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「徹底した無表情で…」話題の新ドラマで41歳俳優のシーンに”違和感を抱いた”ワケ

 毎週火曜日よる10時から放送されている『東京サラダボウル』(NHK総合)の主演俳優である松田龍平は、無表情を徹底している。そればかりか、微動することも禁じられているかのようである。
『東京サラダボウル』(NHK総合)公式ページより

『東京サラダボウル』(NHK総合)公式ページより

 にもかかわらず、本作の松田龍平には魅力的なアップの画面が毅然としてある。そこに覚える、ちょっとした違和感ですら、これは不思議と官能的なのだ。  イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、違和感がデビュー作につながる本作の松田龍平を解説する。

松田龍平が中国語を発する痛快さ

 外国人の容疑者を取り調べるとき、外国語話者ではない日本人刑事との間を翻訳する専門職がある。元刑事として警察職務に精通している有木野了(松田龍平)は、警視庁・通訳センターに所属する中国語通訳人である。 『東京サラダボウル』第1話冒頭、東新宿署・国際捜査係の統括係長・飯山修(皆川猿時)が、大麻を所持していた中国人女性を取り調べている。刑事と容疑者の側、ちょうど間くらいに有木野が控えている。飯山が日本語で問いかけると、カメラがスッと上手へ移動。有木野の顔を捉える。  飯山の「なぁ」まで正確に翻訳する一言目がやけに甲高く聞こえる中国語。すばやいカメラ移動から、変わらず無表情の松田龍平が、不意に中国語を発する痛快さがある。こんな無表情で中国語をペラペラ操る独特のリアリティは、松田龍平にしか担保できない芸当だろう。

ランチタイムの静と動

 それにしても本作の松田龍平は、徹底的に無表情であり、微動することも自らに禁じているようにすら見える。対照的に松田演じる有木野の相棒となる、飯山の部下・鴻田麻里(奈緒)は、せわしないくらい動き続ける。  たとえば、お昼時の場面。街中の公園でクールにランチパック(?)を食べる有木野に対して、アジア人街の人々と頻繁に交流する麻里は、どこで買ってきたのか、さそりの丸焼きを嬉しそうに取りだす。  黒々としたさそりを眺め回す麻里の近くに有木野がいる。躊躇せずにパクつく様子を見た彼は、無表情ながらぎょっとして、彼女に釘付けになる。  さそりを手にする麻里を眼差す方向に全身が完全に固定されているように見える。ランチタイムの静と動の描き分けで、キャラクター性の違いを映像的に明確化する場面である。
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水餃子を咀嚼するアップ
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