中国・杭州のAI(人工知能)開発企業「ディープシーク(DeepSeek、深度求索)」が先ごろリリースしたAIモデルが米シリコンバレーの専門家を驚かせていると、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)や英フィナンシャル・タイムズ(FT) などが報じている。性能の劣る半導体を使用して開発したにもかかわらず、米国の競合企業とほぼ肩を並べるほどの成果を上げており、なぜそのようなことができたのかと、驚嘆させているという。
性能評価でアンソロピックやxAIを上回る
ディープシークは「DeepSeek R1」を2025年1月20日に、「DeepSeek V3」を2024年12月にリリースした。これら2つのAIモデルは、カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)の研究者らが運営する、チャットボット(自動応答システム)の性能評価プラットフォーム「Chatbot Arena」で、トップ10にランクインした。首位は米グーグルのAIモデル「Gemini」だったが、ディープシークは、米アンソロピックの「Claude」とイーロン・マスク氏率いる米xAIの「Grok」を上回った。
シリコンバレーのベンチャーキャピタリストであり、トランプ大統領への助言を行っているマーク・アンドリーセン氏は1月下旬のX(旧Twitter)への投稿で「DeepSeek R1は、私がこれまでに見た中で最も驚くべき、そして感銘を受けるブレイクスルーの1つだ」と称賛した。
ディープシークの技術は依然として米オープンAIやグーグルに後れを取るとみられる。ディープシークは、米国製の最先端半導体チップの使用が制限されている。使用したチップの性能は低く、その数も少ない。加えて、米国の開発者が不可欠と考えていた手順を省略している。にもかかわらず、同社は既に米企業の有力なライバルになっていると、専門家らは述べている。
中国資産運用会社が設立 価格競争のきっかけに
ディープシークは、80億米ドル(約1兆2500億円)の資産を持ち、取引にAIを活用することで知られる資産運用会社「幻方量化」のAI研究部門から誕生した。開発を主導したのは、今や中国のAI推進の顔となっている、ヘッジファンドマネジャーの梁文鋒氏だ。