5月17日は「世界血圧デー(World Hypertension Day)」。日本でも「高血圧の日」とされていて、血圧に目を向けるきっかけになればと、例年各地で特別なライトアップなども実施されている。
高血圧がやっかいなのは、自覚症状がないことだ。筆者も健康診断で「血圧が高め」と指摘されるまで、まったく自覚していなかった。主治医には「放置すると心臓病や脳卒中の重大なリスクになる。これからしっかり管理していきましょう」と説明された。食事や運動といった生活改善に加え、血圧の管理に欠かせないのが日々の記録だ。
基本は起床後1時間以内と就寝前の1日2回、血圧計で測って結果を記録する。たったこれだけのことなのだが、習慣化するのは案外難しい。そこで注目したのが、腕時計として日常的に身につけることができ、いつでも手軽に血圧を測定できるウェアラブル血圧計だ。
2024年はアップルがスマートウォッチ「Apple Watch」を発表してから10周年を迎える。Bloombergの複数の記事によれば、血圧モニタリングなどのヘルスケア機能も追加される見込みとのうわさもある。
今回は、日本で医療機器認証を受けている、オムロンの「HeartGuide HCR-6900T-M」(オムロンヘルスケアストア税込価格:9万4800円)と、ファーウェイの「HUAWEI WATCH D」(ファーウェイストア税込価格:5万4855円~)を試し、違いをチェックした。
両者に共通するのは、腕時計型であることと、ボタンを押すだけの簡単な操作で、いつでも手軽に血圧を測定できる機能を有していること。バンドの内側に配置されたカフが膨らんで手首を圧迫し、最高血圧(収縮期血圧)と最低血圧(拡張期血圧)、脈拍数を測定。データはBluetoothで接続したスマホの専用アプリに転送され、自動的に記録されるしくみになっている。
カフの幅は布製のカバーを装着した状態の実測値で、どちらも3cmほど。あわせてバンドの幅も通常の腕時計に比べると太くなっている。特にオムロンのHeartGuideはカフに厚みがあり、かつディスプレイ部も大きく分厚いので、腕時計としての見た目はかなりゴツめ。装着していると周囲の人からたびたび、「ダイバーズウォッチですか?」と尋ねられた。サイズは縦48mm×横48mm×厚さ14mm、重さ115gと、重量もダイバーズウォッチ並みにヘビー級だが、残念ながらダイバーズウォッチのような防水性能は備えていない。
一方のHUAWEI WATCH Dも腕時計としては大きいが、HeartGuideに比べるとカフがスリムで軽量だ。1.64インチの四角い有機ELタッチディスプレイを搭載し、サイズは縦51mm×横38mm×厚さ13.6mm。重さは約40.9gで、IP68相当の防水性能も備えている。デザインが丸型か四角かは好みの分かれるところだが、軽さと防水性能ではHUAWEI WATCH Dに軍配があがる。
HeartGuideのバンドは穴にピンを通して固定する、一般的なピンバックル式。ぎゅっと引っ張って締める方式だが締め過ぎてもだめで、説明書では手首の付け根から2.5~3cm空けた位置へ、指1本差し込めるくらいの余裕を持って装着することが推奨されている。付属のメジャーであらかじめ手首周りを測っておき、その数字とバンド内側にある数字を合わせるようにすると、毎回同じ位置で固定しやすい。
一方のHUAWEI WATCH Dのバンドは、フォールディングバックル式を採用。こちらもあらかじめ、付属のメジャーで手首周りを測っておき、その数字にあわせて該当する穴に留め具をセットする。一度セットしてしまえば、次からは腕を通してパチンと止めるだけなので、着け外しが簡単にできる。
どちらのデバイスも、カフには取り外し可能な布製のカバーが付いていて、手首に直接あたるのはこのカバーの部分。さらっとした触感なので、装着感は決して悪くない。特にHUAWEI WATCH Dはカフがスリムな分、ごく普通の腕時計のように着けることができる。
HeartGuideはタッチ操作には対応しておらず、ボタンのみで操作する。右サイドに3つあるボタンのうち、一番上が血圧測定&停止ボタン。ワンボタンで、いつでもすぐに血圧を測定できる。
HUAWEI WATCH Dにはボタンが2つあり、下のボタンには好きな機能を割り当てられる。初期設定ではここに、血圧測定が割り当てられている。このボタンを2回押すか、一度押して画面に表示される「測定」をタップすると、血圧が測定されるしくみだ。
どちらも測定開始後、写真のようにデバイスが心臓の高さにくるように腕を支えて固定する。カフが膨らんで手首を圧迫し、しばらくすると空気が抜けて測定終了となる。HeartGuideは一旦軽く膨らんで、そのあと再度大きく膨らみ、HUAWEI WATCH Dはじわじわ膨らむ感じ。測定にかかる時間はいずれも1分ほどと短いが、装着位置が悪かったり、姿勢が悪かったりするときちんと計測できない。筆者が普段使用しているオムロン製の手首式血圧計よりさらに厳密に、正しい測定姿勢が求められるという印象だ。
血圧はそのときどきで変化し、同じ血圧計で続けざまに2回測っても、まったく同じ数字にはならない。それどころか病院でプロに測ってもらったときでさえ、1回目と2回目で結果が大きく異なることもある。つまりその数値が正確かどうかを判断するのはとても難しいのだが、1つの目安になればと、手持ちの手首式血圧計の測定結果と、2つのウェアラブル血圧計の結果を比べた。
何度か試した範囲では、HeartGuideの方が手首式血圧計に近い数値がでることが多かった。同じメーカーの製品なので当り前といえば当たり前だが、特に血圧が正常値の場合にその傾向が強く、逆に手首式血圧計で140を超えるような高い結果が出たときは、HUAWEI WATCH Dの方が近いこともあった。筆者が試した範囲では、HeartGuideはやや低めに、HUAWEI WATCH Dは高めに出る印象を受けたが、これはあくまでも個人の感想。また一般的に手首式血圧計は、上腕式血圧計に比べて数値の振れ幅が大きいと言われている点にも、留意する必要があるだろう。
HeartGuideの測定データは、ペアリングしたスマホの専用アプリ「HeartAdvisor」に記録される。日、週、月ごとにグラフや一覧で確認できるでなく、測定データをもとにしたレポートも表示される。指定した期間のデータを、ExcelやPDFで書き出すこともでき、血圧手帳の代わりにプリントして通院時に持参するといった使い方も可能。またアプリではリマインダーも設定でき、指定した時間にHeartGuideを振動させ、血圧測定や服薬を通知することができる。
一方、HUAWEI WATCH Dでは、専用アプリの「Huaweiヘルスケア」に、日、週、月ごとのデータがグラフで記録される。血圧以外にも心拍や血中酸素濃度、皮膚温といったデータを自動で記録でき、あらかじめ設定した相手にシェアすることが可能。このシェア機能と使って、家族の見守りデバイスとしても活用できる。リマインダーの機能もあり、指定した血圧測定スケジュールにあわせて通知できるほか、服薬や体重測定など他のタスクとあわせて、健康管理の習慣化をサポートする機能も用意されている。
バッテリーはどちらも充電式で、HeartGuideには専用の充電クリップ、ケーブル、ACアダプターが付属。クリップをカフの端に設けられた接続部に固定して充電するしくみになっている。電池残量がない状態から満充電までは約2時間半。約2日間の連続使用が可能となっているが、実際に使ってみた体感値もほぼ同じで、着けっぱなしで1日半~2日程度は使うことができた。
一方のHUAWEI WATCH Dは、ファーウェイ製のスマートウォッチに共通する専用のワイヤレス充電ケーブルを、ウォッチの背面にマグネットで固定して充電する。ファーウェイ製のスマートウォッチにはバッテリー駆動時間が長いものが多いが、HUAWEI WATCH Dは最大7日間の使用が可能。もちろん使い方によるのだろうが、筆者のテストでも約1週間の旅行中、充電は1度だけで済ませることができた。
HeartGuideでは血圧のほか、歩数と睡眠も自動で記録できる。「歩数」にはHeartGuideを着けて歩いた歩数と距離、消費カロリー、「睡眠」には睡眠時間と、設定した目標睡眠時間に対する達成率が表示される。なお睡眠時間は、あらかじめ設定したおおよその入眠、起床時間を参考に自動判別されるしくみだが、筆者の寝相が極端に悪いせいか、入眠時間が不規則なためか、うまく記録できないことが多かった。
HeartGuideにはこのほか、スマホの着信や受信を通知する機能も備わっているが、文字通り通知がされるだけで、発信者やメールの中身はスマホを開かないとわからない。健康管理という面では必要十分な機能を備えているものの、スマホと連携するスマートウォッチとしての機能は、限定的と考えた方がいいだろう。
対照的にHUAWEI WATCH Dは、スマートウォッチとして一般的な機能をひととおり備えている。HeartGuideがスマートウォッチ的な機能も備えた血圧計なら、HUAWEI WATCH Dは血圧計の機能を備えたスマートウォッチと言っていい。
具体的にはスマホと連携した各種通知が受け取れるほか、Androidスマートフォンとペアリングしている場合は、HUAWEI WATCH Dから定型文の返信も可能。文字盤のデザイン変更や音楽再生、ほかにもタイマーやアラーム、天気予報など多数の機能を備える。
血圧計以外のヘルスケア機能も充実していて、前述のように心拍や血中酸素濃度、皮膚温といったセンサーを有し、活動量や睡眠、ストレスなどが自動的に記録される。特に睡眠は、睡眠時間だけでなく、睡眠の深さや呼吸の質など、詳しいデータや分析結果も表示。また、ランニングやサイクリングなど70種類以上のエクササイズを運動として記録できる。
どちらも同じウェアラブル血圧計とはいえ、使い比べてみて感じたのは、両者ではターゲットがまったく異なるということだ。HeartGuideは血圧計を数多く手がけるオムロンの製品ということもあり、規則正しく血圧を測ることがもっとも重要な目的。その上でできるだけシンプルに、歩数や睡眠などを管理したい人に向く。対するHUAWEI WATCH Dは血圧だけでなく、睡眠やストレス、様々な運動もトータルで管理したい人向け。本格的なスマートウォッチを求める人も、選ぶなら後者になるだろう。
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