
「偉大な起業家が亡くなりました」。リクルート創業者の江副浩正が亡くなった2013年2月、楽天の三木谷浩史社長が朝会でその死を悼んだ。同じ関西出身で、三木谷氏の叔母は江副の友人だったが、三木谷氏が江副の死を悲しんだのはそれだけが理由ではない。
英語の頭文字が同じ両社は、ロゴの色にちなんで「青いR(リクルート)」「赤いR(楽天)」と呼ばれる。その当時、楽天で働く「青いR」の出身者は100人を下らなかった。なかでも、楽天の基幹事業のECモールの「楽天市場」を統括していたのが、高橋理人さんだった。高橋さんに、両社の共通点と強さの秘密を聞いた。
※このインタビューは『起業の天才!江副浩正 8兆円企業リクルートを作った男』文庫版(新潮社)の出版を記念して行われたトークショーをもとに作成した。
「青いR」と「赤いR」の共通点
大西康之氏(以下、大西):高橋さんは25年間リクルートに勤務した後、2007年から2016年まで楽天でEC(インターネット・ショッピング)の「楽天市場」の責任者を務められました。「青いR(リクルート)」と「赤いR(楽天)」の両方を知り尽くした方で、私が『起業の天才!江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』を書くきっかけを作ってくれた方でもあります。その節はありがとうございました。
高橋理人氏(以下、高橋):いえいえ、どういたしまして。最初にお会いしたのは、大西さんが楽天の本(『ファースト・ペンギン 楽天・三木谷浩史の挑戦』日本経済新聞社出版)を書かれる時の取材で、私が楽天の常務をしていた頃ですね。もう10年以上前ですか。
大西:『ファーストペンギン』を出したのは2013年ですから、お会いしたのはその前の年。もう13年も前になりますね。
高橋さんのお話は楽天の話も熱くて面白かったんですが、リクルート時代の話もそれに負けないくらい面白くて。それなら楽天の次はリクルートを書こうか、と思った次第です。
そこでいきなりですが「青いR」と「赤いR」の共通点を教えてください。
高橋:『起業の天才!』にも書いてありますが、青いRは、それまでマスメディアの広告営業が決して足を運ばなかった全国津々浦々の中小零細企業から広告を集めることで成長しました。
例にあげると『ガテン』(注:工事や工場の現場人材の求人を扱った情報誌で、現場で働く人を指す「ガテン系」という流行語を生んだ)や『ホットペッパー』(注:地域の飲食店を扱ったクーポン誌の先駆け)は、全国にものすごい数のクライアントを持っていました。
こうした会社やお店は、求人にしても広告にしても、それまでは有効でコストに見合う方法がなかった。でも、リクルートの媒体に載ることで、求職者やお客さんを初めて効率よく集められるようになりました。
楽天市場の出店者も地方の零細企業やベンチャーが多い。マスメディアで広告を打つようなお金はなくても、楽天市場に店を出せば全国区になれる。地方の中小零細企業を元気にするという志は、青も赤もよく似ています。
