BYD・K9
K9(ケーナイン)は、比亜迪汽車(BYD)が製造する大型電気バスである。
概要
[編集]2010年より製造が開始され、本社を置く中華人民共和国をはじめ、世界各国で販売されている。生産は中国の他、中国国外(アメリカなど)での現地生産や、他社架装によるものもある。
満充電時の航続距離は250km[1]。従来のバスよりもバッテリー重量の関係で重い。
仕様
[編集]- 全長 : 12.0m[1]
- 最低床高 : 360mm[2]
- 蓄電池 : リン酸鉄リチウムイオン電池(324kWh、540V、600Ah)[1][2]
- 電動機 : 永久磁石同期電動機(水冷式[注 1])[1][3]
- 電動機出力 (最大値) : 90kW / 150kW / 180kW[4]
- 総牽引力 (最大値) : 700Nm / 1100Nm / 3000Nm[4]
- 駆動方式 : 後輪駆動(インホイールモーター方式)[4]
- 航続距離 : 250km[5]
派生車種であるK9AとK9Bなどは一部仕様が異なる。
バッテリー
[編集]使用されているバッテリーは、BYDの自社開発によるリン酸鉄リチウムイオン電池で、タイヤハウス上または屋根上に設置されている。BYDはこのバッテリーについて有害物質を発生させず材料をリサイクルできるとしている[6]。また、一部車両では補助電力として太陽電池も搭載されている。
走行機器
[編集]電動機は水冷式[注 1]の永久磁石同期電動機で、IGBTインバータにより制御される[3][2][1]。後方の左右の車輪にそれぞれ電動機が設置され、電動機の動力は歯車減速機を介して車輪に伝達される[7]。
車体
[編集]車体は主にアルミニウム合金を採用し、軽量化を図っている。
日本国内における運行
[編集]BYD K9(日本仕様) | |
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富士急バス | |
概要 | |
製造国 | 中国 |
販売期間 | 2015年 - |
ボディ | |
乗車定員 |
座席28名 立席27名 乗務員1名 計56名 |
ボディタイプ | 路線バス |
駆動方式 | 後輪インホイールモーター |
パワートレイン | |
エンジン | BYD-TYC90A |
最高出力 | 90×2kw |
最大トルク | 400Nm×2 |
車両寸法 | |
ホイールベース | 6,100 mm |
全長 | 12,000 mm |
全幅 | 2,500 mm |
全高 | 3,400 mm |
車両重量 | 16,640 kg |
その他 | |
バッテリー | 324 kWh |
仕様 |
右ハンドル仕様 後部右側に非常口あり |
日本国内においては、2015年2月に京都市のプリンセスライン(導入当時の社名は「京都急行バス」)が中国から輸入する形で導入[8][9]。最初に導入した5台はバッテリーを車内のタイヤハウス上に設置し、中扉は日本国内では珍しいアウトスライドドアが採用されていたが、2017年に増備された車両についてはバッテリーが屋根上への設置に変更され、中扉も日本国内で一般的なグライドスライドドアとなり、以降各地で導入された車両もこの仕様が採用されている。
日本仕様は「K9RA」をベースに改造した車両が導入され[10]、道路運送車両法による保安基準[11]の規定に従い、中国本国を含む他国には存在しない非常口を後部右側に設置している。
後軸重が11トンあるため、特殊車両通行許可を要する。2020年12月16日よりK9よりも全長が短い「K8(全長10.5m)」が日本市場向けに投入されたことで[12]、以降はK9を新たに導入する事業者は無い[13]。また、K9を導入した事業者が2021年以降に電気バスを追加導入した例として、岩手県交通のようにK8を新たに採用するケースや富士急バスのように他社の車両(EVモーターズ・ジャパン製)を採用するケースなど事業者毎に様々である。なお、日本市場向けのK8とJ6は国土交通省のノンステップバス標準仕様の認定を取得しているが、K9は認定取得には至っていない。
運行事業者
[編集]※リチウムイオン電池による電気バスの、試験運行でない営業運行。
- プリンセスライン - 京都駅八条口~京都女子大学前の循環一周10kmのルートで国土交通省の補助金を活用し導入され運行(路線バス)。
- 沖縄シップスエージェンシー - 那覇港新港ふ頭に寄港するクルーズ船の船客送迎用として使用。営業運行ではない白ナンバー車[14]。
- 岩手県交通 - Big Greenの愛称で、イオンモール盛岡南線、北高田線、岩手医大線[15][16]で運行。しかし、車両部品の一部に発がん性物質「六価クロム」が使用されていた問題を受けて2023年2月24日より使用中止し[17]、対象部品を交換したうえで翌月より運行を再開した[18]。
- 富士急バス - 富士五湖エリアで運行。国土交通省の補助金を活用し導入されている[19]。
- 協同バス - 埼玉県にある学校のスクールバスとして2020年11月1日より導入された。営業運行では無い送迎バス[20]。
- ハウステンボス - ホテルの送迎用バスとして2020年12月7日に5台が導入された。送迎用バスの為、白ナンバー[21]。
ギャラリー
[編集]-
広州市内
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充電中のBYD K9
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ワルシャワ市内
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ニューヨーク市内
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日本仕様の車体後部。後輪軸重が11.46トンと大きいため、緩和標章の逆三角形マークが入っている。
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プリンセスラインの路線バス。バッテリーはタイヤハウス上に設置。
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岩手県交通の路線バス。バッテリーは屋根上に設置。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e “電動バス導入ガイドライン” (PDF). 国土交通省. 2020年3月20日閲覧。
- ^ a b c “BYD and its “Green City Solution””. Dutch-INCERT. 2020年3月20日閲覧。
- ^ a b “宋楠:比亚迪K9全铝电动大巴制造全揭秘”. 手机新浪汽车. 2020年3月19日閲覧。
- ^ a b c “BYD ELECTRIC VEHICLES”. The International Council on Clean Transportation. 2020年3月20日閲覧。
- ^ 西山敏樹 (2015). “未来型電動バスの開発動向”. GS Yuasa Technical Report 第12巻 第2号: 5p .
- ^ “BYD Auto,BYD Electric Bus”. BYD Auto. 2012年10月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月20日閲覧。
- ^ “从电动大巴看比亚迪电动四驱技术的应用”. 第1电动. 2020年3月19日閲覧。
- ^ “BYD Becomes First Chinese Auto Company to Penetrate Japanese Market” (英語). BYD. (2015年2月26日)
- ^ “BYD、中国自動車メーカー初の日本進出…京都でEVバス納車”. レスポンス. (2015年2月25日)
- ^ “自動運転の大型電気バス、羽田空港で試験運用へ ANA”. レスポンス. 2021年2月2日閲覧。
- ^ 道路運送車両の保安基準第26条 (PDF)
- ^ “日本市場向け量産型大型電気バスを販売、2021年1月納車開始”. ビーワイディージャパン株式会社 (2020年12月16日). 2023年2月5日閲覧。
- ^ “導入事例”. ビーワイディージャパン株式会社. 2023年2月5日閲覧。
- ^ “クルーズ客送迎、電気バスを導入 沖縄シップスエージェンシー 20年までに80台”. 琉球新報 (2017年12月2日). 2018年3月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年4月14日閲覧。
- ^ “岩手県交通、電気バス導入 東北初 盛岡市内で運行開始”. Yahoo!ニュース. 岩手日日新聞社. 2019年4月14日閲覧。
- ^ “岩手医大附属病院バス路線に電気バス導入/岩手”. IBC岩手放送 (2020年2月20日). 2020年2月21日閲覧。
- ^ “防錆剤「六価クロム」使用との発表を受け、電気バスの運行を見合わせます” (PDF). 岩手県交通株式会社. 2023年3月13日閲覧。
- ^ “BYDのバス運行再開 六価クロム部品交換で、岩手県交通”. 日経モビリティ (ハウステンボス株式会社). (2023年3月15日)
- ^ “電気バスを山梨県内初導入 3/16(月)より富士五湖エリアで運行開始” (PDF). 富士急行バス株式会社. 2020年3月20日閲覧。
- ^ https://www.facebook.com/bydjapan/photos/a.1040222659517767/1556572301216131/
- ^ “〜環境に配慮するテーマパークを目指します〜 EVバス導入についてのお知らせ”. PRTIMES (ハウステンボス株式会社). (2020年12月7日)