◆Ave Maria◆

この世界は魔術師と非魔術師の入り交じり、魔術師はひとりひとり異なる《特殊魔法》が扱えます。

しかし、魔法の使用目的は善悪によらない。魔法扱いは神の定めたルールに従って、厳格に定められています。
どれほど善意に満ちた行い、人類のための行い、救いをもたらす行い。
それが何であろうと、魔法を司る神・ゼノ様のルールを破れば、強制的に《天に召される》。

《天に召される》とはどういう意味か？
《天に召される》と魂はどこへ向かうのか？

まだ幼い子どもを主軸に進んでいくストーリーは、あまりに無慈悲で、キャラクターたちの感情の発露も相まって苦しいほどに感情移入してしまいます。

魔法の設定、世界の秘され…続きを読む

様々なキャラクターの視点で描かれる、現代ファンタジー作品です。

世界は魔法を使える者と使えない者に大別されており、魔法を使える者は幼い頃から訓練を行い、基本的な魔法と術者個別の魔法を身につけていきます。

魔法というアドバンテージを持っている分、彼らは能力的に優れていますが、それらが帳消しになるほどの重い契約も抱えています。

ある者は家族のために契約を破り、ある者は世界に愛されし存在として人々を癒す。

時を経るごとに減少していく彼らには、どんな運命が待っているのか。

ぜひ読んでみてください。

群像劇特有の視点が入り乱れる構成ですが、幼い子供たちでの視点の語り口や心理描写などが、実に年齢相応のリアルさを感じ取れます。
また、全体的に暗く重い雰囲気認知ており、あらゆる場所に不安という影を落とし、この世界が万能ではなく不条理に満ちているという印象を強めています。
一方で、各ストーリーは比較的短くコンパクトにまとまっているため、サクサク読み進める事ができる点も魅力です。
サブタイトルとなっているフランス語にも注目したいですね。

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（229文字）

天変地異により混沌に満ちた世界。
小学生にあたる年齢の子供たちが、とある不幸な出来事をきっかけに世界の謎と向き合うところから物語は始まります。

各話ごとに視点変化を効果的に使うことで生き生きとした群像劇が描き出される様は作品世界への興味を否応なく掻き立て、加えてメインとなる少年たちの儚い心を思わせるような透明感のある文体はどこまでも美しく、絵画のように鮮烈なイメージが頭の中に展開します。

美しい世界にハードな謎。
この謎がこれからどう解き明かされていくのか――続きが気になる作品です。

美術館の諸派展のような一連の掌編によって語られる因縁。
あたかも護られ飾られていた絵画の歴史ごと燃やし尽くすような人の情念。
価値観の反転した熱く冷たく焦げ臭い時代を示す物語。
人の血と情念と混沌を炎を絵具に描かれる世界。
いずれ雫のような光が射すとして、人を癒やすに足りるのだろうか。

大変いいと思いますよ。

フランス・パリを舞台とした魔術師と非魔術師が入り混じる混沌とした世界の話。魔術師と非魔術師の理不尽な「差」をひしひしと感じつつも、この世界に没入して読み進めていくことができました。

過去のレビューで書かれている通り、キャラクターと世界観が魅力的なのはもちろんですが、この作品の特筆すべき点はその構成にあります。各話ごとに他視点でエピソードが綴られているのですが、情報を合わせていくことで全体像が見えてくる、アドベンチャーゲームのような面白さがあります。読者を楽しませることにとても力を注いだ作品だと思うのでぜひ読んでみて下さい。

文体などが美しくなるほど凝っている作品は私にとって読み辛いことも多いのですが、この作品は美しくお洒落であると同時に読み易くもあります

私はPCで読んでいるのですが。
透明感があるというか、ちょっと世俗からは隔離された宗教画のようなものを読んでいて感じました。

フランス語？（英語とはちょっと違う？）各話のタイトルや、文字のレイアウトなどとても考えられて書かれているのだな。と感じました。
余白などがほどよい余韻となっています。

内容は西洋ファンタジーにミステリーがミックスされて、独特の世界観とルール―が、話数を重ねるごとに深まってきます。