■業界をとりまく商取引環境の現状と課題
製品が適正な形でスムーズに流通していると、企業間の競争が活発になり、互いに切磋琢磨して魅力ある製品が産み出されるようになります。そのさまたげとなるような、非効率な仕組みや商習慣を改め、業界のなかで共通化できるところは着実に進めていくことが重要です。
商流委員会の活動を過去に遡ってみると、90年代に荷物を運搬するための荷台(パレット)の統一化に取り組んだことがありました。国内はほぼ同じ規格に揃いましたが、海外のものとは未だサイズや形状が異なります。海外のパレットが船や飛行機に積載されるコンテナに合わせて規格化されているのに対し、日本はトラック輸送を想定していますから、違いが出るのは当然です。日本に到着してから貨物を積み替える必要があるなど、課題が残る一方で、積み替えをしなくてすむように仕組みを変えるケースも増えてきました。こうした運搬システムの規格統一はもっとできるはずですが、まだ立遅れている部分があります。
■電子商取引の利用拡大へ業界を超えた取り組み
1990〜2000年代にかけて、ITのめざましい発展は商取引にも大変革をもたらしました。コンピューターやインターネットの活用は取引を効率化しましたが、電子商取引の急速な普及により、従来のビジネス形態を見直し再編する必要にも迫られました。また、アジアの製造業が台頭し、外資系の小売業が相次いで日本進出を果たし国際的な競争は激しくなるなど、当業界も例外ではありません。IT化と国際化の波を受けて状況は短期的に変化しますが、立体的な捉え方をしていかなければと思います。
電子商取引も、日本では業態ごとに異なるフォーマットで行なわれてきました。紙の伝票を同じ方式のデータに揃えて、卸売業と小売業でやり取りするような基本的なことも、具体化するのは大変時間がかかります。しかし、放っておけば取引が複雑化しコストが高騰することが予想されますし、世界標準との互換性にも限界があり、競争力が低下すれば深刻な問題です。
この議題は当委員会でもたびたび取りあげてきましたが、おおがかりな環境整備が不可欠とあって、業界の枠を超えた検討の必要を痛感していました。そこへ経済産業省がEDI(Electronic Data Interchange)推進の一環で2007年に「流通システム標準普及推進委員会」を、2009年には「流通システム標準普及推進協議会」を発足させました。異なる業態から47団体が集まり、当工業会も日用品分野を代表する業界団体として、同委員会と同協議会に参加しました。
EDIとは、企業を電子ネットワークでつなぎ、商取引に関するあらゆる情報を電子データで交換し合う仕組みのことです。協議会での検討が体系的な取り組みを前進させ、まだ一部ですが2010年から百貨店などで導入実証もはじめられています。引き続き、電子商取引の利用拡大のために技術的な検討を行なっていますが、特に電子決済のありかたをどうするのか、そしてどのように世界標準とすりあわせていくのかが大きな課題となっています。
■消費税増税に際しても公正性を確保
今年4月に8%へと引き上げられた消費税への対応も、当委員会で行ないました。消費税が導入された1989年当時は、メーカーが小売価格を固定する建値制が残っていましたが、その後はオープンプライスへ移行しています。前回は市場の混乱を避けるため表示カルテル制度を利用し、他の日用品団体とともに税額表示の方法を取り決めましたが、今回の増税に際しては不必要と判断しました。
オープンプライス化でメーカーの競争が促されるのは自然な流れで、増税分も適切に転嫁されるべきです。違反行為を防ぎ公正を期するため、必要な場合は省庁や各種団体に要望書を提出することなども行なっています。
■協働による商取引環境の最適化を
商流委員会の役割は、消費者の期待やニーズを実現できる商取引環境の整備に貢献していくことにあります。石鹸・洗剤業界全体を見渡したときに、物流上の課題も含めて、企業間取引を良好に発展させていくうえでは連携強化もカギとなるでしょう。規模や業態は違えど同じ課題を抱えている企業が多くありますから、協働の取り組みで解決をはかる働きかけができないかと考えているところです。外部との交流や勉強会などを活用して見聞を広めながら、検討を続けていきたいと思います。