ突発的な「いますぐ聴きたい」ニーズですから、リッピング用の外付けドライブを購入し、それをスマホに接続して云々なんてのはなし。たまにしか使わないのですから、使わないときもスペースを占有してしまう据え置きオーディオも却下です。そこでポータブルCDプレーヤーならどちらの問題もクリアでき、しかもお値段がお手ごろ。ちょうどよい!
ですが「現在の」ポータブルCDプレーヤーは、その全盛期に我々世代が慣れ親しんだ「あの頃の」ポータブルCDプレーヤーとは少し、いやかなり違ったものになっています。製品選びにあたっては改めてポイントを確認しておいたほうがよいでしょう。「CDプレーヤーを買うなんて初めて」という世代の方であればなおさらです。そのポイントを確認していくのが今回の記事というわけですね。
ちなみに青春をCDとともに過ごした世代には懐かしいこの小窓感のある液晶画面は多くの製品で健在です
現在のポータブルCDプレーヤーを考えるのに外せないところは、「ポータブルCDプレーヤーはもはやオーディオブランドが力を入れて展開するジャンルではなくなっている」という、無常な現実です。たとえばソニー最後の新製品は2010年の「D-NE241」で、それもとっくに販売終了していて新品入手は困難。パナソニックやパイオニアも同様です。
ですから現在のポータブルCDプレーヤーは、オーディオ的な高音質や最新ガジェットとしての機能性やデザイン性を備えたものではなくなってしまっています。「せっかく買うなら世界最小最軽量モデルを買うぜ!」とか意気込んでも無理なのです。
では現在のポータブルCDプレーヤージャンルを形成しているのはどういうメーカーのどういう製品たちなのでしょう?
メーカーとしては「東芝」「オーム電機」「ロジテック」「グリーンハウス」「コイズミ」といった名前が見られます。この「東芝」は東芝ライフスタイル株式会社グループの東芝エルイートレーディング株式会社であり、生活ライフスタイル家電メーカーのオーディオ部門的な立ち位置。ほかもライフスタイル周りやデジタル周辺機器全般を主戦場とするメーカーという印象です。製品ページを見ると「語学学習」「リスニング」といった言葉も目に入ってきます。価格は3,500円〜8,000円ほどが中心のようです。
つまりオーディオ機器ではなく、日用生活家電に近い感覚で展開され提供されているもの。それが現在のポータブルCDプレーヤーと言えるでしょう。
「TY-P50」も白物=生活家電的な親しみやすさや溶け込みやすさを感じさせる色合いやデザインになっています
こちらもそこは受け入れて、オーディオ的なクオリティやガジェット的なかっこよさは望まず、「ちゃんと再生できて使い勝手に問題なければそれでいいじゃない」という感覚で選び、使っていくのがよいのではないでしょうか。
しかしそんなゆる〜い観点から選ぶにしても、ここだけはしっかり確認して選ぶべきというポイントはあります。特に、
●バッテリー
●外部電源
●Bluetooth
の仕様や機能は絶対に確認し、自分の使い方にフィットする仕様や機能を備えたものを選ぶようにしましょう。
電源周りでは「乾電池駆動か内蔵充電池駆動か」の確認と検討は必須です。単3アルカリ乾電池2本という仕様が主流のようですが、海外メーカー製品などには内蔵リチウムイオン充電池仕様のものもあります。現在の我々はスマホもイヤホンもDAPも充電式に慣れていますから、充電式の便利さからは離れ難いですよね。
ですが筆者のおすすめは乾電池仕様です。というのも今回は「たまに突発的に必要になるCD再生環境」としてのポータブルプレーヤーという想定。1か月や3か月、下手したら1年、使わないでしまい込んだままの放置期間も考慮しておくべきです。すると充電池仕様では「ひさしぶりに使おうとしたら自然放電でバッテリーが空になってた……」という残念な未来が見えてきてしまいます。
しかも充電が空の状態では充電池の痛みも早く進行してしまうのでさらに残念。乾電池なら電池が切れていたら電池を替えればいいですし、電池が原因でCDプレーヤー自体が使用不能になることもありません。
「TY-P50」も単3乾電池×2本。これで8時間前後のイヤホン再生が可能です
今回の場合、ポータブルCDプレーヤーではあっても特に持ち歩きを想定しているわけではありません。ですから、ケーブルが多少じゃまにはなるのが気にならなければ、バッテリーではなく外部電源での駆動もあり。充電池搭載製品であれば充電端子がそのまま外部電源端子ですし、乾電池駆動の製品でも外部電源端子併設の場合が多いです。
ですが乾電池駆動の製品では特に、その充電端子がUSB端子ではなく旧来のピンプラグ型なものもありがち。さすがに専用電源アダプター仕様ではなく、付属のUSB-A→ピンプラグ変換の充電ケーブルを使うパターンが多いですが、それにしても変換ケーブル必須なのは少し不便です。外部電源を使うこともありそうと考えている方は、電源がUSB端子な製品を選んでおくとよいでしょう。
といっても前述のようにポータブルCDプレーヤーはもはや「最新ではない」アイテムなので、そのUSB端子はUSB-CではなくmicroBだったりするのですが。それでもケーブルの使い回しがしやすいぶんだけ、ピンプラグよりは扱いやすいでしょう。
「TY-P50」の外部給電はUSB-A→ピンプラグ変換ケーブル仕様
Bluetooth対応!これは現在のポータブルCDプレーヤーが黄金期のそれに明確に勝るポイントと言えます。当時はBluetoothイヤホンとかありませんでしたからね。「いまさらワイヤレスじゃないイヤホンなんて使いたくない」「有線イヤホンもう持ってない」「Bluetoothスピーカーにもつなぎたい」という方はBluetooth対応の製品を選びましょう。
なおコーデック記載のない製品も多いですが、その場合は必須コーデックであるSBCのみ対応と考えておくのが無難です。
「TY-P50」もBluetooth対応。ちなみに懐かしの「プログラム」ボタンが兼用でペアリングボタンにもなっています
以上が確認&検討必須の重要ポイント。ここからは、「あんまり気にしないでいいかもだけれどこんな機能や仕様もあったりするよ」的な、ゆる〜いポイントをざざっと紹介しておきましょう。
スピーカーが搭載されていてイヤホンなくても音を出せるなんてスタイルの製品も、実はけっこうあります。自宅での語学学習といった想定用途に向けての便利さを高める機能でしょう。音楽再生用としての音質面は十分なものではありませんが、「このバンドってどんな感じだったっけ?」みたく、内容自体がうろ覚えなCDをサクッと聴いてみたいときなどには便利かもしれません。
「TY-P50」もスピーカー搭載。スピーカーを搭載するふた部分には何気にしっかりとした剛性が持たされています
ポータブルCDプレーヤーは「回転するディスクに合わせてこれまた移動しながらデータを読み取る光学ピックアップ」という機械的な機構を搭載しており、なにも対策もされていなければ、普通に歩いただけの衝撃や振動で音飛びが起きます。ポータブルなのにそれはまずいということで施されたその「対策」が、Electronic Shock Protection または Electronic Skip Protection、略称「ESP」です。
仕組みは単純。データをCDから直接再生するのではなく、ある程度を先読みして衝撃に影響されないRAMにバッファリング。そこ経由での再生とすることで音飛びを抑えます。バッファリング時間、すなわち衝撃を無視できる時間は、登場当初はほんの数秒(『ジョジョの奇妙な冒険』の登場人物、空条承太郎のスタンド能力「スタープラチナ・ザ・ワールド」と同じくらい)でしたが、全盛期の後年には10秒や20秒に達していました。
そんな音飛び防止機能、現在においても搭載した製品のほうが多いようです。今回の想定は持ち歩き使用ではないのでこの有無はさほど重要ではないかと思いますが、搭載されていて損はない機能です。
「TY-P50」のESPバッファ時間は何と約60秒!現代ではこの程度のRAM容量は贅沢でも何でもないのです……
現在の世代は「リモコン」と言われたら普通にワイヤレスなリモコンを想像するでしょうが、ポータブルCDプレーヤーにおけるリモコンといえばこちら、「イヤホンのケーブルの途中にリモコン操作部が挟まってるやつ」です。
「TY-P50」のリモコンは本体イヤホン端子→リモコンのイヤホン端子→イヤホンの流れで接続。もちろん本体直でのイヤホン接続もできます
何にせよ実際のところ、自宅で机とかに置いて使う分にはリモコンの必要性はありません。なのでリモコンの有無をさほど重視する必要はないでしょう。
ただ、かつてのポータブルCDプレーヤーを知るユーザーだと「懐かしい!」の一点突破でこのスタイルのリモコンが欲しくなるかも。ならば止めはしません。
語学学習等に向けての機能ですから、普通に音楽を聴くのには必要ありません。これらの機能が搭載されている製品にはそのためのボタンがあれこれ付いていて、見て目や操作性がごちゃついたりはしますが、そこを気にしないのであれば「搭載されていてもいなくても気にしないでよし」です。
とはいえ機能が付いててボタンが目に入ると1回くらいは使ってみたくなりますよね
FMラジオの受信が可能な製品もあったりします。「そういえばラジオも持ってないな」という方は、災害に備えた機能と考えて用意しておくのもありかもしれません。乾電池駆動のプレーヤーなら停電時も安心。外部電源端子がUSBな製品の中にはモバイルバッテリーでの駆動も可能なものもあったりします。
いまや世界最小最軽量競争なんてものはありません。各社がコストを注ぎ込みあらゆる部材を専用設計し筐体をマグネシウム製にしたりしていた時代ではないのです。かつてのような小型軽量モデルは現存しません。それに別に毎日持ち歩くわけでもなし、普段は引き出しにでもしまっておくのですから、大きさの多少の違いはあまり気にしなくてよいでしょう。
ふたに窓がついていて中でCDが回転してるのが見えるタイプのプレーヤー、何かよくないですか?
こちらグリーンハウス「GH-CDPA」は窓付き、リモコン付き、ワイドFM対応です
といったところがポータブルCDプレーヤーの現状、そして製品選びのポイントです。もうすっかり「枯れた」ジャンルになっていて突出した製品は見当たらないというのが正直なところではあります。
ですがそんな限られた製品の中から吟味して、自分に合った製品、史上最高ではないが現状での最適解!な製品を見つけ出すのも、ヲタ的楽しみ方のひとつ。お高いお値段でもないことですし、そんなかる〜くゆる〜い感覚で選んでみるのはどうでしょう?