航空旅客急増の中国、フライト遅延に過激抗議でトラブル多発
[上海 11日 ロイター] 客室乗務員やグランドスタッフに暴行を加える乗客、滑走路に飛び出す乗客、機内の非常ドアを引っ張り開ける乗客──。中国では、遅延するフライトに激怒した乗客が、過激な手段で抗議するトラブルが相次いでいる。
民間機の飛行空域が制限される中、中産階級の拡大や格安航空会社の台頭などを背景に乗客が急増。航空各社は定刻通りの運行を目指しているものの、今年は国内・国際線の両方で、激怒した乗客が絡んだトラブルが数十件発生している。
「フライトが遅延すると、乗客は大きなトラブルを起こす。スタッフを殴る客もいる」。上海に本社を置く格安航空会社(LCC)春秋航空の王正華会長は、「航空会社の立場は弱い。われわれができることは、怒りを鎮めるために補償を行うことだけだ」と、ロイターとのインタビューで打ち明けた。
約30年前、飛行機移動は政府幹部や会社役員のみに限られ、航空券を購入するにも特別な書類を提出する必要があった。しかし、政府の統計によると、昨年は国内線で2億7000万人以上が搭乗し、2010年からは約10%増加、03年からは約70%増加した。
航空会社は需要の拡大ペースに従い、航空機の追加を継続。ボーイングは、今後20年間で中国は6700億ドル(約55兆2000億円)に相当する5260機の追加が必要と試算している。ただ、航空会社が便数を増やす一方、飛行空域の大部分を中国空軍がコントロールしているため、フライトの遅延が常態化する恐れがある。
フライトの遅延は、時に度を超えた結果をもらたす。
今年4月には、フライトが16時間遅れたことに激怒した乗客約20人が上海の主要空港の滑走路に向かって走り出し、接近中の航空機の200メートル以内に近付く事件が発生。8月には遅延補償を拒否された乗客が機内の非常ドアを引っ張り開けて、遅延時間が延長した。
航空コメンテーターのLi Yuliang氏は、「かつて飛行機移動は『ファーストクラス』の人々の特権だったため、一般の中国人が持つ航空サービスへの期待はかなり高い」と指摘。「しかし、実際乗ってみると、サービスはそれほど良くないと感じ、遅延があった場合はなおさらそう感じる。そして怒った乗客が大きなトラブルを引き起こしている」と説明した。
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